日本で就活を始めるにあたって「貴社と御社の違いが分からない」「SPIって何のこと?」など、分からない用語が多い外国人留学生もいるのではないでしょうか。
このコラムでは、「御社」や「貴社」といった敬語の使い分けや「内々定」や「内定」の違いなど、基本的な就活用語を解説。また、近年よく聞く「ガクチカ」や「サイレント」、「お祈りメール」などについても紹介します。就活が本格的に始まる前に、就活用語をマスターしておきましょう。
目次
基本の就活用語
ここでは日本で就活を行うにあたって、よく耳にする基本的な就活用語について解説します。
有効求人倍率
有効求人倍率とは、求職者1人に対して何件の求人があるかを示す数値です。ハローワークに申し込まれた求人数を、求職者で割って算出しています。
たとえば、求人数が200件で求職者が100人の場合、有効求人倍率は2.0倍。単純計算で求職者1人に対して2件の求人があるため、求職者は仕事を選べる状況といえます。なお、ハローワークを通していないインターネット掲載求人や新卒求人は含まれていませんが、有効求人倍率と景気の動向は比例傾向にあるため、少なからず新卒採用の人数に影響があるといえるでしょう。
正社員・契約社員・派遣社員
正社員は、企業に無期雇用契約で雇われている人材のことです。社会保険が完備され、企業によってはボーナスや退職金が支払われるので、比較的安定した環境で長期的に働けます。
契約社員は、企業に有期雇用で雇われている人材です。契約期間ごとに契約更新の確認をします。社会保険は正社員と同じく完備されていることが多いですが、ボーナスや退職金は無いことがほとんど。契約期間満了で、契約更新されない場合もあります。
派遣社員は人材派遣会社と雇用契約を結び、企業に派遣されて就業している人材のことです。給料は派遣されている企業ではなく、人材派遣会社から支払われます。
福利厚生
福利厚生とは賃金や労働条件以外で、従業員やその家族に対して設けられた制度や施設のことです。福利厚生には法律で提供しなければならないと決められている「法定福利厚生」と、各企業が独自で従業員に提供している「法定外福利厚生」の2種類があります。
雇用保険や健康保険、厚生年金、介護保険、労災保険といった社会保険が法定福利厚生で、通勤手当や健康診断の受診、住宅手当、慶弔休暇、出産・育児休暇などが法定外福利厚生です。
社会保険
社会保険とは国で強制的に加入する保障制度のことで、保険料の一部は福利厚生で企業が支払います。雇用保険・健康保険・厚生年金・介護保険・労災保険の5つを総称した呼び名が社会保険です。病気や怪我、失業、死亡といった不足の事態や老齢時、出産時などに、一定の給付金が支払われます。外国人が日本で働く場合、日本の社会保障制度への加入は必須です。そのため、自国の社会保障制度の保険料と、二重で負担しなければならない可能性があります。
フレックスタイム制度
フレックスタイム制度とは、一定期間中に定められた総労働時間の範囲内で、労働者が始業や終業、1日の労働時間を自由に決められる制度です。9~18時勤務のように勤務時間が固定されていないため、労働者の都合に合わせて働き方を柔軟に調整できます。ただし、1日の労働時間の中で必ず勤務しなくてはいけない「コアタイム」が設定されているのが一般的です。
フレックスタイム制は海外では比較的浸透していますが、日本で取り入れている企業はまだ少ない傾向にあります。
裁量労働制
裁量労働制とは、実際の労働時間に関係なく契約した労働時間を働いたとみなす制度です。みなし労働時間が1日7時間の場合、実際に働いたのが8時間でも5時間であっても、7時間働いたとみなされます。
変形労働時間制
変形労働時間制とは、労働時間を一定の期間内で柔軟に調整する制度のことです。法定労働時間は1日8時間、1週40時間と定められていますが、変形労働時間制であれば日によって1日10時間、1日6時間というように設定し週40時間になるよう調整できます。なお、変形労働時間制は月単位、年単位、週単位で労働時間を設定することが可能です。
試用期間
試用期間とは、採用する人を自社で働くのに適した人材か判断するための期間です。企業は試用期間中に採用者の勤務態度やスキルなどをチェックして、本採用するか決定します。試用期間の長さは、企業によって異なりますが、1ヶ月から半年程度が一般的です。
御社・貴社
御社・貴社は、相手の会社を表すときに使用します。御社は話し言葉、貴社は書き言葉です。そのため、会社説明会や面接で話すときは「御社」、エントリーシートや履歴書に書くときは「貴社」です。
ピックアップ記事
就活用語~準備編~
ここでは、選考に入る前の就活準備段階で耳にする就活用語について解説します。
就職ガイダンス
就職ガイダンスとは、就活の進め方や流れについて学べる説明会です。一般的には、夏休み前から10月頃にかけて学校で行われます。エントリーシートや履歴書の書き方、面接の受け方、OB・OGによる講演など、主催する学校や企業によって行われる説明はさまざまです。
キャリアセンター
キャリアセンターとは、大学にある学生の就活をサポートする機関です。大学によっては、就職課や就職部とも呼ばれています。キャリアセンターでは、就職相談や求人の閲覧などが可能です。就職に詳しい職員がいるので、日本での就活に慣れない外国人留学生にとって頼りになる機関といえます。
自己分析
自己分析とは自身の経験や特性から、適性や強みを知るために行う作業のことです。自己分析をすることで、自分に向いている業種や企業を絞りやすくなったり、自分自身を効果的にアピールできたりといったメリットがあります。自己分析では、自分を客観的に見て分析するのがポイントです。
自己分析については「就活の自己分析の目的とは?外国人留学生のためのやり方を解説」のコラムでもまとめていますので、ぜひご一読ください。
業界研究・企業研究
業界研究では志望する業界の特徴や安定性、今後の動向を調べます。一方、企業研究は志望する企業が自分のやりたいことや価値観に合うかを見極めるために行う作業です。企業研究・業界研究は、志望動機や自己PRを考える際に役立ちます。
キャリアプラン
キャリアプランとは将来的に働きたい会社や就きたいポジション、携わりたい業務などを考え、どのようなステップを踏めば良いか目標を立てることです。就活面接では「10年後はどうなっていたいですか?」というような質問で聞かれる場合があります。
学内セミナー
学内セミナーとは、大学が主催する会社説明会のことです。主に、大学構内で開催されます。学校のOBやOGが企業担当者として来るケースも多いため、一般的な会社説明会よりも詳しい話を聞きやすい環境といえるでしょう。
オープンセミナー
業界・企業について理解してもらうことを目的として、早い時期に開催される会社説明会のことです。会社説明会とは異なり、選考とは直接関係ありません。
会社説明会
会社説明会とは、会社の概要や取り組み、事業内容、業務内容などについて説明する場のことです。1社が単独で行う単独説明会と、数社が集まって行う合同説明会があります。選考の第一段階ともいえるイベントです。
インターンシップ
インターンシップは、企業が一定期間職場体験を受け入れる制度のことです。夏に行われるサマーインターンシップと秋から冬にかけて行われるオータム&ウィンターインターンシップがあります。インターンシップには1日や1週間など短期間で終わるものから、長期間従事するものまで企業によってさまざまです。説明会形式やグループディスカッション形式、業務体験などがあり、日本と海外ではインターンシップの意味合いが少し異なります。
OB・OG訪問
OB・OG訪問とは企業で働く先輩社員を訪ねて、仕事内容、働き方、社内の雰囲気といった企業情報を聞くことです。OBはOld Boy、OGはOld Girlの和製英語で、学校の卒業生を指します。
「日本の就活で行う「OB訪問」とは?外国人留学生向けに手順や注意点を解説」では、OB訪問について詳しくまとめています。手順や気をつけたいことも解説しているので、外国人留学生の方は、ぜひ参考にしてください。
模擬面接
模擬面接とは、面接練習のことです。実際の面接状況を想定し、入室から質疑応答、退室までの一連の流れを練習します。日本の就活では礼儀作法やマナーが重視されるので、特に外国人留学生は模擬面接で入退室や質疑応答のマナーを身につけておくと良いでしょう。
就活用語~選考編~
ここでは、エントリーから就職試験、面接、内定までの就活用語を解説します。
OpenES
OpenESとはWeb上でエントリーシート(ES)や履歴書を作成し、提出できる仕組みのことを指します。Web上で作成したエントリーシートは、OpenESでの提出を受け入れている複数の企業へ提出が可能です。
SPI
SPIとは、適性検査のことです。日本の多くの企業が、就活中の学生の性格や能力を測るために用いています。類義語や対義語、ことわざなどの言語分野と、数学などの非言語分野の問題があり、事前の対策が重要な検査です。外国人留学生は聞き慣れないことわざや言い回しが出題される可能性もあるので、SPI対策は徹底して行っておきましょう。
Webテスト
Webテストとは、インターネット上で受験する採用試験のことです。選考フローの初期に多く実施され、前述したSPIがWebテスト方式で行われることもあります。
エントリー・プレエントリー
エントリーとは、企業にエントリーシートや履歴書を送ることです。一方、プレエントリーは就活サイトや各企業の採用情報ページ上で個人情報や志望動機を登録して、企業に「興味を持っている」と意思表示をすることを指します。
グループディスカッション
グループディスカッションとは出されたテーマに対してグループで話し合いを行い、1つの結論を導きだすというものです。日本の新卒試験でよく行われる選考の一つで、企業によってはグループワークとも呼ばれています。
クレペリン検査
クレペリン検査とは、一桁の足し算をひたすら繰り返す検査です。簡単な足し算の繰り返しから、処理能力や性格的特性をチェックします。日本では、就職試験で行われることが多い検査です。
適性検査
適性検査とは、国語的能力や数学的能力、性格などを判断するための検査です。前述したSPIやクレペリン検査のほかに、玉手箱、TALなどがあります。
集団面接
集団面接とは、複数人の就活生が同時に受ける面接のことで、グループ面接とも呼ばれています。応募者が多い大手企業や人気企業の、一次面接で行われるのが一般的です。1人約10分ほどの持ち時間になるため、短時間で自己アピールをする必要があります。
圧迫面接
圧迫面接とは、就活生に対して威圧的な態度を取ったり、わざと答えにくい意地悪な質問をしたりする面接のことです。海外では、ストレスインタビューと呼ばれています。
最終面接
最終面接とは、その名の通り最後の面接です。企業の役員や代表が面接官になることが多く、応募者を採用するか最終判断を下します。
内々定・内定
内々定とは、採用予定のことを指します。口約束やメールで内々定を伝えられることが多いようです。
一方、内定とは労働契約が成立した状態のことを指します。労働契約の締結は、内定式で行われるのが一般的です。企業から採用通知を受け取り、学生は入社承諾書を提出します。
内定取り消し
内定取り消しとは、労働契約を締結したにも関わらず、企業から一方的に内定の契約を破棄されることです。合理的で正当な理由がない限り、内定取り消しは無効です。
近年よく聞く就活用語
ここでは、近年の日本の就活でよく聞くようになった用語を解説します。
ベンチャー企業
ベンチャー企業とは一般的に独自のアイデアや技術、サービスをもとに、新たな事業やビジネスモデルを展開している企業のことを指します。小・中規模で、成長過程の企業であることが多いです。
スタートアップ企業
スタートアップ企業とは、ベンチャー企業の中でも特に新しいビジネスモデルで急成長している企業のことを指します。既存のビジネスではなく、新規のビジネスモデルであるということが特徴です。スタートアップ企業は、IT業界に多い傾向にあります。
サービス残業
サービス残業とは、賃金が支払われない残業のことを指します。サービス残業は労働基準法違反ですが、日本では多くの企業で行われているのが現状です。「サビ残」と略されて、呼ばれることもあります。
ブラック企業
ブラック企業とは極端な長時間労働やノルマ、残業代の不払い、ハラスメント行為などが横行しているコンプライアンス意識が低い企業のことを指します。なお、ブラック企業と反対の意味を持つ言葉がホワイト企業です。
ガクチカ
ガクチカとは、「学生時代に力を入れたこと」の略語です。面接でよく聞かれる質問で、就活生の間で話題にもよくあがるため、「ガクチカ」と略されるようになりました。
お祈りメール
お祈りメールとは、不採用を知らせるメールのことです。本文に「今後のご活躍をお祈りしています」と書かれていることから生まれました。
サイレント
サイレントとは、企業から選考や面接の結果連絡が来ないことを意味する言葉です。不採用通知を意味する「お祈り」とあわせて、「サイレントお祈り」という言葉もあります。
オワハラ
オワハラとは、「就活終われハラスメント」の略です。企業が内々定を出した就活生に対し、就活を終わるように強制をすることから生まれました。
まとめ
外国人留学生には、聞き慣れなれなかったり理解できなかったりする就活用語も多いでしょう。就活に関する用語は基本的なものから、若者が作り出す略語までさまざま。また、「御社」「貴社」のように同じ意味の敬語でも、話し言葉と書き言葉で異なります。本格的に選考が始まる前に、日本の就活用語をしっかりと理解しておきましょう。
就活の流れや基本的なマナーを知りたい方は、「日本の就活のやりかたは?必要なものやマナーを留学生に向けて解説」のコラムも参考にしてみてください。