2023年時点での日本全体の年収は約506.9万円です。前年2022年の平均年収は約496.5万円だったので、やや増加傾向となりました。これは新型コロナウイルスが経済活動に与える影響が収まってきたことや物価の上昇が進んでいることなどが影響しているといわれています。
この記事では、日本の平均年収について解説。年齢や性別、業種ごとの数字を紹介。また、日本で働く外国人の平均年収を在留区分ごとにまとめています。収入に関連する言葉の意味や給与明細の見方についても解説しているので、自分の収入に疑問を持っている方や相場が知りたい方、分からない項目がある方はぜひ参考にしてください。
目次
日本の平均年収
厚生労働省の発表した「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、2023年の日本の一般労働者の平均年収は約506.9万円でした。一般労働者とは、無期限もしくは1ヶ月以上に渡って雇用されている常用労働者のうち、パートタイム労働者を引いた人のことです。
前年2022年の平均年収は約496.5万円だったので、やや上昇しました。さまざまな理由がありますが、新型コロナウイルスが経済活動に与える影響が収まってきたことや物価の上昇に対応するために各企業が賃上げを実施したことが要因と考えられます。
男女
2023年の日本の平均年収を性別ごとに見ていくと、男性は約569.8万円、女性は約398.8万円でした。日本では、結婚や育児のために途中でキャリアをストップする女性が多い傾向にあります。
女性の社会進出が進んだのはここ数十年のため、管理職の男女比はいまだ男性のほうが優勢です。役職に就いている女性の母数が少ないこともあり、男女別の平均年収は男性のほうが高くなっています。
一方、厚生労働省が発表した「雇用の分野における女性活躍推進等に係る現状及び課題」によると、2023年の女性の労働力人口は3124万人で、総労働力人口の45.1%を占めている現状です。また、2022年と比較すると、28万人増加しています。女性の労働者が増加傾向にあるため、今後、女性の平均年収に変化が生じていく可能性もあるでしょう。
学歴別
日本の学歴別の平均年収は以下のとおりです。
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中学校卒:約418.7万円
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高等学校卒:約446.7万円
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専門学校卒:約467万円
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高等専門学校および短期大学卒:約474.7万円
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大学卒:約599.2万円
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大学院卒:約807.8万円
学歴が上がれば上がるほど、平均年収は高くなります。学歴があると賃金の高い企業に入社できたり昇進のチャンスが多かったりするのが要因でしょう。
年齢階級別
年齢階級別で算出した日本の平均年収は以下のとおりです。
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~19歳:約262.1万円
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20~24歳:約335.1万円
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25~29歳:約414.1万円
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30~34歳:約463.5万円
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35~39歳:約513万円
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40~44歳:約547.6万円
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45~49歳:約574.8万円
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50~54歳:約598.7万円
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55~59歳:約605.3万円
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60~64歳:約461.6万円
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65~69歳:約377.7万円
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70歳~:約346.1万円
日本の働き盛りの世代は「35~59歳」あたりだといわれています。この世代のデータを見ると年齢を重ねるにつれ、年収がどんどん上がっていることが分かるでしょう。特に、55~59歳がピークです。この世代は会社で重要な役職に就く人が増えてきます。
日本で就職や転職の面接を受けると、希望の年収・月収額を面接官から質問されることも少なくありません。答え方については「転職の面接で外国人が聞かれる質問と回答例 「日本に来た理由」はどう答える?」をご覧ください。
参照元 厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」 厚生労働省「雇用の分野における女性活躍推進等に関する参考資料」
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日本で働く外国人の平均年収について
日本で働く外国人は年々増加傾向です。ここでは、日本で働く外国人の平均年収について解説します。
外国人の平均年収
賃金構造基本統計調査では外国人労働者の平均年収も確認できます。2023年の外国人労働者全体の平均年収は、約339.8万円です。同年の全体の平均年収の約506.9万円と比べると、167.2万円ほどの差がありました。
日本人と外国人労働者で平均年収に差が生まれる大きな理由は、平均年齢と勤続年数の違いです。海外から働きに来る外国人労働者はキャリアアップやスキルの習得、母国よりも高い収入などを目的としている場合が多く、30代以下の若年層が中心となっています。
また、日本人と比較して外国人労働者の方が平均年齢が低いことや目的を達成したあと母国に帰国する人もいるため、勤続年数が短い傾向にあるのです。日本では勤続年数や年齢が上がるほど賃金もアップする傾向にあるため、平均年収に差が生まれています。
外国人の在留資格別の平均年収
以下は、外国人のおおまかな在留区分別の平均年収です。
専門的・技術的分野の在留資格(特定技能以外)
特定技能を除いた専門的・技術分野の在留資格を持つ外国人の平均年収は、約432.4万円でした。この区分には以下の在留資格が該当します。
教授/芸術/宗教/報道/高度専門職/経営・管理/法律・会計業務/医療/研究/教育/技術・人文知識・国際業務/企業内転勤/介護/興行/技能
「高度専門職」や「技術・人文知識・国際業務」などの在留資格には専門知識や技能を持っているため、年収が高い傾向にあるのです。そのため、ほかの在留資格と比較して最も平均年収が高い区分となっています。
特定技能
特定技能の在留資格を持つ外国人の平均年収は約291.1万円でした。特定技能とは、特定の分野で活躍できる外国人材を日本に招くために作られた制度を利用して取得できる在留資格のことです。
「特定技能1号」を持つ外国人は、最長でも5年間しか働けず昇給や昇進がしにくいため、年収が上がりにくいと考えられます。また、特定技能で働ける分野は人手不足が深刻な業界のみです。そのような業界は賃金が低く、また30歳以下の若年層が多く勤続年数も短いため、平均年収が低い傾向にあると考えられます。
身分に基づく在留資格
身分に基づく在留資格を持つ外国人の平均年収は約387.1万円でした。該当するのは「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」の4種類の在留資格です。
これらの在留資格を持つ外国人は日本在住歴が比較的長く、職種の制限もないため年収が高い傾向にあります。
技能実習
技能実習生の平均年収は約265.4万円でした。技能実習とは、外国人技能実習制度を利用して来日する技能実習生に与えられる在留資格のことです。
技能実習生の平均年収がほかの在留資格を持つ労働者に比べて低い傾向にあります。理由として、技能実習制度がビジネスではなく、外国人への技能の移転を目的とした制度であるためです。技能実習がなかなか利益を出しにくいため、技能実習生の賃金も上がりにくいと考えられます。
日本で働くためには在留資格を取得する必要があります。就労可能な在留資格や必要なスキル、仕事の探し方については「日本で働きたい外国人向け!在留資格の種類や仕事の探し方を解説」にまとめています。
参照元 厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」
業界別の日本の平均年収
以下は、業界別の平均年収です。2022年9月〜2023年8月のデータをもとに解説します。
メーカー
メーカー(製造業)の平均年収は466万円でした。メーカーとは原材料を加工・製造し、製品を生産し販売する業界のことで、製造業とも呼ばれています。メーカーは、家電や機械、自動車、化粧品、食品など、取り扱う種類はさまざまです。また、自社製品を販売する「営業」や新製品の開発や研究を行う「研究開発」、製造に必要な資材を調達する「資材調達」など、多種多様な職種があります。専門的な知識やスキルが必要な職種では高年収を目指せるでしょう。
金融
金融業界の平均年収は469万円でした。金融とはお金に関わる業務全般で、主に銀行や証券会社、保険会社、クレジットカード会社などが該当します。金融業界で働くには専門的な知識が必要で、さらに価値の高い商品を取り扱うなど責任が重い仕事が多いため年収が高い傾向にあります。
総合商社
総合商社の平均年収は464万円でした。総合商社とは、さまざまな商品・サービスを国内外から仕入れて流通させる企業です。特定の分野・海外では商材を取り扱う専門商社が一般的で、商品だけでなく事業投資や資金調達など幅広いサービスを提供している総合商社は日本独特のビジネスといわれています。海外との取引が多いため、多くの外国人が語学力を活かして働いている業界です。
総合商社の平均年収は、海外との取引が多く、出張手当や海外赴任手当などの各種手当やボーナス支給額が多いので比較的高い傾向にあります。
IT関係
IT・通信業界の平均年収は446万円です。ITコンサルタントやエンジニア、プログラマーなどさまざまな職種が該当します。新しい技術が次々と生まれ、日々発展している業界です。IT技術の拡大に伴い、日本のIT業界は人手不足が深刻化しています。海外からIT技術者を受け入れたり、年功序列ではなく成果主義制度を取り入れたりする企業も増加しているため、狙い目の業界といえるでしょう。
建設・不動産関係
建設や不動産に関わる業界の平均年収は432万円です。ディベロッパー(都市開発事業者)やゼネコン(総合建設業者)、ハウスメーカーなどが該当します。建設業では年齢が高いほど年収が高い傾向にあるのが一般的です。勤続年数が長くなるほど現場責任者などの管理職手当が支給されるのが理由として挙げられます。
不動産業の営業職では、売上に応じて歩合が支払われるインセンティブ制を導入している企業も少なくありません。不動産の取引自体が高額のため、契約を獲得するほど年収が高くなる傾向にあるといえるでしょう。
メディア関係
メディア関係の平均年収は423万円でした。インターネットを含む通信・広告・放送・新聞などのメディアを通じて情報を発信する業界です。職種としてはライターやプロデューサー、記者、カメラマンなどが挙げられます。
メディア関係は、華やかな業界で年収も高水準です。その理由として、勤務時間が早朝や深夜に及んだり、地方へ出張したりなど各種手当が発生することが挙げられます。また、職種によっては常に新しいコンテンツを生み出す必要があり、トレンドや需要を意識しながら多くの業務をこなすバイタリティーを求められるため、年収が高い理由といえるでしょう。
サービス
サービス関係の企業の平均年収は377万円でした。サービス業界でも電気・ガス・熱供給・水道業が最も平均年収が高めです。また、職種としては、マーケティングリサーチや財務会計アドバイザリーが高収入といわれています。一方、宿泊業界や理美容関係業は賃金水準が低いことや離職率が高いことから、平均年収はほかの業種よりも下がり気味です。
小売・外食
小売・外食業界の平均年収は359万円でした。小売・外食業界は利益率が低く賃金が上がりにくいため、ほかの業種よりも年収が低めです。
小売・外食業界で年収を上げるには、昇進が欠かせません。役職のない立場で働くのと比較して、店舗や地域の管理を任されるマネージャーなど地位を上げることで収入は増えるでしょう。
人手不足解消やインバウンド対策などのために、外国人雇用を積極的に行っている企業が増えています。また、日本政府も積極的に外国人雇用を支援している状況です。「日本で働く外国人が多い職業ランキングを紹介!狙い目の業界や職種とは?」では、日本で働く外国人が多い職業ランキングと狙い目の業界・職種を紹介しています。
参照元 doda by PERSOL「平均年収ランキング(業種別の平均年収/生涯賃金)【最新版】」
収入に関する言葉の意味
労働やサービスの対価として、自分の手元に入ってくるお金や物品を「収入」といいます。会社員でいえば、毎月の給与・ボーナスが「収入」です。日本には収入に関連する言葉として、月収や月給、手取りなどがありますが、同じ意味ではありません。ここではそれぞれの言葉の意味や違いについて解説します。
年収・月収の意味
年収とは、保険料や税金が引かれる前の年間の総支給額のことです。基本給や各種手当、残業代などを含めた1年間で会社から支払われた、すべての金額のことを指します。賞与が支給された場合、賞与も含めた金額が年収です。なお、1年とは、毎年1月1日から12月31日までの期間のことを意味します。入社時期や給与支払日、決算月などは関係ありません。
月収は年収を12で割ったものです。すなわち、手当や賞与を含めた会社から支給された年間の合計金額を、12ヶ月で分割したものを意味します。
月収と月給の違い
月収と月給の違いは「変動手当」が含まれているかどうかです。それぞれの意味について解説します。
月給とは、基本給に毎月支払われる固定手当を足した月単位の賃金のことです。固定手当とは、会社が対象の社員に一律の金額で支給する手当のことを指します。役職手当や資格手当、住宅手当などがその一例です。
月収は、月給に変動手当を加えた賃金のことです。変動手当とは、月や状況、報酬などによって変動のある手当のことで、残業手当や皆勤手当、深夜手当などが挙げられます。月収は変動手当が含まれているため、月給の金額より高くなるのが特徴です。
手取りと額面の違い
手取りと額面の違いは、「税金や社会保険料が引かれているか」といえます。
額面とは、会社から自分に対して支払われる総支給額のことです。額面には、基本給に加え、残業代や役職手当などの各種手当が含まれています。手取りは、自分が実際に受け取れる金額のことです。額面から所得税や住民税などの税金や健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料などが引かれた金額を指します。
一般的に額面上の約7~8割が手取りです。ただし、扶養家族の有無や税率によって変わるため、目安として認識してください。
日本の税金の種類や外国人に課せられる税については「日本の税金の種類や控除とは?外国人に対する課税について解説」をご覧ください。税金の負担を軽くするための控除の種類についても解説しています。
給与明細の各項目の見方
紙や電子データで発行される「給与明細」には、給与額だけでなく、総支給額から引かれる保険料や働いた日数などが細かく記載されています。自分が正しい給与を受け取っているかを知るためにも、給与明細の見方を覚えましょう。なお、会社によって給与明細の文言は多少異なります。
働いた日数や残業に関する項目
働いた日数や時間、有給休暇などに関することは「勤怠」の項目に記載されています。「有給休暇」とは、日本の法律で付与が定められている、賃金が発生する休日のことです。
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就業日数:会社が定めているその月に働く日数
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出勤日数:実際に出勤した日数
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欠勤日数:その月に会社を休んだ日数
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遅刻日数:就業規則の始業時間よりあとに出勤した日数
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早退日数:就業規則の終業時間より前に退勤した日数
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有給消化日数:有給休暇を使った日数
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有給残日数:有給休暇の残り使える日数
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勤務時間:その月に働いた時間
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普通残業時間:本来の労働時間を超えて働いた時間
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休日出勤時間:法律で定められている週1回の休日(法定休日)に出勤した時間
「残業したはずなのになかったことにされていないか」 「有給休暇を使っていないのに減っていないか」などの確認は、毎月自分で行いましょう。
会社から支払われる金額の項目
会社から支払われる金額については「支給額」の項目に記載されています。
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基本給:会社から支払われる基本の賃金
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通勤手当:通勤に掛かる電車代など交通やガソリン代に関する手当
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住宅手当:家賃や住宅ローンなどの手当
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役職手当:会社での役割や責任に対する手当
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残業手当:勤務時間外の労働に対する手当
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資格手当:取得した資格に対する手当
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深夜勤務手当:午後10時~翌午前5時の間の労働に対する手当(基本給に25%以上上乗せ)
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法定休日手当:法律で決まっている休日の労働に対する手当(基本給に35%以上上乗せ)
手当の種類は会社によってさまざまです。紹介した手当のほかにも、健康促進を目的とした「禁煙手当」や昼食代を補助する「食事手当」などを支給している企業もあります。
支給額から引かれる金額の項目
会社員の場合、年金や健康保険料、税金などは給料から天引きされるのが一般的です。支給額から引かれる金額は「控除」の項目に書かれています。実際に給与として渡されるのは、支給額から控除額を引いた金額です。
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健康保険:病気や怪我の際に給付を受けるために納付
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厚生年金:将来年金を受け取るために納付
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介護保険:将来介護サービスを受けるために納付(40歳以上から)
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雇用保険:失業時に給付を受けるために納付
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所得税:給与に対して掛かる税金
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住民税:自分の住んでいる地域の行政サービスを維持するために納付する税金
なお、これらの控除金額は、支払われる給与金額や前年の収入などによって変動します。
給料明細の見方は「給与明細(payslip)を英語にすると?正しく内容を読み取ろう」に詳しく紹介しています。
まとめ
厚生労働省の発表したデータによると、2023年の日本の一般労働者の平均年収は約506.9万円、外国人労働者全体の平均年収は約339.8万円です。平均年齢と勤続年数の違いから、日本人と外国人労働者で平均年収に差が生まれていると考えられます。
日本には長く勤めるほど給料があがる年功序列制度を取り入れている企業が未だ少なくありません。そのため、勤務年数が長くなるほど給料が上がる傾向にあるのです。海外では転職の回数を重ねてキャリアアップを図りますが、日本では一つの会社で経験を重ねて年収を増やすという方法もあるでしょう。