ことわざは会話のなかで使われることも多く、「日本ではいつから使われているのか」「どのような意味の言葉があるのか」と気になる方も多いでしょう。日本のことわざは日本ならではの義理人情や、庶民の暮らしから得た教訓などが根源となっています。中国から伝わった古典により生まれたことわざもあり、海外からの言葉も日本語に交えて活かされているのです。このコラムでは、有名な日本のことわざや歴史などを解説しています。
目次
ことわざとは?
ことわざとは、古くから庶民の暮らしの中で得た知識や教訓などを含んだ、簡潔な言葉を指します。鋭い視点で言葉を繋ぎ、簡潔にまとめたものが「ことわざ」です。ことわざは世界中にあり、国によって異なりますが、日本語と英語で同じ意味をもつことわざもあります。日本のことわざは中国で誕生した言葉から作られたといわれており、古い歴史があるのです。現代も学校の授業で扱われたり、辞典が発売されたりと、世代を超えて語り継がれています。
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日本のことわざの歴史
ここでは、日本のことわざの歴史を解説します。日本のことわざは平安時代から始まったといわれており、中国の古典からの影響も受けているようです。
平安時代から始まったといわれている
日本のことわざは平安時代に誕生したといわれています。平安時代初期に、世俗諺文(せぞくげんもん)という日本初のことわざ辞典が出版されました。庶民の生活の中で生み出された教訓がことわざとなり、現代でも知られていることわざが世俗諺文には数多く記載されています。
江戸時代中期には中国の古典から伝わった
江戸時代中期になると、中国の古典や言葉がに日本に伝わりました。中国の言葉を参考に日本語を交え、日本のことわざが江戸時代に多く誕生したのです。当時の日本には現代の作家やコピーライターのような職業である狂歌師(きょうかし)が存在しました。狂歌師によって狂歌(きょうか)と呼ばれる大衆文芸が誕生し、現代の「流行語」のようなものになったといわれています。
戦国時代に作られた武士のことわざもある
日本では戦国時代、武士にまつわることわざが多く出回りました。ことわざの中には武士の感情が込められており、日本らしさも読み取れます。
武士は食わねど高楊枝
「武士が貧しい状況で、たとえお腹が空いていても楊枝(ようじ)を高々と咥えてみせなければいけない」という、武士のやせ我慢を意味した有名なことわざです。やせ我慢とは、「本音はつらい、しんどいと思っていても、建前ではつらさを見せずに平静を装っている」ことを指します。武士は人に弱音を吐いたり、つらさを見せたりするのを嫌うプライドがありました。その姿がことわざにも表現されているのです。
武士に二言はない
「武士は、一度言った言葉を覆してはいけない、約束は必ず守る」という意味があります。嘘をつくのがご法度とされていた武士には、一度言った内容を変えることは許されませんでした。プライドを保つことが武士としてのあるべき姿であり、武士の尊厳とされていたのです。
一合取っても武士は武士
「たとえ給与が安くても武士は武士であり、農家や商人の上に立つ身分として、誇りや気位の高さは同じである」という意味です。戦国時代が過ぎ、江戸時代の武士は将軍から給与を貰って生計を立てていました。戦国時代のように戦で手柄を立てることが少なくなったため、裕福な武士は少なくなり、貧しい武士ばかりだったのです。しかし、「どんなに貧困でも武士であることに変わりはない」と多くの武士が誇りをもっていたといわれています。「一合取っても武士は武士」ということわざは武士の心意気を表したことわざといえるでしょう。
日本の有名なことわざ8選
日本の有名なことわざを紹介します。意味や使い方を知ることで、日本人の特性や思考をより深く理解できるようになるでしょう。
石橋を叩いて渡る
「決して壊れることはない石橋でも、念のため叩いて確認をしてから渡ることで、用心深く進む」という意味があります。慎重になっているときに使うことわざであり、念には念を押す、ということを示しているのです。
犬も歩けば棒に当たる
以前は、「犬がふらふら歩くと棒で殴られてしまうように、出しゃばらないほうが良い」という戒めのことわざでした。しかし、現代では「行動を起こすことにより、良いことも悪いことも経験できる」という意味で使われることが多くなっています。
火に油を注ぐ
「勢い良く燃えているところに、油を注ぐと更に火が燃え盛ってしまうこと」です。具体的な例として、怒っている人に、さらに怒りが増すような発言をしたり態度をとったりしてしまうことを指します。騒ぎが大きくなってしまうことを表したことわざです。
継続は力なり
「何事も、コツコツと長く続けていれば力になる」という意味があります。結果がどうあれ、継続して続けた経験は自分の糧になって必ず何かに活かされる、ということわざです。勉学やスポーツ、仕事など何に対しても当てはまるため、このことわざを教訓にする日本人は多くいます。
後悔先に立たず
「済んでしまったことを後から悔やんでも、どうしようもない」という意味があります。「後悔は目先に表れず、事が済んだ後に表れるもの」という忠告ともいえることわざです。
備えあれば憂いなし
「前もって準備しておけば、いざとなったときに慌てずに済む」ということわざです。具体的には、地震や台風などの災害前の対策や訓練が挙げられます。「今すぐに必要ではなくても、事前に備えておけば安心できる」という昔の人々の教訓が現代にも伝わっているのです。
好きこそものの上手なれ
「人は好きなことには熱心になれるので、上達が早い」という意味です。人は好きなことには自然に没頭し、追求します。反対に、興味関心のないことにはあまり手が進まないものです。好きなことには誰しも夢中になり、モチベーションが高まるということを意味しています。
「ことわざと慣用句の違いは?特徴を覚えて日本語の勉強に役立てよう」では、ことわざと慣用句の違いを紹介しています。日本語を勉強する方向けに、おすすめの勉強方法や有名なことわざ・慣用句もまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。
日本語と英語で同じ意味をもつことわざ5選
日本語と英語で同じ意味をもつことわざもあります。その多くは英語圏で生まれ、あとから日本語に訳されたことわざです。この項目では特に有名な5つを紹介します。
時は金成り
英語では、「Time is money」と訳されます。世界中で有名なことわざの一つであり、「時間はお金と同じくらい大切である」という意味です。「1分1秒でも過ぎた時間は戻ることはなく、時間を有効に使わなければあっという間に時が経ってしまう」という忠告といえます。
隣の芝生は青く見える
英語では、「The grass is always greener on the other side of the fence」と訳されます。「他人のものは、なんでも良く見えてしまう」という意味です。「自分と他人を比べると、結果的にすべて羨ましくなり、ないものねだりになる」という、日本人だけでなく、世界中の人間が抱くであろう感情をことわざにしています。
鉄は熱いうちに打て
英語版は、「Make hay while the sun shines」と訳されます。「鉄は熱いうちに打てば柔らかく形が変化しやすいように、人間も若く柔軟性のあるうちから心身を鍛える必要がある」という意味です。
人は年を追うごとに自分の考えが凝り固まり、頑固になりやすいものでしょう。「若いうちであれば苦難や失敗を経験し、柔軟に変化しながら成長していける」という、前向きなエールとも捉えられることわざです。
百聞は一見に如かず
英語版は、「Seeing is believing」と訳されます。直訳すると、「見ることは信じること」となります。日本語で解釈すると、「人から100回聞いた話よりも、一度自分の目で事実を確かめたほうが信憑性がある」という意味です。
このように、日本には古くから庶民の暮らしの中で育まれてきたことわざが数多く存在しています。ことわざについては「日本の有名なことわざと意味を紹介!よく使うことわざ 一覧から英語のことわざまで」のコラムでもご紹介。また、ビジネスでも使えることわざは、こちらの「日本語のことわざはビジネスや日常生活に役立つ?外国人が学ぶメリットとは」のコラムで取り上げているので、ぜひ、ご一読ください。
まとめ
日本のことわざは、昔の人々の暮らしの中で生まれた経験や教訓が起源となっています。現代でも子どもから大人まで幅広い世代に伝わっており、ことわざを教訓にして生活している人は多いでしょう。実際に起こった出来事や実体験をもとにした日本のことわざは、現世への忠告として語り継がれているものもあります。さまざまなことわざから見える日本の歴史や文化を理解し、知識を深めていきましょう。