日本の農業は問題が山積み?外国人にも知ってほしい業界の課題点と強み

WeXpats
2023/02/03

日本の農業では、安全性が高く味もおいしい優れた農作物が生産されています。しかし、農地が狭く生産量が少ない・後継者が不足しているなど、問題点も多いのも事実です。農業に興味がある・日本で農業従事者として働きたいという外国人は業界全体の現状や将来性が気になるでしょう。そこで、このコラムでは、日本の農業の問題点と強みを解説します。海外の農業との違いや農家の働き方もまとめているので、チェックしてみましょう。

目次

  1. 日本の農業の特徴
  2. 日本の農業の働き方
  3. 日本の農業の課題点
  4. 日本の農業では外国人材が重宝されている
  5. 外国人が日本で農業に従事するには
  6. まとめ
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日本の農業の特徴

日本の農業の特徴の画像

日本は土地が狭く十分な農地を確保できないなかでも、農作物の収穫量を増やすためにさまざまな工夫を凝らして農業を行っています。また、品質や味に対するこだわりも強いのも日本の農業の特徴です。肥料や水質にこだわったブランド食材の開発が進んでおり、日本国内だけでなく世界各国にも日本産の作物を出荷しています。

収穫量を増やす農地づくりが行われている

日本は諸外国と比べて国土が狭いうえ、平野が少なく農業に適した土地がほとんどありません。そのため、農業に不向きな土地に手を加えたり化学肥料を使った集約農業を行ったりして、農作物の収穫量を増やしています。たとえば、「棚田」「段々畑」は山の斜面を耕して作った日本特有の農地です。たくさん棚田がある場合は、「千枚田」というので覚えておきましょう。日本の主食である米や野菜、果物などさまざまな農作物が育てられています。

日本特有の農地といえば「水田」も有名です。水田は稲を育てるための農地で、太陽エネルギーの変換率が高く、毎年作物を植えても地力が落ちることなく収穫を続けられます。また、稲自体も収穫量が多い作物です。水田が1haほどあれば、およそ10人が生きるために必要なエネルギーが得られるでしょう。

棚田や水田といった農地のなかでも日本社会や環境に適応し、継承されてきた日本独特の伝統的な農林水産業を営む地域は、日本農業遺産といいます。2022年1月時点の日本農業遺産認定地域は、22地域です。日本特有の農業に興味がある方は、調べてみたり実際に訪れてみたりすると良いでしょう。

品質にこだわった「ブランド」食材が多い

日本の農作物は安全性が高く品質も良いことで有名です。2013年に和食が無形文化遺産に登録されたことを受けて、諸外国では日本食をふるまうレストランや日本の農作物を販売するスーパーが増えつつあります。特に、「高くても良いから安全でおいしい食材が欲しい!」という人に、日本の農作物は人気です。

日本ではその人気にあやかって、地域ブランドを背負った日本産食材を開発し、日本国内や諸外国に出荷しています。ブランド食材は、国に信頼性の高い食材と認められた農作物です。国のお墨付きを受けたブランド食材は、「GIマーク」という登録標章がつき「地理的表示保護制度」で保護されます。たとえば、北海道の「夕張メロン」や鹿児島県の「種子島安納いも」などはGIマークがついた食品です。どれも高品質でおいしい食品なので、ぜひ食べてみてください。

参照元
農林水産省
「日本農業遺産とは」
「特集 日本の農林水産物・食品の輸出拡大に向けて ニッポンの食材、おいしいね!(4)」
「登録産品一覧

ピックアップ記事

日本の農業の働き方

日本の農業の働き方の画像

農業従事者は朝早くから農作業を開始し、作物を育てています。農業は体力や集中力を要する大変な仕事です。ここでは、日本の農家がどのように働いているのか、農閑期は何をしているのかをまとめています。日本の農業に興味がある方は、参考にしてください。

農家の一日の仕事の流れ

育苗や植え付けを行い収穫を終えるまでの間、農家は日の出とともに仕事を始めます。午前4〜午前5時ごろに起床して、作物の成長段階にあわせて雑草を抜いたり出荷の準備を整えたりするのです。なお、作物の種類によっては夜間に状態確認を行うこともあります。

日本の農家にとって涼しく活動しやすい早朝は、体力も集中力もあり最も仕事がはかどる貴重な時間帯です。そのため、多くの農家は朝ごはんを食べるより先に農作業を行っています。午前8〜午前9時ごろに休憩を兼ねて朝ごはんを食べ、その後昼ごはんの時間まで農作業にあてるのが一般的な流れです。正午〜午後1時ごろに昼食をとったあとは、2時間ほど農作業を行い、午後3時時ごろに水分や糖分の補給を兼ねた小休憩をはさみます。以降は日没まで農作業を続け、夜は食事や入浴を済ませて午後10〜午後11時ごろまでに就寝することが多いようです。

上記の内容から分かるとおり、農家は体力と集中力を保つため、こまめに休憩をはさみながら仕事を行います。なお、農家の仕事は天候や日照時間、育てる作物の種類による影響が大きいため、人によって働き方が異なるのが特徴です。複数の農作物を育てたり季節にあわせた農業を行っていたりする農家は、さらに仕事の時間が長くなることもあります。

農繁期と農閑期で働き方が異なる

農作物の収穫を終えて農業が一段落した農閑期は、繁忙期とは全く異なる流れで仕事を行っています。機械のメンテナンスや事務、農作物の加工などが主な仕事になるので早起きする必要がないため、日中になってから作業に取り掛かる農家が多いようです。また、自由な時間が取りやすい時期でもあるため、農閑期に趣味に打ち込んだり家族との時間を確保したりする農家もいます。基本的に作物が育ちやすい春〜秋が農繁期、冬が農閑期になるので、日本で農業を行いたい方は覚えておきましょう。

日本の農業の課題点

日本の農業の課題点の画像

高品質な農作物が多く国外でも評価されている日本の農業ですが、後継者不足や使われていない田畑の増加などの問題も多いのが現状です。ここでは、日本の農業の課題点を外国人にも分かりやすいようにまとめています。農業分野が直面している課題や日本の農家がどのような対策を講じているかが知りたい方は、ぜひチェックしてみましょう。

農地面積が狭い

先述したように日本は農地面積が狭い国です。平地が少なく山林が多いうえ、1億人以上の住居地を確保する必要があるため、農業に割ける土地が少なくなっています。十分な農地がない日本では、1億人以上の人口の食料を自国で賄うことはできません。実際に、日本の食料自給率はカロリーベースで37%、生産額ベースでは67%にとどまっています。広い農地を持つカナダやオーストラリア、アメリカなどはカロリーベースで90〜100%以上の食料自給率を誇っており、日本と比較するとその差は一目瞭然です。

自給自足が難しい日本では、多くの食材を海外からの輸入で賄っています。そのため、円安が続くと輸入が難しくなったり価格が跳ね上がったりしてしまうのです。安定した食料供給を行うためにも、日本は農地面積を増やし収穫量を増やすことが課題とされています。

 

世界の食料自給率の画像

引用:農林水産省「世界の食料自給率

農業従事者の高齢化が加速している

日本では農業従事者の高齢化が進んでおり、後継者の確保・育成が急務とされています。年間を通して農業に従事している基幹的農業従事者の平均年齢は、2020年時点で67.8歳です。2010年時点では基幹的農業者の平均年齢が66.2歳だったため、2.6歳高齢化が進んでいます。農業は体力と集中力を要する仕事なので、高齢になると農作業を行うのが難しくなり、離農する人も少なくありません。日本は新規の就農者よりも離農者のほうが多いため、年々農業従事者が減少しています。実際に、2010年には205万人が農業に従事していましたが、2020年時点では70万人ほど減少して136万人でした。そのため、日本の農業は新規就農の促進や若い後継者の確保・育成に力を入れています。また、外国人材の受け入れも積極的に行っており、近年では農業の知識を持った外国人が取得できる専門的な在留資格も創設されました。農業分野における外国人材の受け入れや新規就農者の支援状況は農林水産省のWebサイトで確認できるので、詳しく知りたい方は調べてみると良いでしょう。

耕作放棄地が増えている

日本では、農作物を植え付けて栽培を行う見込みのない耕作放棄地が増加傾向にあります。耕作放棄地が増加しているのは、新規就農者の少なさと農業従事者の高齢化が原因です。上記で説明したとおり、日本では農業従事者の高齢化が進んでおり、年齢を理由に離農する人が少なくありません。その際に、離農した農業従事者に後継者がいないため農地が継承されず、耕作放棄地になってしまうのです。今後も耕作放棄地が増えた場合、食料自給率が低下したり生態系に悪影響を及ぼす外来種が繁殖してしまったりと、さまざまなデメリットが考えられます。さらに、市街地に近い耕作放棄地であればごみの不法投棄が行われる可能性もあるでしょう。

このような耕作放棄地を減らすため、日本では各自治体が主体となって市民農園を運営したり特産物を育てたりしています。耕作放棄地の活用が進めば、食料自給率が改善し地域の活性化にもつながるでしょう。

高齢化が加速している日本の農業の将来が気になる方は、「日本の農業は高齢化が深刻!現状と将来的な影響を外国人向けに解説」をチェックしてみましょう。農業従事者の高齢化による農業への影響や解決策を、外国人向けに分かりやすくまとめています。

参照元
農林水産省
「その2:食料自給率って低いと良くないの?」
「新規就農の促進」
「令和2年度 食料・農業・農村白書 全文」
「農業従事者数(のうぎょうじゅうじしゃすう)の変化(へんか)をおしえてください

日本の農業では外国人材が重宝されている

日本の農業では外国人材が重宝されているの画像

深刻な人手不足が業界全体で問題となっている農業は、安定的に事業を行えるよう改革が必要だと考えられています。特に、昨今の農業分野で注目を集めているのが「農業の機械化」と「外国人材の活用」です。

日本では個人経営が主流の農業ですが、今後は企業による大規模経営が増えると予想されています。

アメリカのように機械を活用し、効率的に農作物の育成・収穫を行う「大農法」を行えば、少ない人手でも安定した品質の農作物の大量生産が可能です。しかし、日本はアメリカとは農地の作り方も気候も異なるため、大農法の導入は一筋縄ではいきません。そこで、個人経営の農家の負担を軽減する、ロボット・ドローンの力を借りた「スマート農業」や外国人材の受け入れが重視されています。特に外国人材の受け入れが進んでおり、農繫期のみ外国人を雇用し、収穫や出荷の作業を行ってもらう農家は多いようです。

日常会話程度の日本語のコミュニケーションができれば、外国人も日本で農業を行える可能性があります。日本で農業を学びたい・働きながら技術を習得したいという外国人は、積極的にチャレンジしてみましょう。

外国人が日本で働くには、就労可能な在留資格が必要です。「日本で働く外国人労働者の人数は?就労可能な在留資格も紹介」では、実際に日本で働く外国人の人数や在留資格の種類をまとめています。農業分野で働きたい外国人は、参考にご覧ください。

外国人が日本で農業に従事するには

外国人が日本で農業に従事するにはの画像

個人経営・企業経営ともに農業は人手不足が深刻です。そのため、労働力確保や次の世代への技術継承を目的に、外国人雇用を検討している農家も一定数います。日本の農業に興味がある外国人にとっては、就職先が見つかりやすい環境といえるでしょう。

外国人が日本で農業に従事する方法はいくつか存在します。ここでは、その方法と必要な在留資格の種類をまとめているので、日本で農業を行いたい外国人は参考にしてください。

技能実習生として来日する

日本の農業分野では、国際貢献を目的として外国人技能実習生の受け入れを行っています。日本で農業に従事する外国人の大半は技能実習生です。新型コロナウイルス感染症の流行により日本に入国する外国人材の数が減少したものの、2021年は3万30人の技能実習生が農業に従事しています。2022年3月から水際対策が緩和されたので、今後は農業に従事する外国人材の数が増えるでしょう。

技能実習生として来日できるのは、帰国後に習得した技能を活かせる業務につく予定がある18歳以上の外国人です。ほかにも、母国や自治体からの推薦を受けている・面接で適性が認められるなど、さまざまな条件があるので確認しておきましょう。技能実習生は、在留資格「技能実習」で日本に滞在することを認められています。一定期間ごとに行われる技能検定を通過すれば、最長5年間の在留が可能です。

在留資格「特定技能」を取得する

農業に関する専門的な知識・技能を持つ外国人は、在留資格「特定技能」を取得すれば、日本で農業従事者として活動できます。在留資格「特定技能」は、人手不足が深刻な業界の労働力を補うために創設されました。技能実習生と違って特定技能人材は労働力として雇用されるため、農業とは直接関わりのない事務や単純労働を行うこともあります。

2021年時点で農業に従事している特定技能人材は6,232人です。在留資格「特定技能」には1号と2号があります。2022年時点では、農業分野で雇用が認められているのは特定技能1号のみで、在留期間は最長5年です。なお、在留資格「技能実習」から「特定技能」への移行も可能なので、技能実習生からスタートの場合は最長10年日本の農業に従事できます。

身分に基づく在留資格を取得する

「永住者」「日本人の配偶者等」といった身分に基づく在留資格を持つ外国人も、日本で農業に従事できます。就労資格を含むほとんどの在留資格には就労制限が設けられており、一定の範囲内でしか勤務先を選べません。一方で、身分に基づく在留資格は就労制限がないため、自由に自分が働きたい職業にチャレンジできます。自分で農地を購入し、農場を経営することも可能です。日本に永住して農家になりたい外国人は、身分に基づく在留資格の取得を検討してみましょう。

参照元
農林水産省「令和3年度 食料・農業・農村白書(令和4年5月27日公表)

まとめ

まとめの画像

日本の農業は基幹的農業従事者の高齢化が激しく、耕作放棄地が増えたり労働力が不足したりと課題点が多いのが現状です。一方で、ブランド食材の輸出や機械化による農家の負担軽減、労働力確保のための外国人材の受け入れなど、日本の農業を存続させる取り組みにも力を入れています。

今後は海外の農業大国のように大農法が主流になるともいわれていますが、日本ではまだまだ個人経営の集約農業が盛んです。狭い農地や多様性に富んだ気候を活かした日本独特の農業に興味がある方は、実際に技能実習生や特定技能人材として就農してみるのも良いでしょう。

ライター

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