日本語が難しいとされる理由は、漢字や敬語の使い分けが複雑であったり、オノマトペや方言が多いなどさまざまです。このコラムでは、日本語が難しいといわれる理由を各項目に分けて詳しく解説します。また、ほかの言語と比べて簡単な部分や日本語を使いこなすコツも紹介。日本語を学ぶメリットや楽しさを知って今後の学習に活かしましょう。
目次
日本語の難易度は世界でもトップクラス
日本語は、世界的に見ても難しい言語と位置付けられています。アメリカ合衆国の国務省は、各国で使用されている言語の難易度を公表しました。難易度の指標は、英語話者であるアメリカ合衆国の外交官が、他国と交渉可能なレベルの語学力を身に付けるのに掛かる時間としています。難易度を公表したアメリカ合衆国国務省の公式Webサイト「US.DEPARTMENT of STATE」の「Foreign Language Training」では、各言語を1~4のカテゴリーに分類しており、日本語は最難関であるカテゴリー4に位置づけられました。
カテゴリー4の言語は、習得するまでにアメリカ合衆国の外交官が平均で88週間、授業時間にすると2,200時間かかる難易度とされています。日常会話レベルを目指すのであればここまで時間は掛からないものの、日本語が難しい言語であることに変わりはないでしょう。なお、カテゴリー4には韓国語、アラビア語、中国語(広東語・北京語)も日本語と同じレベルの難易度として分類されています。
日本語を着実に身に付けたい方は、日本語能力試験(JLPT)に挑戦し、最高難易度のN1レベル合格を目指して学習を進めていくのもおすすめです。
日本語能力試験(JLPT)について詳しく知りたい方は、「【JLPT N1】日本語能力試験N1レベル合格は就職・在留資格で優遇!」のコラムを参考にしてください。
参照元
US.DEPARTMENT of STATE「Foreign Language Training」
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日本語が難しいといわれる理由
日本語は、ときに主語を省略したり言葉を使い分けたりと仕組みが複雑なため、難しいといわれています。また、オノマトペや方言、漢字も学習者にとっては難易度が高く感じる要因といえるでしょう。ここでは、難しいとされる日本語表現について詳しく解説します。
文字の種類
日本語の文章は「ひらがな」「漢字」「カタカナ」が混在しています。日本語の使用文字の種類は、ほかの言語と比べてみても多いといえるでしょう。ひらがなや漢字、カナカナのみで書かれた文はないため、日本語を学ぶ際は、全ての文字を覚える必要があります。ここでは、日本語の文字の種類について解説するので、参考にしてください。
ひらがな
ひらがなは日本で生まれた文字で、50音で構成されています。また、ひらがなは、日本語学習者が最初に学ぶ文字です。ひらがなは、似ている形の文字も多く、「わ」と「れ」、「め」と「ぬ」、「る」と「ろ」「い」と「り」などは、日本語学習者にとっては区別がつきにくい文字とされています。また、とめ・はね・はらいなど書く際にも注意が必要なため、アルファベットに比べると、読み書きの難易度が高い文字といえるでしょう。
漢字
漢字は字画が多いうえに、音読みや訓読みの読み方の使い分けも難しい文字です。訓読みは中国から伝わった発音、音読みは日本語で生まれた発音という基本的な決まりはあるものの、日本人の多くは会話のなかで自然に使い分けています。そのため、日本語学習者は、漢字を覚えるだけでも大変なうえに、読みを理解するのは難しく感じるようです。そのうえ、漢字の送り仮名にも注意しなければならないため、漢字を理解することは日本語習得の大きな壁といえるでしょう。
カタカナ
カタカナはもともと漢字の省略文字として生まれた文字で、近代では外来語のアルファベット表記をカタカナに変換して使用することが増えてきました。また、和製英語と呼ばれる日本で作られた英語に似た言葉もカタカナで表記されます。カタカナは、一部ひらがなと似ている文字もあるものの、「ソ」と「ン」や「ツ」と「シ」など日本語学習者にとっては区別がつきにくく、表記が難しいと感じる場合も。また、ひらがなに慣れた学習者は、カナカナを読むのに苦戦することも多いため、難易度の高い文字と感じる人もいるでしょう。
外来語
外来語とは「借用語」とも呼ばれ、海外から日本に伝わった言葉のことです。外来語は、日本語の読み方で日常的に使われ、カタカナやアルファベット、ひらがなで表記されます。外来語には英語圏だけでなく、ドイツやフランス、ポルトガルなどから伝わった言葉もあるため、英語話者が簡単に理解できる言葉ではありません。アルバイトはドイツ語の「arbeit」、ボタンはポルトガル語の「botão」が由来です。外来語の単語の意味は外国語と同じであるものの、表記はカタカナなどの日本語読みに変化しているため、理解するのは難しい言葉といえるでしょう。
オノマトペ
日本語は、音や状態を表す擬態語や擬音語、いわゆるオノマトペを多用します。日本語は動詞や音節の数がほかの言語よりも少なく、表現の幅を広げるためにオノマトペを使うようになりました。日本語学習者にとっては、オノマトペを覚えることそのものが難しく苦戦するようです。ほかの言語にもオノマトペはあるものの、言語が変わると全く異なる表現になります。まずは、日本語の会話でよく使われるオノマトペから、少しずつ覚えていくと良いでしょう。
方言
日本語学習者を混乱させるのが方言です。海外にも方言は存在します。しかし、日本語の方言の多さは世界的に見ても珍しいようです。日本は縦に長い地形なうえ山や川が多く、交通の便が悪い時代には人々の往来が簡単にできませんでした。そのため、各地方が「国(くに)」として独自の言葉や文化を築いていった結果、多くの方言が生まれたといわれています。
日本の方言のなかでも、有名なのが関西弁です。関西弁にも京都弁や奈良弁、大阪弁など地域によって少しづつ言葉が変わります。標準語とは異なる方言を見聞きした際に、日本語学習者が難しく感じてしまうのも無理はないでしょう。方言全てを理解するのは難しいので、まずは挨拶やお礼の言葉など簡単な表現から覚えていくと、コミュニケーションにも役立つでしょう。
文法
日本語の文法は、主語 (Subject)・目的語 (Object)・動詞 (Verb)のSOV構造です。日本語と同じ文法構造を持つ国の人にとっては理解しやすい一方で、英語などSVO構造の母語話者にとっては複雑で難しいと感じる人もいます。また、日本語は品詞の活用が多く、時制による変化や自動詞・他動詞の使い分けが難しいと感じる学習者も少なくありません。文法を正しく理解するためには、日本の本やWebサイトの文章を読んだり、日本語能力試験(JLPT)に挑戦したりするなど、日本語に触れる機会を増やすと良いでしょう。
主語の省略
会話や文書において主語を省略する場合が多いのも、日本が難しいといわれる理由の一つです。特に、主語や述語をはっきりさせる英語圏の人は、日本語の文書を読むと「誰が?」「誰の?」と混乱してしまうでしょう。日本語は、文脈から内容を理解することの多い言語です。そのため、前後の会話や文書の流れで主語が誰かを判断しなくてはなりません。また、会話中に話の流れから主語を言わなくても分かる場合などは省略することもあるため、注意しましょう。
敬語
敬語は相手に敬意を示すために使う言葉です。敬語には「丁寧語」「尊敬語」「謙譲語」があります。敬語は3種類あるうえ、相手の行為に対して使ったり、自分の行為をへりくだった表現にしたりすることで敬意を示す言葉です。そのため、学習者にとっては使い分けが難しいと感じる表現の一つでしょう。たとえば、「行く」の丁寧語は「行きます」、尊敬語は「(相手が)いらっしゃる・お越しになる」、謙譲語は「(自分が)伺う・参る」と表現します。尊敬語は相手の行為を表し、謙譲語は自分の行為について述べる際に使うと覚えておくと良いでしょう。
促音・撥音・拗音・長音
日本語の音にはそれぞれ特徴があり、なかでも日本語学習者が難しいと感じるのは、促音・撥音・拗音・長音です。促音は、「買って」など小さい「っ」の音で、撥音は「飲んだ」のように「ん」が入る音を指します。拗音は「きゃ・きゅ・きょ」のように小さい「ゃ・ゅ・ょ」の文字が重なる音で、長音は「スキー場」の「ー」の伸ばす音です。促音・撥音・拗音・長音、それぞれの読み方を理解していなければ、発音するのは難しい音といえるでしょう。
アクセント
日本語のアクセントには音の高低があり、同じ語でもどこにアクセントのポイントを置くかで別の単語のように聞こえるのが特徴です。たとえば、「雨」と「飴」の読み方はどちらも「あめ」であるものの、雨は「あ」が高いのに対し、飴は「め」を高く読みます。このような、同音異義語のアクセントに難しさを感じる学習者は少なくありません。日本人であってもアクセントを全て理解しているわけではなく、地域によってもアクセントの違いがあります。同音異義語であっても会話の流れから単語の意味は推測できるため、読み方さえ合っていれば言いたいことは伝えられるでしょう。
言葉の使い分け
日本語が難しいとされている理由の一つに、複数の意味を持つ言葉の使い分けが挙げられます。一つの言葉が、使う場面によっては正反対の意味を持つことがあるため、どのように使ったらいいのか迷う学習者もいるでしょう。会話でよく使われる日本語の中で、使い分けに注意が必要な言葉は以下のとおりです。
- すみません:謝るときやしてもらったことに対して感謝を伝えるとき、人を呼ぶときに使う
- 大丈夫です:問題がないときに使う一方で、不必要なときに「要りません」という否定や断りの意
- 味で使う
- 結構です:良いという肯定の意味と、要らないという否定や断りの意味で使う
- いい加減:ちょうどよい程度という意味と、無責任や投げやりな様子を表す際に使う
- 適当:程度がほどよく、条件や要件などにあてはまっているという意味がある一方で、やり方が悪い、雑な対応という意味でも使われる
複数の意味を持つ言葉は、使うシーンによって異なる意味を持つため、学習者にとっては使い方が難しく感じる場合があります。使用する際に自信がないときは、言い換えの言葉を使ったり説明を補ったりして伝えると良いでしょう。
敬語やオノマトペについて詳しく知りたい方は、「日本語の敬語の種類や使い方を外国人に向けて解説!」「オノマトペとは?意味や使い方を覚えて表現を豊かにしよう」のコラムを参考にしてください。
日本語にほかの言語と比べて簡単な部分はある?
習得が難しいといわれている日本語でも「男性名詞や女性名詞がない」「発音がシンプル」など、ほかの言語と比べて簡単といえる部分もあります。難しいというネガティブな部分だけではなく、分かりやすい部分にも目を向けて前向きに学習を進めていきましょう。
全てを言語化しなくても伝わる
日本語はあいまいな表現が多い言語です。難しいと思う人もいる半面、全てを言語化しなくても会話の内容が伝わる点を分かりやすいと感じる人もいるでしょう。日本人はあいまいな表現から真理を読み取るコミュニケーションに長けています。そのため、表現が十分でなくても、「なんとなく」で会話が成立することも。「日本語がまだ完璧でない」と思っている方は、勇気を出して日本人とコミュニケーションを取ってみましょう。自分の思っていたよりもスムーズに伝わるので、日本語勉強のモチベーションが上がるきっかけになります。
男性名詞や女性名詞がない
日本語には男性名詞や女性名詞がありません。ヨーロッパには、名詞や名詞と一緒に用いる形容詞に性別を付ける言語が存在します。性別の存在しないものにも、男性名詞もしくは女性名詞を付けたり中性名詞を付けたりするケースもあり、非常に複雑です。男性名詞や女性名詞がない言語を母語とする人からすると、日本語は学びやすいといえるでしょう。
発音が複雑ではない
日本語は、発音においてはさほど難しくない言語だといわれています。日本語はほかの言語と比べて母音や子音の数が少ないため、発する音の数はあまり多くありません。学習者の母語によっては発音しにくい言葉はあるものの、イントネーションもシンプルなので習得にさほど時間は掛からないでしょう。
日本語の学習方法について知りたい方は、「日本語の簡単な勉強方法とは?覚えてからすぐ使えるフレーズも紹介」のコラムを参考にしてください。
難しい日本語を使いこなすコツ
日本語を使いこなすには、伝え方や言葉の使い方に気を付ける必要があります。ここでは、日本語を上手に使いこなし、コミュニケーションを円滑にするポイントを解説するので、参考にしてください。
シンプルな表現にする
確実に自分の意思を相手に伝えたいときや約束などの取り決めを行う際は、できるだけシンプルな表現を心がけましょう。文章作成においては一文を短くし、会話では長く話し過ぎないよう結論をまとめて話すのも効果的です。とはいえ、会話の際に否定的な意味を持つシンプルな表現を使いすぎると、相手に配慮のない印象を持たれる可能性もあります。シンプルな表現を使うときは、感謝の気持ちやお礼の気持ちを忘れずに伝えると良いでしょう。
敬語を使う場面を理解する
日本語の会話は、相手に敬意を示しながら話すのが基本です。目上の人やお客様、初対面の人に対しては、敬語を使います。そのためには、カジュアルな表現と敬語の違いを理解しておくことが大切です。とくにビジネスシーンなどの場においては、正しい敬語表現で対応することはマナーの一つとされています。敬語を上手く使えるようになると、コミュニケーションが円滑に行えるようになるだけでなく、学習者の日本語能力も高く評価されるでしょう。
使う相手やシーンを意識する
日本語を正確に伝えるためには、5W1Hを意識すると良いでしょう。5W1Hとは、いつ(When)・どこで(Where)・誰が(Who)・何を(What)・なぜ(Why)・どのように(How)の頭文字をとった表現です。ビジネスシーンなど正確さが求められる場面や日常会話においても5W1Hを意識することは、円滑なコミュニケーションをとるうえで役立ちます。文法が多少間違っていても、5W1Hの内容が正しく伝われば、意思疎通は可能です。会話の際は意識して使ってみてください。
日本語の会話には、「社交辞令」や「お世辞」という相手と良好な関係を築いたり機嫌をとったりするための言葉があります。社交辞令について詳しく知りたい方は、「社交辞令とお世辞の違いとは?外国人に向けて例文や注意点を解説!」のコラムを参考にしてください。
日本語を習得するメリット
日本語を学ぶメリットは、目的によってさまざまです。ここでは、難易度の高い言語といわれている日本語を習得するメリットについて解説するので、参考にしてください。
日本での進学や就職に繋がる
日本語を習得することは、日本滞在や就職において多くのメリットがあるといえるでしょう。日本の大学に進学したい、将来日本で働きたいと考えている人にとって、日本語能力は欠かせません。
語学力を正しく評価してもらい、進学や就職に繋げたい人には、日本語を母語としない人を対象にした日本語能力試験(JLPT)を受験するのがおすすめです。日本語能力試験(JLPT)の合格によって、在留資格の要件を満たせたり就労ビザの取得により日本で働く許可が得られたりします。
日本の漫画やアニメを楽しめる
日本の漫画やアニメは世界中から愛されるサブカルチャーの一つです。日本語学習者の中には、日本の漫画やアニメを見て日本や日本語に興味を抱き始めた人も少なくありません。日本語を習得することで、日本の漫画やゲームなど多くのサブカルチャーを翻訳なしで楽しめるようになるでしょう。
日本文化も同時に学べる
日本語には日本文化が反映されています。日本語の意味や由来を知ることで、歴史や時代背景も同時に理解できるでしょう。難しいとされている方言も、地域独自の風習や文化が言葉に表れています。日本語を学ぶことで、日本人らしさや日本語の特徴に気づくなど、新たな発見があるかもしれません。日本文化と母国の文化との違いを知り、楽しみながら日本語の学習を進めていきましょう。
日本語を楽しく学びたい方は、「日本語クイズで楽しく勉強しよう!略語や誤用されやすい言葉を中心に出題」「日本語のことわざはビジネスや日常生活に役立つ?外国人が学ぶメリットとは」のコラムを参考にしてください。
まとめ
日本語はほかの言語に比べると習得が難しい言語といわれています。日本語が難しいといわれる理由は、漢字の種類の多さや敬語の使い分け、主語が省略されやすいなどさまざまです。一方、発音が簡単だったり名詞に性別がなかったりとほかの言語と比べて簡単といえる部分もあります。また、日本語を習得することは、日本での進学や就職に有利であるほか、日本文化も同時に学べるなど多くのメリットもあるので、前向きに学習を進めていくと良いでしょう。