日本の企業には、海外の企業にはない独特な文化があります。たとえば、年功序列が重視されているのが一例です。勤続年数や年齢が上がるのに応じて昇進や昇給をしていくシステムのことで、現在でもこの文化が根付いている会社は多数あります。長期的に働く人にとっては安定感を感じられますが、若手のうちはモチベーションを感じにくいデメリットもあるでしょう。
この記事では日本の企業文化の特徴や慣習、海外との違いなどについて解説しています。理解を深めて、日本での就職・転職に役立てましょう。
目次
- 日本の企業文化と組織に見られる働き方の特徴
- 日本の企業文化の慣習やキャリアに対する考え方
- 日本の企業文化は変化している
- 日本の企業文化と海外の企業文化の違い
- 日本の企業文化を持つ会社で働くメリットとデメリット
- まとめ
日本の企業文化と組織に見られる働き方の特徴
日本企業で能力を存分に活かし快適に働き続けるためにも、企業文化を前もって理解しておくと良いでしょう。日本企業の雰囲気や文化を理解しておくことは、入職後のミスマッチを減らすことに繋がります。
物事の決定が慎重に行われる
日本企業は、物事の決定を慎重に行う傾向があります。プロジェクトを進める際、複数回会議を重ね、相当の時間を掛けるケースも珍しくありません。慎重に議論をしていくため、プロジェクトを進めるうえでのリスクを減らせます。経営者の権限で物事が決められるというよりは、さまざまな立場の人と意見をすり合わせていくため、コミュニケーションや相談などはしやすい環境でしょう。
時間をしっかり守る
日本では時間を守ることが重要視されます。特に始業時間や会議の開始時間は非常に厳格で、数分でも遅れた場合は遅刻とみなされ、信用を失いかねません。日本企業は時間をしっかり守ることで、業務や会議をスムーズに始められるようにしています。
年功序列が重視される
年功序列とは、勤続年数や年齢が上がるのに応じて、昇給したり役職が与えられたりするシステムです。現在でも年功序列の文化が根付いている会社が多く、社員は役職ポストが空き次第、勤続年数が長い順に昇進をしていきます。新人社員が優秀な成績を納めても、先輩社員より先に昇進することは簡単ではありません。
長期的に働くことで安定感を感じられる利点はありますが、勤続年数が少ないうちはモチベーションが上がりにくいデメリットもあるでしょう。
過程が評価される
日本企業では、結果だけでなく過程も評価される傾向にあります。過程とは、プロジェクトに取り組む姿勢や態度などです。日本では、いくら優秀な成績を納めていても、手を抜いたりラクをしたりする人はあまり評価されません。「どれだけ努力したか」も評価対象になります。たとえ結果が思わしくなくても過程を評価してもらえることは、モチベーションアップにも繋がるでしょう。
残業を進んで行う文化があった
日本企業には、かつて残業を進んで行う文化がありました。日本人には古くから「コツコツ真面目に働くのが正しい」「上司より先に帰ってはいけない」という価値観が定着していたからです。そのため、工夫をして早く仕事を終わらせるというよりは、たくさん働いたほうが良いと考える人もいます。仕事が早い人のほうが評価される海外企業との、大きな違いといえるでしょう。
プライベートより仕事が優先される場合がある
日本企業では、プライベートよりも仕事を優先させる場面があります。たとえば、就業後の飲み会がその一例です。お酒を飲みながらコミュニケーションを取るので「飲みニケーション」とも呼ばれています。仕事に関する話をするので仕事の一環として考えられ、上司から誘われたら部下はなるべく参加すべきとされていました。しかし、現在では上司からの誘いを義務的に捉えている人は少ない傾向にあります。
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日本の企業文化の慣習やキャリアに対する考え方
日本の企業文化にはさまざまな慣習があります。現在では変化してきているものもありますが、慣例が残っている企業もあるでしょう。
キャリアとしては年功序列制度や終身雇用制度などによって、安定的に働きやすい特徴があります。難点は男女間賃金格差が大きく、管理職に占める女性の割合が低い水準であることです。現在はジェンダーギャップをなくすため、さまざまな取り組みがなされています。
日本企業の慣習
慣習とは、一般的に行われていることや、定着してきた習慣やしきたりのことです。ルールとして明記されているものではないため、日本では「暗黙の了解」などといわれることもあります。
かつては、勤務時間の30分前に出社しなくてはならなかったり、新入社員が電話対応を行わなくてはならなかったりといった慣習が、多くの日本企業にありました。また、上司より先に退勤してはいけないという慣例も。以前は、女性が全社員にお茶を出さなければいけない会社もあったようです。
日本企業のキャリアに対する考え方
日本企業では従業員を定年まで雇用し続ける終身雇用が一般的で、年功序列を取り入れている会社が多数です。労働者を長期的に育成し、勤続年数に応じて賃金を上げる安定型の雇用といえます。高度経済成長期の人々は雇用と安定を必要としており、企業にとっては育成した労働者の離職を防げるメリットがありました。
キャリアに対しての要望が多い従業員よりも、人事命令に従う社員を評価する会社が多い傾向にあります。日本企業で働く人は会社の指揮命令に従うことを求められ、仕事内容や就業場所を自分で積極的に決めることが難しいという特徴がありました。
また、日本企業では女性の管理職を登用することに積極的ではなかったといわれています。女性の活躍を推進する企業なども増えてきた一方で、年齢層の高い経営者が男女の仕事を区別する考えを持っている会社は現在でもあるようです。ジェンダーギャップをなくすための国や企業の取り組みについては、後述の「キャリアに対する考え方」をご覧ください。
「転職理由を本音で話すべき?転職先への伝え方を外国人に向けて解説」では、転職理由を企業に伝えるときのポイントについて紹介しています。興味がある方はぜひご覧ください。
日本の企業文化は変化している
日本の企業文化の慣習やキャリアに対する考え方には年々変化が見られます。一つの企業で長く働いた人材よりも、即戦力となる多様なスキルを持つ人材とキャリアを重視する企業も増えてきました。また、ワークライフバランスを重視した柔軟な働き方を推進・実行している企業も。一方で、昔ながらの方針や慣習が変わらない企業もあり、日本の企業文化は多様化してきています。
働き方
昨今は時差出勤やフレキシブル勤務、在宅勤務などを導入する、ワークライフバランス重視の会社も増えています。年功序列が重視される企業がある一方で、スタートアップ企業やベンチャー企業など新しい会社では、能力重視の方針を取るケースも増加しています。
残業については、日本政府が打ち出した「働き方改革」により改善されてきており、定められた残業時間の上限数を超過すると罰則の対象にもなります。
就業後に上司が部下を飲みに誘うことについては、ハラスメント防止のために慎むよう促す会社も出てきました。仕事以外でのこのような付き合いは少なくなってきているのです。
慣習
開始時間とほぼ同時に出勤する人もいますが、多くは始業時間より早めに出勤しています。会社によっては、30分前には出社するよう注意するところもあるようです。
また、近年では電話対応を若手社員に強いることについて「テルハラ(TELハラ)」という言葉が生まれました。「新人社員が電話を取るのが当たり前」という慣習への問題意識から生まれたと考えられます。
上司より先に退勤してはいけないという慣習については、古いと感じている若者が多数です。働き方改革では残業の規制がされているため、上司の時間外労働に付き合って会社に残ることは減っていくでしょう。
以前は女性が早く出勤して掃除をするという企業もありましたが、現在は減ってきています。男女雇用機会均等法が浸透したことや、企業の労務管理への意識が向上したことが背景の一つです。しかし、現在でもお茶出しや掃除などの雑務が女性に偏っていると感じる人もいます。いまだに女性社員だけがお茶出しをさせられる会社もあるでしょう。
キャリアに対する考え方
日本企業のキャリアに対する考え方は、年々変化してきています。近年では、ジェンダーギャップをなくすため、女性のキャリアアップや社会進出が国や企業から推進されるようになりました。女性の管理職登用を積極的に行ったり、子育て支援制度やキャリアアップの支援制度を導入したりする企業なども増えてきました。また、学歴や年齢、在職年数よりも、個人のスキルや知識を評価し採用する企業も多く、即戦力となる人材が求められていることが分かります。
年功序列や退職金制度のある安定型から、個人の実力を評価するキャリア型へ方針転換する企業も多く、日本企業のキャリアに対する考え方にも変化が見られるようになりました。
日本の企業文化と海外の企業文化の違い
日本国内には、ブラック企業と呼ばれる過酷な労働を強いる会社もあれば、ホワイト企業と呼ばれる社員ファーストの働きやすい会社もあります。
日本の企業は、正社員に対しては固定給が基本であり、仕事の成果により給与額が減額されることはほとんどありません。また、勤続年数が長くなれば、昇給や昇格にも繋がりやすい特徴があります。海外では結果や成果が何よりも重視され、給与や昇給に大きく影響することも。
日本企業は長期雇用を前提として採用するため、一方的に解雇されることは滅多になく、安定し長く働ける環境が整っています。
海外のキャリア採用とは異なり、日本では新卒採用も行われています。職種が未経験の社員であっても研修や社員育成制度により先輩社員のサポートを受けながら少しずつ仕事を覚えられるため、新入社員には良い環境でしょう。日本では、たとえ結果が伴わなくても、日頃の努力や頑張りを評価してもらえることもあります。
また、日本の企業はミーティングの回数や時間も多いため、海外の企業に比べると上司や同僚に相談しやすい、情報を共有しやすい企業文化があるでしょう。
日本の平均年収について知りたい方は、「日本の平均年収のデータ!在留資格別や職種別の数字を紹介」をご覧ください。
日本の企業文化を持つ会社で働くメリットとデメリット
日本の企業文化では終身雇用が一般的で、会社によってさまざまな福利厚生があります。また、結果だけでなく過程も評価される傾向にある点がメリットです。企業文化の暗黙のルールがあるのは、デメリットと感じる人もいるでしょう。
メリット
日本の正社員は簡単に解雇されない終身雇用が一般的なので、安定的に長く働きたい人にはおすすめです。
また、給与以外に福利厚生があることもメリットの一つでしょう。日本では会社が交通費を負担する場合が多く、住宅手当や健康診断を福利厚生としている企業もあります。
日本企業では結果だけでなく過程も評価される傾向にあるため、結果が出せなくても普段の努力を認めてもらえる場合もあるでしょう。
デメリット
日本の企業文化の暗黙のルールに息苦しさを感じる人もいるでしょう。変わってきている慣習があるものの、いまだに女性社員だけがお茶出しをさせられたり、勤務時間の30分前に出社をするよう注意される会社もあります。
年功序列の文化を持つ企業で働いた場合、勤続年数や年齢が上がるのに応じて昇進や昇給がされます。実力があっても先輩社員より先に出世することが困難なため、若手のうちはモチベーションが保ちにくいこともデメリットです。
そのほか、早期転職が好意的に受け入れられない点や、職場のルールやケアレスミスに関して厳しく、許容範囲が狭い点なども挙げられるでしょう。
自分が興味のある企業にどのような慣習や制度があるのか、事前に企業の口コミサイトを見てミスマッチを防ぐのがおすすめです。
日本で働きたい方は、日本のビジネスマナーについても知っておくと良いでしょう。「日本のビジネスマナーを解説!服装から人への接し方まで紹介!」で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
まとめ
日本企業で快適に働くには、日本特有の文化を理解するのが大切です。日本では周りの人の意見や考えを尊重し、同じ目標に向かって仕事を進められる「協調性」が求められます。時と場合によっては、自分の意見を主張しすぎないように気を付けることも必要です。
日本の企業文化には独特なものもあり、慣れるまでは不思議に思うこともあるでしょう。日本の企業文化も変化しており、企業によって異なる点もたくさんあります。まずは海外と日本の違いを理解し、日本の企業文化への理解を深めることから始めてみましょう。
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