日本語能力試験(JLPT)を受ける外国人のなかには、「ほかの日本語試験との違いは?」「JLPTを受験するメリットは何?」と気になる方もいるでしょう。そこで、このコラムではJLPTの受験料や各レベルの試験概要を解説。JLPTを受験するメリットもまとめています。受験を控えている外国人は、このコラムでJLPTへの理解を深め試験に臨みましょう。
目次
JLPTの受験料
日本語能力試験(JLPT)を日本で受ける場合、受験料は一律6,500円です。JLPTは日本語を母語としない人を対象とした世界最大規模の日本語試験で、日本国内外で実施されています。N1~N5とレベルが分かれており、数字が小さいほど試験の難易度が高いです。外国人を対象にした日本語試験はほかにもあり、ビジネス日本語能力テスト(BJT)や実用日本語検定(J.TEST)、実用日本語運用能力試験(TOPJ)などがあります。それぞれビジネスシーンでの日本語能力を測定したり、日常生活でのコミュニケーション能力をチェックしたりと目的が異なるので、自分に適した日本語試験を受けましょう。なお、JLPTはビジネスや進学、日常会話などすべての目的に対応しています。
JLPT以外の日本語能力を測る試験の受験料はBJTが7,000円でJ.TESTが5,200円、TOPJが5,000円です。実施団体や試験科目によって受験料にばらつきがあるので、日本語試験を受ける際は必ず募集要項を確認することをおすすめします。
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JLPTの受験手続きの流れ
JLPTは日本と海外の両方で受験できますが、それぞれ受験手続きが異なります。JLPTを受験する方はスムーズに受験手続きを進められるように、流れを確認しておきましょう。
日本の場合
JLPTは7月と12月の年2回実施されるため、受験する方は日本国際教育支援協会のWebサイトで詳細な日程を確認しましょう。7月の第1回試験は3月下旬から4月中旬、12月の第2回試験は8月下旬から9月中旬の間に申し込みと受験料の支払いを行います。日本でJLPTを受験する場合はオンライン上での受付のみなので、あらかじめ専用サイトの「MyJLPT」に登録していると手続きがスムーズです。申し込み後は受験票が届くのを待ちます。第1回試験では6月中旬、第2回試験では11月中旬ごろに受験票が届くでしょう。試験終了後は受験者全員に合否結果通知書が送られ、合格者には日本語能力認定書が交付されます。第1回試験の場合は9月上旬、第2回は2月上旬からMyJLPTで結果の確認が可能です。
海外の場合
海外でJLPTを受ける場合は、最初に試験の実施都市と実施期間を調べます。海外の試験も7月と12月に行われますが、実施都市によってはどちらかしか行わないので事前に確認しましょう。実施都市・実施機関の一覧は日本語能力試験のWebサイトでチェックできます。受験地を決めたら実施機関に連絡し、申し込み方法を確認して受験案内(願書)を入手しましょう。第1回試験の場合は3月~4月ごろ、第2回試験は8月~9月ごろに申し込みや受験料の支払いを行います。なお、受験料や受付期間は受験地によって異なるので、実施機関に確認するのが確実です。申し込み後実施機関から受験票が届くので、試験日まで保管しておきましょう。
JLPT受験後は、実施機関から受験者全員に「日本語能力試験認定結果および成績に関する証明書」が送られます。第1回試験の場合は9月、第2回試験では3月ごろに試験結果が分かるでしょう。なお、合格者には日本語能力認定証明書も交付されます。
詳しい申し込み方の詳細や時期については、「JLPT(日本語能力試験)の申し込み方法や期間を外国人に向けて解説」でも、まとめています。N1からN5までの認定基準も解説しているので、参考にして申し込み手続きを行いましょう。
JLPTの評価基準
JLPTはN1~N5の5段階にレベル分けされており、数字が小さくなるほど難易度が上がるのが特徴です。JLPTでは「読む」「聞く」という言語行動から日本語能力を測定しています。また、読んだり聞いたりするために文字や語彙、文法などの言語知識も必要です。受験するレベルに悩んでいる方は、以下の評価基準を参考にしましょう。
N1
N1は実生活における幅広い場面で使われる日本語を理解できるレベルです。読解では、幅広い話題について書かれた新聞の論説や論理的でやや複雑な文章、抽象度が高い読み物を読んで文章の構成や内容を理解することが求められます。また、小説や随筆などの内容に深みがある読み物を読んで、話しの流れや詳細な表現意図を理解する力も必要です。
聴解では自然なスピードのニュースや講義、まとまりのある会話を聞いて、登場人物の関係性や内容の論理構成を詳細に理解したり要旨を把握したりすることが求められます。N1の認定を受けるにはネイティブ並みの日本語能力が必要です。読解力と聴解力に自信がある方は、N1レベルを受験してみましょう。
N1の問題例、試験の申し込み方法について知りたい方は、「日本語能力試験(JLPT)N1の問題例を紹介!合格するメリットも解説」のコラムも参考にしてみてください。
N2
日常的な場面はもちろん、より幅広い場面で使われる日本語もある程度理解できるのがN2レベルです。一般的な話題の読み物を読んで話しの流れや表現意図を理解したり、さまざまな話題が書かれた新聞や雑誌の記事を読んで内容を理解できる読解力が求められます。また、聴解では日常的な場面や幅広いシーンで自然に近いスピードのニュースやまとまりのある会話を聞いて、話しの流れや登場人物の関係性を理解できるのが認定の目安です。ある程度日本語能力に自信がある方はN2レベルの受験をおすすめします。
「JLPT(日本語能力試験)N2のレベルはどのくらい?勉強法を知って合格を掴もう」では、N2の試験で求められる能力もまとめています。N2の受験を検討している外国人の方は、ぜひチェックしてみてください。
N3
日常会話レベルの日本語をある程度理解できるのがN3レベルです。読解では新聞の見出しから概要を把握したり、日常的な場面で目にする難易度がやや高い文章は言い換え表現があれば、要旨を理解できたりします。聴解では、日常的な場面でやや自然に近いスピードのまとまりのある会話を聞いて、登場人物の関係性とあわせて話の具体的な内容を掴めるレベルです。ある程度日本語での日常会話ができる方は、N3レベルの受験を検討してみましょう。
「日本語能力試験(JLPT)N3のレベルとは?過去問に挑戦してみよう」では、中間であるN3レベルを中心に、試験の難易度や合格率も解説しています。これからJLPTを受験する外国人の方は、ぜひチェックしておきましょう。
N4
基本的な日本語を読んだり聞いたりできるのはN4レベルに該当します。日常生活のなかでも身近な文章で、基本的な語彙や漢字を使って書かれていれば読んで理解できるレベルです。また、日常的な場面でややゆっくり話される会話であれば、内容をほとんど理解できるのが認定の目安になります。日本語教室に通っている外国人や独学で勉強を行っている方は、N4レベルからチャレンジするのがおすすめです。
「JLPT(日本語能力試験)N4の認定基準や問題例を外国人に向けて紹介」では、N1~N5の認定基準をまとめているほか、N4の試験問題の例も紹介しています。N4の受験を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
N5
N5は基本的な日本語をある程度理解できるレベルです。ひらがなやカタカナ、日常生活で使われる基本的な漢字で書かれた定型的な言葉や文章であれば読んで理解できます。聞き取りは、教室や身の回りといった日常生活でよくある場面でのゆっくりとした会話であれば、必要な情報を把握できるのが目安です。日常的に日本語を使わない生活をしている方は、N5レベルから受験してみましょう。
N5の合格目安を知りたい方は、「JLPTのN5レベルは難しい?問題例や受験の流れを外国人向けに解説」をご一読ください。N5の問題例や、JLPTの受験方法について詳しく知ることができます。
JLPTを受験するメリット
さまざまな日本語試験のなかからJLPTを選ぶメリットとして、日本への留学やビジネス、日常会話など幅広いシーンで活用できることが挙げられます。JLPTは外国人の日本語能力の基準として用いられており、ほかの日本語試験でも推定Nレベルが定められていることが多いです。JLPTのレベルによっては留学や就職の必須条件になっていたり、優遇を受けるために必要だったりするので受験して損はありません。ここでは、JLPTを受験する主なメリットを紹介します。
日本の出入国管理上の優遇措置を受けられる
JLPTのN1・N2の合格者には、高度人材ポイント制による出入国在留管理上の優遇制度に利用できるポイントが付与されます。高度外国人材を対象にした制度で、学歴や年齢、資格などをポイントに換算して70ポイント以上あれば優遇措置を受けられる仕組みです。N1では15ポイント、N2では10ポイントが付与されます。
優遇措置の内容は、入国審査や在留手続きの優先処理や在留期間「5年」の付与、在留歴に係る永住許可要件の緩和などです。日本で暮らすうえでさまざまな優遇を受けられるので、JLPTを受験してポイントの加算を狙うのも良いでしょう。
国家試験の受験資格を得られる
海外で医師や看護師、助産師などの免許を持つ人が日本の国家試験を受験するには、JLPTのN1の認定が必要です。なお、国家試験を受けるにはそのほかの要件も満たさなければならないので、詳しくは募集要項を確認しましょう。
EPA看護師・介護福祉士候補者の選定条件を満たせる
EPA(経済連携協定)に基づく看護師・介護福祉士の候補者選定の条件を満たすには、JLPTで指定レベルの認定を受ける必要があります。インドネシアとフィリピンの候補者はJLPTのN5、ベトナムの場合はN3以上が選定条件です。
中学校卒業程度認定試験で一部試験が免除される
満15歳以上の外国籍を持つ方が中学校卒業程度認定試験を受ける際、JLPTのN1またはN2の認定を受けていると国語の試験が免除されます。中学校卒業程度認定試験に合格すれば、日本の高校への入学資格が与えられるため進学が可能です。
まとめ
日本語能力試験(JLPT)は日本語を母語としない人を対象にした世界最大規模の試験で、日本で受験する場合の受験料は一律6,500円です。海外では現地通貨での支払いになるため、実施機関に問い合わせましょう。JLPTは年2回実施されており、認定レベルによっては日本への留学や就職に良い影響をもたらします。これからJLPTを受ける方は、このコラムを参考に自分の実力や目的に合わせたレベルを受験して、今後の生活に役立ててください。
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