日本語には主語がない?省略する理由や海外の反応について解説

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2023/12/26

日本語は、ほかの言語と比べて主語や目的語が省略されやすい傾向にあります。日本人同士であれば会話は成立するものの、主語をはっきり表す母語話者には難しく感じられるでしょう。
このコラムでは、日本語の主語が省略される理由について解説します。日本語の会話の特徴を理解し、日本語学習やコミュニケーションに役立てましょう。

目次

  1. 日本語の主語とは
  2. 日本語の主語の使い方
  3. 日本語で主語を省略する理由
  4. 日本語の難しさに対する海外の反応
  5. まとめ

日本語の主語とは

日本語の主語とはの画像

日本語の文法における主語とは、「誰が」や「何が」を表す文節のことです。「私が」や「彼は」など動作の主体を明確にする役割を持っています。ここでは、主語について詳しく解説します。

主語になる品詞

主語は、体言+助詞で作られます。体言とは、活用がなくそれだけで意味を持つ名詞などの品詞です。主語は、名詞や代名詞のあとに「は」や「が」などの助詞を付けて作ります。主語を含む例文は以下のとおりです。

  • 私は東京に行く予定です(主語:私は)
  • 妹が料理を作ってくれた(主語:妹が)
  • 彼は旅行を楽しみにしている(主語:彼は)

また、品詞が変化してできた名詞の「転成名詞」も主語になります。

動詞の連用形「み」の形

形容詞+「さ」

形容動詞+「さ」

形容詞+「み」

転成名詞を主語とする例文は以下のとおりです。

  • 悩みが多い年頃(主語:悩み)
  • 歯の白さは清潔感を表します(主語:白さ)
  • 真剣さが足りなくて残念だった(主語:真剣さ)
  • 痛みがひどく薬を飲んだ(主語:痛み)

また、主語とセットで文を構成するのが述語です。主語は「誰が」「何が」を表し、述語は「どうする」を示します。また、主語には「が」「は」だけでなく、「も」「こそ」「さえ」を付ける場合もあるので注意しましょう。

主語を見分ける方法

主語を見分けるには、体言である名詞に助詞がついた形の文節を見つけると良いでしょう。また、主語は述語と組み合わせることで、文が成り立ちます。主語と述語だけのシンプルな文で、意味が通じるかを確認することで、動作の主体である主語が見つけやすくなるでしょう。

日本語の特徴や文法について詳しく知りたい方は、「日本語の特徴とは?文法や漢字など言語学習において難しいポイントを解説」のコラムを、日本語をクイズ形式で楽しく学びたい人は「誤用が多い日本語をクイズ形式で出題!正しい使い方や意味を勉強しよう」のコラムを参考にしてください。

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日本語の主語の使い方

日本語の主語の使い方の画像

主語は、文頭に置くのが基本です。しかし、会話や文章表現によっては、文中に置く場合もあります。ここでは、主語の使い方について解説するので、参考にしてください。

主語が文頭の場合

主語が文頭の場合は、「誰が(主語)+何する(述語)」の形で文を作ります。たとえば、「私は夕食を作る」という文の場合、主語は「私は」で、述語は「作る」です。

主語が文中の場合

主語が文の途中にある場合は、文頭に比べると分かりにくいため注意が必要です。たとえば、「飛行機に乗るには、チケットが必要です」の場合、主語は「チケットが」で、述語は「必要です」となります。主語が文中にある場合でも、「誰が」「何が」という動作の主体を表す語と、「どうする」「どんなだ」「何だ」という述語を見つけることで、文の骨組みが理解できるようになります。

このほか、動詞のあとに助詞「のは」「のが」「のも」などを付け、以下の例文のように主語として使うことも可能です。

  • 英語で文章を書くのは苦手だ(「書くのは」が主語)
  • ジムで運動をするのが好きです(「運動をするのが」が主語)

名詞以外の品詞が主語になったり文中にあったりする場合は、分かりにくいので注意しましょう。

日本語の勉強法や文法解説については、「日本語の勉強法を解説!覚えるのが難しい文法や敬語の使い方も紹介」のコラムを参考にしてください。

日本語で主語を省略する理由

日本語で主語を省略する理由の画像

日本語でのコミュニケーションでは、主語が省略される場合も少なくありません。一方で、日本語学習者にとっては、主語の省略によって文脈が掴みにくくなり、会話の主体が分かりにくいという問題があります。特に主語を省略しない母国語を持つ国の人にとっては、難しいと感じてしまうこともあるでしょう。
また、日本人が主語や述語を省略するのは、文脈を読んで相手の考えを悟ることに長けていたり、相手を傷付けないようにハッキリとした表現を避けたりする特有の性質も関係しています。

ここでは、日本語で主語を省略する理由を解説します。どのような場面で主語が省略されるのかを知り、会話の際に気を付けるポイントを理解しましょう。

同じ場にいるとき

2人だけで会話をしている際や自己紹介などで自分の話をしているときは、主語が省略されることがあります。自分と相手が同じ場にいてお互いに主語が分かっているにも関わらず、毎回言うのは不自然に感じるからです。以下の例を参考に、主語の省略について理解を深めましょう。

【主語を省略した例文】

  • 「山田花子です。東京都出身です。大学で英語の勉強をしています」

【主語を付けた場合の例文】

  • 「私の名前は山田花子です。私は東京都出身です。私は大学で英語の勉強をしています」

自己紹介の場合は、会話の内容はほとんど自分に関することであり、主語が「私」です。そのため、全ての文に「私」は不要と判断し、主語を付けすぎると不自然になることから省略されます。

【一部主語を付けた自然な例文】

  • 「私の名前は山田花子です。東京都出身です。大学で英語の勉強をしています」

主語を全て省略するのが難しいと感じる人は、最初の文のみに付けると良いでしょう。

話題を共有しているとき

会話の相手と自分が共有している話題がある際は、主語が省略されます。特に会話の相手が2人だけの場合などは、わざわざ「私」や「あなた」を言う必要がないと判断されるからです。以下の例を参考に、主語の省略について理解を深めましょう。

【主語を省略した例文】

  • 「寝坊して遅れちゃった。どのくらい待った?久しぶりに会えて嬉しい。元気そうだね」

【主語を付けた場合の例文】

  • 「私は寝坊して遅れちゃった。あなたは(私を)どのくらい待った?私はあなたと久しぶりに会えて嬉しい。あなたは元気そうだね」

日本人同士であれば、主語が省略された例文のみで理解できるでしょう。2人の会話に主語を付けることは、お互いに分かっていることを繰り返し伝えているような不自然な印象を与えます。カジュアルな会話においても、お互いの関係性から主語が省略される場合が多いので覚えておきましょう。

日本語の難しさに対する海外の反応

日本語の難しさに対する海外の反応の画像

日本語にはマナーを踏まえた日本語の使い分けや複数の敬語表現もあるため、複雑で難しいと感じる人も少なくありません。また、日本語にはオノマトペや同音異義語も多いため、日本語の文法を学び始めたばかりの人は内容理解に苦戦するでしょう。
ここでは、日本語が難しいと言われる理由について解説します。

マナーも覚えつつ言葉を使いこなすのが難しい

日本語では、会話する相手の立場によって敬語表現を変えなければなりません。そのため、場面や立場による敬語の使い分けが難しいと感じる日本語学習者もいるでしょう。敬語の種類は「丁寧語」「尊敬語」「謙譲語」の3種類あり、ただ丁寧な表現をすれば良いだけではなく、相手を敬ったり、自分をへり下らせて相手を尊重したりと臨機応変に使い分ける必要があります。

たとえば、目上の人に対して「分かりました。私から電話します」といった文章は、一見丁寧な表現が使われているように思えるものの、ビジネスの場においてはあまり相応しくない表現といえるでしょう。この場合は「承知しました。私からお電話します」というのが自然な表現です。このような表現の使い分けは、なかなか覚えられるものではありません。実際に日本社会で生活して初めて身に付くスキルといえます。そのため、日本語の敬語の使い分けは、日本語学習者にとっては大きな壁といえるでしょう。

英語圏の人にとっては言語の共通点が少ない

英語と日本語に共通点が少ない点も、難しいといわれる理由です。一般的に、共通点が多い言語は習得しやすく、反対に少ないと習得が難しいといわれています。

英語と日本語は、構造が大きく異なり共通点が少ない言語です。世界的に見ると英語を公用語としている国は50ヶ国以上あり、英語話者数は中国語話者数に次いで2番目に多くいます。英語を話す人が多い分、日本語を難しいと感じる人も多くなるのでしょう。一方で、韓国語やモンゴル語は日本語との共通点が多く、それらの言語を話す人は日本語を習得しやすいといわれています。

擬音語や擬態語を多用する

擬音語や擬態語、いわゆるオノマトペの多さが日本語の難易度を上げています。
日本語は、世界的に見ても擬音語や擬態語が多い言語です。日本語はほかの言語と比較して母音や子音の数が少なく、表せる音節が多くありません。そのような音節の少なさを補うために、擬音語や擬態語が多用されるようになったといわれています。擬音語や擬態語は「こう聞こえる」といった主観的な視点でできた言葉が多く、外国人は覚えにくいようです。

たとえば、ニワトリの鳴き声は英語では「クックドゥードゥルドゥー」、フランス語では「ココリコ」と表します。しかし、日本語では「コケコッコー」です。英語話者は「私にはクックドゥードゥルドゥーと聞こえるのに、なぜコケコッコーになるの?」と疑問に思うでしょう。このように、一見簡単に見えるオノマトペが日本語学習者を混乱させているようです。

同じ言葉でも複数の表現がある

日本語は類義語や同義語、同音異義語が多いのが特徴です。たとえば、「いどう」という言葉には「異動」「移動」「医道」「異同」など、同じ読み方でも違う意味を持つ同音異義語が複数あります。日本語は、古くから日本にあった和語や中国から伝わった漢語、西洋諸国から伝来した外来語とさまざまな言葉が組み合わさってできた言語です。そのため、一つの言葉でも多くの意味が存在します。使用する言葉の多さや表現の使い分けも、日本語が難しいといわれる一つの要因といえるでしょう。

日本のマナーを外国人にも分かりやすく解説!観光で役立つ場面別に紹介」では、食事や会話、交通機関など、場面ごとに日本のマナーを解説しています。日本文化に関心のある外国人の方は、ぜひご一読ください。また、敬語について詳しく知りたい方は、「日本語の敬語5種類の一覧!使い分け方もわかりやすく解説」のコラムを参考にしてください。

まとめ

まとめの画像

日本語の会話では、同じ場や話題を共有している場合に主語が省略される場合も少なくありません。日本人同士であれば、主語や目的語が省略されていても会話は成立します。しかし、主語の省略により動作の主体が分かりにくくなるため、日本語学習者は会話の内容を理解できない場合もあるでしょう。
まずは、主語と述語の関係を理解したうえで、どのような場面で主語が省略されるのかを理解することが大切です。また、日本語の会話に多く触れる機会を持つことで、感覚的に分かってくることもあります。日本人と積極的に会話をし、主語のない文でも理解できるような日本語スキルを身に付けましょう。

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