JLPT(日本語能力試験)のN4レベルは、N5レベルの次に易しい初級レベルの試験です。N4レベルでは大問に「用法」が追加されたものの、N5レベルと試験内容の構成はほとんど変わりません。ここでは、N4レベルの合格点や問題例を紹介します。問題例に挑戦し自分の実力をチェックしてみましょう。また、申し込み方法や受験当日の注意点も解説しているので、参考にしてください。
目次
JLPTとは
JLPT(日本語能力試験)は、日本語を母語としない人を対象にした日本語レベルを測る検定試験です。最上級のN1から最下級のN5まで、5段階のレベルで日本語能力を認定しています。試験は、7月と12月の年に2回実施され、海外からでも受験が可能です。2022年には、国内海外合わせて53の国や地域で実施され、全レベル合わせて約35万人が受験しました。世界情勢により各年で受験者数や実施国に変化はあったものの、2019年には117万人が受験した世界的にも認知度の高い試験です。
JLPTの試験は「言語知識」「読解」「聴解」の3パートで構成されており、日本語を書く能力と話す能力を測るパートは含まれていません。また、マークシート方式の選択問題であるため、読解力と聴解力があれば合格を目指せる試験です。
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JLPTのN4レベルの合格点と合格率
JLPTでは、各レベルにそれぞれ認定基準や科目ごとの合格点が定められています。ここでは、N4レベルの認定基準や合格点、合格率を紹介。受験を検討している方は、参考にしてください。
N4レベルの認定基準
N4の認定基準は、以下の通りです。受験レベルを決める際の参考にしましょう。
基本的な語彙や漢字を使って書かれた話題の文章を読んで理解できる。 |
日常的な場面で、ややゆっくりと話される会話であれば内容をほぼ理解できる。 |
N4レベルでは、読解と聴解において基本的な日本語を理解できる能力が求められます。N5レベルに合格した人や基本的な言葉や短い文章を理解できる人は、N4レベルに挑戦してみましょう。
N5レベルについて詳しく知りたい方は「【JLPT N5】日本語能力試験N5の受験方法や問題について解説!」でも詳しく解説していますのでご覧ください。
N4レベルの合格点
N4レベルは、180点満点の試験で、合格点は90点です。ただし、合格点のほかに、各パートの得点が基準点を超えている必要があるので注意しましょう。基準点は、「言語知識・読解」で38点、「聴解」で19点です。N4レベルは、N5レベルより試験時間が長くなっています。試験中は、時間配分にも気を付けましょう。合格点については、以下の表を参考にしてください。
科目 |
試験時間 |
合格点 |
言語知識(文字) |
25分 |
38点(120点満点) |
言語知識(文法) 読解 |
55分 |
|
聴解 |
35分 |
19点(60点満点) |
また、読解のみ解答して聴解は解答しないなど1つでも受験しない項目があった場合は、不合格になります。合否結果通知においても、解答していない項目があった場合は、解答した分も含め全ての得点は出ません。試験当日は記入漏れのないよう、全ての項目を解きましょう。
N4レベルの合格率
2022年7月のJLPT(日本語能力試験)N4レベルの受験者数・認定者数・認定率は、以下の通りです。
2022年第1回(7月) |
受験者数 |
認定者数(合格者数) |
認定率(合格率) |
国内 |
15,424 |
5,934 |
38.5% |
海外 |
40,120 |
19,389 |
48.3% |
合計 |
55,544 |
25,323 |
45.6% |
N4の合格率は、2019年まではおよそ30~35%でした。2020年以降は世界情勢の変化によって受験者数が減少した一方、合格率は43~50%ほどに上がっています。N5レベルの問題例が簡単だと感じた人やN5レベルに合格した人は、JLPTのN4レベルに挑戦してみましょう。
参照元 日本語能力試験公式Webサイト「N1~N5:認定の目安」 日本語能力試験公式Webサイト「過去の試験データ」
JLPTのN4レベルを受験するメリット
JLPT(日本語能力試験)のN4は「基本的な日本語を理解できるレベル」であるため、就職で有利になることはあまりありません。就職や留学に活かすには、概ねN2以上のレベルが必要です。ただし、JLPTのN4レベル以上の取得は「特定技能1号」の在留資格の取得条件に含まれています。特定技能の在留資格を取得すれば、宿泊施設や介護の現場などで働くことが可能です。そのため、日本での就職においてJLPTのN4を取得するメリットはあるといえるでしょう。
また、JLPTは「読む」「聴く」の項目で認定基準が定められています。「書く」「話す」の項目はないため、日本語を話せるかはJLPTの結果だけでは判断できません。日本で就職したい人は、JLPTの勉強とあわせて、会話力を高める練習も行うと良いでしょう。日本語のコミュニケーション能力は、面接時にアピールできる大きなポイントになります。
JLPTのN4レベルの受験方法
JLPT(日本語能力試験)は、例年7月と12月の年2回開催されており、国内受験の申し込みはインターネットから可能です。ここでは、JLPTの日程と申し込み方法の詳細を紹介します。
試験日程
JLPTは例年第1回が7月、第2回が12月に開催されます。試験日程は、「日本語能力試験JLPT公式Webサイト」または「日本国際教育支援協会の公式Webサイト」に記載されているため、事前に確認しましょう。海外で受験する場合は試験日程が日本とは異なる場合があるため、実施機関に確認しましょう。
申込み方法
7月に行われる第1回試験は3月下旬、12月に行われる第2回試験は8月下旬ごろから申し込みが始まります。日本と海外では受験の申し込み方法が異なるため、注意しましょう。
海外で受験する場合
海外で受験する場合は、試験を受けられる国や地域を調べる必要があります。「日本語能力試験の公式Webサイト」の「海外で受験する」のページを参考に申し込みを進めていくと良いでしょう。また、申し込みは実施機関の指示に従います。受験を希望する国や地域の実施機関に問い合わせてみましょう。なお、海外で受験する場合は申込期間や試験日程も日本とは異なる場合もあるため、注意してください。
日本で受験する場合
日本で受験する人は、申し込み前に「MyJLPT」の登録が必要です。「MyJLPT」を登録することで、受験申し込みや試験結果の確認、ほかのレベルの申し込みもスムーズに行えます。また「MyJLPT」は、受験申込受付が始まる前に個人情報を登録しておくことが可能です。
受験申し込み受付期間が近づくとアクセスが集中し繋がりにくくなることもあるため、余裕を持って登録を済ませましょう。「MyJLPT」については「日本国際教育支援協会の公式Webサイト」に詳しく記載されています。受験申し込み前に確認しておいてください。
当日の持ち物
試験当日の持ち物は以下の通りです。前日までに余裕を持って準備しておきましょう。
- 受験票
JLPTの受験票は、日本国際教育支援協会の指定する日までに送付されます。また、日本で受験する人は、「MyJLPT」の「申込者情報確認・変更」の画面にも受験票が掲載されるので、確認しておきましょう。
- 筆記用具
JLPTはマークシート方式で行われます。HBの鉛筆を数本、またはシャープペンシルを準備しましょう。消しゴムは、ケースを外した状態で持参してください。試験中はシャープペンシルの替え芯のケースも机上に置けませんので注意しましょう。また、ボールペンやサインペンではマークシートに記入できませんので、必ず鉛筆かシャープペンシルを持参してください。
- 腕時計
腕時計は、時間の確認のみが行えるシンプルなものを準備しましょう。携帯電話、スマートフォンの時計、スマートウォッチ、アラームが鳴る時計、懐中時計、置き時計、メモリー機能付きの時計は使用禁止とされています。
- 本人確認書類
場合によっては、本人確認書類の提示を求められることがあります。パスポート、在留カードなど、顔写真のある証明書原本を持参してください。全て有効期限内のものに限ります。
このほか、JLPTの申し込み方法については「JLPT(日本語能力試験)の申し込み方法とは?期限や受験場所も解説」のコラムも参考にしてください。
参照元 日本語能力試験公式Webサイト「海外で受験する」 日本国際教育支援協会公式Webサイト「MyJLPT IDの取得」
JLPTを受験する際に注意すること
JLPTを受験するにあたっては、当日会場で気を付けなければならない点がいくつかあります。守れなかった場合は、試験が全て無効となる場合もあるため注意しましょう。
- 試験会場
受験票に記載された試験会場以外での受験はできません。指定された会場で受験しましょう。また、試験会場に車・オートバイ・自転車で来ることは禁止されています。公共の交通機関を使いましょう。海外で受験する人は、実施機関の指示に従ってください。
- 試験中
試験時間が始まってから入室することはできません。交通機関の遅れによる遅刻も基本的には認められないため、時間に余裕を持って行きましょう。試験当日に欠席した場合、いかなる理由でも受験料は返金されません。試験中は、帽子やサングラスは外してください。また、不正行為とみなされる行動はやめましょう。
- 試験終了時
試験終了後も試験官が「外に出てもいいです」というまでは退室できません。問題を早く解き終わった場合も、試験官の指示があるまでは退室できないため注意しましょう。
試験を受ける際は、実施機関または試験官の指示に従い、注意事項を守りましょう。
JLPTのN4レベルの問題例
ここでは、JLPT(日本語能力試験)のN4の問題例を紹介します。JLPTの試験科目は、言語知識(文字・語彙・文法)と読解、聴解です。N4レベルの言語知識(文字・語彙)には、N5レベルにはなかった「用法」が大問に追加されます。過去の問題を参考に「用法」についても理解しておきましょう。また、日本語能力試験公式Webサイト「問題例に挑戦しよう」ではレベルごとに問題例が紹介されています。問題例を解いて自分の実力を確認しましょう。
言語知識【文字・語彙】
文字・語彙の項目では、漢字の読み書きや言葉の使い方に関する問題が出題されます。漢字の読みは1語に1つではありません。複数の読み方がある漢字もあるので、注意して覚えましょう。
N4の文字・語彙の問題例は、以下のとおりです。
- 問1 ( )のかんじのいちばんいいよみかたを1・2・3・4のなかからひとつえらんでください。
わたしのせんもんは(医学)です。
- かがく
- いがく
- すうがく
- ぶんがく
- 問2( )になにをいれますか。1・2・3・4のなかからひとつえらんでください。
( )しないで、どうぞたくさんたべてください。
- しつれい
- しっぱい
- えんりょ
- はんたい
- 問3 だいたいおなじいみのぶんを1・2・3・4のなかからひとつえらんでください。
だいどころにりょうりがのこっています。
- りょうりはだいどころにまだあります。
- りょうりはだいどころにもうありません。
- だいどころでりょうりをつくっています。
- だいどころでりょうりをよういしています。
- 問4 ことばのつかいかたで、ただしいものを1・2・3・4のなかからひとつえらんでください。
じゅうしょ
- としょかんのとなりのじゅうしょはゆうびんきょくです。
- あしたのかいぎのじゅうしょは5かいです。
- ここにあなたのうちのじゅうしょをかいてください。
- わたしにEメールのじゅうしょをおしえてください。
各問題の解答は以下の通りです。何問正解できたか確認してみましょう。
・問1(2)・問2(3)・問3(1)・問4(3)
言語知識【文法】
N4の文法の項目では、言葉の並び替えや正しい文法の使い方に関する問題が出題されます。並び替えの問題は順番を間違えないよう、一度文を完成させてから解答しましょう。
N4の文法の問題例は、以下のとおりです。
- 問1( )になにを入れますか。1・2・3・4から一つえらんでください。
A「わたしのけしゴム見ませんでしたか。」
B「あ、つくえの下に( )よ。」
- おちています
- おちていません
- おちます
- おちません
- 問2(★)に入るものはどれですか。1・2・3・4のなかから一つえらんでください。
山田さんは( )(★)( )( )です。
- 上手
- ギターも
- ひけるし
- 歌も
各問題の解答は以下の通りです。答えを確認してみましょう。
・問1(1)・問2(3)山田さんはギターもひけるし歌も上手です。
読解
N4の読解の項目では、記載されている短文や中分の内容に関する質問をされます。文章の内容と質問の意味を理解して、正しいものを選びましょう。
N4の読解の項目の問題例は、以下のとおりです。
- 問1 つぎのぶんしょうをよんで、しつもんにこたえてください。
【ぶんしょう】「中野コーヒー」では、インターネットでコーヒーを買うことができます。コーヒーを送ってもらうには、普通200円かかりますが、500グラム以上頼むと、ただになります。そして500グラム以上買うと、200円安くなります。
【しつもん】インターネットで、「中野コーヒー」から100グラム400円のコーヒーを500グラム買いたいです。いくらになりますか。A・B・C・Dのなかから一つえらんでください。
A.1,700円
B.1,800円
C.2,000円
D.2,200円
問題の解答は以下の通りです。
解答(B.1,800円)100グラム400円のコーヒーを500グラム買うと、2000円になります。(500グラム以上で送料が無料「500グラム以上頼むと、ただになります」)2000‐200=1800円(500グラム以上買うと200円安くなります)
聴解
N4の聴解の問題には、録音で質問を聞いてから本文を聞き、問題用紙に書いてある文章のなかから正しいものを選択する形式と、問題用紙に書いてある絵をみながら答えを選ぶ形式があります。本文も質問も録音で聞いて答えるため、短い発話を聞いてポイントを理解し、適切な答えを選ぶ能力が必要です。『日本語能力試験公式問題集』には聴解問題の音声ファイルがあるので、聴解の問題に挑戦してみましょう。
JLPTの過去問について知りたい方は「JLPT(日本語能力試験)の過去問や認定の目安をレベル別に紹介」のコラムも参考にしてください。
参照元 日本語能力試験公式Webサイト「問題例に挑戦しよう」 日本語能力試験公式Webサイト『日本語能力試験公式問題集』
まとめ
JLPT(日本語能力試験)のN4の認定基準は、「基本的な日本語を理解できる」レベルです。JLPTの試験科目には、言語知識(文字・語彙・文法)と読解、聴解があります。スピーキングやライティングはなくマークシート方式の試験です。過去の問題を中心に試験対策を行い、N4レベルの合格を目指し学習を進めましょう。