日本語能力試験(JLPT)を受ける方のなかには「合格点はどれくらい?」「難易度が高そう…」と不安に感じている方もいるでしょう。JLPTの合否は総得点だけでなく、得点区分の基準点も含めて決まります。難易度別にN1~N5の区分が設けられているため、受験するレベルの合格点・合格率を把握しましょう。このコラムでは、JLPTの合格に必要な日本語能力をレベル別に解説。それぞれの合格点・合格率もまとめています。
目次
JLPTの合格点・合格率
日本語能力試験(JLPT)の目的は、日本語を母語としない人の日本語能力を測定することです。JLPTの満点は180点ですが、レベルによって合格点は異なります。合格点はそれぞれ以下のとおりです。
・N1…100点
・N2…90点
・N3…95点
・N4…90点
・N5…80点
JLPTはN1が最も難しく、N5が最も易しいレベルです。「日本語能力試験公式ウェブサイト」によると、2020年12月の試験全体の合格率は51.4%です。最も合格率が低かったのがN4で43.6%で、次いでN1が45.2%となっています。そのほかの合格率は50%を超えており、高い順にN5が56.0%でN2が55.9%、N3が54.1%です。
JLPTは試験の難易度が高いからといって合格率が低いわけではありません。その理由として、受験者の幅広い年齢層と受験目的の多様性が挙げられます。JLPTは小学生から社会人まで年齢に関係なく受験できるのが特徴です。受験理由もさまざまで、進学や就職、実力の把握など人によって異なります。年齢や目的が違えば日本語能力の高さや勉強量も異なるでしょう。そのため、実施年度や回によって合格率にブレが発生します。
合否の判定方法
JLPTの合否は、総合得点と得点区分に設けられている基準点から判定します。総合得点が合格点を超えていても、一つでも基準点を満たしていなければ合格にはなりません。なお、N1~N3とN4・N5では得点区分が異なるため基準点の点数も変動します。「言語知識(文字・語彙・文法)」「読解」「聴解」からなるN1~N3の基準点は以下のとおりです。
・言語知識(文字・語彙・文法)…60点中19点以上
・読解…60点中19点以上
・聴解…60点中19点以上
それぞれの基準点を満たしたうえで、レベルごとに異なる合格点を超えれば合格になります。個々の基準点は高くないので確実に点を取れるように勉強しましょう。
N4・N5は、「言語知識(文字・語彙・文法)・読解」と「聴解」の2つの得点区分で構成されているため、基準点は以下のようになります。
・言語知識(文字・語彙・文法)、読解…120点中38点以上
・聴解…60点中19点以上
N4・N5では言語知識(文字・語彙・文法)と読解がひとまとめにされており、基準点が高めに設定されています。基準点と合格点を両方満たせるように、まんべんなく勉強を行いましょう。
JLPTは全体的に難易度が高い
JLPTは普段日本語を使わない人にとって難易度が高い試験といえます。特にN1レベルは、微妙なニュアンスを汲み取らなければならないため、日本人でも満点を取れないといわれる難易度です。JLPTを受験する際は、どれくらいの日本語能力が必要か確認しておくと安心です。
参照元 日本語能力試験JLPT公式ウェブサイト「過去の試験データ」 日本語能力試験JLPT公式ウェブサイト「得点区分・合否判定・結果通知」
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N1・N2に合格するには高度な日本語能力が必要
ネイティブ並みの日本語能力があれば、N1・N2に合格できる可能性が高いです。N2では日常的な場面だけでなく、ビジネスや冠婚葬祭といった幅広い場面でも使われる日本語を、ある程度理解できるかが認定の目安になります。N1は日本人のように幅広い場面で使われる日本語を理解し、複雑な文章や会話でもスムーズにやり取りができるレベルです。就職や進学を目的にJLPTを受験する方は、このレベルに該当するでしょう。
N1・N2レベルに合格すると日本の国家試験の受験資格を得られたり、出入国管理上の優遇措置を受けるためのポイントが得られたりします。
N1・N2の受験者数
2020年12月のJLPTにおけるN1の受験者は国内外合わせて80,237人です。N2は114,076人とN1に比べてやや多い人数が受験しています。N1はビジネスの場で求められることがありますが、必ず取得しなければならないわけではありません。なかには実力を知るために受験している方もいるでしょう。一方、N2は進学や就職、昇給などの基準に用いられることも多いためか、ほかのレベルに比べて受験者が多い傾向にあるようです。
N1・N2の試験科目と得点
N1の試験科目は「言語知識(文字・語彙・文法)・読解」と「聴解」に分かれます。試験時間は言語知識(文字・語彙・文法)・読解が110分、聴解が60分です。試験科目はN2も同じものの、試験時間がやや短くなり、言語知識(文字・語彙・文法)・読解が105分、聴解が50分で構成されます。
得点区分は「言語知識(文字・語彙・文法)」「読解」「聴解」に分かれており、得点の範囲は各60点、合計180点満点です。
N1については「日本語能力試験(JLPT)N1の問題例を紹介!合格するメリットも解説」を、N2については「JLPT(日本語能力試験)N2のレベルはどのくらい?勉強法を知って合格を掴もう」を、それぞれ参考にしてみましょう。
N3は日常会話レベルの日本語能力が求められる
N3の認定の目安は、日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できることです。やや自然に近いスピードの会話を聞いて内容を理解したり、新聞の見出しから情報の概要を掴めたりする人がN3に該当します。日本で働くにはJLPTでN3以上が望ましいとされているため、就職を考えている方は覚えておきましょう。
N3の受験者数
2020年12月のN3受験者数は98,208人です。進学や就職に役立つ実用性の高さからか、N2に次いで受験者数が多くなっています。N3は「N1・N2とN4・N5の橋渡しのレベル」ともいわれており、ステップアップのために受験する人もいるようです。
N3の試験科目と得点
N3の試験科目は言語知識(文字・語彙)と言語知識(文法)・読解、聴解に分かれます。試験時間は言語知識(文字・語彙)が30分で言語知識(文法)・読解が70分、聴解が40分です。
得点区分は「言語知識(文字・語彙・文法)」「読解」「聴解」に分かれます。得点の範囲は各60点、合計180点満点です。
「日本語能力試験(JLPT)N3のレベルとは?過去問に挑戦してみよう」では、中間であるN3レベルを中心に、試験の難易度や合格率も解説しています。これからJLPTを受験する外国人はチェックしておきましょう。
N4・N5は基本的な日本語の理解力が必要
N4・N5はひらがなやカタカナ、日常生活で使う漢字など基本的な日本語を理解したり、ゆっくり話される簡単な会話で内容を把握したりできるのが認定の目安です。日本語教室に通っている外国人や簡単な日本語を読んだり聞いたりできる人であれば、合格できるレベルといえます。
N4・N5の受験者数
2020年12月にN4を受験したのは国内外合わせて52,993人です。一方で、N5の受験者数は24,514人で半分近く人数が減ります。N5の受験者数が少ない理由としては、受験するメリットの少なさが考えられるでしょう。N5は最も簡単なレベルで、日本語能力が低くても合格できる可能性があります。そのため、合格しても日本語能力の証明になるわけではなく、進学や就職で有利になることはほとんどありません。ただし、インドネシアやフィリピン出身でEPA(経済連携協定)を利用して看護師・介護福祉士を目指す方は、N5を受験するメリットがあります。EPAに基づく看護師・介護福祉士の候補者選定の条件の一つはN5以上の認定です。制度の利用を考えている方は、もっとも簡単なN5を受験してみましょう。
N4・N5の試験科目と得点
N4・N5の試験科目は「言語知識(文字・語彙)」「言語知識(文法)・読解」「聴解」です。試験時間は受験するレベルによって異なり、N4は言語知識(文字・語彙)が25分で言語知識(文法)・読解が55分、聴解が35分の構成になっています。N5では語知識(文字・語彙)が20分で言語知識(文法)・読解が40分、聴解が30分とN4に比べてやや短いです。
得点区分は180点満点中、言語知識(文字・語彙・文法)・読解が120点、聴解が60点で分けられています。
N4については「JLPT(日本語能力試験)N4の認定基準や問題例を外国人に向けて紹介」を、N5については「JLPTのN5レベルは難しい?問題例や受験の流れを外国人向けに解説」のコラムをご覧ください。試験問題の例やJLPTの受験方法も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
まとめ
日本語能力試験(JLPT)の合格点は、受験するレベルごとに異なります。合否の判定は得点区分ごとに設けられている基準点と、総合得点の合格点を超えているかで決まるので覚えておきましょう。総合得点が合格点に達していても、一つでも基準点を満たしていないと不合格になります。すべての範囲をまんべんなく勉強して合格を目指しましょう。受験勉強を行う際はこのコラムで紹介した各レベルの難易度や試験科目、得点区分を参考にしてください。
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