日本語と英語はどちらのほうが難しい言語なのか、気になる外国人もいるでしょう。日本語と英語は背景が異なる言語のため、一概に難易度を決めることはできませんが、それぞれ難しいといわれる理由があります。このコラムでは、英語と日本語の習得難易度について解説。外国人が日本語習得でつまづくポイントや、英語・日本語間で訳しにくい言葉もまとめています。日本語と英語の表現の違いを知り、言語習得に活かしましょう。
目次
日本語と英語はどちらのほうが習得が難しい?
日本語と英語は共通点が少ない言語のため、日本人からすると「英語は難しい」イメージが強く、英語話者からすると「日本語は難しい」と感じます。お互いに文法や文字が大きく異なる言語を学ぶため、どちらのほうが難しいかは一概に決められません。英語や日本語の習得難易度は、学習者の母国語によって大きく変わるでしょう。
日本語と英語のどちらが難しいかは一概にいえない
日本語と英語はそれぞれ異なる表現方法や文法、発音で構成されています。また、それぞれの言語の背景にある文化も違うため、学習者の出身国や母国語によって習得に掛かる時間に差があるでしょう。たとえば、韓国語や中国語を母語とする外国人であれば、共通点が多い日本語は簡単に感じる場合が多いですが、英語は難しいと感じる傾向にあります。同じようにドイツ語やフランス語を話す外国人の場合は、共通点が多い英語は簡単でも日本語は難しいと思うでしょう。
日本語と英語は共通点が少ない言語です。それぞれベクトルが異なる難しさがあるうえ、学習者の国籍や母国語によって習得難易度が変わるため単純に比較しないほうが良いでしょう。
母国語によって言語習得の難易度は異なる
日本語と英語の難しさは学習者の母国語によっても異なります。たとえば、韓国語や中国語、モンゴル語を話す外国人は文字や文法が似ている日本語は習得しやすい反面、英語は難しいと感じるようです。漢字文化圏に母国がある人や日本と同じ言語体系を持つ外国人は、日本語のほうが理解しやすいといえるでしょう。一方、ヨーロッパに住む外国人は「英語は簡単だけど、日本語は難しい…」と日本語の習得に苦戦するようです。言語を勉強する人の母国語によって習得難易度は左右されるため、英語と日本語のどちらが難しいかは一概に判断できません。
「日本語が難しい理由って?ほかの言語と比較してみよう」では、日本語が難しい理由のほかに、ほかの言語と比べて簡単な部分も解説しています。日本語の簡単な部分も知って学習に活かしましょう。
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日本語と英語は背景にある文化が異なる
英語話者のなかには「英語はシンプルだけど、日本語は複雑で難しい」という人もいます。その理由として、日本語と英語ではルーツや文化が異なることが考えられるでしょう。英語はダイレクトな表現が多いのに対して、日本語は相手に察してもらう表現や謙虚な言い回しが多い言語です。この違いは英語話者と日本語話者の国民性を表しています。
日本語は英語と違って回りくどい表現をしたり、文脈から本心を読み取ったりする必要がある言語です。「どこ行く?」「何したい?」というように主語を省略し、曖昧な表現を使うこともあります。日本は自分よりも相手を尊重し、その場の空気を読むことを重視する文化を持つ国です。日本語の表現や言い回しを完全に理解するには、背景にある日本文化に対する知識も深める必要があるでしょう。
日本語は、英語圏に住む外国人にとって特に難しいとされています。「日本語を学ぶ外国人が難しいと感じる理由とは?挫折しやすいポイントを解説」では、日本語が難しいといわれる理由や勉強で挫折しやすいポイントをまとめています。ぜひ、参考にして今後の勉強に役立てましょう。
外国人が日本語を難しいと感じる理由
日本語は英語と文法が異なるうえ、覚えるべき文字や語彙、オノマトペが多く難しいと感じる外国人が多いです。また、発音の違いが分からず勉強に行き詰まる日本語学習者もいます。日本語を勉強する外国人は、難しいポイントを把握して重点的に対策を取りましょう。
覚える文字や語彙が多い
日本語は「ひらがな」「カタカナ」「漢字」の3種類の文字で構成されています。特に漢字は常用漢字だけでも2000文字以上あり、同じ文字でも複数の読みを持つため、覚えるのに苦労する外国人は多いようです。また、日本語は書き言葉と話し言葉で表現が変わったり、物事を表すのに複数の言い回しがあったりします。たとえば、太陽という単語を表す日本語は「お日様」「お天道様」「日輪」などさまざまです。日本語は言葉だけで心情を表すため表現の幅が広く、日本語学習歴が長い人でも完璧に覚えるのは難しいでしょう。
文法が英語と異なる
英語と日本語では語順が異なるため、文法の違いに戸惑う日本語学習者もいます。英語がSVO(主語・動詞・目的語)やSVOC(主語・動詞・目的語・補語)などの文法を使うのに対して、日本語の基本語順はSOV(主語・目的語・動詞)です。英語話者が日本語を勉強する際は、文法の違いに慣れなければいけません。また、日本語は品詞の活用形が多いのが特徴です。助詞や助動詞の使い方が複雑で、間違って使ってしまう外国人もいます。
日本語の文法のなかでも英語話者が最もつまづくポイントが敬語です。敬語は話す相手や状況に応じて、「丁寧語」「尊敬語」「謙譲語」を使い分ける必要があります。相手を尊重する日本特有の考え方が強い言葉なので、外国人には習得が難しいようです。
オノマトペが多い
日本語は日常的にたくさんのオノマトペを使うため、覚えるのが難しいという外国人もいます。オノマトペとは、「べとべと」「にこにこ」「ニャーニャー」などの擬声語や擬音語、擬態語のことです。海外にもオノマトペはあるものの、日本語とは表現が異なります。たとえば、ドアをノックするオノマトペが日本語で「コンコン」なのに対して、英語では「knock」です。日本語の場合は「音」英語では「動詞」か「形容詞」で、オノマトペを表現します。ただし、アメコミで使われる英語のオノマトペは日本語のように音で表現されることが多いです。
日本語は世界的に見てもオノマトペが多く、日常生活のなかでも表現方法の一つとして多用されています。自国の言語とは異なるオノマトペをたくさん覚えなければならないため、日本語学習者は苦労するでしょう。
イントネーションの概念が分からない
英語は日本語に比べてイントネーション(抑揚)の変化が少ない言語だといわれています。日本語は同音異義語が多いため、抑揚のつけ方で言葉を区別することが多いです。一方、英語は抑揚がなくても意味が通じます。そのため、英語話者にはイントネーションの概念がほとんどありません。日本語の会話では微妙なイントネーションの違いを使い分ける必要があるため、発音を身に付けるのが難しいと感じる外国人は多いようです。
「外国人が難しいと感じる日本語とは?難しい理由から例文まで徹底解説!」では、漢字の読み方を試す文章や、主語や目的語がなく意味が分かりづらい例文も紹介しています。日本語に興味のある方は、ぜひチェックしてみましょう。
日本人が英語を難しいと感じる理由
英語話者をはじめとする外国人が日本語を難しいと感じるように、日本人は英語の習得に苦戦する人が多い傾向にあります。英語は日本語と異なる発音や文法、マインドセットを持つ言語です。日本語と英語は共通点が少なく、お互いに「世界一難しい言語だ」と感じることもあります。
発音に抑揚がない
英語はほとんど抑揚がないため、日本語との発音の違いに苦労する日本人は多いようです。日本語は口先だけで発音できるシンプルな言語のため、イントネーションを使い分けて言葉を区別します。一方で、英語は単語ごとのアクセントはあるものの、文章を通して音の高低を付けるイントネーションはほとんどありません。発音がまったく異なるため、英語話者からするとシンプルに見える英語は日本人には難しい言語になるようです。
日本語に存在しない発音がある
英語と日本語は優先的に使われる周波数帯が異なり、日本人が聞き取りにくい音が多いのも英語学習が難しいといわれる理由の一つです。英語には「th」「r」「v」など、日本語にない母音・子音の発音があり、英語学習を始めたばかりの日本人にはほとんど聞き取れません。
すべての言語にはメインの周波数帯域があり、日本語と英語では周波数が大きく異なります。日本語は1,500Hz以下の低周波の言語です。一方、英語は2,000Hz以上の高周波で最大12,000Hz程度になります。人間が聞き取れる周波数は幼少期にある程度固定されるといわれており、日本語に慣れている場合は2,000Hz以上の音がノイズに聞こえるようです。そのため、日本人が英語の周波数に慣れるには時間が掛かり、「英語の勉強は難しい」と思う人もいます。
日本語と異なる文法を使う
日本語と英語で文法が異なるのも、日本人が英語学習を難しいと感じる理由といえるでしょう。英語に使われている時制や前置詞、関係代名詞といった文法は日本語にはありません。人によって難しいポイントは異なりますが、英文法の勉強でつまづく日本人は多いようです。
英語のスペルが覚えにくい
多くの外国人が日本語の漢字学習で苦労するように、日本人は英語のスペルが覚えられず難しいと感じる人もいます。英単語のスペルは不規則で、同じつづりでも違う発音をすることが多いです。たとえば、「machine」「lunch」「ache」にはすべて「ch」というスペルが含まれていますが、それぞれ日本語で表すと「シ」「チ」「ク」と発音が異なります。英語はフランス語やギリシャ語、ゲルマン語派にルーツを持つ言語のため、同じスペルでも違う発音をするのが特徴です。そのため、異なるつづりにもかかわらず「ghoti」が「fish」と同じ読みになるという、英語のスペルと発音の不規則性を示すジョークもあります。
一応英語のスペルにルールはあるものの、読み方の不規則性になれていない日本人は「英語は難しい」と思うようです。
英語・日本語間で訳すのが難しい表現
英語と日本語はさまざまな面で正反対の言語のため、きれいに翻訳・通訳するのが難しい言葉があります。日本語から英語に訳すのが難しい言葉としては「お疲れさまです」「よろしくお願いします」「仕方ない」などが挙げられるでしょう。これらの言葉は、状況に応じて意味が変化する曖昧な日本語です。日本語から英語に訳す際は「何をどうしてほしいのか」を考え、意味を具体的にして英語表現に当てはめましょう。
英語にも日本語に変換するのが難しい言葉があります。たとえば、「patronize」はそのまま翻訳すると常連客や支持者になりますが、実際には「子ども扱い」や「小ばかにする」といった意味です。「zesty」も日本語に翻訳するのが難しい英語といえます。「zesty」は柑橘類の皮という意味を持つ言葉の形容詞ですが、マスタードや酢、チリペッパーなど風味がよく利いていておいしいときに使われる表現です。日本語の「ピリ辛」に似た表現ですが、辛いもの以外にも使われるため翻訳が難しいといえます。
まとめ
日本語と英語のどちらが難しい言語かは、学習者の母国語によって異なります。英語話者が日本語を勉強する際に漢字が覚えられなかったり、敬語に苦戦したりするように、日本語話者は英語のスペルや文法を覚えるのが難しいと感じるでしょう。日本語と英語はそれぞれ異なる文化やルールを持つ言語です。日本語を勉強している外国人は、このコラムを参考にそれぞれの言語の違いを理解し、今後の学習に役立ててください。