ベトナム特定技能人材送出し・受入れに関する覚書(MOC)とは?

2020年10月13日
佐藤一清 (監修)
武蔵行政書士事務所
武蔵行政書士事務所 代表行政書士 https://musashi-gyosei.com/

近年、日本国内の技能実習生の中でもベトナム人労働者の比率が高くなっています。「特定技能」在留資格を取得し日本で働く外国人労働者のうち、半分以上がベトナム人労働者です。一方、ベトナム国内でも海外就労先の国として日本を選ぶ方が数多くいます。ベトナムと日本の間で労働者の移動が活発化する中で、ベトナム政府と日本政府は特別な取決めをしています。

参照:厚生労働省「外国人技能実習制度 の現状、課題等について(平成30年3月23日)」
出入国在留管理庁「特定技能1号在留外国人数 (令和2年3月末現在)概要版」
JETRO 日本貿易振興機構 ビジネス短観「2019年のベトナムからの労働者派遣先、日本が2年連続で最大」

特定技能における送出し・受入れ

・特定技能とは

特定技能は在留資格のひとつです。日本国内の深刻な人手不足を改善するために、2018年(平成30年)「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」が成立・施行され、14の業種で外国人労働者を雇うことができるようになりました。特定技能には外国人労働者の技能に合わせて1号と2号のふたつの区分があります。1号は「相当程度の知識又は経験を必要とする技能」とされ上限5年までの在留期間になります。2号は「熟練した技能」とされ在留期間の上限はなく、家族帯同も可能です。

参照:出入国在留管理庁 「入管法及び法務省設置法改正について」
出入国在留管理庁 「新たな外国人材の受入れ及び社会的共生実現に向けた取組」

・送出し機関・受入れ機関とは

外国に在住している外国人労働者に、日本国内の職業をあっせんする機関を「送出し機関」と言います。外国人労働者を雇用する日本国内の企業などを「受入れ機関」と言います。人身売買などの悪質な仲介業者を排除し、外国人労働者を保護するために職業安定法や労働関係規則、協定などの決まりがあります。外国人労働者を送出す側も受入れ側も、法律などに沿って様々な制限や義務があります。

参照:公益財団法人 国際人材協力機構「送出し国・送出機関とは」
公益財団法人 国際人材協力機構「在留資格「特定技能」とは」「③受入れ機関と登録支援機関について」

ベトナム政府・日本政府の覚書「特定技能MOC」

・特定技能MOCの目的

MOCとは、Memorandum of Cooperation の略称で、「協力覚書」を意味します。2019年7月1日「ベトナムとの間の特定技能制度に係る協力覚書(MOC)」が交換されました。「特定技能」の在留資格を使い日本国内で働くベトナム人労働者に関する協力覚書です。特定技能MOCは、ベトナム人労働者の日本での就労をサポートすると共に、悪質な労働仲介業者(ブローカー)排除を目的としています。以前から、ベトナムからの技能実習生や留学生、技術者などが、悪質な労働仲介業者(ブローカー)の詐欺等の被害に等の社会問題になっています。その対策として、ベトナム政府と日本政府の協力覚書(MOC)ができました。現在、制度面の整備が行われているところです。

参照:在ベトナム日本国大使館 「ベトナムとの間の特定技能制度に係る協力覚書(MOC)」
在ベトナム日本国大使館「注意喚起)ベトナムの若者が悪質な労働仲介業者(ブローカー)などにだまされて被害にあっています」
在ベトナム日本国大使館「日本国法務省,外務省,厚生労働省及び警察庁とベトナム国労働・傷病兵・社会問題省との間の在留資格「特定技能」を有する外国人に係る制度の適正な運用のための基本的枠組みに関する協力覚書(仮訳)」

・推薦者表とは

「ベトナムとの間の特定技能制度に係る協力覚書(MOC)」では、悪質な労働仲介業者(ブローカー)排除のために「推薦者表」制度について約束されました。「推薦者表」とは、ベトナム政府が推薦するベトナム人労働者の一覧表のことです。日本側の企業などの受入れ機関は、この「推薦者表」にあるベトナム人労働者のみ採用できます。まだベトナムにいる就労希望のベトナム人労働者も、既に日本国内に在留している技能実習生や留学生もこの「推薦者表」に登録しなければいけません。

参照:在ベトナム日本大使館「ベトナムの特定技能MOCの概要」(令和元年7月23日)p.8~9

・禁じられた職業・区域

ベトナムの法令で禁止された職業や区域では、日本国内であってもベトナム人労働者を働かせてはいけません。具体的には、戦闘又は戦闘の恐れのある地域や、放射能汚染された地域、汚染された地域、伝染病の危険が著しい地域 ・受入国が外国人労働者の労働を禁じる地域のことです。

参照:在ベトナム日本大使館「ベトナムの特定技能MOCの概要」(令和元年7月23日)p.10

人材教育費などの負担に関する再確認

ベトナム人労働者が在留資格「特定技能」を取得し、日本で就労するためには、様々な費用が発生します。ベトナムから日本へ渡航する交通費だけでなく、在留資格「特定技能」の基準を満たす日本語能力と技能訓練を行う費用も必要です。その費用をどこからどのくらい徴収するか?について取決めが整備されています。ベトナム人技能実習生が悪質な仲介業者(ブローカー)に騙され多額の教育訓練費を払わされる被害が問題になっており、ベトナム人労働者の保護のために、費用負担に関する取決めの再確認が行われています。

参照:在ベトナム日本国大使館「注意喚起)ベトナムの若者が悪質な労働仲介業者(ブローカー)などにだまされて被害にあっています」
在ベトナム日本大使館「特定技能労働者派遣の費用等に関するガイドラインについて」

おわりに

近年、技能実習生としても特定技能労働者としてもベトナム人労働者の比率が高まっており、多くのベトナム人労働者の方々が日本で活躍しています。一方で、悪質な仲介業者(ブローカー)による被害も起きており問題視されています。そのため、現在ベトナム人労働者の保護のため、ベトナム政府と日本政府の間で制度整備が進んでいるところです。ベトナム人労働者を雇用する際にはベトナム独自の手続きもあり注意が必要です。早めの事前準備をおすすめします。

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