ネパール人スタッフに聞く!国民性や仕事観【宗教上のタブーも解説】

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ネパール人スタッフに聞く!国民性や仕事観【宗教上のタブーも解説】

治安や教育環境の良さを理由に、就労先として日本を選ぶネパール人が増えています。若年層が多く、今後注目すべき人材です。

この記事では、ネパール人の特徴を紹介します。性格や仕事観の背景にある文化についてあらかじめ知っておくと、マネジメントに役立つでしょう。

※WeXpatsは偏見と差別の排除を理念の一つに掲げて活動しています。本稿にも「人種」や「国籍」といった特定の属性に対するイメージを単純化する意図はありません。本稿の内容は、あくまでネパールの文化や社会通念を紹介するものであり、個々人の性格は多種多様であるという点を踏まえてご覧ください。

目次

  1. 日本にはネパール人労働者が増加している
  2. ネパールの概要
  3. ネパール人の国民性や性格
  4. ネパール人の仕事観
  5. ヒンドゥー教徒のタブーと働きやすい職場
  6. ネパール人と働くうえで意識すること
  7. ネパール人を雇用する方法
  8. まとめ

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日本にはネパール人労働者が増加している

近年、日本ではネパール人労働者が増加傾向にあります。

厚生労働省の発表した「厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)」」によると、2024年10月末時点で日本で働くネパール人は、18万7657人でした。これは外国人労働者全体の8.1%、国籍別の人数としては第4位です。さらに、対年増加率で見ると前年から28.9%増加しています。

特に増えているのは「留学」や「家族滞在」「技能」などの在留資格を持つネパール人でした。日本政府が2008年に策定した「外国人留学生30万人計画」により、日本の大学や専門学校に通うネパール人が増えているのです。また、在留資格「技能」を取得し飲食店で働いていたネパール人が独立し、家族を呼び寄せるケースも増えています。

ネパール人の海外就労先の変化も要因の一つ。今まではマレーシアや中東の国々に働きにいく人が多くいましたが、国民の意識に変化があり、より治安や生活環境が整っている日本を選ぶ人が増えているといわれています。

ネパールと日本は、1956年に公式な外交関係を始めてから良好な関係を築いてきました。1989年には、長野県松本市とカトマンズ市が姉妹都市に。また、2014年には、ネパールのエベレストと日本の富士山が「姉妹山」に登録されています。

関連記事:「【2024年6月最新】特定技能とは?制度や採用方法をわかりやすく解説
関連記事:「技能実習制度の概要や受け入れの流れ【育成就労制度でどう変わる?】

参照元
厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)

ネパールの概要

ネパール人の雇用に着手する前に、まずはネパールとはどのような国なのかを知っておきましょう。

  • 面積:14.7万㎡(北海道の約1.8倍)
  • 人口:3054万7580人(2022年世界銀行調査)
  • 首都:カトマンズ
  • 民族:パルバデ、ヒンドゥー、マガル、タル―など
  • 言語:ネパール語
  • 宗教:ヒンドゥー教(81.3%)、仏教(9.0%)、イスラム教(4.4%)

ネパールは、インドと中国チベット自治区の間にある山岳地帯に位置する多民族国家です。中国との国境沿いにあるエベレストや金色に輝く仏教寺院であるスワヤンブナ―ト、寺院の集まったダルバール広場で知られています。

インドとネパールはオープンボーダーという制度があり、両国民はパスポートがなくても行き来が可能です。そのため、両国は文化的にも産業的にも繋がりが非常に深くなっています。

日本からは唯一、成田空港から直行便が運航しており所要時間は約8時間です。ほかのアジアの主要空港を経由していくと約15時間30分程度かかります。

参照元
外務省「ネパール(Nepal)基礎データ

ネパール人の国民性や性格

ここでは、ネパール人の国民性や性格に関連する文化的背景や価値通念を紹介します。もちろん、すべてのネパール人に当てはまるわけではありません。しかし、傾向として知っておくことで、雇用管理やコミュニケーションに役立つでしょう。

母国の歴史や文化に誇りを持っている

ネパールは、長い歴史のなかで直接他国に占領されたことが一度もありません。また、世界一高く神聖な山であるエベレストやブッタの生誕の地といわれているルンビニがあります。ネパール人は、これらをはじめとした母国の歴史や文化に誇りを持っている人が多いのが特徴です。

たとえば、ネパール人が営む飲食店では必ずといって良いほど、ネパール国旗とヒマラヤ山脈の写真が飾られています。

ネパール人と接するときは、ネパールの良いところを褒め、尊重している態度を見せると一気に打ち解けられるでしょう。

人との繋がりを重要視する

ネパールは国土の8割が環境の厳しい山岳地帯にあります。さらに、インフラ整備が行き届いていなかったり災害が起きやすかったりと、人々が助け合わなければ乗り越えられない困難が多数あるのです。

これらの事情から、人との繋がりを大切にし、困っている人がいたらすぐに手を差し伸べるのが当たり前になっています。人なつっこい人が多く、その場にいる人が楽しく過ごせるように気を配り、雰囲気を盛り上げてくれるという特徴も。

職場でも、コミュニケーションを上手に取り従業員同士の団結力を高めてくれるでしょう。

多様な文化に寛容

ネパールはインド・アーリア系やチベット・ビルマ系をはじめとしたさまざまな民族が暮らす多民族国家です。話す言語や文化、慣習が異なる100以上の民族が北海道の1.8倍ほどの国土のなかで共に暮らしているため、異なる文化を認めてうまく共存する力に長けています。

さまざまな国籍や文化を持つ人がいる職場でも、問題なく溶け込めるでしょう。

感情表現が豊か

弊社のネパール人スタッフによると、ネパール人は感情表現が豊かな人が多いとのことです。嬉しいときは大きな声を出して喜び、悲しいときは周囲の人が心配になるほど落ち込みます。

一方、ネパール人からすると、日本人はとても静かで感情を表に出さない人達だと感じられるようです。

この両者の違いを知っておくと、コミュニケーションを取りやすくなるでしょう。

楽観的な人が多い

ネパールはインフラ整備の遅れや交通状況の悪さ、自然災害など自分では対処できない理由で仕事や生活に支障がでる場合がよくあります。そのようなときに、過度に心配してもどうしようもありません。流れに身を任せ、状況が良くなるのをじっと待ちます。

このような背景から、ネパール人は普段から「なるようになる」といった楽観的な考えを持つ人が多いといえるでしょう。

日本人からすると危機感がないように感じられるかもしれませんが、厳しい環境を生き抜く知恵でもあるのです。

ネパール人の仕事観

ここまでは、ネパール人の歴史や文化的背景について見てきました。ベースとなる気質に関わる要素を踏まえたうえで、ここからは仕事観について説明します。

海外就労が一般的

ネパールでは海外就労がかなり一般的です。全国民の1割以上がネパール国外で働いてます。経済状況が悪く国内の産業も少ないので、自分や家族がより良い暮らしをできるよう、高い賃金を得られる国へ渡ります。

複数の国で働いた経験がある人も多く、他国の文化や慣習への抵抗感は少ないといえるでしょう。

海外で良い仕事に就くために英語が必要と考えている家庭が多く、都市部では英語だけで授業が行われる私立学校が人気です。国内で観光業に就くのに英語が必要なこともあり、日本よりも国民の英語の習得率が高いといわれています。

関連記事:「バイリンガル人材の採用は人材紹介・派遣会社がおすすめ!雇用の注意点を解説

仕事熱心な人が多い

母国の家族へ仕送りをしているネパール人は非常に熱心に働きます。より多くの賃金を得るためならば、残業も進んで行う人が多いようです。

厳しい状況のなか助け合って暮らしてきたネパール人は、家族という存在を非常に大切に思っています。家族が幸せになるためならば、多少の苦労は厭いません。

「家族のため」という強い意思があるため、指示されたことや約束を守り、根気強く業務を進める粘り強さを持っています。

時間管理が苦手

ネパールには「ネパリタイム」という言葉があります。これは、ネパール人のおおらかな時間感覚を表す造語です。時間を守るという意識が薄く、本人に任せておくと締め切りや集合時間を過ぎてしまうことも。自分達も時間を守れない性質を自覚しており、「これがネパリタイムだ」と認めている部分もあります。

これは、元来の楽観的な気質に加えて、ネパールではどうしようもない理由で時間を守れないケースが日常的にあるのが影響しているでしょう。
時間どおりに家を出ても、交通インフラが整っていないためひどい渋滞で、約束に間に合わなくなるのは珍しくありません。また、停電や水道が止まり、その対応に追われて遅れてしまうこともよくあります。

これらの事情から、自ら時間を守るという意識が薄くなっていると考えられるでしょう。ただし、全員がそうというわけでなく、特に日本の在住歴が長い人は時間を守る大切さを生活のなかで学んでいます。

アットホームな雰囲気を好む

ネパール人は同じ民族やカースト(身分制度)の人同士で支え合いながら暮らしてきました。そのため、同じコミュニティでの結びつきを強く求める傾向にあり、一度打ち解ければまるで家族のように深く付き合います。

家族のような関係を好むのは職場でも同様です。たとえば、昼食や休憩時間は大人数で一緒に取るのが基本で、持ち寄った食べ物を分け合いながら楽しく過ごします。

ほかの従業員と関われないような環境だと、孤独を感じモチベーションが低下してしまう可能性があるでしょう。アットホームな職場作りを意識し、孤立させないことが大切です。

ヒンドゥー教徒のタブーと働きやすい職場

ネパール人の8割はヒンドゥー教徒です。本人の信仰する宗教や戒律を尊重することは、信頼を得て企業への帰属意識を高めることにも繋がるでしょう。ここでは、ヒンドゥー教におけるタブーとヒンドゥー教徒が働きやすい職場の特徴を解説します。

食事に関しての理解がある(牛・豚はNG)

ヒンドゥー教では牛は神聖な動物、豚は不浄な動物と考えられているため、ヒンドゥー教徒は食べることができません。鶏や羊、ヤギの肉なら食べるという人もいますが、多くの人は肉食そのものを避けます。

会食や忘年会、パーティーがある場合は、ヒンドゥー教徒も食事を楽しめるよう、お店やメニュー選びに配慮しましょう。たとえば、打ち上げで焼き肉店を選んでも、ヒンドゥー教徒が安心して食べられる料理がほとんどありません。個別で食べたいものを選べ、メニューの種類も豊富なお店のほうが、全員が気持ちよく食事を楽しめます。

社員食堂がある場合は、ベジタリアンメニューを用意すればヒンドゥー教徒も利用可能です。なお、どこまで戒律を守るかは、人によって異なります。肉に加えて魚介類や生ものを避けるヒンドゥー教徒もいるため、本人にどのような配慮が必要か確認してみましょう。

物の受け渡しに右手を使ってくれる(左手は不浄)

物の受け渡しや握手に右手を使うよう社員全員で意識すると、ヒンドゥー教徒が気持ちよく働ける職場になるでしょう。

ヒンドゥー教では、右手は聖なる手、左手は不浄の手と考えられています。そのため、左手で物を渡されたり握手を求められたりすると、非常に不快に思うのです。特に、食べ物や飲み物など口に入れるものを左手で扱うのはタブーとされています。

ヒンドゥー教徒でない人は意識していない部分なので、慣れるまで完璧に実施するのは難しいでしょう。しかし、気を付けようと努力している様子が伝われば、信頼を得ることに繋がります。
余談ですが、イスラム教でも左手は不浄とされています。外国人社員に書類などを渡すときは、右手、もしくは両手で渡すようにしておくと無難かもしれません。

宗教上の祭日には休暇を取ることができる

宗教上の祭日にまとまった休暇が取れると、非常に喜ばれるでしょう。

ネパールでは9月中旬から10月にかけて、ヒンドゥー教最大のお祭りである「ダサイン」が行われます。15日間にわたって開催される日本のお正月のような行事です。

ダサインの時期は、遠くで働くネパール人も帰省し、親族一同で集まってお祝いをします。家族愛がひときわ強いネパール人のなかには「ダサインで休めないなら会社を辞める」とまで言う人も。

そこまではいかなくても、ダサインの時期に一時帰国し家族で過ごしたいと思っているネパール人は多くいます。社会の体制を調節して、まとまった休みを取れるようにすると、モチベーション高く働いてもらえるでしょう。

ネパール人と働くうえで意識すること

ネパール人と働く際は、以下の点を意識して教育や指導を行うと雇用管理がスムーズに進みます。

時間管理の大切さを教える

ネパール人と円滑に仕事をするために、まず時間を守る大切さを教えましょう。

先述したとおり、ネパール人は時間管理が苦手な傾向にあります。「時間は守るべきもの」「遅刻はしてはいけないこと」という認識がそもそも薄いため、悪気なく遅れてしまうのです。

ただ遅刻や締め切りを守れなかったことに対して叱責をしても、根本的な解決にはなりません。「日本では時間を守れないと信用を無くす」「時間を守るとさまざまなメリットがある」といった点を伝え、意識の改善を図る必要があります。

また、就業規則で遅刻に対するペナルティをしっかり記載しておくのも効果的です。遅刻で働けなかった分の給与は、もちろんノーワーク・ノーペイの原則で支払う義務はありません。さらに、あらかじめ就業規則に懲戒処分として記載してあれば、罰金(減給)も実施できます(金額に上限あり)。

ネパール人の多くは高い賃金を得るために日本で働いているため、給料に影響が出るとなれば意識も変わってくるでしょう。

相互理解に努める

ネパール人と日本人の違いを知り、お互いが歩みよることも非常に重要です。

ネパール人と日本人は情緒的に似ている部分が多いといわれていますが、それでも異なる面はたくさんあります。いくら日本で働くとはいえ、すべてを日本人のやり方に合わせるというのは難しいでしょう。ネパール人の慣習や価値観を知ったうえで、ある程度は許容する姿勢が必要といえます。

逆もまたしかりで、ネパール人にも日本人特有の価値観や文化を理解してもらわなければなりません。

異文化理解が進んでいないと、業務やコミュニケーション上のトラブルが起きやすくなります。

座談会や勉強会、ワークショップなど、お互いを深く知ることができる機会を作ると良いでしょう。

感情のコントロール方法を指導する

ネパール人は日本人と比較すると感情表現が豊かな傾向にあります。感情豊かなのは悪いことではありませんが、ビジネスの場ではトラブルに発展する可能性も。

ネパールでは感情を表に出すのは良いことと考えられています。日本では業務をスムーズに進めるために、ある程度は感情を抑えて冷静さを保つ必要があることを指導しましょう。

職場で金銭の貸し借りをしないように伝える

ネパール人は一度打ち解けると、家族のような深い関係を築きます。そのため、友人や職場の人同士でお金の貸し借りをするのは決して珍しくありません。

しかし、職場での金銭の貸し借りはトラブルのもと。人間関係のもつれにも繋がり、最終的には業務にも支障がでます。

効果的なのは、就業規則で従業員間の金銭の貸し借りを明確に禁止することです。お金を借りたり貸したりすると懲戒処分になると定めれば、トラブルが起きる可能性をグッと減らせます。

ネパール人を雇用する方法

ネパール人を雇う方法は、大きく分けて2つあります。国内にいるネパール人(留学生や転職希望者)に求人を出す方法と、ネパール本国から募集する方法です。

現時点では、日本とネパール両国の間に、人材募集や就労に関して特筆すべき制限はありません。適正な在留資格(就労ビザ)を保有していれば、日本で雇用できます。

国内人材については、人材紹介会社にお願いしたり、SNSでの募集が有効です。

ネパール本国から募集する場合は、人材会社に依頼したり、現地の送出機関と提携する方法があります。

まとめ

日本に働きに来るネパール人は、ネパール周辺諸国の経済状況や国民の意識の変化により、増加傾向にあります。今後も人数は増えていくと考えられるでしょう。

ネパールは親日国であることに加え、ネパール人と日本人は情緒的に似ている部分が多いといわれています。

今後安定して人材を確保していくためにも、ぜひネパール人の雇用を検討してみてください。

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執筆:WeXpats

WeXpats専属ライターが執筆しています。WeXpatsは「海外へ挑戦する人々を後押しし世界中の就労に関わる問題を解決する」をミッションに掲げてメディア運営をしています。実際に、株式会社レバレジーズとして外国人労働者を雇用する実績のある企業からためになる情報をお届けします。 https://we-xpats.com/ja/destination/as/jp/