日本語を勉強している人のなかには、ビジネスで使うあいさつや日本語表現を知りたい方もいるでしょう。日本のビジネスシーンでは、朝以外の時間帯に「おはようございます」と言ったり、「こんにちは」の代わりに「お疲れさま」と言ったりします。
この記事では、日本語ならではのビジネスで使うあいさつを一覧で紹介。また、電話に出るときに使う日本語やクッション言葉、敬語についてもまとめています。日本で働く際の参考になることを目指して執筆したので、仕事をするときはぜひ確認してみてください。
目次
ビジネスでは敬語を使う
ビジネスの場では敬語を使います。ここでは、敬語の種類や相手によっての使い分けを紹介。相手に敬意を伝えられるコミュニケーションが取れるよう、ぜひチェックしてみましょう。
敬語の種類とは
敬語とは、相手に敬意を示すために使う言葉です。大きく分けて、「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の3種類があります。2007年に発表された文化審議会の「敬語の指針」では、3種類を細分化し5種類としているため、より詳しく知りたい方は調べてみましょう。
尊敬語は、相手の行為や状態などを表すときに使います。たとえば、「見る」の尊敬語は「ご覧になる」です。相手を高く位置づけて表現します。
謙譲語は、自分や自分の行為などをへりくだって表す言葉です。相対的に相手を立てる効果があります。「見る」の謙譲語は「拝見する」です。
丁寧語は、話す相手に対して、丁寧な言葉遣いをします。「見る」に対して「見ます」のように、「です」「ます」「ございます」といった語尾になるのが特徴です。
ビジネスで敬語を使う場面
上司や取引先などには敬語で話しましょう。注意が必要なのは、取引先の人に自分の上司のことを話す場面です。普段は上司の行為に尊敬語を使いますが、取引先に自分の上司の行為について話す場合は謙譲語を使います。敬語は目上の人だけでなく、親しくない人や身内でない人に対しても使う言葉です。そのため、取引先から自分の部長に電話がかかってきた場合にも、「山田は席を外しております」と、部長の名字を呼び捨てにします。
参照元 文化庁「報告・答申・建議等(文化審議会 国語分科会 国語課題小委員会)」
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ビジネスで使う日本語のあいさつ
ビジネスで使う日本語のあいさつには、「おはようございます」や「ありがとうございます」をはじめ、「お疲れさまです」「お世話になっております」などがあります。以下に、ビジネスで使う日本語のあいさつを一覧で紹介するので、英語表現や直訳を参考にしながらご覧ください。
おはようございます
日本語の「おはようございます」は、朝会った人に対して使うあいさつです。
- 英語:「Good morning.」
- 直訳:「It’s early.」
日本のビジネスシーンにおいては、朝だけでなく昼や夕方、夜に会った人に対しても「おはようございます」と言う習慣があります。出勤後、最初に顔を合わせる相手には「おはようございます」とあいさつする考え方があるのです。また、「ございます」を省略した「おはよう」も、あいさつとしては間違いではありません。しかし、これは親しい間柄や部下などに対する言い方です。ビジネスで使う場合は、失礼にならないよう省略せずに「おはようございます」と言いましょう。
お世話になっております
「お世話になっております」は、主に取引先の人に対して使うあいさつです。
- 英語:「Thank you for your kind cooperation. I appreciate your cooperation.」
- 直訳:「To become assistance, to be taken care of, to be looked after」
直接顔を合わせるときはもちろん、電話やメールをするときも、最初のあいさつとして「お世話になっております」と言います。現在も繋がりがある相手に使うあいさつなので、全く関わりがない人には使いません。「お世話になっております」には、「取り引きをしていただき、ありがとうございます」「面倒を見ていただき、ありがとうございます」といった気持ちが込められています。
よろしくお願いします
「よろしくお願いします」は、文脈によって多様な捉え方ができる日本語のあいさつです。
- 英語:「Thank you in advance, I look forward to working with you, I look forward to seeing you, thank you for your continued assistance.」
- 直訳:「please properly, please well」
「期待しています」「良い結果を出してください」といった意味のほか、「頑張ってください」「一緒に頑張りましょう」などの気持ちが込められている言葉です。「よろしく」という言葉は、ビジネスシーンだけでなく日常的に使われています。深い意味はなく、会話の最後のあいさつとして使う場合もあるので覚えておきましょう。
ありがとうございます
「ありがとうございます」は、感謝の気持ちを伝える言葉として頻繁に使います。英語の「Thank you very much」と、意味や使い方は同じです。
ただし、日本語では「ありがとうございます」の過去形である、「ありがとうございました=Thank you very much for the thing you did」を使う場面も多くあります。たとえば、会議で使う資料を、今手渡されたのであれば「ありがとうございます」です。しかし、1時間前の出来事にお礼を言うときは、「先ほどはありがとうございました」となります。このように感謝の気持ちを伝えるときに過去形を使うのは、日本語特有の表現といえるでしょう。
申し訳ございません
「申し訳ございません」は、謝罪の気持ちを表す言葉です。
- 英語:「I am terribly so sorry, there are no words to express my regret, I’m sorry I have no excuse for my actions」
- 直訳:「I have no excuse to say.」
「ごめんなさい」や「すみません」と同じ意味ですが、ビジネスシーンにおいては、より丁寧な言い方である「申し訳ございません」を使います。また、謝罪すべき出来事から時間が経過している場合は、「申し訳ございませんでした」と過去形を使うのが一般的です。さらに、「誠に」を付け加えて「誠に申し訳ございませんでした」と言うと、謝罪の気持ちをより深く伝えられます。
行ってまいります
「行ってまいります」は外出するときに言う言葉です。
- 英語:「See you later, I’ll be back.」
- 直訳:「I’m going (and coming)」
「就業時間中ですが、私はオフィスを離れます」という状況を伝えるために、ほかの従業員や上司に向けて言葉をかけます。再度オフィスに戻る予定がある・ないに関わらず、外出時に使うあいさつです。ほかの従業員から「行ってまいります」と言われたときは、「いってらっしゃい」と返事をしましょう。
ただいま戻りました
「ただいま戻りました」は、外出から帰って来たときに使います。
- 英語:「This is a polite way to say that I have come back after going outside the office for an errand, meeting, or appointment.」
- 直訳:「I’m back」
従業員や上司に向けて、自分が戻ったと伝えるために言うあいさつです。「行ってまいります」とセットで使います。また、ほかの従業員から「ただいま戻りました」と言われたときは、「おかえりなさい」と返事をしましょう。
お先に失礼します
「お先に失礼します」は、ほかの従業員よりも早い時間に帰宅するときに言うあいさつです。
- 英語:「See you tomorrow. Have a good evening. I'm gonna go home. I'm leaving for today. See you next week.」
- 直訳:「Excuse me for leaving early」
自分が帰宅する時間に就業している人に対して、「あなたよりも先に帰宅してすみません」という気持ちが込められています。「お先に失礼します」と言われたときは、「お疲れさまです」または「お疲れさまでした」と返事をしましょう。
お疲れさまです
「お疲れさまです」は、ビジネスシーンで使うあいさつです。
- 英語:「Good work, thanks for the hard work, Hello/Hi(use toward co-workers)」
- 直訳:「(you)appear tired, you must be tired(from work)」
日本の職場では、「こんにちは」や「こんばんは」をあまり使いません。その代わりに、誰かと顔を合わせたときは、互いに「お疲れさまです」とあいさつを交わします。また、ビジネスではメールや電話をするときも、「お疲れさまです」と言ってから用件を伝えるのがマナーです。会議や仕事の終了時には、過去形の「お疲れさまでした」を使う場合もあります。
「お疲れさまです」はもともと、「疲れるほど働いてくれてありがとう」という気持ちが込められている言葉です。相手や自分が、実際に疲れているかどうかは重要ではありません。日本のビジネスで使う定番のあいさつなので、積極的に使ってみましょう。
「otsukaresama(お疲れ様)の正しい意味や使い方とは?」では、意味や使う場面を詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
ビジネスで電話をするときの日本語
ここでは、ビジネスで電話を使うときの例文を紹介します。
電話に出るとき
ビジネスで電話がかかってきたら、「はい。●●(社名)の×××(自分の名前)でございます」と電話に出ます。相手が名乗ったあとに、「お世話になっております」と言いましょう。日常生活で使う電話のあいさつに「もしもし」という表現がありますが、仕事では使いません。3コール以内に出られなかった場合は「お待たせいたしました」と最初にお詫びの言葉をかけます。
相手の言葉を聞き取れなかったとき
相手の言葉を聞き取れなかったときは、失礼のないよう「恐れ入ります。もう一度お願いいたします」と言います。名前を聞き取れなかった場合は、「恐れ入ります。お名前をもう一度お伺いしてもよろしいでしょうか」と、謝罪の気持ちを込めて丁寧に尋ねましょう。
担当者に代わって欲しいと言われたとき
担当者に電話を代わって欲しいと言われたときの例文は以下のとおりです。
【すぐ担当者に代われるとき】
- 「●●ですね。少々お待ちくださいませ」
- 「ただいまお繋ぎいたします。少々お待ちくださいませ」
【担当者がいないとき】
- 「申し訳ございません。ただいま●●は席を外しております」
- 「申し訳ございません。本日●●は終日不在でございます」
担当者に電話を代われない場合は、「こちらから折り返しお電話差し上げてもよろしいでしょうか?」と一言付け加えると良いでしょう。なお、ビジネスで使う「席を外している」は、「出社しているが、この場所にはいない」という意味です。
伝言を聞くとき
担当者が不在のときは「よろしければご用件をうかがって、●●にお伝えいたします」と言って、伝言を伝える必要があるかどうかを確認します。伝言を聞いたあとは、「恐れ入りますが、お名前と電話番号をお聞きしてもよろしいでしょうか?」と尋ね、相手の会社名・名前・電話番号を必ずメモしましょう。
電話を切るとき
電話を切るときは、「それでは、失礼いたします」と声をかけます。日本のビジネスシーンでは、電話を掛けた人から先に電話を切るのがマナーです。会社で電話を受けた際は、相手より先に切らないようにしましょう。
「日本のビジネスマナーを解説!服装から人への接し方まで紹介!」では、日本のビジネスマナーや働き方の特徴について解説しています。興味がある方は、ぜひご覧ください。
ビジネスで使う日本語のクッション言葉
ビジネスでは相手に用件を伝える前に、クッション言葉を使うことも大切です。以下で、よく使う表現を紹介します。
話しかけるとき
仕事中に話しかけるときは、どのような用件の場合でも「お忙しいところすみません」「お仕事中に恐れ入ります」などのクッション言葉を使いましょう。続けて、「今、少々お時間よろしいでしょうか?」と相手を気遣う言葉を言ってから用件を伝えます。
相手の誘いを断るとき
相手の誘いを断るときは、「申し訳ないのですが」「あいにくですが」「せっかくですが」などのクッション言葉を使います。いずれも、誘ってくれたことに対する感謝、断ることに対する謝罪の気持ちを伝えられる表現です。
相手の意見に反論するとき
ビジネスで相手の意見に反論するときは、「●●さんのおっしゃることは理解できるのですが」「基本的には●●さんの意見に賛成なのですが」のようなクッション言葉を使うと良いでしょう。突然反対の意見を言い始めると、「話を理解していないのでは?」という印象を与えてしまう可能性があります。
また、ビジネスにおいては自分の意見だけを正当化せずに、相手の意見に敬意を示すことも大切です。クッション言葉を使うことで、「あなたの意見は理解しました」という気持ちを伝えるとともに、反論する相手に与える印象を和らげる効果もあります。
何かをお願いするとき
何かをお願いするときは、「お手数をおかけして申し訳ありませんが」「ご面倒をおかけしますが」といったクッション言葉を使いましょう。いずれも、相手の時間と手間を掛けてしまうことに対して、あらかじめ「ごめんなさい」「すみません」と謝罪の気持ちを伝える意味合いがあります。また、「お忙しいところ申し訳ありませんが」でも問題ありません。
ビジネスで使う日本語メール
ビジネスで使うメールの宛先は3種類あり、目的によって使い分けます。「To」はメールに対応してほしい人、「Cc」は対応は求めないが情報共有したい人、「Bcc」は「To」「Cc」に入れた人からは見えないようにしたい人です。Bccにしたい人をCcに入れてしまい、メールアドレスが漏洩してしまうケースがあるので注意しましょう。
件名は、具体的ですぐに分かる内容を書きます。強調され見やすくなるため、【】を使う場合も多いです。たとえば、社内メールの場合「【重要】○○会議の日程調整について」のように、優先順位の高いメールには【重要】と記載すると分かりやすくなります。
本文の初めには、宛名を書きましょう。社内メールでは、「山田部長」のように「名字+役職」と記載します。役職がない人の宛名は「山田様」「山田さん」のように、「名字+様」「名字+さん」と書くのが一般的です。
社外の人に宛てたメールの場合は「会社名」「部署名」(「役職」)「名前+様」の順で記載しましょう。
内容を書く際は、初めと締めのあいさつ文が必要です。初めのあいさつ文では「お疲れさまです」のあいさつのあとに、「□□部の△△です」と名乗りましょう。社外の人に向けた場合は、「お世話になっております」「大変ご無沙汰しております」といった言葉のあとに、「株式会社○○の△△です」と伝えます。「ご無沙汰しております」は「お久しぶりです」の謙譲語で、しばらく連絡していなかった相手に送る表現です。
用件は簡潔に書きます。結論を先に記載したり、箇条書きや改行をしたりするなどして、分かりやすさを意識しましょう。
最後に締めのあいさつで相手への配慮を示します。「何卒(なにとぞ)、よろしくお願いいたします」や「引き続きどうぞよろしくお願いいたします」といった表現が具体例です。「何卒」を使うと、あいさつや依頼などの感情を丁寧に強められます。「引き続きよろしくお願いいたします」は今後も関係がある相手に使う言い方です。「お忙しいところ恐縮ですが、」「お手数かとは思いますが、」といった文を加えると、より丁寧でしょう。
最後に署名を入れます。一般的に記載するのは以下の内容です。
- 会社名
- 部署名
- (役職)
- 名前
- 郵便番号と住所
- 電話番号
- FAX番号
- メールアドレス
- 自社WebサイトのURL
書き方や項目は勤め先によって決められていることもあるため、確認してみましょう。
ビジネスで使う日本語の用語
日常生活で使わない用語も、ビジネスでは数多く使われます。シフトや職場の人に関する用語、よく使われるビジネス用語について説明しているので、ぜひチェックしてみましょう。
シフトに関する用語
シフト制とは、従業員が時間ごとに交代勤務する働き方のことです。ここでは、働くうえで基本的なシフトに関する用語を紹介します。以下をご覧ください。
- 出勤(しゅっきん):仕事を始めるという意味
- 退勤(たいきん):仕事を終えるという意味。「出勤」の対義語
- 休憩(きゅうけい):仕事を中断して休める時間
- タイムカード:出勤、退勤の時間を記録する用紙。タイムレコーダーに差し込んで使用
- 打刻(だこく):出勤、退勤の時間をタイムカードや勤怠管理システムに記録すること
- 早退(そうたい):会社で定められた時間より、早く退出すること
- 欠勤(けっきん):出勤日に休むこと
- 早番(はやばん):早い時間から出勤する勤務スケジュール
- 遅番(おそばん):遅い時間から出勤する勤務スケジュール
早番や遅番の時間は職場によって異なるため、間違えないよう注意しましょう。
職場の人に関する用語
職場の人の立場を表す言葉は、以下をご覧ください。
- 同僚(どうりょう):同じ職場の人。役職や地位が同じ人
- 上司(じょうし):職場で、役職や地位が自分より上の人
- 主任(しゅにん):一般社員の上の役職。一般社員をまとめる役割
- 係長(かかりちょう):主任より上の役職。チームリーダーのような立場
- 課長(かちょう):課の代表。係長をまとめる役割
- 次長(じちょう):部長を補佐する業務を行う。部長の次の地位
- 部長(ぶちょう):部署のまとめ役
一般社員から始まり、「主任」「係長」「課長」「次長」「部長」と地位が上がっていきます。
よく使われるビジネス用語
以下で、よく使われるビジネス用語を紹介します。
- アサイン:任命すること、割り当てること
- アポ:取引先や顧客と会う約束をすること。アポイントメントの略語
- タスク:割り振られた業務
- ナレッジ:企業にとって有益な知識や経験
- ヒヤリハット:重大な事故が起こる一歩手前の出来事
アサインは役職の任命の際によく使われる言葉です。ほかにも、さまざまなビジネス用語が使われているので、興味がある方は調べてみましょう。
まとめ
ビジネスでは、「お疲れさまです」や「お世話になっております」など、さまざまなあいさつを交わします。クッション言葉を使い、相手に不快感を与えないよう気を配ることが大切です。仕事で使う基本的な日本語を身に付けて、失礼のない振る舞いをしましょう。