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「在留資格の取り消し制度」は外国人を雇用する企業が把握しておくべき規則の一つです。
外国人の在留資格は、在留資格取り消し事由に該当していればはく奪される可能性があります。どのようなときに取り消し対象になるのか、理由まで知っている人はそう多くありません。
この記事では、外国人の在留資格が取り消しになる主な理由や、その後の流れを解説します。なるべく分かりやすく執筆しましたので、外国人採用におけるリスクを把握しておきたい方は、ぜひご一読ください。
目次
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在留資格取り消し制度とは、一度外国人に付与した在留資格を法務大臣の判断によって取り消すことができる制度です。取り消しになる理由は、虚偽申請で日本上陸許可を受けた場合や活動内容が申請時と異なる場合、住んでいる場所を正しく届け出ていない場合などです。
在留資格の取り消しは入管法第22条の4によって定められています。2024年6月14日には改正入管法が成立しました。法改正により、今まで1年超の実刑が確定した場合などを除いて対象ではなかった永住者も、在留資格が取り消される可能性があります。
関連記事:「外国人労働者の雇用における問題を事例付きで解説!トラブル回避の方法とは」
参照元 出入国在留管理庁「在留資格の取消し(入管法第22条の4)」
外国人の在留資格が取り消しになる主な事由は以下のとおりです。
それぞれの事由について、以下で詳しく説明していきます。
自分の身分を偽って入国許可を受け、日本に入国した外国人は在留資格取り消しの対象です。
たとえば、最終学歴が高卒でありながら大学の卒業証書を偽造し、大卒と偽って日本に入国した場合が該当します。
在留資格の申請時に正しい内容で書類を提出せず、そのまま入国許可を受けた場合も在留資格は取り消しとなります。故意か過失かは問われないので、間違えて提出してしまった場合も対象です。
正当な理由なく在留資格の活動を3ヶ月以上(高度専門職は6ヶ月以上)行わなければ、取り消し事由に該当します。定められた活動を行うことを条件に在留資格が許可されているため、在留資格に相応しい活動をしていなければ、日本に在留し続けることはできません。
日本人や永住者と結婚した外国人には、それぞれ「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」の在留資格が付与されます。しかし、離婚や死別を理由に配偶者としての身分を喪失した場合、6ヶ月経過後もそのままでいると在留資格取り消しの対象です。
在留資格に応じた活動をしていないうえ、認められていない活動を行っていた場合は3ヶ月が経過していなくてもすぐに取り消しの対象です。在留資格で認められていない就労は不法就労に該当するため、厳しい罰則があります。
在留資格を得て3ヶ月以上日本に在留する外国人は、入国後90日以内に地方出入国在留管理局へ住居地を届け出なくてはなりません。正当な理由なく届け出を怠ると、在留資格取り消し事由に該当します。さらに、虚偽の内容で届け出た場合も同様に取り消しの対象です。
参照元 出入国在留管理庁「在留資格の取消し(入管法第22条の4)」
取り消し事由に該当する場合でも、正当な理由があれば日本に在留できます。具体例は以下のとおりです。
【離婚や死別で身分を喪失してから6ヶ月経過しても在留資格取り消しにならない例】
【入国後90日以内に住居地を届け出なくても在留資格取り消しにならない例】
なお、個別の状況に応じて判断されるので、上記の例に該当しない場合でも在留資格が取り消されないこともあります。
関連記事:「外国人労働者の雇用における問題を事例付きで解説!トラブル回避の方法とは」
参照元 出入国在留管理庁「住居地の届出を行わないことに正当な理由がある場合等 在留資格の取消しを行わない具体例について」 出入国在留管理庁「配偶者の身分を有する者としての活動を行わないことに正当な理由がある場合等在留資格の取消しを行わない具体例について」
出入国在留管理庁は、毎年在留資格の取り消し件数を公表しています。2023年に在留資格の取り消しがあった件数は1240件でした。2022年の取り消し件数である1125件と比べると115件増加しており、過去最高の件数となっています。
取り消し数が増加した理由は、新型コロナウイルス感染症による入国制限が撤廃され、在留外国人数が一気に増えたためです。2022年の中盤までは新型コロナウイルス感染症に対する水際措置が取られており、在留資格を持って在留する外国人数そのものの伸びが鈍化していました。
そのため、取り消し事由に該当するケースのみが増えたというわけでなく「外国人が増えた分取り消し件数も増加した」と考えるのが妥当でしょう。
在留資格別の取り消し件数を見ると、「技能実習」が最も多く983件、次に「留学」が183件と続きます。失踪した技能実習生や、退学した留学生などが在留資格取り消しになっています。
入管法第22条の4第1項第6号の規定で在留資格を取り消されたケースが多く、1049件でした。6号には「正当な理由なく在留資格の活動を3ヶ月以上(高度専門職は6ヶ月以上)行っていない状態」が当てはまります。
参照元 出入国在留管理庁「令和5年の「在留資格取消件数」について」
出入国在留管理庁は2024年の在留資格の取り消し事例も公表しています。実際にどのようなときに在留資格が取り消されるのか、把握しておきましょう。
【事例】
「過去に退去強制されたことから上陸拒否事由に該当していたものの、退去強制歴を秘匿するなどして上陸拒否事由に該当しない旨偽って上陸許可を受けた。」
過去に退去強制処分を受けた外国人は、日本への入国を拒否できる事由(上陸拒否事由)に該当します。本来、退去強制になると5年間(複数回処分を受けている場合は10年)再入国できません。その事実を隠して日本に入国したことが発覚した場合、在留資格が取り消されます。
このほかに、「過去に1年以上の懲役や禁固に処せられている」「貧困者や放浪者などで生活上、国または地方公共団体の負担になる恐れがある」も上陸拒否事由の一つです。
【事例】
「在留資格「技術・人文知識・国際業務」を得るため、実際の学歴とは異なる学歴を記載した虚偽の在留資格変更許可申請書を提出して同許可を受けた。」
虚偽の書類を提出することは、在留資格の取り消し事由に該当します。
このほかに、在留資格「日本人の配偶者等」の在留資格を得るために、婚姻実態を偽って在留資格の各申請をした場合も同様です。
【事例】
「在留資格「技能実習」をもって在留する者が、実習先から失踪し、当該在留資格に応じた活動を行うことなく他の会社で稼働して在留していた。」
技能実習生の有する在留資格「技能実習」で許可されているのは、実習先での作業のみです。より良い給料や待遇を得るため、逃げ出してほかの企業で働くことは在留資格取り消し事由に該当します。
【事例】
「在留資格「留学」をもって在留する者が、学校を除籍された後、当該在留資格に応じた活動を行うことなく3ヶ月以上本邦に在留していた。」
学校に通うという留学生として行うべき活動をしないまま、3ヶ月以上日本に在留している場合は在留資格を取り消されます。
参照元
出入国在留管理庁「令和5年の「在留資格取消件数」について」
意見聴取ののち在留資格が取り消しになると、出国命令制度もしくは退去強制手続きのどちらかの処分を受けます。その後、所定の期間は日本に再入国できません。
ここでは、取り消しの流れと出国命令制度および退去強制手続きの概要を説明します。
外国人に在留資格の取り消し対象と疑われる行為が見られた場合、入国審査官または入国警備官の事実調査があります。その後、法務大臣から意見聴取通知書が届くので、外国人は期日までに地方出入国在留管理局に出頭しなくてはなりません。
法務大臣が指定する入国審査官への意見陳述や証拠提出のうえ、それでも在留資格を持つ資格がないと判断されれば、取り消されることになります。
在留資格取り消し事由が以下に該当する場合は、出国命令制度のもと帰国します。
出国命令制度は自発的な出国を促す制度で、帰国まで最長30日の猶予があります。帰国までの間は身柄を拘束されることはありません。
以下に当てはまる場合は在留資格が取り消され、出国命令制度よりも重い処置である退去強制手続きの対象となります。
退去強制に該当すると判断されると、出国まで入国者収容所や地方出入国在留管理局の収容場で身柄を拘束されます。
出国命令制度や退去強制手続きにより出国すると、上陸拒否期間が設けられ、その間は日本の再入国できません。上陸拒否期間は出国命令制度では1年間、退去強制では5年間(複数回の場合は10年)です。
参照元 出入国在留管理庁「退去強制手続と出国命令制度」
雇用している外国人の在留資格が取り消しになると、企業にも業務への支障や法的リスクなどさまざまな影響があります。
雇用する外国人の在留資格が取り消しになると、業務に大きな支障が出ます。
出国命令や退去強制手続きの対象になった外国人は、間もなく日本から出国しなくてはなりません。帰国の準備などで追われてしまい、引継ぎも十分にできないケースが多いようです。ましてや、退去強制手続きとなれば帰国まで身柄を拘束されます。職場の混乱は避けられないでしょう。
外国人の在留資格が取り消しになる事由によっては、企業が不法就労助長罪に問われる可能性もあります。
外国人が在留資格で定められた活動をしてないうえ、ほかの活動をしている場合は在留資格の取り消し対象になるのは前述したとおりです。しかし、処罰を受けるのは外国人だけではありません。
もし、自社の業務に相応しくない在留資格を持つ外国人を雇用している場合、企業は不法就労助長罪で罰せられます。罰則は、3年以下の懲役もしくは禁錮もしくは300万円以下の罰金またはその併科です。
なお、2024年に公布(2027年までに施行)された改正出入国在留管理法では、この罰則が、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金またはその併科となっており、より厳罰化されています。
不法就労助長罪は故意かどうかは問題としていません。外国人が本来の在留資格を隠して入社した場合も同じように企業が罰せられる可能性があります。
雇用している外国人が在留資格取り消しになった場合、その企業が保有している免許が取り消される場合があります。
代表的なのは、労働者派遣免許や有料職業紹介免許です。出入国在留管理法違反は、これらの免許の欠格事由に該当します。
免許取消になってしまうと事業活動を行うことができません。そして、一定期間、免許の再取得ができなくなります。
この他の営業許可についても、出入国在留管理局法違反が免許取消につながる場合もありますので、十分注意しましょう。
このような事態を防ぐために、採用選考時に外国人の在留カードの記載内容や偽造の有無をよく確認してから雇用するように徹底しましょう。
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ここでは、外国人の在留資格の取り消しに関してよくある質問をQ&A形式でまとめています。
犯罪を犯したら必ず在留資格が取り消しになるわけではありません。犯した犯罪の内容が外国人の退去強制事由に該当するかが重要です。いわゆる軽犯罪や執行猶予判決が出た際は退去強制事由に当てはまらず、そのまま日本に在留できるケースもあります。
ただし、罪の内容や有している在留資格によって退去強制事由の範囲は大きく異なるので、逮捕されるようなことがあれば、在留資格が取り消しになる可能性は十分にあると考えておくのが良いでしょう。
2024年6月14日に通常国会で成立した改正入管法では、入管法の義務違反や故意な公租公課の支払い拒否、特定の刑罰法令違反があった場合は永住者であっても在留資格が取り消される可能性があります。具体的な事例は「在留カードを持ち歩いていない」「税金を滞納している」「公的年金や健康保険に長期間加入していない」などです。
それまでの入管法では、永住者は今まで1年超の実刑が確定した場合などを除いて在留資格取り消し制度の対象ではありませんでした。しかし、在留状況が良好でない永住者が在留し続け、ほかの永住者への不当な偏見に繋がることを防ぐために法改正が行われたのです。
雇用している外国人の在留資格が取り消された場合、業務に支障が出るだけでなく企業が罰せられる可能性があります。
選考時のチェックを徹底して在留資格の取り消し事由に該当する外国人を雇用しない、在留資格が取り消されないように在籍中の管理や声掛けをしっかり行うといった対策が効果的です。
監修:濵川恭一
外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net