関西弁の特徴は、親しみやすい言い回しや温かみのある話し方です。「なんでやねん」や「ほんま、おおきに」「めっちゃおもろいなぁ」など、独特のフレーズを使って、人とのコミュニケーションを大切にしている文化があります。
この記事では、標準語との違いや使い方について解説。また、日常生活でよく使うあいさつ・語尾・フレーズを例文付きで一覧にして紹介しています。関西弁の面白さや奥深さを知るのに役立ててください。
目次
関西弁とは
関西弁とは、大阪府・京都府・兵庫県・奈良県・滋賀県・和歌山県・三重県の主に近畿地方で使われている方言の総称です。標準語とはイントネーションが異なり、また各地域ごとにも特徴があります。
各地域で話される関西弁の特徴
関西弁は地域によってイントネーションや語調、言い回しが異なります。以下は、各地域の方言の特徴を紹介します。
- 大阪府:勢いと明るさが感じられる方言で、「~ねん」「〜へん」などの語尾がよく使われる
- 京都府:ゆっくりした口調や遠回しな表現が特徴で、「~しはる」「~ひん」などの語尾が多い
- 兵庫県:兵庫県内のエリアによっても異なる方言が使われるが、一般的に上品な響きがあるとされ「~とぉ」といった柔らかな印象の語尾を使う
- 奈良県:ゆっくりとした穏やかな話し方で、優しい印象。一部の地域では「れいぞうこ」を「れいどうこ」と呼ぶなどザ行の言葉をダ行の言葉に交換して言い換えることがある
- 滋賀県:京都の言葉に似たようなやわらかい表現を使う。「ほっこりする(疲れている)」「いかい(大きい)」など、ほかの関西地方ではあまり使わない言葉がある
- 和歌山県:親しみやすさが感じられる方言で、長音が短くなったり「〜しやん」「〜よ」などの独特の語尾が使われたりする
- 三重県:関西弁と名古屋弁が混ざって生まれたといわれる、「~やに」「~げな」「せやもんで」などの言葉が使われる
関西弁はそれぞれの地域によって、話し方や言い回しが異なる方言です。
標準語と異なる関西弁のイントネーション
標準語と関西弁の違いはイントネーションといえます。
たとえば、「橋(はし)」は標準語では「し」にアクセントをつけますが、関西弁でのアクセントの位置は「は」です。ほかにも、「おにぎり」のアクセントの位置は標準語だと「に」ですが、関西弁では「ぎ」にアクセントをおきます。「ポテト」のアクセントは標準語だと「ポ」ですが、関西弁では「テ」です。
抑揚が大きく、リズミカルな話し方やイントネーションが関西弁の特徴です。
関西弁以外にも日本にはたくさんの方言があります。それぞれの方言の特徴や独特な言い回しについては「日本の方言の種類とは?いろいろな方言がある理由も解説」にまとめています。
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関西弁の語尾一覧
関西弁には語尾に「ん」がつくものが多くあります。「食べてん」「おもろいやん」などがその一例です。ここでは、肯定・否定それぞれの意味で使うときの関西弁の語尾を紹介します。
肯定の意味で使うときの語尾
以下は肯定の際に使う語尾の意味・例文です。
~やん・~やんけ
「~ね」「~じゃないか」という意味が当てはまります。
【例文】
- 「こいつ、おもろいやん」(意味:この方、面白いね)
- 「あのバイク、すごいやん」(意味:あのバイク、すごいね)
- 「かっこいい服やんけ」(意味:かっこいい服じゃないか)
- 「さっき言ったやんけ」(意味:さっき言ったじゃないか)
「~やん」は感嘆や了解を表し、「~やんけ」は驚きや非難を表す際に使われる語尾です。
~てん・~してん
「~たんだ」「~したんだ」という意味を表します。
【例文】
- 「さっき知ってん」(意味:さっき知ったんだ)
- 「むっちゃ勉強してん」(意味:すごく勉強したんだ)
- 「今、何してん?」(意味:今何してるの?)
「~てん」「~してん」は敬語ではありません。友人や親しい関係の人に対して使う語尾になるので、目上の人に対して使うのは控えましょう。
~はる・~しはる
「~される」「~していらっしゃる」という意味で、主に目上の人に対して使います。
【例文】
- 「なんて書きはったん?」(意味:どのように書かれたんですか?)
- 「今月中には行きはる予定です」(意味:今月中には行く予定です)
主に、大阪府や京都府で使われます。ただし、地域によって「~はる」「~しはる」につく動詞の形が異なるのが特徴です。たとえば、大阪府では「書きはる」「行きはる」と表現されますが、京都府では「書かはる」「行かはる」になります。
否定の意味で使うときの語尾
以下は否定の意味で使うときの語尾の例文・意味です。
~へん
「~ない」ということを表します。
【例文】
- 「そんなん言うてへん」(意味:そんなこと言ってない)
- 「難しすぎてわからへん」(意味:難しすぎてわからない)
- 「高すぎて買えへん」(意味:値段が高すぎて買えない)
- 「コーヒー飲まへん?」(意味:コーヒー飲まない?)
動詞のあとに「~へん」をつけることで、否定の意味になります。
~ひん
「~へん」と同じく「~ない」という意味を指します。
【例文】
- 「梅の実、落ちひん」(意味:梅の実、落ちない)
- 「朝が弱いから起きひん」(意味:朝が弱いから起きない)
- 「そんなんしいひん」(意味:そんなことしない)
- 「身長が伸びひんのが悩み」(意味:身長が伸びないのが悩み)
「~ひん」と「~へん」の使い方の違いは、「~ない」の前の言葉です。「落ちない」の「落ち」や「起きない」の「起き」など、「~ない」の前が「い」の発音のときは「~ひん」になります。
たとえば、「コーヒー飲まない?」を「コーヒ飲まひん?」とは言いません。
日常生活でよく使う関西弁一覧
関西弁ならではの言葉の意味と使い方を、「あいさつ」「日常会話」に分けて紹介します。
あいさつ
関西弁には独特の挨拶がたくさんあります。親しみやすい印象を与えるフレーズが多いのが特徴です。
まいど
「まいど」は「いつもお世話になっております」や「毎度ありがとうございます」という意味を表します。標準語の「どうも」と同じ意味です。一般的には、商売をしている人が取引先やお客さんに対して使います。
【例文】
- 「まいど、いらっしゃい!」(意味:いつもありがとうございます、いらっしゃいませ)
- 「まいど!今日はネギが安いで」(意味:いつもありがとうございます。今日はネギが安いです)
アクセントは「い」に置きます。
おおきに
「おおきに」の意味は「ありがとうございます」です。ほかにも「大いに」「非常に」という意味もあります。
【例文】
- 「おおきに!」(意味:いつもありがとうございます)
- 「ケーキくれたんやって?おおきに」(意味:ケーキをくれたんですか?ありがとう)
商売をしている人が使う言葉であり、一般の人たちも使う言葉です。軽い挨拶言葉なので、上司など目上の人に対しては使いません。
さいなら
「さいなら」は「さようなら」という意味です。「ほな(では・それじゃあ)」と組み合わせて、「ほな、さいなら」と言う場合もあります。
【例文】
- 「また明日。ほな、さいなら」(意味:また明日ね。では、さようなら)
- 「さいならせなあかんね。きぃつけや」(意味:さよならしないといけませんね。お気を付けて)
どちらかというと、年配の方が使う挨拶です。若者は「さいなら」ではなく「ほなね(じゃあね)」を使います。
ぼちぼち
「まあまあ」「そこそこ」の意味があり、良いわけではないが悪くもないときに使います。「元気?」「調子はどう?」と聞かれときに「ぼちぼちでんな」「ぼちぼちやな」と答えるのが関西では定番のあいさつです。
【例文】
- 「ぼちぼちでんな」(意味:まぁまぁ元気です)
- 「ぼちぼち元気にやってますわ」(意味:そこそこ元気にしています)」
ほかにも「そろそろ」という意味があり、「ぼちぼち帰ります(そろそろ帰ります)」というようにも使います。
日常会話で使う言葉
「あかん」や「ほんま」は関西に住む人たちが日常生活で使うフレーズです。ここでは、日常生活で使う関西弁を紹介します。
あかん
関西弁で「あかん」は、「ダメ」「良くない」という意味です。一般的に、批判的な意見を言うときに使います。
【例文】
- 「それはあかん」(意味:それはダメです)
- 「あの言い方はあかん」(意味:あの言い方はよくないです)
- 「味見したらあかん?」(意味:味見したらダメですか?)
あかんの対義語となる関西弁は「ええ(良い)」です。「ええよ(良いですよ)」「それええな(それ良いですね)」など肯定のときに使います。
ほんま
「ほんま」は「本当」「とても」という意味です。
【例文】
- 「明日の遠足なくなるってほんま?」(意味:明日の遠足なくなるって本当?)
- 「ほんまに大切やねん」(意味:とても大切なんです)
ほかにも「ほんまになぁ(そうですよね)」や「ほんまに美味しいわ(本当に美味しいです)」などのように相槌を打つときや、言葉を強調するときにも使います。
めっちゃ・ばり
「めっちゃ」や「ばり」は、どちらも「とても」や「すごい」「非常に」という意味です。元々は、「滅茶苦茶(めちゃくちゃ)」という言葉が語源とされています。
【例文】
- 「めっちゃ好き」(意味:とても好き)
- 「ばり痛いやん」(意味:すごい痛いです)
「めっちゃ」は元々関西で使われていた言葉ですが、最近では全国的に使われる言葉です。関西では「めっちゃ」の「ちゃ」にアクセントをおきますが、標準語では「めっ」にアクセントをおいて使います。
なんでやねん
「なんでやねん」は複数の意味がある言葉です。まず、怒りや失望などの感情を表したり、疑問を感じているときに使います。
【例文】
- 「なんでやねん、こんなん頼んでないわ」(意味:なぜ、こんなの頼んでないです)
- 「なんでやねん、あんた遊んでたやん」(意味:どうして、あなたは遊んでたじゃないですか)
ほかにも、ツッコミと呼ばれる関西独特のコミュニケーションを取る際にも使われる言葉です。
かまへん
「かまへん」は、「構わない」「問題ない」「大丈夫」「気にしないで」といった意味の関西弁です。
【例文】
- 「かまへんよ、うちがやっておくで」(意味:気にしないで、私がやっておくね)
- 「かまへん、かまへん。気にせんとき」(意味:大丈夫、大丈夫。気にしないで)
日常的に使われているフレーズで、人から謝られたときやお願いをされたときに使います。
「めっちゃ」は元々、関西で使われていた言葉ですが、最近では全国的に使われる言葉です。関西弁では「めっちゃ」の「ちゃ」にアクセントをおきますが、関西以外の地域では「めっ」にアクセントをおいて使います。
関西弁が使われている近畿地方には食べ物や人気の観光スポットがたくさんあります。近畿地方の魅力については「近畿地方といえば?人気の観光スポットや有名な食べ物とは」の記事をご覧ください。
関西弁独特の呼び方一覧
関西弁には独特のものの呼び方や言い回しがあり、なかには関西以外では通じない言葉も少なくありません。ここでは、関西弁独特の呼び方を解説します。
チャリ・チャリンコ
「チャリ」「チャリンコ」とは「自転車」のことです。ベルを鳴らしたときの音が「チャリン、チャリン」となること、または韓国語で自転車を表す자전거(チャジョンゴ)から派生したという説もあります。現在は関西だけでなく全国的に使われている言葉です。
なお、通勤や通学、買い物などに使用する26in以上のタイヤの自転車のことを「ママチャリ」、原動機付自転車のことを「原チャリ」と呼びます。
押しピン
ポスターや絵画を壁に貼るときに使う小さい針のことです。関西以外の地域では画鋲(がびょう)といいます。関西以外では、ねじ回しつきの小さな針のことを「押しピン」という人もいますが、関西弁では形状に関わらず小さな針のことを「押しピン」と呼ぶのが一般的です。
飴ちゃん
関西弁では、飴のことを「飴ちゃん」と呼びます。大阪では食べ物に親しみをこめて「さん」や「ちゃん」をつけて呼ぶことがあるのです。たとえば豆のことを「お豆さん」、お粥のことを「おかいさん」などと呼びます。
モータープール
モータープールは、有料駐車場のことです。関西には有料駐車場に「モータープール」と書かれた看板を掲げているところが多くあります。」語源は戦後、「モータープール」と呼ばれた米軍関係者の車両施設です。一般的には有料の月極駐車場に使います。
レイコー
「レイコー」とは「アイスコーヒー」のことです。冷たいコーヒーのことを冷(レイ)コーヒーといい、そこからレイコーになったといわれています。若者で使用しているひとはほとんどなく、カフェなどでは通じない可能性がある言葉です。
アテ
「アテ」とは「お酒のおつまみ」のことを指します。お酒を飲むときに添える一品料理のことです。お通しや小皿に盛られたちょっとした軽い料理のことを意味する言葉です。
なお、居酒屋などで注文しなくても最初に出てくる「お通し(おとおし)」は、関西弁では「突き出し(つきだし)」といいます。
面白い意味の関西弁のフレーズ一覧
関西弁には親しみやすさやユーモアがある表現がたくさんあります。ここでは関西独特のフレーズを紹介。どういう意味なのかぜひ考えてみてください。
「遠慮のかたまり」
お皿に残された最後の食べ物を「遠慮のかたまり」と呼びます。食事をした際に、一人ひとりが遠慮したものが最後に残った物を指す言葉です。何も言わずに最後の1つを食べるのは申し訳ないという気持ちから生まれた言葉といえます。
「行けたら行くわ」
関西弁で「行けたら行くわ」とは「行かない」ことを表すフレーズです。関西では行きたくないときに使われることが多いとされ、関西以外の地域では「行くつもり」の意味を含めた表現とされています。関西弁と標準語では異なる意味を持つ可能性があるため、ニュアンスを理解するには注意が必要です。
「知らんけど」
「知らんけど」は、責任を回避するために断定を避ける目的で使います。関西弁ではよく使うフレーズです。「今月から給料上がるらしいよ。知らんけど」などと会話の最後に使います。
日常的に使うフレーズですが、責任逃れをする意味合いがあるため、不快に感じる人も少なくありません。真剣な話をしているときや相談事には使わないほうが良いでしょう。
「なんぼ?」
関西弁の「なんぼ?」は「おいくらですか?」「おいくつですか?」という意味を指します。程度や値段を尋ねる表現です。関西では値段をはっきり尋ねる文化があるため、よく耳にするフレーズでしょう。
ほかにも「~してなんぼ」という使い方もあります。たとえば「若いときは苦労してなんぼ」や「笑かしてなんぼ」は「苦労することに価値がある」「笑かすことに意義がある」という意味です。
「それ、なおしといて」
「それ、なおしとて」は「それ、片付けおいて」ということを表します。関西弁の「なおす」とは「片付ける」「しまう」という意味です。関西以外では「なおす」とは「修理する」という意味で捉えることが多いため、関西以外で使うと意味が通じない可能性があります。
他県出身の人が「かわいい」と感じる関西弁
関西弁は、ほかの地域出身の人が「かわいい」と感じることが多い方言です。ここでは、他県出身の人が「かわいい」と感じる関西弁を紹介します。
「めっちゃ好きやねん」
「めっちゃ好きやねん」は、好意を表す言葉です。関西弁の「めっちゃ」は標準語の「とても」という意味になります。ほかにも関西弁で好意を表すフレーズは「好きやで」や「好きやわ」です。
「そんなんあかん」
「それはだめだよ」というフレーズを関西弁で表すと「そんなんあかん」といいます。標準語の「だめ」は、関西弁で言い換えると「あかん」です。拒絶されてしまうような強い印象を持つ「だめ」が、関西弁の「あかん」だとやわらかい響きになるため、かわいいと感じる人が多いのでしょう。
「楽しみにしててん」
「楽しみにしててん」は標準語の「楽しみにしていたよ」と同じです。「~しててん」は「していた」や「したかった」という意味を表します。関西弁では文末が「ん」で終わることが多いのが特徴で、可愛さや温かみを感じる表現と捉える人もいます。
ほかにも「~しててん」を使ったフレーズは「これ食べたかってん(これ食べてみたかったの)」や「早く行きたかってん(早く行きたかったよ)」などです。
関西弁以外にも、ほかの地域の出身者が「かわいい」と感じる方言の一つに熊本弁があります。「熊本県の方言やかわいい言葉一覧!よく使う表現を知って会話に役立てよう」には、熊本弁の特徴やかわいいフレーズを紹介しています。
関西弁の早口言葉
ここでは、関西弁の早口言葉を紹介します。関西弁のイントネーションを意識しながら、言えるかどうか挑戦してみてください。
「うち」を使った早口言葉
以下は、「うち」を使った早口言葉です。
【早口言葉】
「うち、うちのうちわで内野(うちの)をあおぐから、内野は内野のうちわでうちをあおいで。これ、内野とうちのうちうちの話」
【解説】
「うち」というのは、「私」のことを意味します。「うちわ」は、夏などで涼むために使う「団扇(うちわ)」のことです。内野という人名を使っています。
早口言葉を標準語で訳すと以下のとおりです。
「私、私の団扇で内野をあおぐから、内野は内野の団扇で私をあおいで。これ、内野と私の内々の話」
私と内野、お互いに団扇であおいだことを内輪話にしよう、という早口言葉になっています。
「ちゃう」を使った早口言葉
以下は、「ちゃう」を使った早口言葉です。
【早口言葉】
「あれチャウチャウちゃう?」
「ちゃうちゃう!チャウチャウちゃうんちゃうん?」
【解説】
関西弁で「違う」という言葉は「ちゃう」といいます。チャウチャウはがっしりとした体格で比較的長い毛をもった中型犬の犬種です。
早口言葉を標準語で訳します。
「あれ、チャウチャウ(犬)違う?」
「違う違う!チャウチャウと違うんじゃないの?」
関西弁の「ちゃう」と犬の「チャウチャウ」を組み合わせたユーモアのある早口言葉です。
まとめ
関西弁は近畿地方で使われている方言です。同じ近畿地方でも各地域によって方言の特徴が異なります。関西弁の特徴は、イントネーションや語尾、言い回しです。関西弁独特の親しみやすい言葉の使い方や意味を知って、日本語の奥深さを感じてみてください。