ことわざと慣用句の違いは?特徴を覚えて日本語の勉強に役立てよう

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2023/02/14

複数の語が合わさって一つの意味を持つ言葉を、日本では「ことわざ」「慣用句」といいます。どちらも日本語の会話でよく使われる表現なので、聞いたことがある方もいるでしょう。ことわざや慣用句を覚えると、日本語の文章や会話での表現の幅が広がります。
このコラムでは、ことわざと慣用句の違いを紹介。日本語を勉強する方向けに、おすすめの勉強方法や有名なことわざ・慣用句もまとめています。

目次

  1. ことわざと慣用句の違い
  2. 故事成語は中国のことわざ・慣用句
  3. 日本の有名なことわざ
  4. 日本の有名な慣用句
  5. 日本ではことわざや慣用句が会話で多用される
  6. まとめ

ことわざと慣用句の違い

ことわざと慣用句の違いの画像

風刺や教訓、知識などを含んだ言葉はことわざ、長期にわたって世間で使われてきた言い回しは慣用句というように、大まかな違いがあります。しかし、日本語の中にはことわざと慣用句の両方の性質を持つ言葉もあるため、一概には区別できません。ことわざと慣用句にはそれぞれ異なる特徴があるものの、どちらにも属する言葉があることを覚えておきましょう。

慣用句の特徴

慣用句は2つ以上の語を組み合わせたときに、特別な意味を持つ言葉です。慣用とは、世間で習慣的に長く使われることを意味します。つまり、慣用句は多くの人々が使い慣れた言い回し・表現を表すのです。たとえば、偉そうな態度で人に命令をすることを「あごで使う」、気持ちが通じ合っている状態を「息が合う」といいます。説明したい内容を別のものに例える比喩表現が多いのが、慣用句の特徴です。

ことわざの特徴

簡単な言葉に複雑な意味が込められているのがことわざの特徴です。十分な力を持つ人がさらなる力を得ることを「鬼に金棒」、物事を極めた人でも失敗することを「猿も木から落ちる」など、教訓が分かりやすい言葉でまとめられています。ことわざは、「頭隠して尻隠さず」のように対になる言葉を並べる対句形式や「二度あることは三度ある」という列挙形式が多いのが特徴です。また、音の反復、語呂の良さなどもことわざの特徴といえます。ことわざならではの特徴はほかにもあるので、気になる方はぜひ調べてみましょう。

ことわざや慣用句は、あらゆるシーンで使える日本語の表現です。「日本語のことわざはビジネスや日常生活に役立つ?外国人が学ぶメリットとは」では、外国人が日本語のことわざや慣用句を勉強するメリットをまとめています。日本語能力を高めたい方は、参考にご覧ください。

故事成語は中国のことわざ・慣用句

故事成語は中国のことわざ・慣用句の画像

中国で生まれ、日本に伝わったことわざ・慣用句は故事成語といいます。「臥薪嘗胆」「覆水盆に返らず」「漁夫の利」などは、特に有名な故事成語です。日本語のことわざや慣用句と同じくらい日常会話で使われる表現なので、余裕があったら勉強してみましょう。故事成語を勉強する際は、言葉の成り立ちから学ぶのがおすすめです。

日本の有名なことわざ

日本の有名なことわざの画像

ここでは、日常会話でも使える有名なことわざを紹介します。使い方の例文もあわせて記載しているので、勉強の参考にしてください。

案ずるより産むが易し

物事を始める前はあれこれ考えたり心配したりするが、実際にやってみると思いのほかうまくいくという意味のことわざが、「案ずるより産むが易し」です。易しには簡単という意味が込められています。妊婦が子どもを産む際にいろいろ心配してしまうものの、実際産んでみるとうまくいくという状況が語源です。

「発表がうまくいくか不安だったが、実際にやってみたら案ずるより産むが易しだった」
(はっぴょうがうまくいくかふあんだったが。じっさいにやってみたらあんずるよりうむがやすしだった)

「うだうだ悩んでも仕方がない。案ずるより産むが易しだ」
(うだうだなやんでもしかたがない。あんずるよりうむがやすしだ)

物事を始める際によく考えるのは大切です。しかし、考えすぎると必要以上に心配や不安が生まれてしまいます。考えすぎず、とにかくチャレンジしてみるのが大事という教訓が込められているので、日常会話にも取り入れてみましょう。

犬も歩けば棒に当たる

「犬も歩けば棒に当たる」は、余計なことをすると災難に遭う、もしくは行動を起こした結果思いがけない幸運に恵まれるという意味です。正反対の意味を持つことわざなので、前後の文脈にも注意して正しい意図が伝わるように配慮しましょう。

「犬も歩けば棒に当たると言うが、まさか宝くじが当たるとは思わなかった」
(いぬもあるけばぼうにあたるというが、まさかたからくじがあたるとはおもわなかった)

「新しい仕事に挑戦したら、残業続きで大変だ。犬も歩けば棒に当たるとはまさにこのことだ」
(あたらしいしごとにちょうせんしたら、ざんぎょうつづきでたいへんだ。いぬもあるけばぼうにあたるとはまさにこのことだ)

新しく物事を始めたときに災難に遭うこともあれば、良いことが起きるときもあります。「犬も歩けば棒に当たる」はどちらの状況でも使えることわざなので、覚えておくとメールや日常会話で役立つでしょう。

千里の道も一歩から

「千里の道も一歩から」ということわざには、大きなことを成し遂げるには小さなことを積み重ねる必要があるという教訓が込められています。日常会話でも使われる言葉なので、意味を覚えておくとコミュニケーションがスムーズです。

「千里の道も一歩からとは言うが、コツコツ努力するのは難しい」
(せんりのみちもいっぽからとはいうが、こつこつどりょくするのはむずかしい)

「平社員から成りあがった社長は、千里の道も一歩からを体現している人だ」
(ひらしゃいんからなりあがったしゃちょうは、せんりのみちもいっぽからをたいげんしているひとだ)

仕事や勉強で成果を出すには日々の努力が欠かせません。自分自身のやる気をあげたいときや頑張る人を励ましたいときにも使えることわざなので、ぜひ覚えておきましょう。なお、「ローマは一日にして成らず」「塵も積もれば山となる」などは、「千里の道も一歩から」と同じ意味で使えることわざです。

情けは人の為ならず

人にした親切な行動はいつか自分に返ってくるという意味を表すことわざは、「情けは人の為ならず」です。人に親切にするのは他人のためではなく、自分のためという謙虚な考え方が垣間見えます。情けをかけるのはその人のためにならないという意味でこのことわざを使う人もいますが、間違った意味なので注意しましょう。

「情けは人の為ならずを信条に、困っている人がいたら助けるようにしている」
(なさけはひとのためならずをしんじょうに、こまっているひとがいたらたすけるようにしている)

「情けは人の為ならずというし、積極的にボランティアや募金活動をしてみよう」
(なさけはひとのためならずというし、せっきょくてきにぼらんてぃあやぼきんかつどうをしてみよう)

日本には「恩送り」という言葉があり、助けてくれた相手に恩返しするのではなく、また別の誰かに親切にするバトンリレーのような行為です。英語では「Pay it Forward」といいます。「情けは人の為ならず」も、助けた相手ではなく別の誰かに巡り巡って親切にしてもらえるということわざなので、正しく覚えておきましょう。

仏の顔も三度

「仏の顔も三度」は、どれだけ優しい人でも何度もひどい仕打ちを受けたり失礼なことをされたりすると、怒るということわざです。慈悲深い仏であっても3回顔を撫でられると腹を立てるという意味の、「仏の顔も三度撫ずれば腹を立つ」が語源とされています。

「仏の顔も三度というように、何度も約束を破られると腹が立ってくる」
(ほとけのかおもさんどというように、なんどもやくそくをやぶられるとはらがたってくる)

「普段は優しい友だちが珍しく怒っていて、仏の顔も三度までだと感じた」
(ふだんはやさしいともだちがめずらしくおこっていて、ほとけのかおもさんどまでだとかんじた)

「仏の顔も三度」は、日常会話やビジネスシーンでよく使われることわざです。意味や使い方を覚えておくと、コミュニケーションがスムーズになるでしょう。なお、「堪忍袋の緒が切れる」「我慢の限界」なども同じ意味で使われる言葉です。

ほかにも覚えておくと役立つことわざを「日本のことわざについて知りたい!外国人に向けて歴史や使い方を解説」で紹介しています。ことわざを勉強したい方は、あわせてチェックしてみましょう。

日本の有名な慣用句

日本の有名な慣用句の画像

慣用句はことわざよりも日常的に使われる言葉です。比喩表現が多いので覚えるまでに時間が掛かるかもしれませんが、便利な言葉が多いので勉強してみましょう。ここでは、普段の会話で使える慣用句を中心に紹介します。

穴があったら入りたい

思わず隠れたくなるほど恥ずかしいときに使える慣用句が、「穴があったら入りたい」です。自分のミスや勘違いが原因で、恥ずかしい・いたたまれないというときにいいます。

「友だちとの集合場所を勘違いして待ち合わせに遅れてしまった。穴があったら入りたい」
(ともだちとのしゅうごうばしょをかんちがいしてまちあわせにおくれてしまった。あながあったらはいりたい)

「穴があったら入りたいと思うほどのミスはしたことがない」
(あながあったらはいりたいとおもうほどのみすはしたことがない)

「穴があったら入りたい」は、根拠なく恥をかかされたときや照れ隠しの時には使わない慣用句です。「決まりが悪い」「身の置き所がない」「合わせる顔がない」なども同じ意味で使えるので、あわせて覚えておくと会話のバリエーションが広がります。

すずめの涙

物事の量を表す際に、全くないわけではないものの、ほんの少ししかない状態のことを「すずめの涙」といいます。体の小さいすずめが流す涙に例えて、量の少なさを表す慣用句です。自分自身を卑下したり謙遜したりするときにも使えます。

「今年は会社の経営状況が悪かったので、すずめの涙程度のボーナスしかない」
(ことしはかいしゃのけいえいじょうきょうがわるかったので、すずめのなみだていどのぼーなすしかない)

「すずめの涙ほどの幸せでも、あるだけ十分だ」
(すずめのなみだほどのしあわせでも、あるだけじゅうぶんだ)

小さい・少ないと表現したいときに、「すずめの涙」と言うと相手に具体的な量が伝わります。強調表現にも使える慣用句なので、ぜひ覚えておきましょう。

手を抜く

本来の手順や工程を省いて、適当に作業をこなすことを「手を抜く」といいます。ネガティブな表現として使われることが多いですが、すべてを完璧にこなす必要はないというニュアンスでも使用できる慣用句です。

「適当に仕事をしたら、上司から手を抜くなと怒られた」
(てきとうにしごとをしたら、じょうしからてをぬくなとおこられた)

「仕事も私生活も忙しくて大変なら、ちゃんと休むために手を抜けるところは抜くべきだろう」
(しごともしせいかつもいそがしくてたいへんなら、ちゃんとやすむためにもてをぬけるところはぬくべきだろう)

「手を抜く」は、日常生活でもビジネスシーンでも使われる言葉です。慣用句には手や足などの体の部位を使った比喩表現が多いので、ほかの言葉の意味と混同しないように注意してください。

水に流す

「水に流す」は、過去に起きたトラブルをなかったことにするという意味の慣用句です。日本では汚れや災いを水で清めたり水流に任せて流したりする風習があります。そのため、良くない出来事を忘れることを「水に流す」と表現するのです。

「兄弟と喧嘩したが、お互いの行いを水に流して仲直りした」
(きょうだいとけんかしたが、おたがいのおこないをみずにながしてなかなおりした)

「良い人間関係を築くには、相手の失礼な態度を水に流す寛容さが欠かせない」
(いいにんげんかんけいをきずくには、あいてのしつれいなたいどをみずにながすかんようさがかかせない)

「目をつむる」「帳消しにする」などは、「水に流す」と同じ意味を持つ言葉です。なお、どうしても相手を許せない場合は「根に持つ」という慣用句が使えるので、あわせて覚えておきましょう。

路頭に迷う

家や仕事を失い、生活できなくなることを「路頭に迷う」といいます。路頭とは、道端を意味する言葉です。行くあてもなく、ふらふらさまようしかない状況を表す慣用句で、就職先が見つからなかったりリストラされそうになったりしたときに使えます。

「会社が業績不振でリストラを始めたので、もしかしたら路頭に迷うかもしれない」
(かいしゃがぎょうせいきふしんでりすとらをはじめたので、もしかしたらろとうにまようかもしれない)

「世界恐慌が起きたときは、多くの人々が職を失い路頭に迷った」
(せかいきょうこうがおきたときは、おおくのひとびとがしょくをうしないろとうにまよった)

「お先真っ暗」「生活が立ち行かない」などの言葉は、「路頭に迷う」と同じ意味で使われます。頻繁に使われる慣用句ではありませんが、聞いたときにスムーズに意味を理解できるよう、勉強しておきましょう。

有名な慣用句やことわざとの違いは、「日本語を学ぶ外国人へ向けて慣用句を一覧で紹介!ことわざとの違いも解説」で解説しています。英語のイディオムとの類似点・相違点もまとめているので、勉強の参考にしてください。

日本ではことわざや慣用句が会話で多用される

日本ではことわざや慣用句が会話で多用されるの画像

日本語の日常会話では、やり取りをスムーズにするためにことわざや慣用句が多用される傾向にあります。ことわざや慣用句は文字通りの意味ではない言葉が多いので、日本語学習者には習得が難しい内容といえるでしょう。
日本語の中でも難易度が高いことわざや慣用句を習得するには、成り立ちから勉強する方法がおすすめです。ことわざや慣用句の成り立ちを学ぶと、誤った意味を覚える可能性が低くなります。小中学生向けのことわざ辞典や慣用句をまとめた漫画を使えば、内容が分かりやすく楽しく勉強できるでしょう。また、効率的に勉強したい方には、クイズ形式でことわざや慣用句の使い方を学べるアプリもおすすめです。

まとめ

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教訓や風刺が込められたことわざと2つ以上の言葉が組み合わさって特別な意味を持つ慣用句は、日本語の会話や文章でよく使われる表現です。文字通りの意味を持たない言葉が多いので習得するのは大変ですが、使いこなせるようになればコミュニケーションがスムーズになります。自分に適した勉強方法を探して、ことわざや慣用句の使い方を身につけましょう。

ライター

WeXpats
生活・仕事・留学に関するお役立ち情報から、日本のディープな魅力を紹介するコラムまで、バラエティ豊かな記事をお届けします。

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