日本で就職したい外国人留学生のなかには、新卒採用に慣れていなかったり、就活を始める時期が分からなかったりする方もいるでしょう。そこで、このコラムでは就活準備や選考対策に役立つノウハウを紹介します。選考で重視される自己PRや志望動機の考え方もまとめているので、選考書類を書くときの参考にしてください。就活ノウハウを身に付けて事前準備を万端にし、就職活動の成功率を高めましょう。
目次
日本の就活の特徴
外国人留学生が日本で就職するには、就活の特徴を押さえるのが重要です。海外では教育機関を卒業後に就活を始めることが多いですが、日本では在学中から就職先を探し始めます。日本の企業のほとんどは毎年同じ時期に採用活動を始め、在学中の学生を採用する「新卒採用」を行うのが一般的です。ただし、業界によって就活が本格化する時期が異なるので、教育機関の就職課やインターネットを活用して、こまめに情報収集を行いましょう。
ピックアップ記事
外国人留学生のための就活準備ノウハウ
日本で就職を考えている外国人留学生は、就活準備に必要なノウハウを押さえましょう。就職を成功させるには、企業へのエントリー前に以下の準備を済ませるのがポイントです。
自己分析
自己分析とは、過去の経験をもとに自分自身の価値観や長所や短所、興味がある分野などを洗い出す作業です。自己分析を行うことで自己理解が深まり、説得力のある自己PRや志望動機が作れたり、適性のある業界や職種が絞り込めたりします。また、就職後の目標やキャリアプランを見つけるのにも役立つでしょう。
日本の面接では、応募者の人柄や個性をアピールするのが重要です。特に新卒採用の場合、職歴がない分、ポテンシャルや性格を重視される傾向にあります。外国人留学生は徹底して自己分析を行いましょう。自己分析ができていれば裏付けになるエピソードがあるため、面接の受け答えや自己PRが具体的になり、面接官に好印象を与えられます。自己分析を行う際は過去の経験を振り返り、「最も努力した出来事は何か」「困難をどう乗り越えたか」「その経験から何を学んだのか」など、さまざまな観点から深掘りしましょう。いくつかの経験や考え方、周りから見た自分の姿などを照らし合わせることで、あなたの強みや価値観が明らかになります。
業界・企業研究
外国人留学生が自分にあった職場を見つけるには、日本にある企業や業界に関する知識が必要です。母国でも名前が通じるような大手企業しか知らず、競争率の高さから就活が上手くいかない外国人留学生は少なくありません。自分が知っている業界や企業だけでは選択肢が少なくなるので、就活の初期段階では幅広い分野を研究して、興味のある分野を見つけましょう。業界は大きく8つに分かれており、サービスやマスコミ、小売などがあります。業界の全体像を理解するには、業界地図や就活四季報などの書籍がおすすめです。ほかにも、企業説明会や新聞・ニュース、OB・OG訪問などで情報収集ができます。
業界・企業研究を行う際は、顧客の形態や取り扱う商品・サービスを把握したり、経営方針を自分のキャリアプランと照らし合わせたりするのが重要です。就職先が決まっても経営が不安定だと、長期的に働くのが難しくなります。業界の平均年齢が若いほど成長性があり、売り上げが高いほど安定性があるとされているので、応募先を決める際の参考にしてみましょう。
インターンシップ
インターンシップとは、学生が実際に企業で働ける就業体験のことです。大学生の場合、3年生の夏から冬の間に行われることが多いので、就活が本格化する前に参加してみましょう。日本のインターンシップは選考過程に組み込まれないことが多いですが、業界・企業研究をしたり、企業との相性を確かめたりするチャンスといえます。具体的な仕事内容を知ることで、志望動機や就職後の目標が明確になり、参加企業の選考を受ける際に的確に自分をアピールできるでしょう。
実際の職場や業務内容に触れることで入社後のイメージが明確になるので、就活を効率的に進めたい外国人留学生は、インターンシップに参加することをおすすめします。
OB・OG訪問
OB・OG訪問では自分が通う教育機関の卒業生から、就職先の企業の仕事内容や雰囲気を教えてもらえます。企業説明会や面接では質問しにくい内容も聞けるので、具体的な情報が知りたいときにOB・OG訪問が役立つでしょう。また、OB・OGは就活を成功させて企業で働いているため、選考に対するアドバイスをもらえる可能性もあります。教育機関でOB・OG訪問の機会を設けることが多いですが、友人に紹介してもらったり、企業の人事担当者に仲介してもらったりする方法もあるので試してみましょう。外国人留学生は、母国出身者を訪問するのも、役立つ情報が聞けるのでおすすめです。
OB訪問の始め方は「日本の就活で行う「OB訪問」とは?外国人留学生向けに手順や注意点を解説」でも紹介しています。OB訪問の際に気をつけたいこともまとめているので、ご一読ください。
就活本番に役立つノウハウ
ここでは企業へのエントリーが始まり、本格化してきた就活に役立つノウハウを紹介します。日本での就職を実現するためにも、以下のノウハウを習得して就活を有利に進めましょう。
エントリーシート・履歴書の書き方
エントリーシートや履歴書は、採用担当者が選考の初期段階に見る書類で、応募者の第一印象に深く関わります。記入ミスがあると「そそっかしい」「仕事でも失敗が多いのではないか?」など、採用担当者にマイナスイメージを与えかねません。字は読みやすいように丁寧に書き、証明写真の貼り方や印鑑の押し方も真っ直ぐになるように心掛けましょう。エントリーシートには志望動機や趣味、学生時代の経験などさまざまな記入項目があるので、自己PRにつなげることを意識して記入します。具体的なエピソードや数字を盛り込み、内容に説得力を持たせるのが重要なポイントです。短所を問う項目では「克服するために努力していること」も添えることで、課題に対する粘り強さや向上心を示せるでしょう。また、面接ではエントリーシートの内容をもとに質問されるので、特にアピールしたいことを書くのもおすすめです。
履歴書はさまざまな種類がありますが、外国人留学生の就活では大学指定のものがおすすめです。大学指定の履歴書は大学名が印字されているため、所属を一目で確認できます。また、市販の履歴書に比べて学生が書きやすい項目が多く、志望動機や趣味・特技、資格などをアピールしやすいのが特徴です。大学指定の履歴書は生協や売店で購入できるので、書き損じても良いように多めに用意しておきましょう。なお、郵送の場合は送付状を作成したり、白地の封筒を用意したりする必要があるので、忘れずに準備してください。
自己PR
書類選考を通過したり、面接で個性をアピールしたりする際は自己PRが重要です。採用担当者が「直接会って話したい」「一緒に働きたい」と思えるような、熱意が伝わる自己PRを作成しましょう。たとえば、以下のような自己PRなら自分の強みに加えて、日本語能力の高さをアピールできます。
「私の強みは、目標を達成するまで努力を継続できることです。私は母国で日本語を勉強してから来日しましたが、発音が上手くいかなかったり相手の意図を汲み取れなかったりして、上手く会話できないことがありました。そこで私は日本人と同じように会話するのを目標に、レストランのホールでアルバイトを行ったり日本語教室に通ったりしました。その結果、大学の友人やアルバイト先のお客様から発音や日本語能力を褒められるようになり、地道に努力し続けることで大きな成果につながることを実感しました。努力により培った日本語能力と粘り強さを活かして、貴社でも活躍したいと考えています」
自己PRでは結論を最初に述べて、取り組んだことや努力した内容を具体的なエピソードで盛り込むのが大切です。就職後、どのように強みを活かすのかも記載すると、採用担当者に好印象を与えられます。また、企業によって求めている人材が異なるので、業界の特徴や雰囲気に合わせて自己PRの内容を変えましょう。面接でも自己PRを聞かれたら、選考書類に書いた内容をもとに人柄やコミュニケーション能力、入社意欲などが伝わるようにハキハキと話すと良い印象を与えられます。履歴書やエントリーシートに書いた内容と異なる自己PRを行うと、主張に一貫性がなく応募者の印象が弱まってしまうので注意しましょう。
自己PRが思いつかず困っている方には「新卒の就職活動では自己PRが重要!外国人留学生に向けて例文も紹介」のコラムがおすすめです。日本で就職活動をする外国人留学生の方は、ぜひ参考にしてください。
志望動機
志望動機は書類選考や面接において、最も重視されるポイントです。採用担当者は志望動機を通じて応募者の入社意欲や企業への理解度を確認します。採用担当者に好印象を与えられるように、以下のポイントを押さえた志望動機を作成しましょう。
- 応募先の企業でなければいけない理由を伝える
- 自分の人柄と仕事内容を結びつける
- 自分が入社した場合のキャリアプランを盛り込む
- 根拠や裏付けとなるエピソードを述べて説得力を持たせる
志望動機はやりたい仕事内容やキャリアプラン、インターンシップで学んだことをベースにすると、具体的に書けます。まずは志望動機を簡潔に述べて、具体的に希望する仕事内容やキャリアプランを提示し、興味を持ったきっかけや自分との関係性を伝えましょう。入社後、どのように働きたいのかも伝えると、就職に対する積極性と熱意がアピールできます。
適性検査対策
日本の就活では書類選考や面接に加えて、適性検査が行われることがあります。適性検査とは一般常識(国語・数学・英語・理科・社会)や基礎学力を測る検査、性格検査などがあり、業界によっては小論文や作文による試験もあるようです。なかでもSPI総合検査は多くの企業が選考の一環で導入しているので、あらかじめ対策を取っておきましょう。SPIは能力検査と性格検査に分かれており、応募者の知的能力と性格を検査するのが目的です。能力検査では「言語分野」と「非言語分野」の2種類の問題から、コミュニケーションや考え方、新しい知識の習得のベースになる能力を測ります。一方で、性格検査は応募者の性格的特徴や仕事に対する適性の把握に活用されることが多いです。
適性検査は基礎的な問題であっても、問題数が多く最後まで解くのに時間を要します。最近は適性検査に合わせた対策本が出ているので、書籍を使って対策を行いましょう。「適性検査「SPI」って何をするの?外国人留学生の対策方法を紹介」では、適性検査「SPI」の概要をはじめ、SPIテストの対策方法や注意点を解説しています。参考にして、日本での就職活動に活かしてください。
面接対策
日本の就活における面接には、個人面接や集団面接、グループディスカッションなどさまざまな方式が採用されています。個人面接は学生1人に面接官1人、もしくは複数の面接官という最も一般的なスタイルで、集団面接は複数の学生に対して1人もしくは複数の面接官が対応する方式です。集団面接ではほかの学生の話を聞く態度や、一人だけ長く話し過ぎないといった周りへの気遣いも評価されます。グループディスカッションは、複数人の学生がチームになって与えられたテーマを議論し、最終的な結論を発表する形式の選考です。集団の中でどのような役割を果たすか、積極的に意見を発信するコミュニケーション能力や協調性はあるか、といった部分が評価されます。
面接で好印象を与えるコツは、質問に対して的確な答えを行うことです。回答する際は結論を述べてから具体的な理由につなげると、話の要点が伝わりやすくなります。また、面接では服装や身だしなみといったマナーもチェックされるので、清潔でサイズの合ったスーツや靴を着用しましょう。髪形は前髪が目にかかると表情が暗くなるので、お辞儀をしたときに髪が落ちないように整えます。面接後のお礼状やメールは必須ではありませんが、入社意欲や感謝の気持ちを伝えられるので、できるだけ送るようにしましょう。
まとめ
外国人留学生が日本の就活を有利に進めるには、事前準備や選考に関するノウハウの習得が欠かせません。このコラムで紹介したノウハウを活かして、日本特有の就活スケジュールや採用方式、選考方法に対応しましょう。