「バブル経済」「バブル崩壊」という言葉を知っていても、いつ起きたのかまでは分からない方もいるでしょう。日本では、1991年ごろにバブル崩壊といわれる急激な景気の後退がありました。バブル崩壊後の日本では、株や資産の価値が大きく下落し、数多くの金融機関が破綻します。このコラムでは、バブル崩壊がいつ起きたのか、またその原因を解説。内容を参考にしてバブル崩壊前後の人々や経済の動きを比較してみましょう。
目次
バブル崩壊はいつ起きた?経緯と原因
バブル崩壊が起きたのは1991年とされています。日本は、1986年ごろから好景気に入り、資産価値や株価が勢い良く上昇していました。ところが、日経平均株価は1989年末にピークを迎えたあと、急激に下がります。1990年10月には株価は半分まで落ち込み、日本は不況に入りました。この景気の下落を、泡が急激に膨らんではじける様子にたとえて「バブル崩壊」と呼んでいます。
バブル崩壊は、政府が行った総量規制や公定歩合の引き上げ、地価税の導入などの政策によって起きました。総量規制は銀行が貸せる金銭の上限を定めた政策です。公定歩合は日本銀行が企業に貸す金銭の利息のことで、引き上げると借り入れをしにくくなります。また、地価税の導入により日本の土地を所有すると税金が課せられるようになりました。政府が以上の政策を行った目的は、過剰な地価の高騰を抑えるためです。しかし、政策により土地を購入する人が減り、土地の需要が下がります。その結果、株価が下落し、予想を大きく超える急激な景気の後退が起きました。
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バブル経済で起こった出来事
バブル経済を迎えた日本では、資産価値や株価が高騰し、利益を得た企業や個人が多くの金銭を使うようになりました。ここでは、好景気になった日本でどのような出来事が起きたのか解説します。
不動産ブームが起きた
好景気となり起きたのが、土地や高級住宅を購入する不動産ブームです。地価が勢い良く上がるため、高騰する前に買おうとする企業や個人が増加しました。バブル経済時に一般的だったのが、「地価が下がることは決してない」という「土地神話」の考え方です。また、「土地を購入し売れば差額で必ず利益が出る」とも考えられたため、投資目的で不動産を購入する人も多くいました。その結果、東京都のマンションの値段はサラリーマンの平均年収の約8〜9倍にまで上がります。住宅を購入するのが困難になった人向けに、二世代ローンのシステムまで誕生しました。
高級車やブランド品が売れた
バブル経済時の日本では、高級車やブランド品が次々に売れました。1000万円を超える輸入車に人気が集まったほか、日本国内でも高級車が作られるようになります。また、ファッションでは高級ブランドがブームになりました。海外メーカーだけではなく、日本の衣料品会社による高級路線のDCブランドも人気を博します。多くの人が高級な服やバッグ、靴などを買い求め、全身をブランド品で着飾るファッションが流行したのです。バブル経済時には、高級車やブランド品はステータスの象徴と考えられていました。
娯楽施設が賑わいを見せた
バブル経済に突入した日本では、ゴルフ場やリゾート地などの娯楽施設が次々に設立され、人出で賑わいました。1987年には総合保養地域整備法(リゾート法)が制定され、都市部から離れた地域にも娯楽施設が開発されるようになります。特に盛んだったのが、北海道でのスキー場建設です。また、会員制のゴルフ場を利用できる会員権を所有する人も増加し、人々は娯楽にお金をかけるようになっていたといえるでしょう。
就職活動は超売り手市場になった
あらゆる企業の求人倍率が2倍以上となり、就職活動は超売り手市場になりました。就職希望者を獲得したい企業は、遠くから面接を受けに来た就活生に交通費を出すという策をとります。ほかにも、自社の内定者を他の会社に取られてしまわないように、食事や旅行に招待するなどの接待をしました。当時、大量に採用された新入社員は「バブル就職世代」といわれています。
バブル崩壊のあった1980年代についてさらに詳しく知りたい方は「1980年代の日本を外国人向けに解説!当時の暮らしや情勢を紹介」のコラムも参考にしてください。
バブル崩壊後に起こった出来事
バブル崩壊後の日本では、地価・住宅価格の下落や不良債権の拡大、大手金融機関・住宅金融専門会社の破綻などが起きました。以下では、バブル崩壊後に起こった出来事を解説しているので、参考にしてください。
地価・住宅価格の下落
バブル崩壊後に起きたのが、決して下がることはないといわれていた地価の下落です。1989年に株価が急落しても、地価はすぐには下がりませんでした。しかし、1991年になると地価は下落し始め、1992年には下降の速度を早めます。バブル崩壊後は、地価だけでなく住宅価格も大幅に値下がりしました。この結果、購入した不動産の価値が大幅に下がったり投資目的で購入した物件で大損をしたりといった事態が起きたのです。
不良債権の拡大
企業にお金を貸していた金融機関は、バブル崩壊後に多額の不良債権を抱えます。不良債権とは、金銭の返済が順調に行われず、回収が困難になる可能性が高い貸付金のことです。バブル崩壊の影響を受け業績が悪化した企業は、返済を予定通りに行えない事態に陥りました。金融機関は、返済が予定通り行われない場合、企業の返済計画や自社の会計を立て直す必要があります。しかし、バブル崩壊直後は景気が回復すると考えられ、不良債権に対する対策がとられませんでした。そのため、不良債権は件数と額が増し、後に金融機関に大きな打撃を与えます。
大手金融機関・住宅金融専門会社の破綻
1997年ごろから金融機関や住宅金融専門会社(住専)が相次いで破綻します。住専とは、主に個人の住宅購入へ金銭の貸付を行う会社です。金融機関や住専は、不良債権を抱え担保にしていた土地の価格も下がり、経営状態が悪化していました。政府は、バブル崩壊当初、金融機関や住専を破綻させないよう公的資金を投入します。しかし、1995年ごろより経営状態の悪い金融機関を破綻や再生させる方針に変えました。この結果、金融機関の破綻や合併、住専の経営破綻が起きたのです。
まとめ
日本のバブル経済が崩壊したのは1991年です。政府の政策によってバブル崩壊が起きる前の日本では、空前の好景気で株価・地価が異常な高値でした。本来の経済状況から大きくかけ離れた状況を正すための政策が行き過ぎた結果、好景気は一転し株価が下落し、数十年にも渡って不景気が続いています。日本経済を語るうえでバブル経済が起こった理由や崩壊した原因は、欠かせない話でしょう。