日本では、人々の政治への興味・関心が薄いことや若者の政治離れが問題視されています。日本の政治の在り方に対して、「自分の国と違う」と考える外国人も少なくないでしょう。そこで、このコラムでは日本の政治家の役割や給料、政治の仕組みについて解説します。日本国籍を持たない人が政治家になる方法や、海外出身の議員についても紹介しているので、ぜひチェックしてください。
目次
日本における政治家
日本における政治家とは、選挙によって選ばれた国会議員や地方議会議員、地方自治体の首長のことです。日本は民主主義国家のため、18歳以上の国民一人ひとりが選挙権を持っており、選挙を通して国会議員や地方議会議員、県知事などの「国民の代表」を選出します。
そのため、政治家はすべての国民や住民のために政治を行う義務があり、非常に難しい職業だといえるでしょう。現在の日本では、親族に政治家を持つ「世襲政治家」やタレントとして知名度を上げて政治家に転身した「タレント政治家」も見られます。
日本の政治家の役割と給料
日本の政治家は「人民の、人民による、人民のための政治」を軸に、政治活動を行っています。国民全体の意見を汲みながら、日本がより良い国になるために新しい政策を実施するのが政治家の役割といえます。
また、政治家は仕事量と責任が大きい分、高額な給料が支払われる職業です。特に日本の政治家の給料は世界的にみても高く、2019年に行われた「国会議員報酬国際比較調査」によると、世界3位に位置します。日本では政治家の給料が法律によって定められており、役職についていない一般議員でも月129万円ほどが支払われているうえ、ボーナスを含めると年収は約2180万円と非常に高額です。ほかにも交通費や滞在費などの各種手当を含めれば、政治家は年間で約4500万円を受け取っていることになります。
これらの政治家の給料は国が支払っており、財源は国民から徴収した税金です。そのため、政治家が給料に見合った働きをしていなかったり、問題を起こしたりすると国民から不満が噴出しやすくなります。
女性議員の割合
日本の政治家はほとんどが男性で、衆議院議員に絞ってみると女性議員の割合は全体の9.9%と非常に少なくなっています。この数値は世界的に見ても低く、IPU(列国議会同盟)の報告書によると、日本の国会議員における女性の比率は世界191カ国中166位で、G7の中では最低の値です。女性議員の比率が高い国トップ3はいずれも50%以上を記録しており、日本の男女格差が際立っています。
日本は男女雇用機会均等法や男女共同参画社会基本法により男女平等に向けた政策を進めていますが、政治的な側面から見ると男女平等が成り立ってるとはいえないのが現状です。
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日本と海外で異なる政治家の在り方
国ごとに支持される政策や政治家の在り方は大きく異なるため、日本と海外を比較するとさまざまな違いが見えてくるでしょう。たとえば、日本は未だ女性首相が誕生しない一方で、世界各国では国のトップを女性が務めるケースが増えつつあります。政治は国の主義や方針によって異なるため、日本と海外では政治家の在り方や国民との距離感が異なるでしょう。
ここでは、海外と日本の政治家の在り方の違いをご紹介します。
日本で女性首相が誕生しない背景
日本は2021年現在、第99代まで首相が誕生しましたが、すべて男性議員が務めており、女性が日本の首相に就任したことは1度もありません。海外ではドイツのメルケル首相やイギリスのサッチャー元首相など女性議員の活躍が目立ちますが、前項でも示したとおり、日本の政界に女性議員が圧倒的に少ないことが、女性首相を誕生させることができない理由の一つでしょう。
日本の歴代首相や日本の政党については、こちらの「日本の歴代の内閣総理大臣を紹介!役割や任期についても解説」のコラムで解説しているので、ぜひ、参考にしてください。
日本と海外で異なる政治家と国民の距離感
海外では「政治は国民と政治家が一丸になってつくるもの」という認識が強いのに対して、日本国民は「政治を行うのは政治家」と考えている人が多い傾向にあります。
特に欧米諸国では人権問題への関心が高く、コミュニティの代表として当選したLGBTQや黒人・ヒスパニックの政治家が、それぞれの権利を守るために政治活動を行っています。有権者が「将来を明るいものにしたい」という期待を込めて若い政治家を選ぶことで、政治に新たな考えが取り込まれて国自体の新陳代謝が起こるのです。現在は革新的な政治が望まれることが増えており、国民の声を政治に反映してくれるような、若く、カリスマ性やリーダーシップがある政治家に期待と注目が集まっています。
一方で、日本では当選回数が多く経験豊富な政治家が選挙で選ばれがちです。政治家の平均年齢が高いうえに、過半数が男性議員で占められています。また、一般家庭出身の議員は少なく、多くは親戚に政治家がいる世襲議員や官僚出身者です。また、日本は少子高齢化により若年層が減少傾向にあるため、政治家は票を集めやすい高齢者向けの政策を掲げがちです。そのため、若年層は政治への興味・関心が低い傾向にあります。結果的に、日本の国民と政治家の距離感は遠くなってしまっているのが現状です。
日本で政治家になるための条件
日本で政治家になるには日本国民であることが必須条件です。しかし、日本の政治家の中には外国人もいます。ここでは日本国籍を持たない外国人が政治家になる方法と、実際に活躍している国会議員を紹介します。
日本の選挙法での規定
日本の選挙法では、どの選挙に立候補するときも日本国民であることが必須条件です。それに加えて、参議院議員になる場合は満30歳以上、それ以外の選挙に立候補する場合は満25歳以上である必要があります。また、都道府県議会議員と市区町村議会議員に立候補する場合は、該当する地域の選挙権を持っていることが必要です。
日本国籍を持たない人が日本で政治家になる方法
日本国籍を持たない外国人が日本で政治家を目指す場合、日本国籍を取得する必要があります。日本国籍を取得するには、日本に5年以上在住したうえで法務大臣の許可を得なければなりません。また、日本の法律上、国籍を重複して持つことはできないため、外国籍は手放す必要があります。以上の手順で外国籍を持つ人が日本に国籍を移すことを「帰化」といい、政治家になるために必要な参政権を手に入れられるだけでなく、日本人としての名前や戸籍を持てるようになるのです。
日本に帰化した国会議員
日本に帰化した外国人政治家は、数は少ないものの、コミュニティの代表者として活躍を見せています。現在日本に帰化して活躍している国会議員は、台湾人の父親を持つ蓮舫議員と韓国人の父親を持つ白真勲議員の2人です。ほかにも、日本に帰化して地方議会議員や議長として活躍している人もいます。また、日本で始めて帰化して国会議員になったツルネン・マルテイ氏も、2013年まで参議院議員を務めていました。
まとめ
日本と海外では政治や政治家に対する考え方が大きく異なります。日本では若者の政治離れが問題視されていることから、政治家に政治家としての在り方を見直すべきだという声も少なくありません。日本の政治家について理解を深めたい外国人は、ニュースやインターネットを通して調べてみてください。
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