外国人雇用・採用の疑問を解消するメディア
外国人雇用を検討している企業にとって気になるのは、採用コストがどれくらい掛かるかでしょう。「外国人雇用を始めたいけれどコストはできるだけ抑えたい」「費用を補填できる方法はないか」と考えて、助成金の利用を検討する企業も多いはずです。
実は外国人雇用そのものを対象とした助成金はありません。しかし、雇用に関する多くの助成金は労働者の国籍に制限がないため、外国人雇用の場合でも申請を行えます。
助成金の受給要件は一見すると項目が多く申請が下りにくいように見えますが、正しく事業を行っていればそれほど厳しい条件ではありません。ぜひ、助成金を活用して、外国人雇用に掛かる費用の負担を軽減させましょう。
目次
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外国人採用に掛かる求人費用や人材紹介費用については、おおむね日本人と同等と考えておきましょう。たとえば、人材紹介サービスを通じて採用する場合、企業は日本人と同様に人材紹介会社に手数料を払う必要があります。多くの人材紹介会社が導入しているのは、紹介した人材が入社した場合にのみ手数料が発生する成功報酬型です。
成功報酬型のなかでも、外国人人材紹介会社で一般的に導入されているのが、届出制手数料という料金制度です。採用が決まった外国人の初年度の理論年収に、人材紹介会社が定めた料率を掛けた金額が、紹介手数料として請求されます。理論年収とは、月次給与12ヶ月分と報奨金や一時金、交通費以外の諸手当を合計した金額です。料率の相場は約35%で、人材が集まりにくい業界や職種だとより高い割合になる傾向があります。
外国人を採用する場合は、在留資格によっても費用が変わってきます。たとえば、特定技能人材の場合、登録支援機関への委託費、事前ガイダンスの費用などが必要です。そのため、1人当たりの年収の10%の費用が掛かるといわれています。採用する外国人の在留資格によっては、日本人よりも費用が掛かる場合があると念頭に置いておきましょう。
また、在留資格の申請(取得)にかかる費用も想定しておいたほうがよいでしょう。在留資格の種類によりますが、1人の在留資格を取得するためには、20~100枚程度の書類を揃え、出入国在留管理局に申請する必要があります。自社で全ての書類を用意し、申請した場合の費用は実費(交通費や郵送費、印紙代等)のみですが、専門家に依頼した場合、10~20万円程度の費用がかかります。
外国人採用に掛かる費用を考えると、雇用に二の足を踏む企業も多いでしょう。そこで、お伝えしたいのが、外国人を雇用した際に活用できる助成金の存在です。
前提として、外国人を雇用するだけで得られる助成金はありません。しかし、外国人が職場に定着できるような対策を行った企業に対して支給される助成金があります。さらに、雇用に関する多くの助成金は外国人を雇った場合でも申請可能です。自社が受け取れそうな助成金の情報をこまめにチェックして、資金調達に活かしましょう。
企業が受けられる金銭的な支援には、助成金のほかに補助金があります。ただし、助成金と補助金には、交付を決定する管轄省庁や支給されやすさの違いがあるので、申請する前に押さえておきましょう。
雇用関係の助成金の交付を決定するのは厚生労働省で、主な財源は雇用保険料です。雇用安定や人材育成のために設けられている制度で、要件を満たしていれば支給されます。助成金は支出をあとから補填するかたちで支給されますが、上限があり全額支給されるわけではありません。基本的には、助成対象の経費に助成率(助成金として支給される一定の割合)を掛けた金額が、支給金額となります。
補助金の交付を決定するのは経済産業省や地方自治体で、財源は税金です。補助金は予算が決まっているため、交付には限りがあり審査結果によっては受け取れない可能性があります。また、補助金は事前に申請している目的にしか使えません。補助金の例は以下のとおりです。
また、技能実習生や特定技能外国人の受け入れ企業に補助金を支援する自治体も増えてきました。
自社の実情や計画に合った補助金がある場合は、ぜひ申請してみましょう。
参照元 経済産業省「補助金とは」 経済産業省「人気の補助金」
それでは、実際に外国人雇用を行う企業が申請できる助成金を紹介します。申請窓口は、各都道府県の労働局もしくはハローワークです。なお、各助成金に共通している要件はのちほど解説します。
「人材確保等支援助成金」は、魅力ある職場づくりのために就労環境の向上を図る企業や事業協同組合などに支払われます。複数あるコースのなかで、外国人雇用を行う企業が活用しやすいのが「外国人労働者就労環境整備助成コース」です。以下では、外国人労働者就労環境整備助成コースについて解説します。
【目的】
【受給要件の一部】
【助成率や上限額】
【助成対象経費】
【電子申請できるWebサイト】
賃金要件とは、毎月決まって支払われる賃金(基本給および諸手当)を訓練終了日の翌日から起算して1年以内に、5%以上増加させていることです。すべての対象労働者において、賃金改定前の3ヶ月間と改定後3ヶ月間の賃金総額を比較して、5%以上増加していることが求められます。
「雇用調整助成金」は、景気の悪化や業績不振などで業務を縮小せざるを得なくなった事業主に支給されます。
【目的】
【受給要件の一部】
【助成率や上限額】
【助成対象経費】
【電子申請できるWebサイト】
なお、教育訓練実施率(休業等の延べ日数のうち、教育訓練を実施した日数の割合)によって、1200〜1800円の教育訓練加算が追加されます。雇用調整助成金は景気の状況により特例措置が取られ内容が変更になる場合があるので、実際に利用する際はあらためて制度の詳細を確認しましょう。
「業務改善助成金」は、生産性向上を目的として投資を行うとともに、事業場内最低賃金を30円以上引き上げた企業を支援するために創設されました。なお、事業場内最低賃金とは、事業場で最も低い時間給を指します。
【目的】
【受給要件の一部】
【助成率や上限額】
【助成対象経費】
【電子申請できるWebサイト】
トライアル雇用とは、常用雇用への移行を前提に原則3ヶ月間雇用することです。「トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)」はニートやフリーター、短期間で転職を繰り返す人などをトライアル雇用した事業主が助成金の対象とされます。また、母子・父子家庭の親や生活保護受給者なども対象です。
【目的】
【受給要件の一部】
【助成率や上限額】
【電子申請できるWebサイト】
「キャリアアップ助成金」は、有期雇用労働者や派遣労働者などの企業内でのキャリアアップを促進する目的で創設されました。6つのコースのうち、以下では「正社員化コース」について解説します。
【目的】
【受給要件の一部】
【助成率や上限額】
【電子申請できるWebサイト】
キャリアアップ助成金には、さまざまな加算措置も設けられています。たとえば、人材開発支援助成金の訓練修了後に正社員化した場合の加算は、有期雇用から正規雇用に転換した場合は9.5万円、無期雇用から正規雇用に転換した場合は4.75万円です。助成率や上限額、加算措置の詳細は公式サイトから最新のパンフレットをご確認ください。
なお、外国人のうち技能実習生と特定技能1号人材、各国家試験に合格前のEPA介護福祉士候補者および看護師候補者は、キャリアアップ助成金(正社員化コース)の対象外であるため注意しましょう。理由は、合格前の外国人は在留期限が設けられており、制度上は帰国が前提になっているためです。
「人材開発支援助成金」は、キャリア形成を効果的に促進するために、職務に関連した職業訓練を労働者に受けさせた事業主に支給されます。人材開発支援助成金に用意されているのは、「教育訓練休暇等付与コース」「人への投資促進コース」など4つのコースです。以下では、外国人雇用で申請しやすい「人材育成支援コース」について解説します。
【目的】
【受給要件の一部】
【助成率や上限額】
【助成対象経費】
【電子申請できるWebサイト】
なお、人材開発支援助成金(人材育成支援コース)にも、賃金要件や資格等手当要件を満たした場合、加算措置が存在します。対象労働者の区分や企業の規模によって異なり、加算されるのは助成率で+15~30%、助成金で+100~200円です。助成率や上限額、加算措置の詳細は、公式サイトから最新のパンフレットをご確認ください。
「働き方改革推進支援助成金」には、「業種別課題対応コース」「勤務間インターバル導入コース」など4つのコースが用意されてます。外国人雇用を行う事業主が申請しやすいのは、「労働時間短縮・年休促進支援コース」です。以下では、労働時間短縮・年休促進支援コースについて解説します。
【目的】
【受給要件の一部】
【成果目標】
【助成率や上限額】
【電子申請できるWebサイト】
なお、外国人労働者も日本人と同様に、労働基準法に則った雇用が求められます。そのため、一日の労働時間や有給休暇などの待遇は、日本人と同じように設定することが必要です。
参照元 厚生労働省「助成金のお問い合わせ先・申請先」 厚生労働省「人材確保等支援助成金のご案内」 厚生労働省「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」 厚生労働省雇用関係助成金ポータル「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」 厚生労働省「雇用調整助成金」 厚生労働省「雇用調整助成金(休業等)」 厚生労働省「雇用調整助成金(出向)」 厚生労働省「業務改善助成金」 デジタル庁「【厚生労働省】中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金(業務改善助成金)」 厚生労働省「トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)」 厚生労働省「トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)」 厚生労働省「キャリアアップ助成金」 厚生労働省「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」 厚生労働省「人材開発支援助成金」 厚生労働省「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)」 厚生労働省「労働時間等の設定の改善」 厚生労働省「【厚生労働省】令和6年度働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)」 デジタル庁「【厚生労働省】令和6年度働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)」
助成金の申請を検討する事業主は、支給を受けるための条件を満たしているか確認したうえで、綿密な活用計画を立てるようにしましょう。
助成金の支給を受けるには、助成金ごとの要件のほかに以下の共通要件も満たす必要があります。
【共通要件】
項目が多く感じますが、不正をせずにルールを守って事業を行っていれば容易に満たせる条件です。助成金をスムーズに受け取るためには、日頃から正しく事業管理を行い、積極的に申請の審査に協力しましょう。
助成金の申請をする際は、活用計画をしっかり立ててから行いましょう。多くの助成金の審査では、実際に計画書の提出が求められます。雇用関係の助成金は、従業員を確保したり労働環境を整えたりするために使うものです。企業の経営を安定させるために場当たり的に使うことは避け、認められた範囲内で計画的に使用しましょう。
参照元 厚生労働省「雇用関係助成金に共通の要件等」 厚生労働省「雇用関係助成金全体のパンフレット(簡略版)」
助成金は申請すればすぐに貰えるものではありません。たとえば、人材確保等支援助成金は助成金の申請から受給までに1年半ほどかかります。
また、申請が通らない可能性も十分に考えられるうえ、人事や総務の担当者の作業も相応に必要となるため、費用対効果をしっかり検討しましょう。
外国人雇用を始めたい企業は、支援制度の活用も検討してみましょう。
経済産業省が実施している「製造業外国従業員受入事業」は、製造業の国際競争力を強化すると同時に、国内製造業の空洞化を防ぐことを目的としています。
まず、事業者は特定の専門技術を海外の事業所で働く従業員に移転するための計画(製造特定活動計画)を作成し、経済産業大臣の認定を受けます。その後、外国人従業員が在留資格「特定活動」をあ請し付与されることで、日本の事業所で最長1年間の従事が可能になるのです。当制度は外国人従業員が海外の事業所に戻り、日本で身に付けた技術を活かして働くことを企図しています。
優秀な外国人従業員を転勤させ生産活動に従事させることで、新技術の導入や新製品の製造に必要なノウハウなど幅広い知識の移転が可能です。
「国際化促進インターンシップ事業」は、中小企業の外国人学生のインターン受け入れを推進する事業です。海外から来日し毎日出社して業務を行う「来日対面コース」と、出社せずに任意の場所で就業体験を行う「オンラインコース」があります。コースは年度によって異なるので、応募時に内容を確認しましょう。
事業主には、人材育成支援費として1人1日当たり2,000円が支給されます。滞在に必要な在留資格の取得や往復航空券の手配は、事務局が対応してくれるのもメリットです。「面倒な手続きは一旦置いておいて、一度外国人を受け入れてみたい」と考えている企業にとって、良い足がかりになるでしょう。
外国人雇用における悩みがある場合は、厚生労働省の運営する「外国人雇用アドバイザー制度」を利用してみましょう。事業所を管轄するハローワークで申し込みをするとアドバイザーが派遣され、外国人雇用の注意点や教育方法、改善点などのアドバイスを無料で受けられます。
上記の他、自治体によっては、「外国人雇用支援センター」といった名前の支援機関があります。こうした支援センターでは、定期的な雇用セミナー、マッチングイベントなどを行っていますので、最寄りの自治体に確認してみるのもよいでしょう。
さらに深く自社の状況を理解し条件に合った外国人を紹介してほしいと考えている事業主には、外国人人材紹介サービスをおすすめします。「WeXpats Agent」は、外国人雇用におけるさまざまな悩みを抱える企業のニーズに合わせたご提案やご相談が可能です。ぜひお問い合わせください。
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参照元 経済産業省「製造業外国従業員受入事業」 経済産業省「国際化促進インターンシップ事業」 経済産業省「国際化促進インターンシップ事業とは」 経済産業省「企業募集概要」 厚生労働省「外国人雇用管理アドバイザー」
雇用関係の助成金は労働対象者の国籍に制限がないため、外国人を雇用する企業も受給できます。助成金を活用すれば、金銭的な負担や心配の軽減が可能です。さまざまな助成金が用意されているので、受給要件をよく確認し自社に適しているものを選びましょう。
監修:濵川恭一
外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net