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特定技能「ビルクリーニング」の在留資格を持つ外国人は、「建設物内部の清掃」と「清掃に関連する業務」が行えます。幅広い業務が行えるため、人手不足の企業の大きな助けになるでしょう。
このコラムでは、特定技能「ビルクリーニング」の概要や行える業務を解説します。また、特定技能外国人を受け入れる企業の要件も紹介。内容を参考にして、外国人雇用を進めましょう。
目次
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ビルクリーニング業界は人手不足が深刻な状況です。ここでは、有効求人倍率から見る人手不足の現状や人材が集まらない理由を解説します。
厚生労働省による「第1回ビルクリーニング分野特定技能協議会」の資料によると、2017年のビル・建物清掃員の有効求人倍率は2.95倍でした。年々有効求人倍率は上がり続けており、今後も人手不足の状況は続くと見られます。
ビルクリーニング分野の人手不足は、人材が集まりにくい業界なのにも関わらず、需要が急増していることが原因といえます。
清掃関係の職種は、体力を使う仕事にも関わらず年収が低くなりがちで、人材を集めるのが難しい業界です。また、業務時間が限定されていることから非正規での募集が多く、若年層の応募が集まりにくくなっています。そのため、高齢化が進んでいる状況です。
上記のように、人材が不足しているのにも関わらず、ビルクリーニングが必要な「特定建造物」は増え続けています。特定建造物とは、建造物衛生衛生法で特に衛生を保つ必要があるとされている場所のことです。不特定多数の人が出入りする興行場、百貨店、店舗、事務所、学校などのうち、3,000平方メートル以上(小学校、中学校等は8,000平方メートル以上)の建物が該当します。特定建造物の数は2009年度末時点で41,757棟だったのが、2021年度末時点では47,530棟と着々と増えている状況です。
ビルクリーニング業界全体で、ロボットによる効率化や労働環境の整備などの対策が進められているものの、国内だけで雇用を確保するのは今後難しいでしょう。建築物衛生法を守り、不特定多数の人が出入りする特定建築物の衛生環境を適切に管理することは、公衆衛生上重要な仕事です。日本政府は人手不足を外国人雇用で補うために、後述する特定技能「ビルクリーニング」の在留資格を創設しました。
参照元 厚生労働省「資料5 ビルクリーニング分野について」 e-Stat「平成21年度衛生行政報告例」 e-Stat「令和3年度衛生行政報告例」
在留資格「特定技能」は、人手不足の業界での外国人雇用を拡充することを目的に創設されました。ビルクリーニング分野も特定技能の対象です。この項目では、特定技能「ビルクリーニング」の在留資格の概要を解説します。
特定技能「ビルクリーニング」は、ビルクリーニング分野で就労する外国人を増やすことを目的に作られた在留資格です。2019年4月に特定技能の在留資格が創設される前まで、ビルクリーニング分野で働けるのは技能実習生や留学生、身分系の在留資格を持つ外国人に限られていました。
技能実習生は業務の制限があったり留学生は週28時間しか働けなかったりと、制約が多くあります。しかし、特定技能の在留資格を持つ外国人は、技能実習生や留学生より幅広い範囲の業務を行うことが可能です。また、ほかの在留資格より比較的取得が容易という特徴もあります。在留資格「特定技能」の創設により、ビルクリーニング分野で働ける外国人の間口が大きく広がりました。
特定技能「ビルクリーニング」には1号と2号があります。1号では5年間、2号では事実上無期限での日本在留が可能です。まず1号の在留資格でビルクリーニング業に従事したあと、特定技能2号評価試験に合格すれば移行できます。
ビルクリーニング分野ではこれまで、1号のみ受け入れが可能でした。しかし、2023年6月9日の閣議決定にて2号への移行ができるようになったのです。今後試験制度が整い次第、受け入れが開始されます。
特定技能の在留資格については「特定技能とはどのような在留資格?簡単にわかりやすく解説【2号範囲拡大】」や「特定技能1号と2号の違いとは?【2023年6月に方針変更決定】」のコラムで詳しくまとめています。
参照元 出入国在留管理庁「特定技能制度」
特定技能「ビルクリーニング」の在留資格で外国人が行えるのは、「建設物内部の清掃」と「清掃に関連する業務」です。内部清掃には、ホテルや旅館などの客室のベットメイキングも含まれます。また、関連業務として建物外部のガラスや外壁の清掃、資機材の整備、運搬作業なども可能です。ただし、関連業務のみ行うことは許可されていません。
外国人が特定技能「ビルクリーニング」の在留資格を得るには、2種類の試験に合格する必要があります。ただし、ビルクリーニング分野で技能実習2号を良好に修了した技能実習生(3年間の技能実習を修了した実習生)は、試験免除で特定技能の在留資格への移行が可能です。
特定技能「ビルクリーニング」の在留資格を得るには、ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験と日本語能力を測る試験に合格する必要があります。ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験は、全国ビルメンテナンス協会が実施する試験です。実技試験のみで学科試験は行われません。詳細は次の見出しで詳しくまとめています。
日本語能力を測る試験では、日本語能力試験(JLPT)のN4もしくは国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)のA2レベルの認定が必要になります。どちらのテストも、基本的な日本語能力がありコミュニケーションが取れる外国人であれば、合格は難しくありません。
JLPTは世界最大規模の日本語能力を測る試験で、年2回実施されています。JFT-Basicは特定技能の在留資格申請のための試験ともいわれており、年6回と実施回数が多いのが特徴です。
ビルクリーニング分野で技能実習2号を優良に修了した技能実習生は、必要な2つの試験が免除されます。もし、違う分野で技能実習を行っていた場合でも、日本語試験は免除です。
技能実習を行えるのは最長5年ですが、特定技能に移行すれば、さらに5年ビルクリーニング分野で就労ができます。業務を覚えた技能実習生は帰国しなくても済み、企業もスキルを身に付けた外国人を継続雇用できるのです。現在技能実習生を受け入れている企業は、特定技能制度の利用を検討してみても良いでしょう。
ここでは、ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験の概要を紹介します。
試験は「判断試験」と「作業試験」が行われます。
判断試験は、問題用紙に書かれた写真やイラストから適切なものを選ぶ形式です。掃除用具の種類や掃除の手順、清掃中の接客などについて適切なものを選択できるかが問われます。
作業試験は、会場で用意された道具を使って実際に清掃作業を行う形式です。「床面の定期清掃作業」「ガラス面の定期洗浄作業」「洋式大便器の日常清掃作業」を行います。
合格の最低基準は判断試験と作業試験両方で得点率60%以上です。ただし、合格点は試験の都度決定されます。
ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験は、年に2~4回程度、日本の数ヶ所の地域で行われています。また、20名以上の受験者がいれば、事業主の申請により随時出張試験を受けることも可能です。
日本国内だけでなく、国外での受験も行われています。過去には以下の国で試験が実施されました。
インドネシア、ミャンマー、フィリピン、タイ、カンボジア
試験日程や実施要領は国によって異なるので、都度確認が必要です。
ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験の練習問題は用意されていません。ただし、試験を主催する全国ビルクリーニング協会が、過去問題や多言語の学習テキストを用意しています。
参照元 公益社団法人全国ビルメンテナンス協会「特定技能」
ビルクリーニング業では、特定技能外国人を必ず直接雇用で受け入れましょう。そのほかに、ビルクリーニング分野特定技能協議会への加入や建築物清掃業または建築物環境衛生総合管理業への登録も行います。
建築物衛生法の登録制度にて「建築物清掃業」か「建築物環境衛生総合管理業」へ登録している企業でなければ、特定技能外国人は受け入れられません。
それぞれの分類は以下のとおりです。
建築物における床などの清掃を行う事業
建築物における清掃、空気調和設備および機械換気設備の運転、日常的な運転などならびに空気環境の測定、給水および排水に関する設備の運転などならびに給水栓における水の遊離残留塩素、色、濁り、臭い、味の検査など
これらの登録を行うためには、要件(登録基準)があり、要件を満たさなければ登録できません。具体的な登録方法は、都道府県によって多少異なります。
ビルクリーニング業で特定技能外国人を受け入れる際は、直接雇用が条件です。派遣雇用での受け入れはできないので注意しましょう。ビルクリーニング分野に関わらず、ほとんどの特定技能の分野で派遣雇用は禁止です。特定技能外国人の派遣雇用は、業務の特性上繫忙期と閑散期が生じる農業と漁業分野のみ許可されています。
ビルクリーニング業者が特定技能外国人を受け入れるには、ビルクリーニング分野特定技能協議会の構成員になる必要があります。ビルクリーニング分野特定技能協議会は、ビルクリーニング分野での特定技能外国人の適切な受け入れを監理するべく創設されました。特定技能外国人の受け入れ開始から4ヶ月以内に加入手続きを行います。なお、加入するだけではなく、ビルクリーニング分野特定技能協議会および厚生労働省が実施する調査や指導に応じることも、受け入れ要件の一つです。
特定技能「ビルクリーニング」の在留資格が創設されたことにより、人材不足解消の足掛かりができました。ビルクリーニング分野では、2019年からの5年間で37,000人の特定技能外国人の受け入れを見込んでいます。このコラムの内容を参考にして、特定技能外国人の雇用を検討してみましょう。
監修:濵川恭一
外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net