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技能実習生を受け入れている企業のなかには、在留資格「特定技能」への移行を検討している企業もあるでしょう。在留資格「技能実習」から「特定技能」への移行手続きを行うには、いくつかの要件を満たす必要があります。そこで、このコラムでは技能実習から特定技能へ移行するまでの流れを解説。移行可能な職種や手続きを行うメリット・デメリット、新型コロナウイルス感染症の流行による特別措置もまとめて紹介します。
目次
一定の条件を満たせば、技能実習生の在留資格を「技能実習」から「特定技能」へ移行することは可能です。ここではまず最初に、それぞれの在留資格の違いや技能実習から特定技能への移行が認められる職種について解説します。
在留資格「技能実習」と「特定技能」の違いは、制度が創設された目的にあります。外国人技能実習制度は、開発途上国の外国人に日本の技術や知識、技能を移転し経済発展に活かしてもらうのが目的です。一方で、特定技能制度はあらゆる手段を講じても人手不足が深刻な日本の特定産業において、即戦力となる人材を確保することを目的としています。また、対象国もそれぞれ異なり、技能実習が16ヶ国なのに対して、特定技能はイランとトルコを除くすべての国が対象です。
そのほかにも、技能水準や雇用できる人数制限の有無など異なる点は多々あります。在留資格「特定技能」を持つ外国人は、労働力として雇用できるうえ任せられる業務も増えるため、企業にとって貴重な人材となるでしょう。
在留資格「特定技能」の雇用が認められるのは、特定産業分野に該当する14分野のみです。技能実習生が行う作業内容や職種が下記の14分野に該当する場合、技能実習から特定技能へ移行できます。
特定産業分野には、人手不足によって生産性が低下している産業が指定されています。特定産業分野が拡大する自社で特定技能人材の雇用が認められるか知りたい企業は、あらかじめ確認しておきましょう。なお、今後ほかの産業が特定産業分野に追加される可能性もあるので、人手不足に悩んでいる企業は特定技能制度の動向を追うことをおすすめします。
技能試験14業種の試験実施国や実施方法については詳しく書かれた「特定技能評価試験とは?介護や外食など在留資格を得られる14業種を紹介!」のコラムもオススメです。
技能実習から特定技能への移行は、外国人本人にも企業にもメリットがあります。ここではメリットを詳細に解説するので、技能実習生に在留資格「特定技能」の取得を打診したい企業はチェックしてみましょう。
技能実習から特定技能に在留資格を変更すると、在留期間が通算5年間まで延長されます。在留資格「技能実習」は1号・2号・3号と区分されており、在留期間は最長5年です。在留期間を満了して在留資格「特定技能」に移行した場合、合計10年雇用できます。技能実習で得た知識を活かして高収入を得たい、母国の家族に仕送りをしたいと考える外国人にとって、在留期間が延長されるのは喜ばしいことでしょう。また、特定技能人材として日本で働いたことが実績となり、帰国した際により良い仕事に就ける可能性もあります。
企業のメリットとしては、技能実習生としてすでに受け入れている外国人を特定技能人材として雇用するため、採用コストの削減につながるでしょう。技能実習によって専門的な知識や技術、技能を得ていることもあり、教育や研修の負担も軽減できます。業務の進め方や社内ルールを改めて説明する必要もありません。企業にとって、特定技能人材を新たに雇用するよりもメリットが大きいといえるでしょう。
技能実習から特定技能に移行することによって、従事できる業務や職種の幅が広がるのもメリットといえます。特定技能は労働力の確保を目的とした制度です。そのため、技能実習と違って業務に付随する単純作業にも従事させられます。また、特定技能人材は企業で直接雇用するため、技能実習生のときよりも業務を任せる際の手間が減り、働いてもらいやすくなるでしょう。外国人も業務や職種の幅が広がることでさまざまな仕事が行えるようになり、スキルアップにつながります。
在留資格「特定技能」には1号と2号があり、在留期間や技能水準、家族帯同の可否などが異なります。技能実習から特定技能に在留資格を変更した外国人が該当するのは、「特定技能1号」です。特定技能1号は在留期間が通算5年間で、家族帯同は認められていません。しかし、特定技能1号の期間が満了したあと所定の試験に合格すれば、在留期間の制限がないうえ家族帯同も可能な「特定技能2号」に移行できます。
特定技能制度が創設されたのが2019年ということもあり、多くの特定産業分野で受け入れているのは特定技能1号のみです。2022年時点で特定技能2号の受け入れが可能なのは建設業と造船・舶用工業だけですが、今後ほかの分野でも受け入れが拡大する可能性は十分あります。将来を見据えて、技能実習から特定技能へ在留資格を変更するのも良いでしょう。
参照元 出入国在留管理庁「特定技能制度」
外国人の在留資格を技能実習から特定技能に移行させる際、企業にとってデメリットとなることも出てきます。企業はデメリットも把握したうえで、技能実習生に特定技能への移行を打診しましょう。
技能移転を目的とした在留資格「技能実習」と違い、就労目的の「特定技能」は同じ職種であればほかの企業への転職が認められます。優秀な人材が離れてしまう可能性があるのは、企業にとってデメリットといえるでしょう。技能実習から特定技能に移行したあとも長く働いてもらうには、本人の実力を正当に評価して給与や待遇に反映するのが大切です。
特定技能人材の雇用コストは、技能実習生に比べて高いといえます。たとえば、特定技能人材に支払う給与は法律で定められており、日本人と同等以上でなければなりません。待遇や有給休暇の付与も同様です。技能実習生のころに比べて雇用コストが高いと感じる企業もありますが、特定技能人材は日本人と同じように業務を行えるため、当然の扱いといえるでしょう。また、外国人雇用特有の手続きや就業に必要なサポート業務の実施にも費用が掛かります。特定技能人材を雇用する際は同等の能力を持つ日本人よりも、コストが高いことを覚えておきましょう。
特定技能人材を雇用する企業は、特定技能所属機関の要件を満たす必要があります。特定技能所属機関になるには、企業が特定産業分野に該当する事業を行っていることが条件です。ほかにも、リストラによる社員の離職や法令違反がなく、特定技能人材と適切な雇用契約を締結し適切な支援計画を持ってサポートを行うことが挙げられます。
特定技能人材のサポートは、特定技能所属機関の義務です。企業でのサポートが難しい場合、登録支援機関と呼ばれる団体に支援業務を委託することもあります。日本人雇用よりも果たすべき義務が多いため、デメリットに感じることもあるでしょう。しかし、特定技能人材は人手不足が深刻な産業において貴重な労働力です。長く働いてもらうためにも、労力やコストを惜しまずにサポートを行うよう心掛けましょう。
技能実習から特定技能へ在留資格を切り替える際は、審査におよそ1ヶ月から2ヶ月の時間を要します。また、外国人が在留資格「特定技能」を取得する際は、国籍に応じた手続きも必要です。複数の手続きを並行して行う必要があるため、面倒に感じる企業は多いでしょう。しかし、日本国内にいる技能実習生が在留資格を変更する場合、申請を行うのは外国人本人です。企業は書類を用意したり手続きをサポートしたりするのが主な役割なので、負担は大きくなりにくいといえます。
技能実習から特定技能へ在留資格を変更する際は、条件を満たしたうえで必要な書類を用意し、地方出入国在留管理官署で在留資格変更許可申請を行います。ここでは手続きの流れをまとめているので、申請を行う際の参考にしてください。
技能実習2号を良好に修了した技能実習生は、特定技能試験や日本語能力試験を受験せずに在留資格「特定技能」へ変更できます。試験免除は、「随時3級」の試験合格や「評価調書」の提出が条件です。在留資格変更許可申請の際に、試験免除を証明する書類が必要になるので用意しておきましょう。
技能実習から特定技能に在留資格を変更する際、必要な書類は以下のとおりです。
「特定技能外国人の在留諸申請に係る提出書類一覧・確認表」は、申請人・所属機関・分野ごとに提出する書類が異なります。出入国在留管理庁のWebサイトに掲載されているので、不備がないよう確認してから提出書類を用意しましょう。申請後の審査過程では、上記以外の資料が求められるケースもあります。不明点がある場合は、最寄りの地方出入国在留管理官署に相談しましょう。
参照元 出入国在留管理庁「在留資格変更許可申請「特定技能」(すでに日本に在留している外国人の方で,特定技能への移行を希望している方)」
申請者が日本国内にいる場合、在留資格変更許可申請は原則外国人本人が行います。本人確認のためパスポートや在留カードが必要になるので、提示するよう伝えておくと安心です。先述したように、在留資格変更許可申請の審査には1ヶ月から2ヶ月程度掛かります。在留期限に余裕があるうちに申請できるよう、企業は書類の準備や申請書の記入をサポートしましょう。在留資格変更許可申請中に在留期間が満了した場合、満了日から2ヶ月は特例期間として在留が認められますが、変更が認められないと帰国を余儀なくされます。そのため、万が一申請が通らなかったことも考えて、早めに在留資格変更許可申請を行うのが賢明です。
参照元 出入国在留管理庁「特例期間とは?」
2022年2月時点で、新型コロナウイルス感染症の影響により在留資格「特定技能」への移行が難しい技能実習生に対して、特例措置が講じられています。特例措置を受けるには書類を用意し、申請手続きを行わなければなりません。また、特例措置の内容は申請する技能実習生の状況に応じて異なるので、早めに手続きを行うことが大切です。
技能実習生が特例措置を受けるには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
条件を満たした技能実習生は、在留資格「特定活動」の付与対象となります。在留期間や就労可否は技能実習生によって異なるので、詳しくは出入国在留管理庁のWebサイトを確認しましょう。
必要書類を用意し申請手続きを行うことで、技能実習生は特例措置を受けられます。技能実習生の状況に応じた必要書類を用意しましょう。場合によっては、技能実習生のときと同じ業務に従事させることも可能です。ここでは、本国への帰国が困難な人のうち特定活動(6ヶ月・就労可)への変更を希望していて、同じ受入れ機関で引き続き就労する場合の必要書類を紹介します。
上記の書類を用意して申請すれば、技能実習生は特例措置を受けられるでしょう。なお、在留資格変更許可申請書および在留期間更新許可申請書には顔写真が必要です。書類に不備があると申請が認められないため、しっかり確認してから提出することをおすすめします。
参照元 出入国在留管理庁「新型コロナウイルス感染症の感染拡大等を受けた技能実習生の在留諸申請の取扱いについて」
技能実習から特定技能に在留資格を変更するには、在留資格変更許可申請を行う必要があります。地方出入国在留管理官署で申請できるので、必要書類を用意し外国人本人に提出させましょう。技能実習から特定技能への移行手続きには、約1ヶ月から2ヶ月掛かります。書類の準備期間も含め、3~4ヶ月前から動き出すのが賢明です。スムーズに在留資格を変更できるよう、企業はできる限りのサポートを行いましょう。