外国人留学生のなかには、卒業後は日本で就職したいと考えている方もいるでしょう。日本では徐々にグローバル化が進んでいるため、外国人留学生の受け入れ体制が整っている企業もあります。そこで、このコラムでは外国人留学生に人気のある企業を文系・理系別に紹介。日本の企業が外国人留学生を採用する理由や就職活動の進め方も解説します。自分に適した企業の選び方を身に付けて、就職活動に役立てましょう。
目次
日本での仕事探しで悩んでいませんか？
外国人留学生に人気の企業
外国人留学生は企業の種類や業種よりも知名度を重視する傾向にあります。その理由として、仕事に対する意識の高さや大手志向が考えられるでしょう。母国でも通じるほど知名度が高い企業であれば、スキル習得の機会が多く、帰国した際の職歴としても申し分ありません。しかし、大手企業は倍率が高いため内定が出ないまま在留期間が満了し、帰国を余儀なくされる可能性があります。日本での就職活動を成功させるためにも、さまざまな業界や企業を知り、応募の幅を広げましょう。
文系の外国人留学生に人気のある企業
観光やマスコミ、金融業界に属する企業は文系の外国人留学生から人気があります。文系の外国人留学生は、語学力やグローバルな視点を活かして働ける企業を志望することが多いようです。ほかにも、商業やサービス業に関わる企業では文系の強みを活かして働けるので、就職先の候補として検討してみてください。
理系の外国人留学生に人気のある企業
理系の外国人留学生の場合、専門性が高く技術力を求められる企業が人気です。たとえば、IT業界の企業ではプログラミング知識や設計・開発技術が求められます。ほかにも電気・ガス業界や製造業界に携わる企業では、専門的な知識に加えて資格が必要になることが多いでしょう。その分、専門的に学んだ理系出身者が重宝されるので、人気が集まります。
上記のほか、「外国人留学生に人気の職種とは？仕事の種類や内容を解説」のコラムでも、外国人留学生に人気の就職先を紹介しています。参考にしてください。
ピックアップ記事
日本の企業が外国人留学生を採用する理由
企業が外国人留学生を採用する理由として、海外進出に必要な人材の確保や社内のグローバル化、人手不足解消などが考えられます。日本の企業が外国人留学生を採用するメリットを把握しておくと、面接での自己PRに役立つでしょう。外国人留学生が日本での就職活動を成功させるには、企業が応募者に求める人物像を知るのも大切です。企業の多くは、外国人留学生に対してビジネスレベルの日本語能力と日本の働き方に対する理解を求めています。日本語能力を磨き、海外とは異なる企業文化に対する理解を深めておくと、ほかの外国人留学生より採用されやすくなるでしょう。
企業のグローバル化
日本の企業が外国人留学生を採用するメリットとして、社内のグローバル化が考えられます。外国人留学生は海外で生まれ育っているため、日本人とは異なる視点や考え方を持っているのが特徴です。その強みを活かして、今までになかったアイデアや発想を期待する企業は多いでしょう。また、グローバルな意見を取り入れることで企業成長を促したり、組織全体を活性化したりといった効果も期待されているようです。
ブリッジ人材の確保
日本の企業が海外でビジネスを展開する際、両国の橋渡し役として円滑なコミュニケーションを行う人を「ブリッジ人材」といいます。日本と海外では言語だけでなく文化や常識も異なり、語学力だけでは円滑なコミュニケーションが行えません。しかし、日本人をブリッジ人材として育成するには長期的な教育が必要になるため、外国人留学生の活躍が期待されます。外国人留学生の出身国とビジネスの展開先が一致すれば、企業は教育に掛かるコストを削減できるでしょう。「母国に貢献したい」「日本での就職を実現させたい」という外国人留学生は、母国でビジネスを展開する企業にもエントリーすることをおすすめします。
人手不足解消
日本は少子高齢化によって労働人口が年々減少しているため、人手不足解消のために外国人留学生を積極的に採用する企業もあります。日本は外国人留学生を増やす政策を進めているため、国籍にとらわれず採用の間口を広げれば、若くて優秀な人材を多く雇用できるという考えです。特に、人手不足の企業は内定が出やすい傾向にあるのでチャレンジしてみると良いでしょう。
外国人留学生が日本で就職する方法
日本の就職活動は海外と形式が異なるため、事前に情報収集を行う必要があります。ここでは外国人留学生が就職するまでの流れを解説するので、日本で働きたい方は参考にしてください。
日本の就職活動について知る
外国人留学生が日本で就職する場合、日本人に学生と同じように就職活動を行います。日本の就職活動には「新卒採用」と「中途採用」の2つがあり、外国人留学生が行うのは前者です。新卒採用では在学中の学生を対象に一括採用が行われます。採用は職種を問わず行われており、配属部署や勤務地は入社後に決まるのが一般的です。
大学に通う外国人留学生の場合、就職活動は3年生の夏ごろからスタートします。本格的な就職活動を行う前に、自己分析や企業研究を行いましょう。日本の就職活動では、自己分析ができている学生が好まれる傾向にあります。自分の長所や短所、興味がある分野、将来像などを明らかにして自己PRや志望動機を考えるのに活かしましょう。業界研究では自己分析の結果を踏まえて気になる企業が属する業界を調べたり、どのような種類があるのか把握したりします。大まかな全体像がつかめたら、職種研究や企業研究へと範囲を狭めていきましょう。また、気になる企業がインターンシップを実施している場合、社内の雰囲気や業務内容を知るために参加してみるのがおすすめです。
企業へのエントリーや説明会は、3月～5月ごろに行われます。興味がある企業にエントリーシートを提出しましょう。6月以降は書類選考や面接、筆記試験などが行われ採用の可否が決まります。一般的なスケジュールから遅れて就職活動を始めると応募できる企業の幅が狭まってしまうので、早め早めの行動を心掛けましょう。
日本での就職を叶えるために大切なポイントは、「日本で就職するために必要なこととは？外国人留学生に向けて紹介」のコラムで解説しています。さらに、「外国人留学生が知るべき就職活動の進め方！志望企業に採用されるには」のコラムでは日本の就職活動の特徴を紹介しているので、参考にしてください。
就労できる在留資格に変更する
内定を得て企業との雇用契約を結んだ外国人留学生は、入社までに在留資格の変更申請を行いましょう。外国人留学生が持つ在留資格「留学」では就労が認められません。そのため、入社までに仕事内容に応じた在留資格に変更する必要があります。在留資格によって該当する職種や行える業務が異なるので、事前に確認しておきましょう。
在留資格の変更申請は、住居地を管轄する地方出入国在留管理官署で行えます。申請には申請書と証明写真、在留カード、旅券（パスポート）のほか、日本での活動に応じた資料が必要です。また、申請が許可された場合か収入印紙で4,000円納付します。2週間から1ヶ月ほどで申請が処理されて在留資格の変更が認められますが、不備があった場合はその限りではありません。変更先の在留資格と専攻分野に関連性が認められない場合、申請が却下されてしまうので注意しましょう。春先は4月の入社に合わせて在留資格を変更する人が多く、地方出入国在留管理官署が混み合う傾向にあるため、早めの申請をおすすめします。
日本での就職が決まっている方は、「日本で就職する外国人留学生は留学ビザから就労ビザへ！必要書類を紹介」のコラムも参考に就労ビザへの変更手続きを進めましょう。
就労が認められる在留資格の種類
出入国在留管理庁の「在留資格一覧表」によると、2021年8月時点で就労が認められる在留資格は24種類あります。在留資格ごとに該当する職種が異なるため、申請する際はよく確認しましょう。就労が認められる在留資格とその該当例は以下のとおりです。
・「外交」（外国政府の大使や公使、総領事など）
・「公用」（外国政府の大使館・領事館の職員、国際機関から公務で派遣される者など）
・「教授」（大学教授や助教授、講師など）
・「芸術」（作家や画家、作曲家など）
・「宗教」（外国の宗教団体から派遣される宣教師）
・「報道」（外国の報道機関の記者やカメラマン）
・「高度専門職」（ポイント制による高度人材）
・「経営・管理」（企業の経営者や管理者）
・「法律・会計業務」（弁護士、公認会計士など）
・「医療」（医師や看護師、歯科医師など）
・「研究」（政府機関や私企業などの技術者）
・「教育」（中学や高校の語学教師）
・「技術・人文知識・国際業務」（機械工学の技術者や語学教師、オフィスワーク全般など）
・「企業内転勤」（外国の事業所からの転勤者）
・「介護」（介護福祉士）
・「興行」（プロスポーツ選手や歌手、俳優など）
・「技能」（スポーツ指導者や貴金属の加工職人、パイロットなど）
・「特定技能」（特定産業分野に属する知識や技能を必要とする業務に従事する人）
・「技能実習」（技能実習生）
・「特定活動」（日本で行う活動によっては就労不可）
・「永住者」（就労制限なし）
・「日本人の配偶者等」（就労制限なし）
・「永住者の配偶者等」（就労制限なし）
・「定住者」（就労制限なし）
在留資格を変更する際は、職種や業務内容に応じたものを選ばなければなりません。誤った申請を行うと在留資格の変更申請が認められず、入社に間に合わない可能性があるので注意しましょう。
参照元
出入国在留管理庁「在留資格一覧表」
外国人留学生の就職事情
教育機関を卒業後、日本での就職を希望する外国人留学生は多いものの、就職率は伸び悩んでいます。独立行政法人日本学生支援機構（JASSO）の調査によると、2019年度に卒業した外国人留学生のうち、日本国内で就職したのは全体の36.9%です。外国人留学生の日本における就職率が低い理由として、就職活動に対する知識不足や外国人向けの求人の少なさ、語学試験の難しさなどが考えられるでしょう。外国人が日本で就職するには情報収集が欠かせません。大学や専門学校の就職課に相談してみたり、就職エージェントを活用したりして、効率的に情報を集めましょう。日本語能力に自信がない外国人留学生は、試験の過去問を反復練習するのがおすすめです。
日本政府は外国人留学生の国内における就職率アップを目指しており、グローバル化が進んでいる企業も増加傾向にあります。就職活動のコツを掴めば、外国人留学生でも日本での就職を実現できるでしょう。
参照元
独立行政法人日本学生支援機構（JASSO）「2019（令和元）年度外国人留学生進路状況調査」
自分の専攻や希望に適した企業の探し方
自分の専攻や希望に適した企業の探し方が分からない方は、外国人雇用サービスセンターや就職エージェントに相談してみましょう。外国人留学生が日本で就職するには専攻分野が活かせる仕事でなければならないため、慎重に就職先を決める必要があります。たとえば、ITシステム開発の仕事をしたくても、学校でシステム開発を学んでいなければ在留資格の変更申請が認められません。日本での就職を検討しているなら、そういった事情を踏まえて自分に合う就職先を探すことが大切といえるでしょう。
外国人雇用サービスセンターに相談する
外国人留学生を含む高度外国人材の就職支援サービスとして、外国人雇用サービスセンターがあります。インターネット上で就職活動に関する相談に乗ってくれたり、インターンシップや求人の募集を行っていたりするので、自分に合った企業探しの参考にしてみましょう。東京都のほかに愛知県や大阪府、福岡県に拠点を構えているため、直接足を運んで相談することもできます。
外国人向けの就職支援企業を活用する
外国人留学生に特化した就職支援サービスを活用するのも一つの方法です。企業によっては外国人のスタッフが多く、実体験をもとに親身にアドバイスを行ってくれるので、就職活動の心強い味方といえるでしょう。また、出身国が同じスタッフが在籍していれば母国語でやり取りできるのも魅力です。1人での就職活動に不安を感じたら、就職支援を行っている企業を探してみても良いでしょう。
日本での仕事選びにお悩みの方は、「外国人留学生のための職種や業界の選び方ガイド」のコラムも一読ください。
まとめ
日本で就職したい外国人留学生はさまざまな業界や企業、職種の中から自分に適したものを見つけることから始めましょう。文系の場合は観光業界や金融業界、理系の場合はIT業界や製造業界に属する企業が人気なようです。日本の就職活動では世界的に珍しい「新卒一括採用」を行っているため、スケジュールを把握していないと志望する企業に応募できない可能性があります。教育機関の就職課や就職エージェントを活用して情報収集を行いましょう。なお、入社する企業と専攻分野に関連性がないと在留資格の変更申請が拒否される可能性が高いので、就職先は慎重に決めてください。
