話し合いや交渉時に意見や条件が合わない場合、「落としどころ」を探ったり見つけたりする必要があります。「落としどころ」とは双方が譲り合って決めた解決策という意味で、日常生活だけでなくビジネスシーンにおいてもよく使われる表現です。
この記事では、「落としどころ」の意味や使い方・注意点などを解説。また、「落としどころ」の言い換え・英語表現についても例文付きでまとめています。
ビジネスシーンではお互いが譲り合って、良い結果になるよう「落としどころ」を見出す姿勢が欠かせません。意味や正しい使い方を理解して使ってみましょう。
目次
「落としどころ」とは
「落としどころ」とは、双方が譲り合って決めた結論や納得できる条件を意味します。主にビジネスにおいて、交渉時や議論をしてる際に使われる表現です。
話し合いのときに、お互いの意見や希望が必ずしも一致するとは限りません。その際、「落としどころ」を見つけることで、相手の意見や状況を尊重しながら解決に結びつけることができます。
「落としどころ」の「落とす」とは、「終わりにする」 「結論を出す」 「締めくくる」という意味です。「どころ」は、結果の場所やゴールを表します。お互いに納得のいく点を「落としどころ」と表現するようになりました。
また、感情の整理をするときにも「落としどころ」を使うことがあります。たとえば、「気持ちの落としどころがない」とは、混乱したり不安な出来事があったりしたときに、自分の気持ちの整理がつかない様子を意味する表現です。
落としどころ以外のビジネスシーンでよく使われる表現については「ビジネスで使う日本語をあいさつや電話などの場面ごとに紹介!」をご覧ください。
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「落としどころ」の使い方と例文
落としどころは、主に交渉や話し合いの場で使われます。双方が納得できる決着点を見つけることを「落としどころを見つける」と表すのが、一般的な使い方です。ここでは、落としどころの使い方を例文付きで紹介するので、実際に使う際の参考にしてください。
商談や交渉のとき
「落としどころ」を商談や交渉で使う際は、双方にとってメリットや利益がある形で話を進める必要があります。「落としどころ」は会社の損益に関わる大切なものです。そのため、「落としどころ」を決める際は慎重に協議し、双方が納得できるように配慮する必要があります。
【例文】
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「落としどころを見つけるために、双方の譲れない条件を精査しましょう」
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「ご提案いただいた案を受け入れて、弊社の落としどころといたします」
「落としどころを見つける」とは、双方が納得できる解決策を探し出すという意味です。「落としどころを探す」とも表現できます。
会議のとき
「落としどころ」は、会議や話し合いの場においてよく使われる言葉です。社内会議では、テーマについての話し合いを重ね、双方が納得できる妥協点を相談したり、結果としてどのように締めくくるか結論を出したりするために用いられます。
【例文】
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「A社との交渉について、落としどころがないので困っています」
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「予算の落としどころを探ってますが、A社とは協議が続いている状況です」
「落としどころがない」とは、お互いが譲歩を重ねても納得できるような条件・案がないときに使われる表現です。見つからない場合は「落としどころが見当たらない」とも言い換えられます。
意見の対立があるとき
仕事や話し合いの際に、意見の対立が起きるケースも珍しくありません。そのような場合は、一致している点と相違している点を把握することで、「落としどころ」が見つけやすくなります。
【例文】
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「そろそろ落としどころを決めませんか。協議し続けて2年ですよ」
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「双方の違いを理解したうえで現実的な落としどころを見つけましょう」
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「議論を重ねた結果、私たちはとうとう落としどころに達した」
気持ちを整えるとき
「気持ちの落としどころがない」 「気持ちの落としどころがわからない」とは、不安に思ったり考えたりして混乱してしまって気持ちの整理がつかないという意味です。主にネガティブなニュアンスで使われることが一般的です。
【例文】
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「失恋から半年経過しても未だ気持ちの落としどころがない」
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「気持ちの落としどころがわからず寝れなかった」
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「上司に𠮟責されて気持ちの落としどころがなかった」
日本語のビジネス用語についてさらに知りたい方は「日本語のビジネス用語を紹介!今さら聞けない言葉の意味も解説」をご覧ください。
「落としどころ」を使う際の注意点
「落としどころ」を使う際は、「落としどころをつける」や「落としどころをつく」とは言いません。正しい使い方は「落としどころを見つける」 「落としどころを考える」 「落としどころを用意する」 「落としどころを探す」などです。
また、使うタイミングも重要。「落としどころ」は、同じテーマや議題に関する話し合いが解決しなかったり、議論がまとまらなかったりする際に、結論を見出すために使います。話者が1人のプレゼンテーションや複数のアイディアを求めている場では、「落としどころ」は使わないようにしましょう。
「落としどころ」の言い換え表現
「落としどころ」には、似た意味の言葉や言い換えられる表現があります。以下は「落としどころ」の類語と例文です。「落としどころ」以外の表現や意味を理解し、状況に応じて使い分けができるようにしましょう。
折り合い(おりあい)
「折り合い」は、お互いに妥協点を探すときや意見の食い違いをまとめる際に使われる表現です。「折り合いをつける」 「折り合いがつかない」などと表します。「折り合いをつける」とはお互いに譲り合うという意味です。
【例文】
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「ようやく顧問先との契約に関する折り合いがつきました」
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「折り合いがつかない2人だったが、事態が急展開したようだ」
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「そろそろ折り合いをつけませんか。時間だけが過ぎてます」
「落としどころ」は結論を見出す際に使うのに対し、「折り合い」は双方の妥協点を見つける際に使います。
すり合わせ(すりあわせ)
複数の意見や案を精査して最も良い条件や状態に調整することを意味するのが「すり合わせ」です。すり合わせを行うことによりお互いが納得した形で「落としどころ」を見つけることができ、話し合いがスムーズにまとまります。
【例文】
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「今回の会議で出た意見をすり合わせた結果、全員が納得いく方向性になった」
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「A社とすり合わせを行い、今回は弊社が担当をすることになりました」
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「後ほど、次回のイベント案についてすり合わせをさせてください」
双方の案を調整することで双方のメリットを活かすこともできるため、ビジネスシーンでもよく使われる表現です。
妥協点(だきょうてん)
双方が合意できる一致点のことを「妥協点」といいます。求めていた条件から一歩下がり、双方もしくは片方が譲り合う気持ちで出した結論のことです。
【例文】
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「ここまでもめるなら、双方の妥協点を探ったほうがよさそうだね」
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「顧客と妥協点について話し合ったが、見つけられなかった」
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「この案が妥協点といえるでしょう」
「妥協点」には希望どおりにいかなかったり、納得していないが仕方なく受け入れたりするときにも使われます。必ずしもポジティブな意味ではない可能性もあるので、使う際には注意が必要です。
折衷案(せっちゅうあん)
「折衷案」とは、2つ以上の複数の案の良いところをより合わせて、一つにまとめた案のことを意味します。折衷案の「折」はお互いに譲り合う「折り合い」を、「衷」は「偏(かたよ)らない」という意味です。どちらにも偏らない案という意味で使われます。
【例文】
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「素晴らしい折衷案が完成したので、取引先に早速提案しましょう」
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「次回の会議までに折衷案を考えてくるのが課題です」
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「労働環境に関する折衷案を雇用主側と労働者側で協議している」
収拾(しゅうしゅう)
「収拾をつける」は、物事を解決する・意見をまとめるという意味です。一方で、「収拾がつかない」には、物事が散乱したり意見が混乱したりして、まとまらないという意味があります。「落としどころ」にも結論を出すという意味があることから、類語といえるでしょう。
【例文】
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「部長の鶴の一声で、事態の収拾がついた」
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「収拾がつけれるよう社員一丸となって取り組むことにした」
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「上層部の中でも意見が割れていたようだが、収拾をつけたそうだ」
「落としどころ」以外のビジネスシーンで使われる表現や単語については「鏡文とはどのような役割を持つ?書き方を例文つきで解説」 「前株とは?後株との違いや使い方・注意点を解説」 「たたき台の意味とは?使われるシーンや例文、言い換え表現を覚えよう」をご覧ください。
「落としどころ」の英語表現
「落としどころ」は日本独特の表現のため、全く同じ意味の英語表現はありません。そのため、「落としどころ」を英語で言い換える場合は、似た意味を持つ「compromise」や「common ground」が使用可能です。ここではそれぞれの意味と例文を紹介します。
compromise
「compromise」の意味は一般的な意味は「妥協」です。「a point of compromise」で「妥協点」とも言い換えることができます。意見の相違や意見の食い違いがある場合の、双方の解決策という意味で使える表現です。
【例文】
「We have not been able to find a compromise」(訳:我々はまだ落としどころをまだ見いだせていない)
common ground
互いに合意できるポイントという意味では「common ground」も「落としどころ」の英語表現といえるでしょう。直訳すると「共通の土台」ですが、「複数の意見の合意点」という意味もある言葉です。
【例文】
「They found common ground on the budget issue」(訳:予算の問題において、彼らは落としどころを見つけた)
それぞれニュアンスが微妙に異なる表現のため、状況や話の流れによって使い分けると良いでしょう。
まとめ
「落としどころ」とは、意見が食い違ったり揉め事が起きたりした際の、双方が納得できる解決策や納得できる条件のことです。交渉や議論などのビジネスシーンにおける話し合いなどで、意見がまとまらないときや感情を整理するときに、「落としどころ」という表現は使われます。
「落としどころ」には「折り合い」や「妥協点」「折衷案」などの言い換え表現がたくさんあるので、相手や場面によって使い分けるのがおすすめです。
日常生活やビジネスシーンにおいて、「落としどころ」は重要な役割を担います。双方が納得できる「落としどころ」を見つけて、相手と円滑なコミュニケーションを図るようにしましょう。