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入管法は正式名称を「出入国管理及び難民認定法」といいます。過去に何度か改正されており、なかでも2019年の改正で創設された在留資格「特定技能」は大きな話題になりました。また、2023年6月9日に可決された改正入管法にも注目が集まっています。
このコラムでは、近年の入管法改正についてわかりやすく解説します。外国人雇用を考えている企業は参考にしてください。
目次
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入管法の正式名称は「出入国管理及び難民認定法」といいます。その名のとおり、人々の日本への出入国を管理し、難民認定に関する内容を定めることを目的とした法律です。ここでは、入管法が持つ役割を解説します。
日本への入国および出国は、入管法によって管理されています。外国人が日本に入国・上陸するためには、有効なパスポートを提示したうえで入国審査官に上陸申請をし、審査を受けなくてはなりません。入国審査官は入管法に基づいて審査を行い、結果によっては上陸を拒否することが可能です。
入管法は、外国人だけでなく日本人の出入国についても規定を定めています。日本人も入国審査官の確認を受けなくては、出国や入国ができません。入国審査官にパスポートを提示し、出国・帰国の証印を受けて初めて日本を出入りできます。
外国人に対する在留資格の付与や違反行為の罰則なども、すべて入管法によって定められています。与えられた在留資格の範囲を超えての就労は禁止です。不法に就労した場合は入管法第73条により罰せられます。加えて入管法第24条により強制的に退去強制となり、一定期間日本への再入国ができません。このように、さまざまな決まりを設け外国人の生活や就労を管理しているのが入管法です。
難民に関するさまざまな取り決めをしているのも入管法です。
母国を追われ、他国に保護や援助を求める人を難民といいます。日本で難民に認められれば「定住者」の在留資格が与えられ、国民年金や児童扶養手当、福祉手当などを得ることが可能です。
難民として入国する外国人のなかには、自らの状況を偽り保護を求める「偽装難民」もいます。ただし、本当に保護を必要として母国を逃れてきた人もたくさんいるため、慎重に見極めなければなりません。出入国在留管理庁は、入管法のもと本来守るべき対象を適切に判断し、必要に応じて難民認定証明書を交付するのです。
2023年6月9日に、入管法の改正案が参議院本会議で可決・成立しました。これまでの入管法から変わった点は主に難民認定に関する以下の3つの項目です。
2023年6月の入管法改正では、保護すべき人を確実に保護できるよう、難民認定制度とは別に「補完的保護対象者」の認定制度が作られました。
外国人が日本で難民認定を受けるには、難民条約で定められている難民の定義に当てはまらなければなりません。難民の定義は「難民は、人種、宗教、国籍、政治的意見または特定の社会集団に属するという理由で、自国にいると迫害を受けるおそれがあるために他国に逃れ、国際的保護を必要とする人々」とされています。しかし、昨今は条約上の難民には当てはまらないものの、保護を必要とする外国人の入国が増加している状況です。そこで日本政府は、難民同様に保護すべき人を「補完的保護対象者」として認定することにしました。
補完的保護対象者には在留資格「定住者」が付与され、日本に在留が許可されます。また、永住許可の要件が緩和され、定住支援プログラムへの参加も可能です。
2023年の入管法改正では、送還忌避者の問題解決に向けた仕組みが新しくできました。送還忌避者とは、政府から退去強制命令を受けたのにも関わらず、日本に留まり続ける外国人のことです。
これまでの入管法では、難民申請中は母国への送還が停止されていました。そのため、何回も難民申請を繰り返し日本に留まり続ける人が存在したのです。そこで、「3回目以降の申請」「3年以上の実刑前科者」「テロリスト」などの条件に当てはまる人は、相当な理由がなければ母国に送還できる例外規定を作りました。
このほかにも、特に送還が困難な外国人には刑事罰を科したり自発的な帰国を促すために優遇措置を設けたりといった点が追加されています。
以前までの入管法では、外国人が入管施設に収監される期間が長期化しやすい問題がありました。そこで、親族や知人などを監理人とし、収容せずに退去強制手続きをできるようにする「監理措置制度」が設けられたのです。
長期収容される外国人のなかには、体調を崩す人も多くいました。そこで、一時的に拘束を解く仮放免は健康に配慮して行うことを法律で明記しています。このほかに、3ヶ月ごとの収容要否の見直しや常勤医師の兼業緩和に関する法律も改正し、外国人の健康に配慮した収容ができるようにしました。
参照元 出入国在留管理庁「令和5年入管法等改正について」
2023年の入管法改正は多くの議論を巻き起こしました。特に「3回以上難民申請をした外国人の強制送還が可能になる」点については、野党および市民団体からも反対の声が巻きあがりました。
反対意見が多い理由には、そもそも日本の難民認定が1回目の申請ではなかなか通らないほど厳しいことが挙げられます。改正案が可決されると、本来難民認定を受けるべき立場にいる人々まで強制送還されるリスクが高まるという点が、問題視されました。
出入国在留管理庁は、難民ではない人々が難民申請を繰り返すことを阻止するのが入管法改正の目的としています。そのため、3回目以降の申請でも、難民にふさわしいと証明できる資料があれば送還を停止することとしました。
2023年6月9日には、入管法改正と同時に特定技能制度の運用方針変更も決定されました。
特定技能制度の変更点は特定技能2号の範囲拡大です。建設分野および造船・舶用工業分野の溶接区分だけで許可されていた特定技能2号の受け入れが、さらに9分野にまで拡大されました。
在留期限が最長5年の特定技能1号に対し、特定技能2号では事実上無期限の日本在留が許可されます。また、1号では難しかった家族との帯同も可能です。なお、介護分野は在留資格「介護」が受け皿になるため除外されました。
特定技能制度の見直しに加え、技能実習制度と関連した今後の運用に関する指針が示されました。
現行の特定技能制度は、本来の目的である人材育成とはかけ離れている現状があります。また、原則転職ができないため、技能実習生の人権侵害に当たるとの声がありました。
示された指針では、今後現行の技能実習制度は廃止することとしています。新しい制度は特定技能1号への移行を前提にしたものになる予定です。
今後運用される新しい技能実習制度は、特定技能制度と深く関連していくので動向を見守っていきましょう。
2021年に一度、入管法改正案は取り下げられていました。理由は、「3回目以上の申請者は強制送還が可能」という項目に、批判が続出したためです。最終的には、2021年に取り下げた内容を一部緩和した法案が可決されました。しかし、野党が求めた「第三者委員会の設置」などの内容は盛り込まれないままだったので、批判が噴出したのです。
入管法は適宜見直されており、近年では2019年4月に大きな改正がありました。このときの改正によって特定技能制度が始まり、在留資格「特定技能」が創設されたのです。ここでは、特定技能制度についてわかりやすく解説します。
ここでは、2019年4月の入管法改正により創設された在留資格、「特定技能」について解説します。
在留資格「特定技能」は、特に人材不足が深刻な業界(特定産業分野)にて、より多くの外国人労働者を受け入れるために創設されました。就労系の在留資格を持つ外国人は、単純労働への従事が許可されていません。一方、在留資格「特定技能」を持つ外国人は、単純労働に分類される業務への従事が許可されています。
外国人が「特定技能」の在留資格を得るには、日本語に関する試験および就業する分野に関連する技能試験の合格が必要です。ただし、学歴や実務経験は問われないので、勉強して試験にさえ受かれば在留資格を得られます。
在留資格「特定技能」は「技能実習」からの移行も可能です。移行すると技能実習終了後も継続して外国人に働いてもらえるので、スキルを身に付けた人材の流出防止に繋がります。
在留資格「特定技能」は従事する分野によって以下の12種類に分けられています。
上記の分野のほか、タクシードライバーやトラックドライバーとしての業務が可能となる「自動車運送業」の追加も議論されている最中です。
「特定技能」には、分野別の種類とは別に1号と2号の在留資格の分類があります。1号は在留期限が最長で5年なのに対し、2号は事実上無期限で在留が可能です。
在留資格「特定技能」を持つ外国人(特定技能外国人)を雇用する企業は、支援体制を整える必要があります。「1号特定技能外国人支援計画」を作成し、計画に基づいて「生活オリエンテーション」や「個別相談対応」などの支援を行わなくてはなりません。支援計画の実施が難しい企業は、支援業務を「登録支援機関」に委託できます。
特定技能外国人を雇用する場合は、通常の外国人雇用とは異なる手続きが発生することを覚えておきましょう。
2019年の入管法改正については反対意見も存在しました。具体的には、特定技能外国人の受け入れ開始が移民解禁に繋がるといった批判です。これまで就労にまつわる在留資格は、専門的な知識や技能を持つ外国人にのみ許可されていました。一方、「特定技能」は単純労働が可能になるうえ、2号に移行すれば事実上無期限の在留や家族の帯同が許可されます。これらの内容が、「移民政策を取らない」という政府の方針に反していると考えられたのです。
さまざまな意見はあったものの、特定技能制度は2019年4月から運用が開始されました。2023年6月末時点で、合計173,101人の外国人が特定技能の在留資格を取得し、日本で働いています(1号・2号合計)。
日本の移民政策については「移民とは?難民との違いや定義をわかりやすく解説!日本や各国の政策も紹介」で詳しくまとめています。
参照元 出入国在留管理庁「令和5年6月末現在における在留外国人数について」
2019年の入管法改正により、日本企業は外国人労働者をより受け入れやすくなりました。ここでは、入管法改正が日本企業に及ぼしたメリットについてわかりやすく解説します。
特定産業分野に該当する企業は、入管法改正により雇用できる人材の間口が広がり、人材不足の解消が期待できるでしょう。
これまで単純労働を行えたのは、「永住者」や「日本人の配偶者等」といった身分に基づく在留資格を保有する外国人のみでした。しかし、日本で人手が足りないのは単純労働に分類される業務・業界が中心です。人手が不足しているのにもかかわらず、在留資格の関係で外国人をなかなか雇えない企業が数多くありました。
特定産業分野に該当する企業は、入管法が改正され在留資格「特定技能」ができたことにより、外国人雇用に踏み出せるようになったのです。
特定技能外国人の雇用は、即戦力となる人材の確保に繋がります。前述したとおり、外国人が在留資格「特定技能」を得るには、日本語に関する試験と技能試験への合格が必要です。日本語に関する試験では、基本的な日常会話レベルが求められます。技能試験では、従事する分野に関する学科および実技の試験に合格しなくてはなりません。
以上のことから、特定技能外国人は未経験者を雇用するよりも業務に適応しやすく、即戦力になりうる人材といえるでしょう。
外国人を雇用するメリットは「外国人採用のメリットとは?日本企業が人材を雇用する際の注意点も解説」を参考にしてください。
2023年6月の入管法改正では、難民受け入れに関する制度の改正がありました。また、過去の2019年の入管法改正では、在留資格「特定技能」が創設され、人手不足の業界で外国人労働者を受け入れやすくなっています。
入管法は今後も定期的に見直されていくと考えられるので、外国人を雇用する企業は最新情報をチェックしておきましょう。
執筆:WeXpats
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