日本語は世界一難しい言語といわれることもあり、習得に苦戦している外国人もいるでしょう。特に、英語圏に住む外国人にとって日本語は難しいとされています。このコラムでは、日本語が難しいといわれる理由や勉強で挫折しやすいポイントを解説。外国人の母国語によって異なる日本語の習得難易度についても紹介します。日本語が難しいといわれる理由を知って、今後の勉強に役立てましょう。
目次
外国人が日本語を難しいと感じる理由とは
日本語は文字の種類が多く読み方が複数あるため、習得するのに時間が掛かります。また、主語がぼかされたり本来と異なる意味で使われる言葉があったりするため、「日本語は難しい」と感じる外国人が多いようです。日本語学習の難易度は高く、途中で挫折する外国人も少なくありません。ここでは、具体的にどのようなポイントが難しいといわれるのか紹介します。
覚えるべき語彙・文字の種類が多い
日本語は「ひらがな」「カタカナ」「漢字」の3種類の文字で構成されています。特に漢字は種類が多く、日本語学習を始めたばかりの外国人は覚えるのに苦労するでしょう。しかも、日本語で会話したり文章を読んだりするには、たくさんの語彙を身に付けなければなりません。
日本語はほかの言語に比べて圧倒的に文字の種類が多く、語彙も豊富です。また、時代に合わせて新しい言葉が生まれ、意味が変化することもあります。時代の流れに合わせて変化していく日本語について行けず、難しいと感じる外国人もいるようです。
漢字の読み方が複数ある
日本語の漢字には「音読み」と「訓読み」があります。同じ漢字でも文章の流れや単語によって読み方が異なるため、混乱する外国人は多いようです。漢字の読み方の変化にはこれといった法則がありません。また、日本人の名付けや言葉遊びでは「当て字」が使われることがあり、日本語を勉強している外国人の頭を悩ませています。当て字は本来の漢字の意味や使い方を無視して、読み方や音の響きだけを重視したものです。たとえば、「アジア」を漢字で「亜細亜」と書いたり、「めでたい」を「目出度い」と表記したりします。
日本語の日常的なやり取りで使われることは少ないものの、文学作品や人名では多用される表現のため、ふとした瞬間に難しさを感じるでしょう。
主語が省略される・曖昧になる
外国人が日本語を難しいと感じる理由として、主語の省略や曖昧な表現が挙げられます。日本語の会話や文章では「話の雰囲気から主語を察する」ことを求められがちです。英語をはじめとする多くの言語では、文法上主語は抜けません。そのため、以下の例文のような会話は日本人には違和感がありませんが、外国人からすると分かりにくく感じるでしょう。
A「買い物行く?」
B「行く。宅配便が来るから家にいてほしい」
A「分かった。ついでに洗剤も買ってきて」
B「いいよ」
まったく主語がない会話でも、日本人が読むと「AはBに留守番を頼まれた」「BはAに買い物に行くついでに洗剤も頼まれた」と理解できます。また、日本人がよく使う言葉に「よろしくお願いします」「あとは任せた」などがありますが、主語がなく意味を理解できない外国人が多いようです。場合によっては主語だけでなく助詞も省略されるため、外国人が日本語の意味を正確に受け取るのは難しいといえます。
本来とは異なる意味で使われる言葉がある
「すみません」「やばい」など、本来とは異なる意味で使われたり、場面によって使い方が変わったりする日本語は多いです。「すみません」は本来謝罪に使われる言葉ですが、人に呼び掛けたり感謝の気持ちを表したりするときにも使います。「やばい」は危険な状態を指す言葉ですが、近年では若者を中心に「おもしろい」「おいしい」「感動する」などの意味で使われることが多いです。このように、同じ言葉にもかかわらず正反対の使い方をすることもあるため、日本語を学習する外国人は混乱しやすいでしょう。
オノマトペの種類が多い
擬声語や擬音語、擬態語などのオノマトペが覚えられず、日本語の勉強に挫折する外国人もいます。雨が降る様子を指して「ザーザー」「ぽつぽつ」と表したり、疲れたときに「くたくた」「へとへと」と言ったりします。擬声語や擬音語、擬態語は世界各国にもありますが、日本はオノマトペだけで辞典が作られるほど群を抜いて数が多いのが特徴です。日常生活においても数百を超えるオノマトペが使われるため、日本語は難しいと痛感する外国人は多いでしょう。
「外国人が難しいと感じる日本語とは?難しい理由から例文まで徹底解説!」のコラムでも、外国人が日本語を難しいと感じる理由について解説しています。また、漢字の読み方を試す文章や、主語や目的語がなく意味が分かりづらい例文も紹介しているので、日本語の勉強に役立ててください。
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日本語の敬語は外国人にとって難しい
オノマトペや主語の省略、複数ある漢字の読み方など、日本語学習の難しいポイントをクリアした外国人でも苦戦するのが敬語です。日本のコミュニケーションマナーは世界的に見ても独特で、相手の気持ちを察したり、空気を読んで行動したりすることが求められます。特に、状況に合わせた言葉選びを行うために「社会言語能力」は必須です。日本語の敬語は目上の人を尊重し、自分をへりくだらせる表現を使うため、複雑な言葉選びを必要とします。たとえば、目上の人にお土産を渡す際は「いつもお世話になっております。これ、とても良い物なので差し上げます」というのはNGです。良い物の判断基準は人によって異なるうえ、失礼な印象を与えかねません。「いつもお世話になっております。こちら、〇〇のお土産です。お口に合うか分かりませんが、受け取っていただけますか?」とへりくだった言い方を心掛けましょう。
「日本語のなかでも特に難しい言葉は?外国人が知っていたら驚かれるフレーズ」では、特に難しい日本語を紹介しています。内容を参考にして日本人との会話に活かしてみましょう。
英語圏に住む外国人ほど日本語を難しいと感じる
発音や文法がまったく異なるため、英語圏の外国人ほど「日本語は難しい」と感じるようです。実際にアメリカ合衆国の国務省では習得が難しい言語が公表されており、最高難易度に日本語が指定されています。習得難易度の判断基準は、アメリカ合衆国の外交官が諸外国と交渉するのに必要なスピーキングと、リーディングのスキルを身に付けるまでに掛かる時間の長さです。フランス語やドイツ語、イタリア語は1年以内に習得可能とされる一方で、日本語を学ぶには最低でも1年半以上掛かるとされています。英語圏の国々から見ると、日本は遠く離れた言語のルーツが異なる国です。そのため日本語を学ぶ上で覚えることが多く、習得するのが難しいといえます。
「日本語が難しい理由って?ほかの言語と比較してみよう」では、日本語が難しい理由のほかに、ほかの言語と比べて簡単な部分も解説しています。日本語の簡単な部分も知って学習に活かしましょう。
参照元 U.S. Department of State「Foreign Language Training」
日本語を難しいと思わない外国人もいる
日本語と同じ言語体系を持つ外国人は、英語話者に比べて習得が早い傾向にあります。特に漢字文化圏の外国人は漢字に対する造詣が深いため、日本語学習を難しいと感じない人もいるようです。「日本語は難しくない」と思う外国人がどのような理由からそう感じているのか、日本語習得につまづいている方はチェックしてみましょう。
漢字文化圏の外国人は日本語を習得しやすい
中国や台湾などの漢字文化圏で生活している外国人は漢字に対する知識があるため、日本語の習得を難しいと感じない人が多いようです。日本語の漢字は読みが複雑ですが、文字の形は中国や台湾と共通することが多く覚えやすいといえます。また、漢字文化圏ではないものの日本語と同じ文法を使う韓国語やトルコ語、モンゴル語話者はほかの外国人に比べて読み書きの習得が早いようです。
英語話者には難しい日本語の習得も、同じ言語体系を持つ外国人からすると困難ではないといえます。
日本語はほかの言語に比べて発音がシンプル
発音がシンプルで音の種類が少ないのが日本語の特徴です。日本語は舌を動かす動作が少なく口先だけで発音できるため、会話力は身に付きやすいでしょう。そのため、日本語学習者のなかには「文字の読み書きは難しいけど、会話ならできる」という外国人もいます。日本語の勉強に行き詰まっている方は、会話から学んでみるのも良いでしょう。
日本語を勉強中の方には、「日本語に対する海外の反応って?外国人に人気の言葉も紹介」のコラムもおすすめです。外国人がなぜ日本語を難しいと感じるのかを解説しています。また、そのままで意味の通じる人気の日本語も紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。
まとめ
日本語は英語話者から「世界一難しい言語」といわれるほど、習得難易度が高い言語です。しかし、漢字文化圏の外国人からすると習得難易度は低く、母国語によって難しさは変化すると考えられます。日本語は覚える文字や語彙が多く主語が曖昧になりやすい言語ですが、発音はシンプルで覚えやすいのが特徴です。日本語学習に行き詰まっている外国人は、このコラムを参考に勉強方法を変えて言語習得に励みましょう。