台風に名前をつけるのは、人々の関心を引き、防災意識を高めるのが目的です。日本に来る台風にはアジア名がつけられており、どの名前をつけるかは台風委員会が決めています。毎年夏から初秋に訪れる台風。このコラムでは、どのような名前があるのか、いつごろからアジア名をつけるようになったのかを解説します。台風の際に役立つ防災対策もまとめているので、参考にご覧ください。
目次
台風に番号や名前をつける理由
台風に名前をつける理由は、人々の関心を集め、警戒心や防災意識を高めるためです。台風によって大きな被害がもたらされた場合は、あとから特別な名前がつけられることも。また、台風には名前のほかに番号もつけられます。台風や番号の決め方を知り、防災意識を高めましょう。
台風の名前は台風委員会が決めている
台風の名前を決めているのは、日本を含む14の国と地域からなる台風委員会です。北西太平洋もしくは南シナ海で発生する台風被害を防ぐための組織で、2000年から台風に名前をつけてきました。台風委員会がつけるのは、加盟国や地域が提案した北西太平洋もしくは南シナ海で共通の名前です。
日本の台風の番号のつけ方
日本にくる台風に番号をつけるのは気象庁です。毎年1月1日以降最初に発生した台風から順番に1号、2号と番号をつけます。「熱帯低気圧」となった台風が再び勢力を強めた際は、もともと割り振られていた番号に戻る決まりです。年をまたぐと台風の番号はリセットされ、また1から順につけられていきます。
甚大な被害が出た台風は日本独自の名前がつく
壊れた家が1,000棟以上、または浸水した家が10,000棟以上出るなど、被害が大きく後世に伝える必要がある台風には独自の名前がつきます。「令和元年東日本台風」のように、名前の決め方は原則「元号年+顕著な被害が起きた地域・河川名+台風」です。なお、「伊勢台風」「平成16年台風第18号」など元号年や地域・河川名がないものもあります。
「日本の気候や天気の特徴とは?各季節の注意すべきポイントも解説」では、四季に合わせて日本の天気を解説。台風のほかにも天候で注意すべきポイントをまとめています。
参照元 気象庁「1.台風の番号の付け方」 気象庁「顕著な災害を起こした自然現象の名称について (平成30年7月9日)」 気象庁「台風による災害の例」
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日本に来る台風にはアジア名がつけられる
日本に来る台風につけられるのはアジア名です。アジア名は140個あり、2000年に発生した台風第1号からつけられるようになりました。
アジア名がつくようになったのは2000年以降
日本の台風にアジア名が採用されたのは2000年からです。それまではアメリカがつけていた英語名が採用されており、命名されてなかった場合は呼び名がありませんでした。
台風にアジア名がつけられるようになった理由は2つあります。1つ目はアジアの国々や地域の文化を尊重し国家間の連帯・理解を深めるため。2つ目はアジアに住む人々に馴染みのある台風の名前をつけ人々に注意を促すためです。つまり、アジア名をつけるのはアジアと世界の国との関係を親密にし、台風への警戒の意識を高めるためといえます。
台風のアジア名は140個ある
2023年時点で使用されている台風のアジア名は140個あります。日本をはじめ中国やベトナム、フィリピン、カンボジアなどアジアの国・地域がそれぞれ台風の名前を提案しました。日本の台風発生数から考えると、およそ5〜6年ですべての名前が使われる計算です。なお、台風のアジア名のなかには、甚大な被害を記録したために使われなくなる名前もあります。使われなくなることを「引退」といい、「Vamei(鳥名)」「Chataan(雨)」「Rusa(鹿)」「Pongsona(ホウセンカ)」などは引退した台風のアジア名です。
台風のアジア名を種類別に解説
ここでは、台風のアジア名の一例を種類別に解説します。名前の由来を知れば、国・地域ごとの台風に対する考え方も分かるでしょう。日本がつけた台風の名前や変わったアジア名も紹介します。
日本が考えた台風の名前は星座にちなんでいる
日本が考案した台風のアジア名は以下の10個です。
- コイヌ
- ヤギ
- ウサギ
- カジキ
- コト
- クジラ
- コグマ
- コンパス
- トカゲ
- ヤマネコ
日本の台風の名前は、すべて星座が由来です。個人や法人を特定する名前ではなく、だれの利益にも損失にもならないとして採用されました。なお、現在は使われていない日本発案の台風のアジア名には「ワシ」「コップ」などがあります。
植物や動物からついた台風の名前
植物や動物が由来となった台風のアジア名も存在します。動植物のアジア名と考案した国・地域は以下のとおりです。
- Toraji(キキョウ):北朝鮮
- Nari(ゆり):韓国
- Damrey(ぞう):カンボジア
- Bailul(白鹿):中国
- Mawar(ばら):マレーシア
- Chaba(ハイビスカス):タイ
- Muifa(梅の花):マカオ
- Guchol(うこん):ミクロネシア
台風のアジア名には、動植物の名前が由来のものが数多くあります。いくつもの国・地域が動植物に関する名前を提案しているのは、日本の星座由来の名前と同じく、特定の物事を連想させにくいからだと考えられるでしょう。
「風神」「海神」など「神」がつく名前
台風のアジア名には、「風神」「海神」など「神」がつく名前もあります。
- Fengshen(風神):中国
- Haishen(海神):中国
- Ewiniar(嵐の神):ミクロネシア
- Son-Tinh(ベトナム神話の山の神):ベトナム
- Prapiroon(雨の神):タイ
- Sinlaku(伝説上の女神):ミクロネシア
台風のアジア名に強大な力を持つ神に関する名前がついているのは、台風に対する恐れの表れといえます。
天気の名前がつく台風
気象現象の一つである台風に天気の名前がつけられることもあります。
- Matmo(大雨):アメリカ
- Aere(嵐):アメリカ
- Lan(嵐):アメリカ
- Atsani(雷):タイ
台風に天気の名前をつけるのは、大雨や強風への警戒を促すためといわれています。
一風変わった台風の名前
台風のアジア名のなかには、お菓子や花火を意味する一風変わった名前もあります。以下はその一例です。
- Bualoi(お菓子):タイ
- In-fa(花火):マカオ
- Omais(徘徊):アメリカ
上記の名前は台風の特性や動きから連想してつけられた名前だと考えられます。変わった名前をつけることで、人々の関心を高めるのも目的の一つでしょう。
参照元 気象庁「台風のアジア名と意味」
台風の名前をきっかけに防災の意識を高めよう
台風に名前がつけられるのは、人々の関心を引いて防災意識を高めてもらうためです。日本は地理の関係で毎年夏から秋にかけて多くの台風が接近・上陸します。大型台風の上陸によって、多くの命が奪われたり建物が倒壊したりと甚大な被害が出ている昨今、身を守るには日ごろの備えが大切です。
日ごろから備えておくこと
日本は台風や地震、津波など自然災害の多い国です。あらゆる災害から身を守るために、普段から食料や飲料水を備蓄し、いざという時のための持ち出し品を袋に詰めておきましょう。被災し、自宅から避難所に移る際に持ち出すものは、リュックサックにすべて詰めておくと迅速に避難できます。
引用:首相官邸「災害の「備え」チェックリスト」
避難経路や家族との連絡方法、災害時の情報収集もあらかじめどのように行うか確認しておきましょう。災害に対する備えができていれば、自身や家族を危険にさらす可能性を抑えられます。
台風が発生したら気をつけること
台風が接近してきたら、家の近くの風で飛びそうな物は固定もしくは家の中にしまいましょう。外でペットを飼育している場合も、安全のために家の中に避難させてください。
大雨によって排水溝があふれないよう、配管を掃除するのも重要です。懐中電灯やラジオ、乾電池などの非常用品の確認をし、台風が近づいてきたら家の外には出ないようにしましょう。ニュースで台風の規模や進路をこまめにチェックして警報などに注意し、いざというときはすぐに避難できるように準備しておくと安心です。
気象庁や政府は防災対策のガイドラインを定めています。常に非常時の備えを用意する習慣をつくり、年に何回か持ち出し品の点検・確認をすると良いでしょう。
参照元 気象庁「自分で行う災害への備え」 政府広報オンライン「災害時に命を守る一人一人の防災対策」 首相官邸「災害に対するご家庭での備え〜これだけは準備しておこう!~」
まとめ
台風に名前を付けるのは、人々に関心を持ってもらい災害による被害を抑えるためです。台風がもたらす暴風や大雨、土砂災害などによって毎年多くの人々が亡くなっています。この機会に防災対策を見直し、いざというときに適切な対処ができるように準備しておきましょう。