日本に興味のある方のなかには、古くから伝わる伝統文化について知りたいという方もいるでしょう。日本の伝統文化のうち、茶道・華道・書道は特に有名です。どの種類も大掛かりな道具は不要なので、外国人の方もチャレンジしやすいでしょう。
このコラムでは、茶道・華道・書道がどのような芸道なのかを説明します。内容を参考にして、日本の伝統文化への理解を深めましょう。
目次
日本の伝統芸道とは
日本の伝統芸道とは、日本に古くから伝わる芸能や技のことです。さまざまな種類があり、なかでも茶道・華道・書道は海外でもよく知られてます。
精神性を重んじた芸能や技のこと
日本の伝統的な芸能や技のうち、特に精神性を重要としている種類は「芸道」と呼ばれます。芸道は、楽しんだり作品を作ったりすることだけが目的ではありません。極めることで精神を整え、自分自身を成長させるために行います。
とはいえ、初めは「楽しそう」「やってみたい」という軽い気持ちで始める人がほとんどです。楽しみながら習っているうちに、いずれ本質である精神性の意味が分かってくるでしょう。
日本の伝統芸道の種類
日本の芸道は、主に以下の種類があります。
- 茶道:茶を点てて客人に振る舞う
- 華道:花や植物を生けて鑑賞する
- 書道:筆で書いた文字で自分を表現する
- 香道:香木の香りを聞く
- 歌道:和歌を聴いたり創作したりする
- 武道:戦う技の鍛錬を通して人格を磨く
このなかでも、特に茶道・華道・書道は日本が誇る伝統的な芸事で、多くの人に親しまれています。
日本の伝統的な文化に関しては「日本の伝統芸能の種類を一覧で紹介!海外にも伝わる魅力とは」や「武道の種類まとめ!始め方や道具の値段も解説」でも紹介しています。
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茶道について
茶道は抹茶を点てて、饅頭や落雁(らくがん)などのお菓子と一緒に人に振る舞う芸道です。飲食を楽しむだけでなく、客人をもてなすことで精神を整えるのも目的とされます。
お茶を点てて客人に振る舞う芸道
茶道(さどう)とは、客人に抹茶やお菓子を振る舞う芸道です。ただ振る舞うだけでなく、さまざまな作法を守りながら客人を誠心誠意もてなします。日本では、茶道の作法を身に付けることが教養の一種とされており、女性の習い事とされてきました。昨今では日本の伝統文化に触れられる趣味として、年齢や性別問わず親しまれています。
千利休の四規七則(しきしちそく)とは
茶道の心得に千利休の四規七則があります。千利休とは、戦国時代の茶人でわび茶という概念を広めた人物です。現代の主流である表千家・裏千家・武者小路千家の流派は、すべて千利休の子孫が広めました。そのため、現在でも茶道をたしなむには、四規七則の心構えが非常に重要とされています。
四規
四規は「和敬清寂」の4文字のことで、茶道に対する心得えを説いています。
- 和:心を開いて調和する
- 敬:相手を尊重し、敬う
- 清:身も心も清らかに保つ
- 寂:穏やかで落ち着いた心を持つ
この4文字には、「茶道とはこうあるべき」との考えが集約されているといえるでしょう。
七則
利休が説いた客人をもてなす際の7つの心得えで「茶は服のよきように点て、炭は湯の沸くように置き、夏は涼しく冬は暖たかに、花は野にあるように生け、刻限は早めに、降らずとも雨の用意、相客に心せよ。」という内容です。以下で詳しく解説します。
- 茶は服のよきように点て:自分ではなく客人にとって丁度良い加減で茶を点てる
- 炭は湯の沸くように置き:前もって準備をしっかりする
- 夏は涼しく冬は暖かに:心地よい環境を工夫して整える
- 花は野にあるように生け:花は咲いていた状態を感じられるように生ける
- 刻限は早めに:ゆとりを持つために、常に先のことを考えておく
- 降らずとも傘の用意:あからじめ備えをして、心を平静に保つ
- 相客に心せよ:客人との縁を大切にし、常に気を配る
上記の心得えは茶道だけでなく、心穏やかに生きていくうえでも役立ちます。
茶道については「茶道とは?歴史や作法を知って日本文化への理解を深めよう」のコラムをぜひ参考にしてください。
華道について
華道とは花や葉、花器を組み合わせて生け、鑑賞する芸道です。フラワーアレンジメントと混同されがちですが、実際には明確な違いがあります。
植物や花を生けて鑑賞する芸道
華道は花や木、枝などの植物を花器に生け、鑑賞する芸道です。ただ花を綺麗に飾るだけでなく、流派ごとの型を学び、鍛錬していくことで精神を鍛えます。なお、「生け花」は華道のうち、花を美しく活ける技に焦点を当てた言葉です。修行や鍛錬に近い華道とは異なり、趣味として楽しみながら花を活けます。
フラワーアレンジメントとの違い
華道が花を活けることに関連した芸道そのものを指すのに対し、フラワーアレンジメントは花や植物を美しく飾り、空間を華やかに彩る技を指します。華道では美しく活けることだけが目的ではありません。そのため、枯れ枝や苔などを使った、一見地味にも思える作品が作られる場合もあります。
花や植物の飾り方も異なり、空間を演出するフラワーアレンジメントは、全方向から見て美しく作るのが一般的です。一方、華道では前方から見ることのみを想定して活けます。
書道について
書道は文字を書くことで自己表現をする芸道です。筆と墨を使い、言葉と書体で想いを表現します。
字を書くことで思いを表現する芸道
書道は字に自分の気持ちを乗せて、観る人に伝える芸道です。アート的な側面もあり、有名な書道家の作品には芸術的な価値があります。美しく見やすい文字を書くために練習する「習字」とは違い、一見読めない字や大きく崩した字も書かれるのが特徴です。
書道では、気持ちや自分の状態が筆の運びに影響すると考えられています。静かな部屋で筆と紙に向き合い書をしたためることは、自分自身を見つめ直すのにも役立つでしょう。
書初めとは
書道と関連の深い日本の伝統行事に、「書初め(かきぞめ)」があります。書初めは、1月2日に書の上達を願いつつ新年の新たな抱負をしたためる、平安時代から伝わる行事です。
書初めでは四字熟語やことわざ、漢字一文字で新年の抱負をしたためます。定番の文字は以下のとおりです。
- 夢(ゆめ)
- 愛(あい)
- 志(こころざし)
- 魂(たましい)
- 飛翔(ひしょう)
- 努力(どりょく)
- 成長(せいちょう)
- 一生懸命(いっしょうけんめい)
- 心機一転(しんきいってん)
- 平穏無事(へいおんぶじ)
昨今では行事として書初めを行う人はかなり少なくなりました。しかし、学校の授業で書初めを行うケースは今でも多いようです。書初めで書いた作品を額縁に入れて飾り、新年の抱負を忘れないようにしている人もいます。
まとめ
茶道・華道・書道は日本の芸道のなかでも認知度が高く、海外でも習える教室が増えつつあります。初めのうちは難しい作法が分からなくても問題ありません。ぜひ、軽い気持ちで日本の伝統芸道に触れてみましょう。