JLPT(日本語能力試験)のN3では、日常生活で使われるレベルの日本語が求められます。合格するためには、身近な話題について書かれた具体的な文章を理解でき、新聞の見出しから情報の概要を掴める程度の読解力が必要です。リスニングは、ほぼ自然に近いスピードでの日常会話を聞いて、話の具体的な内容や登場人物の関係性を理解しなければなりません。このコラムでは、JLPTのN3レベルの概要や、具体的な問題例を紹介しています。
目次
JLPTの概要と特徴
JLPT(日本語能力試験)は、日本語を母語としない人を対象に行われる世界最大規模の日本語の試験です。日本と海外の86の国と地域で行われ、2019年には国内外の受験者数の合計が約117万人にも登りました。
JLPTはN5レベル~N1レベルに分けられており、どの級からでも受験できます。N5レベルが最も易しい級で、N1レベルが最も難しい級です。日本での就学や就職、国家資格の取得に向けて日本語能力を証明したい人や実力を測りたい方は、JLPTにチャレンジしてみましょう。
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JLPTのN3レベルについて
JLPTのN3レベルは、N5~N1の中間に位置していることから、日本語能力の中級試験といえます。ここでは、JLPTのN3レベルと試験科目、認定基準などを解説します。
JLPTのN3レベルの試験科目と合格点
JLPTのN3レベルの試験科目は、「言語知識(文字・語彙)」「言語知識(文法)・読解」「聴解」の3科目です。言語知識(文字・語彙・文法)に30分、読解に70分、聴解に40分の試験時間が設けられています。N3レベルでは、各科目の合格点を満たしたうえで総合得点95点以上の人が合格です。
なお、試験結果を受け取るときの得点区分は「言語知識(文字・語彙・文法)」「読解」「聴解」となり、試験科目の区分とは一部異なります。詳しくは、日本語能力試験公式Webサイトの「試験科目と得点区分の対応」を確認しましょう。
科目 |
試験時間 |
合格点 |
言語知識(文字) |
30分 |
19点(60点満点) |
読解 |
70分 |
19点(60点満点) |
聴解 |
40分 |
19点(60点満点) |
N3レベルから内容理解の長文問題が出題されます。過去問や例題によく出題されているN3レベルの単語や文法をしっかり押さえていくことが読解問題を攻略するコツです。N4レベルに比べるとN3レベルは試験時間も長くなり、問題数も増えています。2022年第一回の試験のN3レベルの認定率は、国内外合計で47.0%でした。合格に向けて計画的に勉強を進めていきましょう。
N4レベルの合格点や認定基準について知りたい方は「【JLPT N4】日本語能力試験N4レベルの認定基準や問題例を紹介!」のコラムを参考にしてください。
JLPTのN3レベルの認定基準
N3レベルの認定基準は、以下の通りです。N3レベルでは、漢字の読み方や長文の読解、リスニングにおける理解力などがチェックされるので、試験内容をしっかり学習しておきましょう。
日常的な話題について書かれた具体的な内容の文章を読んで理解できる。 |
日常的な場面で自然に近いスピードの会話を聞いて、話の具体的な内容をほぼ理解できる。 |
JLPTのN3レベルは、「日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できる」レベルです。N3レベルに合格できれば、日常的な場面でスムーズにコミュニケーションできることの証明になります。
参照元 日本語能力試験公式Webサイト「得点区分・合否判定・結果通知」 日本語能力試験公式Webサイト「N1~N5:認定の目安」
JLPTのN3レベルの受験手続き
JLPTは日本だけでなく世界各国で受験可能です。基本的には年2回実施され、会場や日程は都市や機関によって異なります。受験を希望する人は、申し込みの流れを確認し受付期間内に受験手続きを行いましょう。ここでは、JLPTの受験手続きの流れを日本と海外に分けて紹介します。JLPTを申し込む際の参考にしてください。
日本でJLPTを受験する場合
日本では、7月と12月にJLPTが実施されます。詳細な日程は、日本教育支援協会公式Webサイト「試験実施案内」で確認しましょう。受験を希望する人は事前に「MyJLPT」の登録を行ってください。2020年以降、郵送申し込みは廃止されました。日本で受験する人は、インターネットで申し込みを行いましょう。
7月の試験の申し込みは3月中旬から4月中旬にかけて行えます。日本国際教育支援協会公式Webサイトから申し込み、受験料7,500円(消費税込み)を支払いましょう。受験票が届くのは、6月中旬です。試験日まで大切に保管しましょう。受験後、9月上旬に試験結果が郵送されます。また、MyJLPTでも合否の確認が可能です。
12月に試験を受ける場合は、8月下旬から9月中旬の間に申し込みを行います。受験票は11月中旬ごろに届くので保管しておきましょう。試験の結果は2月上旬に確認できます。
JLPTの成績証明について詳しく知りたい方は「JLPTの成績証明書とは?申し込み方法や注意点を解説!」のコラムを参考にしてください。
海外でJLPTを受験する場合
JLPTは海外でも基本的に7月と12月に実施されます。一部の実施機関や地域によっては年に1回のみ試験が行われる都市もあるため注意しましょう。海外で受験する場合は、日本語能力試験公式Webサイト「海外の実施都市・実施機関一覧」で試験が受けられる都市と実施機関を確認しておきましょう。受験案内(願書)は実施機関に問い合わせて、早めに入手するのがおすすめです。
7月に試験を受ける場合は、3月から4月の間に受験案内をよく読んで、実施機関の指示に従って申込みと受験料の支払いを済ませます。申し込み受付期間は受験地によって異なるので、必ず実施機関に確認しましょう。実施機関から受験票が届いたら、試験日まで保管します。9月ごろに試験結果が送られてくるので、届くまで待ちましょう。
12月に試験を受ける場合は、8月から9月ごろに申し込みと受験料の支払いを行います。試験の結果が郵送されるのは3月ごろです。
受験手続の流れについては「【JLPT N5】日本語能力試験N5の受験方法や問題について解説!」のコラムでも詳しく解説しているので、参考にしてください。
参照元 日本語能力試験公式Webサイト「受験手続の流れ」 日本教育支援協会公式Webサイト「MyJLPTについて」
JLPTのN3レベル合格のメリット
JLPTには以下4つの特徴があり、さまざまな観点から日本語能力を測定できます。
- 課題遂行に必要な言語コミュニケーション能力の測定
- 日本語能力を測るための5段階のレベル分け
- 尺度得点による正確な日本語能力の測定
- 合格レベルに応じたCan-doリストの提供
N3レベルに合格した場合、日本語能力が中級レベル以上であることが証明されます。「日本語がある程度わかる」「日常会話ができる」といった自己判断による曖昧な評価では、実際の日本語能力は分かりません。JLPTで日本語能力を証明することは、日本語の正確なレベル評価と自己PRに繋がるため、アルバイトの面接や就職活動にも役立つでしょう。
また、JLPTのN4レベル以上の取得は「特定技能1号」の在留資格の取得条件に含まれており、取得後は宿泊施設や介護の現場などで働くことが可能です。
さらに、JLPTの結果は「日本語能力試験 合格者と専門家の評価によるレベル別Can-doリスト」と照らし合わせることにより、日本語能力をさらに細かく分析できます。Can-doリストにより、自分の日本語能力を活かしてできることが明確になるでしょう。「自分の日本語能力を正確に確かめたい」「合格後どのように日本語を活かせるのか知りたい」という方は、JLPTの受験がおすすめです。
参照元 日本語能力試験「4つの特徴」 日本語能力試験公式Webサイト「日本語能力試験Can-do 自己評価リスト(JLPT Can-do)」
JLPTのN3レベルの問題例
日本語能力試験(JLPT)の解答にはマークシート方式が採用されており、3つもしくは4つの選択肢から正しいと思う答えを選びます。漢字によっては振り仮名があることが、N3試験の問題文の特徴です。「日本語能力試験公式Webサイト」に掲載されているN3の問題例を以下にまとめました。
言語知識【文字・語彙】
言語知識の文字・語彙では、漢字の読み方や正しい表記を答える問題や適切な言葉を選択する問題が出題されます。漢字は読みだけでなく送り仮名にも注意して覚えましょう。
【問題】「 」のことばの読み方として最もよいものを、1・2・3・4から一つえらびなさい。
- 問1 山本さんはクラスの「代表」にえらばれた。
- たいひょう
- だいひょ
- だいひょう
- たいひょ
- 問2 3日前から雨が「続いて」いる。
- ういて
- うごいて
- ついて
- つづいて
【問題】「 」に入れるのに最もよいものを、1・2・3・4から一つえらびなさい。
- 問3「 」寝(ね)たので、気持ちがいい。
- すっかり
- ぐっすり
- はっきり
- ぴったり
- 問4 ここのパソコンは誰(だれ)でも使えますが、コピーは「 」です。
- 会費
- 費用
- 有料
- 料金
【問題】つぎのことばの使い方として最もよいものを、一つえらびなさい。
- 問5 今ごろ
- それでは、今ごろテストを始めます。
- 今ごろ東京では桜(さくら)が咲(さ)いているでしょう。
- 今ごろ現金(げんきん)で支払(しはら)うことが少なくなった。
- 今ごろ雨が降(ふ)りそうな天気だ。
- 問6 かわいがる
- 山田さんは子どもをとてもかわいがっています。
- あの人は親をとてもかわいがっています。
- 田中さんは、いただいた時計をとてもかわいがっています。
- あの人は自分の家をとてもかわいがっています。
各問題の解答は以下の通りです。何問正解できたか確認してみましょう。
・問1(3)・問2(4)・問3(2)・問4(3)・問5(2)・問6(1)
言語知識【文法】
JLPTのN3試験に出題される文法の問題では、単語の意味や用法だけではなく、一文を正しく作成できるかも問われます。
【問題】「 」に入れるのに最もよいものを、1・2・3・4から一つえらびなさい。
- 問1 父が短気(たんき)なの「 」、母の方は気が長(なが)い。
- において
- に対して
- について
- によって
【問題】つぎの文の(★)に入る最もよいものを。1・2・3・4から一つえらびなさい。
- 問2 先週( )( )(★)( )から、行ってみませんか。
- ばかりの
- レストランが
- オープンした
- ある
各問題の解答は以下の通りです。何問正解できたか確認してみましょう。
・問1(2)・問2(2)先週オープンしたばかりのレストランがあるから行ってみませんか。
読解
N3レベルの読解問題は、長文が出題されます。文章全体の内容を理解したうえで、質問に正しく答えられるかが問われます。読解の問題例に挑戦してどのくらい理解できるか確認してみましょう。
【問題】つぎの文章を読んで、質問に答えなさい。答えは、1・2・3・4から最もよいものを一つえらびなさい。
海外旅行をするときの一般的な方法には、ガイドと一緒の「パック旅行」があるが、フリーツアーというものもある。 (ツアー:旅行のこと) |
【質問】ガイドと一緒の「パック旅行」のいい点はどんなところだと言っているか。
- 交通手段、宿泊先、予定などを自分で決めなくてもいいこと
- 他の旅行客と一緒に見て回れるので、友人が作れること
- ガイドが一緒に行ってくれるので、くわしい説明が聞けること
- ゆっくり見たいときには時間をのばしてゆっくり見られること
読解問題の解答は、1です。文章中の「パック旅行は、目的地までの往復の交通や宿泊、観光などがパッケージになっているので、その名がある。」の内容から質問に対する正しい答えが判断できます。
聴解
N3レベルの聴解には、N4とN5レベルになかった「概要理解」が追加されます。会話や説明から流れや全体の内容を理解し、質問に答えられるかが問われます。日本語能力試験公式Webサイト「問題例に挑戦しよう」や『日本語能力試験公式問題集』の聴解の過去問や練習問題を解いて試験対策を行いましょう。
聴解問題を解く流れは以下の通りです。
- 説明と質問を聞く
- 話を聞く
- もう一度質問を聞く
- 答えを選ぶ
N3レベルの聴解の質問は、2回聞くことができるので焦らずにしっかり聞いて解答しましょう。
以下の問題は聴解の練習問題です。試験の際は、以下の内容を全て聞き取って解答します。
【問題】ホテルで会社員の男の人と女の人が話しています。女の人は、明日何時までにホテルをでますか?
男:では明日は9時半に事務所にいらしてください。
女:えっと、このホテルから事務所までタクシーでどのくらいかかりますか?
男:そうですね、30分もあれば着きますね。
女:じゃあ9時に出ればいいですね。
男:朝は道が混むかもしれません。15分くらい早めに出た方がいいですね。
女:そうですか、じゃあそうします。
【質問】女の人は明日何時までにホテルを出ますか?
- 8時45分
- 9時
- 9時15分
- 9時30分
聴解問題の解答は、1(8時45分)です。女性は9時に出るつもりでしたが、男性のアドバイスを受けて15分早く出ることにしました。
参照元 日本語能力試験公式Webサイト「問題例に挑戦しよう」 日本語能力試験公式Webサイト『日本語能力試験公式問題集』
まとめ
日本語能力試験(JLPT)は、日本での就職や進学、資格取得などの目的のために受験する人が多い、世界最大規模の日本語の試験です。JLPTのN3レベルは、日常会話ができる程度の日本語能力が求められます。認定されるには、各試験範囲の基準点を越えたうえで、95点以上の総合得点が必要です。まんべんなく点数を取れるように、問題集を使って勉強しましょう。
受験手続きの流れは日本と海外で異なります。スムーズに手続きできるように、自分が受験する都市の申し込み方法を事前に確認しておくとよいでしょう。