ビジネスシーンにおいて、メールの返信や相手との約束、任されていた業務などを忘れていた際に「失念しておりました」という表現を使います。「忘れていました」と比べて、自分の過失を認めて謝罪の気持ちが込められた丁寧な言葉です。
誤った使い方をすると、失礼な印象を与えたり、事態の悪化につながったりしかねません。正しい意味や使い方を理解することが大切です。
この記事では「失念しておりました」の意味を解説。使う際の注意点や類義語を例文付きで紹介しています。
目次
- 「失念しておりました」の意味
- 「失念しておりました」の使い方
- シーン別「失念しておりました」を使った例文
- 「失念しておりました」に対する返答の例
- 「失念しておりました」の英語表現
- 「失念しておりました」の類義語
- まとめ
「失念しておりました」の意味
「失念(しつねん)しておりました」とは、「忘れてました」という意味です。主にビジネスシーンにおいて、取引先との約束やメールの返信など自分がすべきことを忘れていた際に使われます。忘れていたことを認めて、相手に対して謝罪や反省の気持ちを伝える言葉です。
「失念」は、「うっかり忘れること」 「どわすれすること」という意味。「失念しておりました」は「忘れていた」の謙譲語で、自分のことをへりくだる際に使う表現です。そのため、「忘れていました」と伝えるよりも、丁寧で誠実な印象を与えます。
「失念しておりました」はメールでも会話でも使うことができる言葉です。なお、「失念しておりました」はかしこまった表現であるため、日常生活の会話ではあまり使われません。
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「失念しておりました」の使い方
「失念しておりました」は反省や謝罪の気持ちを込めて使われるフレーズです。不適切な使い方は、事態の悪化につながりかねません。ここでは、実際に使うときのポイントを紹介するので、正しい使い方を理解しましょう。
謝罪の言葉や改善策を添える
「失念しておりました」は、忘れたことを認めて反省するときに使う言葉です。そのため、「失念しておりました」は、謝罪の言葉を添えて使うようにしましょう。相手に対して誠意を表すことができます。また、より真摯な姿勢を示すために、今後の改善策もあわせて伝えると良いでしょう。
物を忘れたときには使わない
「失念しておりました」は、行動や行為を忘れていたときに使います。「物」を忘れたときに「失念しておりました」は使えません。
たとえば、書類を持ってくるのを忘れてしまった場合、「書類を失念してしまいました」と表現するのは間違いです。物を忘れた場合は「忘れてしまいました」と表現します。
他人の行動に対しては使わない
「失念しておりました」は、自分が忘れていたときに使う言葉です。自分以外の人に対しては使用できません。「部長が会議の予定を失念しておりました」 「お客様が書類を持参されるのを失念しておりました」は間違った使い方です。誤った表現だけでなく、相手に対して失礼になるので注意しましょう。
もともと知らなかったことには使わない
「失礼しておりました」は覚えていたことや把握していたことを忘れたときに使う言葉です。最初から知らなかったことに対して「失念しておりました」は使えません。
もともと知らなかったことに対しては、「存じません」もしくは「存じ上げません」と言います。
「失礼しておりました」は「忘れていた」の謙譲語であり、敬語表現です。敬語の種類・使い方については「日本語の敬語5種類をわかりやすく解説!一覧や使い方、注意点も紹介」や「日本語の敬語の種類や使い方を外国人に向けて解説!」をご覧ください。
シーン別「失念しておりました」を使った例文
書類の作成やメールの返信などを忘れていたとき、「忘れてました」よりも「失念しておりました」と相手に伝えるほうが誠実な印象です。また、適切な状況で正しく使うことにより相手との信頼関係を維持できます。ここではシーン別に「失礼しておりました」を使った例文を紹介するので、実際に使う際の参考にしてください。
業務を忘れていたとき
相手との約束や自分がやるべき業務を忘れていたときは、「忘れていました」ではなく「失念しておりました」を使います。なお、謝罪の言葉や誠意もあわせて伝えましょう。
【例文】
本日が提出期限の報告書の作成を失念しておりました。誠に申し訳ございません。早急に作成し、本日の退勤時までに提出いたします。
ビジネスシーンにおいて「失念しておりました」を使用する際は、謝罪の言葉と今後の対応策を添えると誠意が伝わりやすくなります。
忘れ物をしたとき
忘れ物をしたときに「失念しておりました」を使っても問題ありません。ただし、忘れ物そのものに対しては使用できないことを認識しておきましょう。
【例文】
本日、名刺を持ってくるのを失念しておりました。恐れ入りますが、次回の打ち合わせの時にお渡しさせていただきます。
名刺を持ってくることを忘れた場合、「名刺を失念しておりました」「名刺を会社に失念しておりました」とは表現しません。「失念する」は自分の行動に対してのみ使うので、「~を持ってくることを失念した」と伝えるのが正しい表現です。
メールの返信を忘れていたとき
「失念しておりました」は書き言葉としても使えます。メールの返信を忘れていたときや内容を見落としていたときの謝罪として適切です。
【例文】
いつもお世話になっております。昨日いただいたメールの返信を失念しておりました。大変申し訳ございません。二度とこのようなことが起きないようメールの確認を徹底いたします。
返信をし忘れたり、内容を見落としたりすると、今後の関係に支障をきたす可能性があります。早急に「失念しておりました」を使って、謝罪の気持ちを相手に伝えましょう。
ビジネスメールの書き方やマナーについては「日本のビジネスマナーを解説!服装から人への接し方まで紹介!」にまとめています。
「失念しておりました」に対する返答の例
「失念しておりました」という表現は、自分自身が使うだけでなく、取引先やクライアントなどからメールや口頭で伝えられる場合もあります。そのようなときは、相手を気遣う言葉を返すようにしましょう。以下は、相手から「失念しておりました」と伝えられたときの返答例です。
【例文】
-
お気になさらないでください。引き続きよろしくお願いいたします
-
こちらこそ、配慮が足らず申し訳ございません
-
それでは、改めて作成をお願いいたします
返答は相手の立場や状況によって使い分けましょう。
「失念しておりました」の英語表現
「失念しました」は「忘れました」という意味であるため、英語では「I forgot〜」と表現できます。ただし、、少しカジュアルな表現であるためビジネスシーンには不向きです。
より丁寧な表現で伝えたい場合は「apologize(謝罪する、申し訳ない)」を使います。たとえば、「I apologize.It must have slipped my mind(申し訳ございません。失念しておりました)」などと表すと謝罪の気持ちを伝えられるでしょう。
そのほか、「oversight」はビジネスシーンにおいて「失念しておりました」を意味する表現です。見落としていたなどミスのあった際に使えます。「forgot」同様に、謝罪の言葉である「apologies」を前置きするのが適切な表現です。
「失念しておりました」を相手に伝える際は、「申し訳ございません」と謝罪の言葉を添えると誠意が伝わります。「moushiwakenaiはどう使う?謝罪の気持ちを表現しよう」では「申し訳ない」の使い方や類語を紹介しています。
「失念しておりました」の類義語
ここでは、「失念しておりました」の類義語の意味と使い方を紹介します。言い換えを知ると、使える言葉の幅が広がり表現が豊かになるでしょう。相手や状況によって使い分けてください。
忘失(ぼうしつ)
「忘失」は、覚えていたことや記憶していたことをすっかり忘れるという意味です。ほかにも、「忘れ去る」「忘れて失う」という意味もあります。
【例文】
-
会議の日程を忘失しておりました
-
パソコンにログインするためのパスワードを忘失してしまいました
-
先ほどいただいたメモを忘失してしまいました
「失念しておりました」は物に対して使用できませんが、「忘失」は自身の行動だけでなく、物に対しても使える言葉です。
放念(ほうねん)
「放念」とは、心に留めないことを意味します。相手の行動に対して「気にしないでください」「心配しないでください」「忘れてください」と伝えたいときに使う言葉です。主にメールの文章で使われます。
【例文】
-
既にご存知でしたらご放念ください
-
先ほどお送りしたメールの内容については、ご放念ください
-
くれぐれもご放念くださいませ
「放念」は自分が忘れていたことに対しては使えません。相手の行為に対して使うので、自分に対して使うのは避けましょう。
忘却(ぼうきゃく)
「忘却」は、完全に忘れ去ったという意味です。文学や詩などに用いられる表現のため、ビジネスシーンにおいて使われることはほとんどありません。
【例文】
-
泥酔により昨夜の記憶を忘却した
-
時とともに忘却の彼方に消え去った
-
人は本当に忘却したいことを忘却できない生き物だ
「忘却」はすっかり忘れてしまうことを意味し、「忘れる」をより強くした表現です。
まとめ
「失念しておりました」は、自分が忘れていたことを伝える言い回しです。自分のミスを認めつつ、謝罪の気持ちを込めた丁寧な表現として主にビジネスシーンで使われています。
「失念しておりました」は、相手に対してや自分の忘れ物に対しては使用しません。既に把握していた業務や約束、メールの返信など、自分がすべきことを忘れていた場合に使います。そのため、「申し訳ございませんでした」や「ご迷惑をおかけしました」など、お詫びや改善策も添えて伝えると良いでしょう。