外国人労働者の雇用における問題を事例付きで解説!トラブル回避の方法とは

2023年01月26日
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濵川恭一 (監修)
外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net

外国人労働者を初めて雇用する企業は、どのような問題が起きる可能性があるか把握しておきたいのではないでしょうか。このコラムでは、外国人労働者を雇用すると起こる可能性がある問題を、事例とともに解説します。また、問題を防ぐための対処法も紹介。内容を参考にして、安心して外国人労働者を受け入れられるようになりましょう。

目次

  1. 日本では外国人労働者に関する問題が表面化しつつある
  2. 外国人労働者雇用における問題事例【企業起因編】
  3. 外国人労働者雇用における問題事例【本人起因編】
  4. 外国人労働者との間で問題を抱えたらどうする?
  5. 外国人労働者の雇用における問題を防ぐには
  6. 外国人労働者の雇用における問題を相談できる機関
  7. まとめ

日本では外国人労働者に関する問題が表面化しつつある

日本では、多くの外国人労働者が働いています。日本国内の労働力不足や国際化により、今後も日本で働く外国人は増えていくことでしょう。そのような状況のなか、外国人労働者の能力を上手く活かしている企業がある一方で、さまざまな問題を抱えてしまう企業があるのも事実です。

外国人労働者雇用では日本人の雇用では起こらないトラブルが発生する可能性があり、企業が対応に苦慮することも多々あります。しかし、外国人労働者の存在は今後さらに日本企業にとって無くてはならないものになっていくでしょう。どのような問題事例があるかをあらかじめ知り、企業としてできる対策を取る必要があります。

外国人労働者雇用における問題事例【企業起因編】

ここでは、企業側が原因で起きる問題の事例を紹介します。どのような問題が起きる可能性があるのかを知り、あらかじめ対策を取りましょう。

入管法の理解不足によって起きた問題事例

【事例】
貿易会社で、アニメーションの専門学校を卒業した外国人を通訳業務で採用した。「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を申請したが、不許可になった。

【在留資格申請が不許可になった理由】
外国人が母国語を用いて通訳業務を行う場合は、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格が必要です。大学や大学院を卒業している場合は、どのような分野を専攻していても在留資格の申請には影響しません。しかし、外国人が専門学校を卒業して通訳の仕事をするには、通訳業務に関連する専門学校を卒業している必要があるのです。この事例では、外国人がアニメーションの専門学校に通っていたため、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格が取得できませんでした。このように、入管法を正しく理解していないと、せっかく外国人を採用しても自社で働いてもらえない可能性が出てきます。

在留資格の審査基準は複雑で、初めて行う場合どうしても判断に迷ってしまうでしょう。不安な場合は、無理せずに行政書士などの専門家や外国人採用をサポートする機関に頼ることをおすすめします。

外国人の労働環境に関する問題事例

【事例】
外国人労働者には労働基準法は適用されないと思い、長時間労働や休日出勤を命じた。のちに、本人からの通報により労働基準監督署から指導勧告を受けた。

【労働基準監督署から指導勧告を受けた理由】
外国人労働者にも、労働基準法をはじめとした労働関係の法律は適用されます。企業で働く外国人はもちろん、留学生のアルバイトや技能実習生も同様です。また、外国人だからという理由で劣悪な労働環境で働かせることは人種差別的扱いであり、社会通念上も許されません。外国人労働者の健康や人権に配慮し、法律に則った雇用管理を心掛けましょう。

外国人の給与設定に関する問題事例

【事例】
同じ仕事をする日本人の給料が22万円のところ、教育や雇用管理に工数の掛かる外国人労働者は20万円に設定した。その結果、在留資格の申請が不許可になった。

【在留資格申請が不許可になった理由】
多くの就労にまつわる在留資格の取得条件には、「同じ仕事をする日本人と同等以上の給料を受け取る」という項目があります。これは、不当に低い給料で働かされる外国人労働者を無くすための措置です。適切な給料を設定しなければ外国人労働者は在留資格を取得できず、自社で働いてもらうことができません。

また、国籍という本人の能力や職種に関係ない部分でほかの従業員と差を付けることは、労働基準法で禁止されています。「外国人は安く雇用できる」といった考えは捨て、日本人と同様の評価基準のもと給料を設定しましょう。

契約時の説明不足によって起きた問題事例

【事例】
書面で雇用契約を交わし、外国人労働者も納得してサインしていた。しかし、実際には本人が内容を正しく理解しておらず、雇用後にトラブルになった。

【雇用後にトラブルになった理由】
雇用契約書は専門用語が多く、日本人でも難しく感じるような表現が使われます。日常会話に問題ない外国人であっても、理解しきれないこともあるでしょう。外国人労働者と雇用契約を交わすときは、理解度を逐一確認しておくとトラブルが起きる可能性を減らせます。

解雇規定の認識違いによって起きた問題事例

【事例】
外国人労働者の勤務態度が悪く、就業規則の解雇事由に基づいて普通解雇とした。しかし、本人は真面目に働いているつもりだったため納得せず、トラブルになった。

【解雇トラブルが起きた理由】
解雇トラブルは、日本人労働者との間でも起きやすい問題です。価値観や言葉に違いがある外国人労働者を解雇する場合は、よりスムーズに進めるのが難しくなるでしょう。本体、外国人労働者の働きぶりが就業規則で規定した解雇事由に該当し、資料や証拠などから判断が妥当だと客観的に認められれば解雇はできます。しかし、日本人からすると勤務態度が悪いと判断される行いでも、外国人労働者の出身国や国民性からすると普通に働いている状態という場合もあるのです。

このような認識のズレによるトラブルを防ぐには、入社前や入社直後の段階で、日本で求められている働き方についてしっかり指導する必要があります。その際は、単純に「勤務態度に気を付ける」と指導するのではなく、「業務中に携帯をいじらない」「始業時間に間に合うように出社する」など、細かくルールを伝える必要があるでしょう。
 

外国人労働者雇用における問題事例【本人起因編】

ここでは、外国人労働者本人が原因で起きやすい問題の事例を紹介します。本人に原因があるとはいえ、企業があらかじめ説明やサポートをすることで防げる内容ばかりです。外国人労働者が長期的に働き続けられるよう、対策を取りましょう。

日本社会のルールを知らないことで起きた問題事例

【事例】
外国人労働者が社用車をプライベートの旅行に使い、その道中に事故を起こした。就業規則では私用利用について特に明記していなかったため、使っても良いと解釈したようだ。

【社用車をプライベートで使った理由】
日本人労働者の場合は、就業規則で禁止していなくても、マナーとして使ってはならないと暗黙の了解で分かります。

しかし、外国人労働者の場合は、このような日本の暗黙の了解や社会通念上のルールが分からないことがあるのです。日本人の感覚で「普通は言わなくても分かる」と思うルールであっても、明確な基準を設定するようにしましょう。

地域住民との間で起きた問題事例

【事例】
社員寮として借りているアパートに住む外国人労働者が、ゴミ出しのルールを守れない。また、夜中大勢で集まって騒ぐので近隣住民から苦情を受け、退去せざるを得なくなった。

【近隣トラブルが起きた理由】
「細かく分別して捨てる」「曜日を決めて捨てる」といった日本のゴミ捨てルールは、外国人にとって理解が難しいようです。そのため、いい加減なゴミ出しをしてトラブルになるケースはよくあります。また、夜中の騒音問題も同様で、「夜は騒いではいけない」というマナーが分からない外国人も珍しくありません。雇用する企業の責任として、外国人が日本でマナーを守って生活できるようサポートしましょう。外国人が日本の生活に慣れるまでは、定期的に住まいを訪問して生活ぶりをチェックすると効果的です。

法律への理解不足によって起きた問題事例

【事例】
外国人が提案してきたキャラクターのアイディアを採用し、商品開発を進めた。しかし、外部から自分の考えたキャラクターとデザインが酷似していると問い合わせがあった。確認したところ、外国人が自分で考えたわけではなく、一般人が考えたキャラクターをSNSで見て真似したのだと分かった。この出来事が社名とともに拡散され、企業として謝罪する事態となった。

【著作権・肖像権侵害が起きた理由】
日本と海外では法律の内容が違います。特に著作権や肖像権に対しての感覚は、日本と比べてルーズな場合が多いようです。企業の信用にも関わる問題なので、入社した外国人労働者には「やってはいけないこと」「法律違反になること」に関するレクチャーや勉強会を行うことをおすすめします。

文化や慣習の違いによって起きた問題事例

【事例】

中国人社員と同僚の日本人社員が雑談をしていた。外国人労働者が面白いことを言ったので、日本人が冗談で頭をこづいた。すると外国人労働者が怒り出し、掴みかかった。

【中国人社員が激怒した理由】
日本では、いわゆる「ツッコミ」の感覚で人の頭に触れることがあります。しかし、中国では頭を叩く行為は最大限の侮辱とされているので、冗談だったとしても気分を損ねてしまうでしょう。中国以外に、タイやインドネシアなどの仏教が信仰されている国でも、頭に軽々しく触れるのはタブーです。

上記のように、各国の文化や慣習についての理解が不十分だと、問題が起きやすくなります。すべての他国の文化を理解するのは難しくても、最低限外国人労働者を傷付けたり不快にさせたりする行為については把握しておきましょう。

不法就労に関する問題事例

【事例】
取引先からの紹介で、外国人労働者を雇用した。しばらくして、外国人労働者が警察官に職務質問を受けた際にオーバーステイであることが発覚し、現行犯逮捕された。信頼できる人物からの紹介だったため、入社時に在留資格についてはよく確認しなかった。

【在留資格の確認が必要な理由】
在留期限が切れた状態(オーバーステイ)の外国人は、日本で就労することはできません。しかし、身分を隠して働き続ける人は存在します。不法就労は外国人労働者本人だけでなく、雇用した企業も罰則の対象です。不法就労者を雇用した企業に適用される「不法就労助長罪」は、故意でなかったとしても減刑にはなりません。どのような経緯での雇用であっても、必ず外国人の在留資格や在留期間をしっかり確認しましょう。

技能実習生の失踪に関する問題事例

【事例】
建設分野に関わる作業で技能実習生を数名受け入れた。適切な賃金を払い、労働時間も残業が多くならないよう配慮していた。しかし、技能実習生は数ヶ月従事したあと、集団で失踪した。のちに出入国在留管理庁に出頭した技能実習生の話によると、仕事内容のきつさに耐えられなかったのが失踪の理由だった。

【技能実習生が失踪した理由】
技能実習生の失踪は各地で起きている問題です。失踪理由は、違法な低賃金やパワハラなど受け入れ企業側に問題があるケースのほか、「仕事内容が思ったよりきつい」「働いてみたら想像と違った」など、技能実習生側の問題もあります。このような理由での失踪を防ぐためにも、受け入れ前にしっかりと業務内容について説明し、技能実習生と認識を合わせておきましょう。

技能実習生の失踪については「技能実習生が失踪する理由とは?企業が取るべき対策を解説」のコラムで詳しくまとめているので、参考にご覧ください。

外国人労働者との間で問題を抱えたらどうする?

外国人労働者との間で問題が起きたら、まず話し合いでの解決を目指しましょう。それでも問題が収束しなかった場合は労働審判、労働訴訟に進みます。

できるだけ話し合いでの解決を試みる

外国人労働者との間で問題を抱えたら、まずは話し合いでの解決を試みましょう。企業側に落ち度がある場合は潔く非を認め、できる限り誠実に対応します。ただし、明らかに外国人労働者側に非がある場合は、毅然とした態度で対応しなくてはなりません。事態を丸く収めようと不要に謝ったり事実でないことを認めたりすると、労働審判・訴訟に進んだ際に不利になる可能性があります。万が一のために、話し合い時の会話は録音や記録をしておくと良いでしょう。

労働審判に進んだ段階で弁護士の力を借りる

外国人労働者との間で起きた問題が話し合いで解決せず、労働審判を申し立てられたらすぐに弁護士に対応を依頼しましょう。労働審判とは、裁判官1名と審判員2名からなる労働審判委員会が、企業と労働者との紛争解決に介入する制度のことです。3回期日までと決まっており、労働訴訟と比較すると短い期間で解決まで進みます。労働訴訟まで進んだ場合の対応コストや労力を考えると、労働審判で問題を解決させるのが得策です。そのためにも、労働に進んだ段階で労務に詳しい弁護士に依頼し、スムーズに解決まで進めるようにしましょう。

なるべく訴訟にまで発展しないよう努める

労働訴訟まで進むと、企業も大きなダメージを負うため、できるだけ労働審判で問題を解決するのが理想です。労働審判の3回期日までに問題が解決せず異議申し立てがあったら、労働訴訟と発展します。そうなると、企業の内情が不特定多数の人に公表され、イメージダウンは避けられません。また、解決までには年単位の時間が掛かる場合もあります。そうならないためにも、話し合いや労働審判で問題を解決するのを目標に、対応を進めていきましょう。

外国人労働者の雇用における問題を防ぐには

ここでは、外国人労働者の雇用における問題を防ぐのに効果的な方法を紹介します。全員が気持ち良く働くには、外国人労働者だけでなく、企業や日本人社員の工夫や努力も必要です。

外国人労働者が分かる言語で資料やマニュアルを作る

雇用契約書をはじめとした資料やマニュアルは、分かりやすい日本語、あるいは外国人の母国語で作成しましょう。イラストや動画を用いて説明するのも効果的です。特に業務内容や勤務時間、賃金に関する事項は、外国人労働者に内容を正確に理解してもらうことで、認識の相違やトラブル回避に繋がります。

外国人労働者と積極的にコミュニケーションを取る

外国人労働者とこまめにコミュニケーションを取ることで、困りごとや悩みをキャッチアップできます。業務についてだけでなくプライベートの話題にも触れ、手助けできることはないか探ってみましょう。週に1回、少し話す機会を作るだけでも効果はあります。また、会話でのコミュニケーションが伝わっているか曖昧な場合は、念のためテキストで会話のメモをお互いで共有しておくことも効果的です。状況によってはテキストを翻訳して確認してもらうこともできるので、コミュニケーションの齟齬を防ぐことができるでしょう。

外国人労働者に対する日本人従業員の意識を改善する

外国人労働者が入社する前に、日本人従業員の意識を改善する機会を作るのも良いでしょう。日本人同士では問題がなくても、外国人からすると不快に感じる行動はいくつもあります。外国人労働者の出身国の文化や慣習を事前に共有するだけでも、トラブルが起きる可能性は大分減らせるでしょう。また、「外国人」として扱うのではなく、あくまでも国籍関係なく社員として平等に扱うことは非常に重要な要素です。外国人労働者にとっては「外国人だから」と、特別別扱いされること自体を差別的な態度をとられていると感じるパターンもありえます。言語や文化への配慮はしつつも、同じ企業の社員として求めていることや意識など共有し、コミュニケーションをとることが結果、外国人労働者が働く上での心理的安全にも繋がるでしょう。

外国人労働者の受け入れに必要な手続きや法律を学ぶ

外国人労働者の雇用における問題を防ぐには、受け入れに必要な手続きや法律を学ぶことも大切です。特に、在留資格や在留期間などの入管法に関わる知識は、正しく理解していないと企業も法的に罰せられる可能性があります。行政書士や外国人雇用に関する専門家の力も借り、適切に外国人を外国人を雇用しましょう。
 

外国人労働者の雇用における問題を相談できる機関

外国人労働者の雇用における問題は、公的機関にも相談できます。

雇用に関する悩みは、厚生労働省が運営する「外国人雇用管理アドバイザー」に相談すると良いでしょう。無料で自社の外国人雇用における問題点の分析や対処法の指示を受けられます。外国人雇用管理アドバイザーの派遣申し込みは、企業の所在地を管轄するハローワークで手続きが可能です。

外国人の在留資格や入国手続きに関する疑問は、「外国人在留総合インフォメーションセンター」に相談してみましょう。電話やメールでの対応のほか、企業の所在地を管轄する地方出入国在留管理局や支局に相談窓口が設置されている場合があります。

参照元
厚生労働省「外国人雇用管理アドバイザー」
出入国在留管理庁「外国人在留総合インフォメーションセンター等

まとめ

外国人労働者の数が増えるとともに、さまざまな問題が表面化してきました。しかし、どの問題も事前に外国人雇用について学び、対策を取っておくことである程度防げる内容ばかりです。内容を参考にして、外国人と日本人の双方が気持ち良く働ける職場を作りましょう。