職場の異文化コミュニケーションのコツとは?よくある失敗事例とポイントを紹介

2020年06月22日
濵川恭一 (監修)
外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net

「言ったけど、理解してもらえない」「指示したとおりに仕事をしない」

多国籍の人達が一つの職場で仕事をする場合、異文化コミュニケーションが重要です。異文化コミュニケーションとは、異なる価値観や考え方を持つ人々が、円滑に仕事をする上での大切なスキルといえます。考え方の違いに向き合わず、既存のルールに従わせようとすると、人間関係のトラブルのもとになります。

職場での異文化コミュニケーションとは?

近年、日本で働く外国人の数が増えています。ある日、職場に外国人の従業員が入ってきたり、上司が外国人になったというケースも。異なる国や文化で育った人々が同じ職場で働く場合の、異文化コミュニケーションについて解説します。

・そもそも異文化コミュニケーションとは

異文化コミュニケーションとは、異なる国の出自である外国人とのコミュニケーション方法を指します。広義の意味では、職業や社会的地位、年齢などが異なるグループの人々との交流を指すことも。そのため、必ずしも「異なる言語」での会話のみが異文化コミュニケーションになるわけではありません。双方が日本語を使って意思疎通をはかるケースでも、土台となる価値観や物事への認識が違う場合、それは異文化コミュニケーションにあてはまります。お互いの考え方や行動の違いを理解したうえで、歩み寄ったり耳を傾けたりするのが、異文化コミュニケーションです。

・高まる職場の異文化コミュニケーションの必要性

厚生労働省の発表によると、2019年末時点で日本に滞在する外国人労働者数は166万人を突破しました。この数字は年々増加を続けており、過去最高の人数です。このように、多くの外国人労働者が日本で働いているなか、職場で異文化コミュニケーションの必要性が高まっています。働くことに対する認識の違い、同僚との関係性、担当する仕事の範囲など、外国人従業員との間に「違和感」を覚えるケースは少なくありません。

たとえば、日本人の上司がYesかNoをはっきり伝えず、「検討する」という言葉に戸惑う外国人従業員もいます。外国人従業員の言語能力によっては、不満や意見を伝えられずに誤解が生じたままになることもあります。職場のなかで発生している外国人従業員との意思決定の方法や、業務の優先順位、長時間労働に対する考え方についての違いを放置したまま、異文化コミュニケーションをおろそかにすると、やがて職場内にギスギスした空気や、人間関係のアクシデントが生まれてしまうでしょう。

日本社会の職場でのコミュニケーションの特徴

外国人が日本で働く場合、日本特有のコミュニケーションに戸惑いを感じることがあります。ここでは、日本の職場でよくみかける、外国人が特徴的だと感じる意思疎通の方法をご紹介します。

・言葉で説明するより、暗黙の了解を好む

同じ場で働いている者同士、共通の思考や価値観が生まれます。これは、企業風土や組織風土とも関連しています。日ごろから従業員が接する企業のビジョン、上司の指示の仕方、仕事で受ける評価など、様々な制度や行動様式によって形成されます。つまり「言わなくてもわかる」が、日本社会のコミュニケーションに占める割合が多いということです。

たとえば、顧客情報の管理方法について、外国人従業員が新しい提案をしたとします。現状が不合理なやり方であったとしても、長年同じ方法を採用している場合、古くからの従業員にとっては「続けなければいけない」と感じてしまいがちです。そのような暗黙の了解で社員が納得していることを、言葉で説明するのは大変なことです。ただし「前から同じやり方をしているから」と、理由を説明せずに価値観を押し付けてしまうと、共通の価値観を持たない外国人従業員が納得できずにストレスをためることになる可能性があります。

・仕事の役割の範囲が曖昧である

外国人との違いが発生しやすい習慣に、仕事の範囲の決定方法があります。海外には「ジョブディスクリプション」という形で、社員が従事する仕事の範囲について、明確に定めている国や地域があります。本人の職位や職種によって、やるべき範囲が明確に決まる形式です。逆にいえば、範囲外の仕事は「やるべきではない」ということになります。対して、日本ではマルチタスクが求められる職場が多く、仕事範囲が明確に限定されていないことは珍しくありません。業務範囲が決まっておらず、新しい業務ができる人ほど優秀と評価される傾向もあります。

このような曖昧さに対して、コミュニケーションを怠っていると、外国人が職場に馴染めず他の社員との関係の溝が深まってしまいます。

・時間に対して厳しいようでルーズ

最後に、日本独特の考え方に「時間への認識」があげられます。出社は時間よりも早く要求するのに、退社時間は気にしない。これは、一昔前の日本企業でよく見られた光景です。

時代は変わりつつあり、働き方改革の一環で時間外労働の上限時間が法律で設定されるなど、残業や会議の効率について企業の動きに変化があります。しかし企業によっては、上司が残っていると退社しづらい空気を感じるなど、「仕事の時間」とそれ以外を区別しきれない職場もあります。そうしたなか、効率化を重視し、仕事の時間とプライベートの時間を気にする外国人従業員は、働きにくいと感じます。逆に、日本よりもルーズすぎる時間概念で働いてきた従業員と仕事をする場合は、日本人従業員がストレスを抱えてしまうでしょう。

外国人の従業員とのコミュニケーションでよくある失敗例

では、職場での異文化コミュニケーションで、認識や価値観の違いから問題がおきた事例をみてみましょう。

・締め切りに対する考え方が違う

国による考え方の違いに、締め切りへの概念があります。「締め切りまでに完璧なものを納品する」と考える日本人社員。かたや、「締め切りまでに提出し、あとで修正すればいい」という外国人社員。その違いを認識していなかったために、締め切り日に提出された納品物のクオリティが低いモノに。外国人社員と細かい計画を共有せずにいると、クライアントの期待通りの成果物を出せなくなってしまいます。

・仕事とプライベートの区別の方法が違う

日本企業のなかには、仕事以外の時間に従業員の親睦を深めるのを良しとする会社があります。休日、社員の家族も一緒に参加してバーベキューを行う。飲み会で愚痴や悩みを吐き出すことが人間関係を円滑にする。必ずしも上記のような考えが一般的ではないにしても、仕事とプライベートをきっちり分けたいと考える人は、時間外の社内イベントへの強制参加に懸念を抱くでしょう。

・異なる生活習慣を知らずに、ストレスを与えてしまう

海外で育った外国人従業員との間で、違いが発生しやすいのが食文化です。ベジタリアンや、宗教上食べられないものがある場合、歓迎会、懇親会、忘年会などのお店選びやメニューには十分配慮しなければいけません。知らずに歓迎会のお店を設定すると、新しい外国人スタッフがまったく楽しめないという事態になります。

異文化コミュニケーションで、管理部や上司が気を付けるべきポイント

外国人社員との間に軋轢が生まれないように、どのように異文化コミュニケーションをとっていくべきでしょうか。職場で気を付けるべきポイントをまとめました。

・違いを理解するように努める

大切なのは、違いがあるということ、そしてそれがどのように違いなのか知ることです。外国人従業員が何を考え、何を感じているのか。一般的によく見られる異文化コミュニケーションを事例から学ぶなど、管理職を対象に研修を行うのが効果的です。

・トラブルの火種になる違いを知る

職場でのコミュニケーションで、なにが異なる価値観や考え方を持っている人にストレスを与えているのかをしりましょう。従来の職場の習慣や、社員同士のやり取りの問題点を知ることで、対処法につながります。

・違いを否定せずに、積極的に傾聴する

異文化コミュニケーションで大切な姿勢が、異なる考え方を頭から否定しないことです。相手の意見を聞いたうえで、双方にとってよい解決策を考えましょう。

異文化コミュニケーションのコツは、押し付けでなくルールを作る

外国人従業員に限らず、違う立場や役職の人と接するとき、異文化コミュニケーションが発生します。その土台には、考え方や価値観の違いがあります。職場での人間関係は、企業の生産性に影響するポイントです。スムーズな意思決定や業務遂行を目指すとき、違う立場の人々との円滑なコミュニケーションは欠かせません。

決まったルールをただ押し付けるだけでは、円滑な人間関係を築くのは難しいことです。ルールの理由を明確に説明したり、相手の考えに耳を傾けたうえで、納得できるポイントや新しいルールを一緒に作る姿勢を忘れずにいましょう。それが、職場での異文化コミュニケーションを成功させるコツといえます。