冠婚葬祭のマナーは、日本の生活と密接しています。それぞれの行事には守らなければならない決まり事があるため、マナーを知らないと失礼な態度を取ってしまい、相手との関係に影響する可能性も。この記事では、「冠婚葬祭」という言葉の意味と対応する行事、知っておきたいマナーを紹介しています。結婚式や葬儀の服装、お祝い金の渡し方など、気を付けるポイントを具体的にまとめているので参考にしてください。
目次
冠婚葬祭とは?それぞれどんな行事がある?
冠婚葬祭とは、日本古来から人生の節目に行われる儀式を指した4つの漢字のことです。冠婚葬祭の儀式は、結婚や出産、葬儀など人の一生に関わる事柄から、正月や節句などの季節のイベントまでさまざま。ここでは、冠・婚・葬・祭の漢字1文字ずつの意味とそれぞれに行われる行事について紹介します。
「冠」が表す意味と行われる儀式
冠婚葬祭の「冠」は、出産やひな祭り、七五三、成人式などの人生の節目のお祝い事を意味します。「冠」は、古来の元服と呼ばれる男性の成人式で儀式の際に頭に冠を載せたことが由来です。子どもの健やかな成長を祝うだけでなく、還暦や喜寿などの長寿を祝う行事や出産や栄誉ある賞を受けた時など人生のおめでたい儀式も指します。
「婚」が表す意味と行われる儀式
冠婚葬祭の「婚」は、結婚のことです。結婚式だけでなく、お見合いや婚約、結納、披露宴など婚礼にまつわる一連の儀式も含まれます。そのほかにも、結婚して25年を祝う「銀婚式」や50年を祝う「金婚式」など、結婚した2人の年数を祝う記念行事も「婚」の儀式です。「婚」は人生の中でも大きなイベントにあたるため、特にマナーが重要な儀式といえるでしょう。
「葬」が表す意味と行われる儀式
冠婚葬祭の「葬」が意味するのは、通夜や葬儀、告別式など人が亡くなった時の一連の儀式です。亡くなった方の信仰や住んでいた地域によって、さまざまな形式の葬儀が執り行われます。故人との最期のお別れとなる儀式もあるため、失礼のないマナーを心掛ける必要があるでしょう。
「祭」が表す意味と行われる儀式
冠婚葬祭の「祭」は、季節ごとの年中行事や先祖にまつる儀式を意味します。古来では豊作や繁栄、長寿、健康などを祈るための宗教儀式でした。現在では、お正月や節分、七夕、父の日、母の日などの年中行事を指します。
日本でのお祝いのマナーについては、「日本のお祝いのマナーとは?結婚や就職祝いで贈る品やご祝儀の包み方を解説」のコラムにも紹介してるので、参考にご覧ください。
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「冠」出産祝いに関するマナー
冠婚葬祭の中で、人生の節目をお祝いする「冠」。出産に関するお祝いは、産まれてきたことを祝い、健やかな成長を願うおめでたい儀式の一つです。ここでは出産祝いを送る際のマナーや、いただいた出産祝いにお返しする(内祝いといいます)際の注意点を紹介します。
出産祝いを送る際のマナー
まずは母子の体調面を気遣うことが大切なので、母子の健康を確認してから贈ります。出産祝いを贈る時期は、出産してから2~3週間頃が最適とされ、基本的には病院まで会いに行くのは控えましょう。直接お祝いを渡す場合は、退院後に相手の都合を確認してから先方に伺うのがマナーです。訪問日に自分の体調が悪い場合は、日を改めます。
出産の内祝いをする際のマナー
出産の内祝いは、出産祝いをいただいた方へのお返しです。いただいた金額の半額から3分の1程度の金額をお渡しするのが一般的です。内祝いをするのは基本的に慌ただしい時期なので、遅くとも生後2ヶ月頃までには贈るようにします。出産の内祝いを贈る際に気をつけたいのは、縁起の悪い贈り物です。縁を切ることを連想させる「刃物」、苦や死をイメージさせる「櫛」、お清めを連想させる「塩」などは、お祝いの品として不適切といえるでしょう。
日本での妊娠・出産の制度については、「日本での妊娠・出産の支援制度や子どもの教育費を紹介!」にも紹介しています。
「婚」結婚式で守るべきマナー
結婚式は、親戚をはじめ友人や会社の関係者など新郎新婦にとって大切な人が多く集まります。マナーを守らないと、自分自身が恥ずかしい思いをするだけでなく、新郎新婦にも迷惑をかける可能性もあるでしょう。
招待状の返信のマナー
招待状が届いたら、出欠の返事を早めに返すのがマナーです。招待状に記載されている期限に関係なく、手元に届いてから1週間以内には返信しましょう。早めの返信は、新郎新婦への祝福の気持ちを表します。また、早めに出欠を出すことで新郎新婦が準備をスムーズに行えるでしょう。招待状の筆記には、黒の万年筆や毛筆、ボールペンを使い以下のように書きます。
- はがきのあて名は「行」を2本線で消し、横に「様」と書く
- 通信面は出席の場合、御出席の「御」を2本線で消し、「出席」を丸で囲む
- 欠席の場合は御欠席の「御」を2本線で消し、「欠席」を丸で囲む
- 御住所と御芳名の「御」と「御芳」を2本線で消し、住所と名前を記入する
出席の場合は、新郎新婦に対するお祝いの言葉を書くと喜ばれます。欠席の場合も、欠席の理由を簡単に添えたりお詫びや祝福のメッセージを書いたりすると、好印象になるでしょう。
服装のマナー
結婚式に出席する際、特に気を付けなくてはならないマナーは服装です。ここでは、結婚式に呼ばれた際のファッションについて解説します。
親族の場合
新郎新婦の親族として参列する場合、ゲストと比べてフォーマル度の高い服装を着用します。理由は、主催者側としてゲストを迎える立場となるからです。新郎新婦の両親は「正礼装」を選びます。父親であれば、モーニングコート・黒五つ紋付羽織袴・タキシードです。母親は黒留袖・アフタヌーンドレス・イブニングドレスを着用します。
兄弟姉妹や親戚の場合、相手の親族と挨拶を交わす場面もあるので失礼のないフォーマルな服装を選びましょう。親より少し控えめな「準礼装」「略礼装」を着用します。暗い色合いが多いため、地味になりがちです。フォーマル感の中にも上品さを感じられるよう意識するといいでしょう。
両家の服装に格差が出ないよう事前に打合せし、結婚式の会場や雰囲気、時間、新郎新婦と自分との関係や立場などを考えて服装を選びます。
親族以外の場合
男女ともに華美なデザインや露出、色は避け、主役である新郎新婦を引き立てるような服装を選びます。結婚式に参列する女性の服装はドレスが一般的です。露出は控えめに華やかで礼節を感じる服装を選びますが、新婦と同じ白や、仏事を連想させる黒の衣装はマナー違反なので気をつけましょう。
昼の披露宴では、肩や胸元、背中が見えるドレスはふさわしくありません。夜の披露宴では露出のあるドレスでもマナー違反にならないので、招待されている時間を確認します。足元はパンプスとストッキングを着用し、つま先やかかとがないサンダルやブーツ、黒や派手な色のタイツは避けなければいけません。
男性は礼服に慶事用の白いネクタイが一般的です。最近では、黒やダークカラーのスーツに柄の目立たないネクタイでも良いとされています。
ご祝儀のマナーと相場金額
新郎新婦との関係性によって、ご祝儀の金額が異なります。友人であれば一般的には3万円、上司などの立場であれば3万円~5万円が相場の金額です。偶数は2で割れることから離婚を連想させるため、奇数の金額を包むのがマナーです。お金は銀行で新札を用意し、ご祝儀袋に入れます。ご祝儀袋は水引によって用途が違うため、婚礼用と書かれたご祝儀袋を購入すると間違いがありません。結婚式当日は、ご祝儀袋を汚したり折ったりしないように気をつけて持ち運び、受付の方に渡します。
参列する際のマナー
遅刻は厳禁です。結婚式当日は20~30分前には式場に到着し、遅くても開始15分前までには受付を済ませます。やむを得ない事情で遅れるのであれば、会場側に電話連絡して到着が遅れる旨を伝えておきましょう。。また、受付の方や新郎新婦のご両親・親族には、「本日はおめでとうございます」など、しっかりとあいさつをするのがマナーです。
国際結婚や結婚式の費用について知りたい方は「国際結婚に掛かる平均費用はいくら?結婚式や披露宴の節約術も紹介!」のコラムでも紹介しています。
「葬」葬儀で守るべきマナー
葬儀とは、亡くなった後から死後の喪に至るまでの一連の儀式を意味します。亡くなった方を送る大事な儀式であるため、しっかりとマナーを学び、故人を悼むのにふさわしいふるまいが必要です。冠婚葬祭の葬儀についてのマナーをまとめているので参考にしてください。
葬儀の連絡を受けたときのマナー
葬儀の連絡を受けたら、まずは相手にお悔みの言葉を述べます。「ご愁傷様です」「謹んでお悔み申し上げます」といった追悼の意を伝えるのが一般的でしょう。
すぐに相手を訪問すべきかは故人との関係で決まります。病気や出張、遠方に住んでいる場合など、やむを得ない事情で参列できないときは、すぐに弔電かお悔やみの手紙を出すといいでしょう。近親者や親しい方の場合、早急に駆けつけるのがマナーです。故人の死因を親族に尋ねることはしません。大切な方を亡くされた遺族にとって、故人の死因を思い返すきっかけになり、更に傷つけてしまう可能性があるからです。連絡を受けた際は、通夜や葬儀の日時や場所、宗派などを尋ねる程度にします。
服装のマナー
突然の訃報に慌ててしまう方は少なくありません。もしものときに困らないように事前に準備をしておくと慌てずに済みます。服装は、故人やその遺族を思いやる気持ちを表すメッセージともいえます。
女性の場合
女性の場合は黒の礼服を着用します。たとえば、黒のワンピースやスーツなどです。足元は黒い薄手生地のストッキングを履きます。靴やバッグも黒いものがふさわしく、派手な装飾や光沢のあるものは適していません。アクセサリーは光らない種類を身につけ、白か黒のパールの一連ネックレスやイヤリング、もしくはピアスのみにします。殺生をイメージさせるような毛皮や爬虫類系の皮革はマナー違反です。
男性の場合
男性の場合も、黒の礼服がマナーです。仕事終わりに参列する場合は、光沢のない生地で作られた黒・濃紺・濃いグレーのスーツでも問題ありません。シャツはステッチやボタンダウンなどの飾りがない白い長袖を選び、黒の無地のネクタイを合わせます。靴は紐で結ぶタイプでデザイン性が強くない革靴を選び、エナメル製やローファーは避けましょう。靴下は黒無地の柄なしを選びます。ベルトは黒無地のプレーンベルトが理想的でしょう。大きなバックルが付いているデザインや、ワニや蛇などの爬虫類の柄がデザインされていたり鋲が打ち付けてあったりする製品は避けるのがマナーです。
香典のマナーと相場金額
香典の金額は5千円か1万円が相場ですが、故人や遺族との関係を考慮して決めます。金額は5千円や1万円、3万円など「奇数」の数字に合わせるのがマナーです。
香典袋は宗教によって異なるため、事前に故人の宗教や宗派を確認すると良いでしょう。
仏教では香典袋に「御霊前」と書きますが、浄土真宗では「御仏前」や「御香料」と書くのがルールです。無地か蓮の花の絵柄で、水引が白黒か銀の香典袋を選びます。キリスト教の場合は、無地かユリの花や十字架の香典袋を選び、「御花料」と書きましょう。神式では無地で銀の水引の香典袋を選び、「御神前」と書くのが決まりです。いずれも香典袋に文字を書くときには、原則として一般的に使う墨よりも水分量の多い「薄墨(うすずみ)」の筆を使って書きます。
香典袋を包む袱紗には、紺や緑やグレーなどの寒色系のものを用いましょう。
参列する際のマナー
受付では「このたびはご愁傷様です」「心よりお悔やみ申し上げます」と挨拶し、長々と話すことは控えます。香典を渡す際は、袱紗から香典袋を取り出し、自身の名前を記載したほうを表側にし、相手に見やすいように向きを変えて両手を添えて渡すのがマナーです。
記帳を済ませたら返礼品を受け取り、式場内の所定の椅子に座ります。焼香の順番が来たら、遺族とに黙礼もしくは短くお悔やみの言葉をかけ、焼香を行うのが一般的です。遺族のところへ行き、挨拶や会話をするのは控えます。
日本の葬式のマナーについて知りたい方は「外国人必見!日本の葬式のマナーとは?焼香のあげ方や香典の包み方も解説」にも詳しく掲載されています。
「祭」お年玉を渡す際のマナー
お年玉は、お正月に子どもが最も楽しみにしていることの一つでしょう。古来、歳神(としがみ)を迎えるための鏡餅を家長が子どもに分け与えた習慣が変化し、現在のお金を渡すスタイルになったとされています。
お年玉を渡す時は、ポチ袋と呼ばれるお年玉袋に現金を入れて渡すのがマナーです。お札や硬貨は、できるだけ綺麗な状態のものを選び、お札は肖像が内側になるようにして三つ折りで袋に入れます。
お正月の過ごし方を知りたい方は「日本のお正月とは?玄関飾りや料理について解説!新年の過ごし方を知ろう」、「日本の伝統行事には何がある?年末年始の行事や通過儀礼についても紹介」の記事でも紹介しています。
まとめ
冠婚葬祭は日本に昔から伝わる4つの人生の節目に行われる儀式のことです。冠婚葬祭のマナーを守ることは、周囲との円滑な人付き合いにつながります。冠婚葬祭に出席する際はマナーに気を配り、相手や周囲に失礼のないように心掛けて過ごしましょう。