「小職(しょうしょく)」とは、一定の役職に就いた人が同僚や部下に対して自分のことを謙遜して表現するときに使う一人称です。主にビジネス文書やメール、手紙などで使われます。役職に就いていれば、性別問わずに使用可能な言葉です。
この記事では、小職の意味や使い方を例文付きで解説します。また、小職を使う際の注意点や言い換え表現や類義語も紹介。小職の意味や使い方を正しく理解し、ビジネスマナーの知識を深めてください。
目次
小職とは
小職(しょうしょく)とは、一定の役職に就いている人が、自分のことをへりくだらせるときに使う言葉です。小職は必ず一人称として使われます。「私(わたし・わたくし)」などと同じ意味です。
もともとは官職に就いている人が使いはじめた言葉といわれています。官職とは国家公務員のことです。「小職」の「小」は「小さい」、「職」は「役職・任務」という意味があります。役職がある人が一人称に「小職」を使うことで、「小さい役職なので大した存在ではない」と自身を謙遜するとともに相手に敬意を表すために使用していたのです。
時代の変化にともない、現代では民間企業の管理職に就いている人も自分をへりくだる目的で「小職」を使用するようになりました。
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小職の使い方
小職は、部長や専務などの一定の役職に就いている人が自分のことを謙遜して使う一人称です。ここでは、小職を使う際のポイントを解説します。
小職はメールや手紙などで使用する
小職は、書き言葉であり、主にメールや手紙などで使われる表現です。口頭で使用することはあまりありません。
メールなどで「分からないことは、私に聞いてください」と言いたいときに、「ご不明な点は、小職までお問い合わせください」と書き表すことができます。
小職は性別関係なく使用できる
小職は、性別に関係なく使える一人称です。日本では社会構造上、男性が上の役職に就くことが多く、女性が小職を使う機会はあまりありませんでした。そのため、現在では男性が小職を使うイメージが浸透しています。しかし、実際には女性が使っても全く問題ありません。
小職を使った例文
以下は「小職」を使った例文です。ビジネスシーンにおいてメールや手紙などで「小職」を使用する際の参考にしてください。
【例文1】
今後につきましては、小職の後任は▲▲が担当いたします。近日中に2人でご挨拶に伺わせていただきます。
【例文2】
来月からの方針の詳細を所属している皆様にメールいたします。ご不明がございましたら、小職まで連絡をお願いします。
【例文3】
プロジェクトが成功するよう小職も微力ながらご支援申し上げます。打ち合わせ当日、必要なものがあれば遠慮なくおっしゃってください。
【例文4】
先日お願いしていたアンケートの集計は終わりましたでしょうか。メールで小職宛にお送りください。
【例文5】
本日の小職の予定は以下のとおりです。お手すきの際に詳細を伺いたいので連絡をお待ちしております。
小職はビジネスメールにも使える一人称です。メールに関するマナーについては「日本のビジネスマナーを解説!服装から人への接し方まで紹介!」や「日本語のメールの書き方を知りたい方に例文やポイントを紹介」をご覧ください。
小職を使うときの注意点
「小職」という言葉は役職に就いている人が自身をへりくだるときに使われる一方、場面によっては堅苦しく思われることもあります。また、目上の人に対して使ったり、役職に就いていない人が使ったりしてはいけません。このように、小職は使う相手や状況によっては注意が必要な言葉です。ここでは、小職を使う際の注意点を解説します。
目上の人には使わない
目上の人に対して小職は使用しません。小職は、役職がある人が同僚や部下などにへりくだる際に使う一人称です。そのため、目上の人に対して使うと失礼に聞こえてしまいます。
目上の人に使う場合は小職ではなく「私(わたくし)」が相応しいでしょう。
役職に就いていない場合は使わない
役職に就いていない一般社員は「小職」を使用できません。立場が上の人が、自分をへりくだって表現するときに「小職」を使うからです。
どの程度の役職であれば使えるという決まりはありませんが、役職に就いていない人やあまりに低い役職の人が使用するのは控えましょう。
堅苦しく思われる可能性がある
小職を使う場合、相手によっては堅苦しい印象を与えてしまう可能性があります。また、高い位置にいる自分をへりくだる際に使用するため、「役職を自負している」や「役職がある自分のほうが立場が上」などと言われていると相手が受け取ってしまう可能性もあります。
使う際は、状況や相手を考慮すると良いでしょう。
小職は日本のビジネスで使われる表現です。ビジネスシーンで使う日本語の表現や挨拶については「ビジネスで使う日本語をあいさつや電話などの場面ごとに紹介!」にまとめています。
小職の類義語
小職は自分を指す一人称の一種です。「小職」以外にも自分を意味する言葉は複数あります。類義語や言い換え表現は、性別や相手によって使い方が異なるので、意味を正しく理解してから使うようにしましょう。
私
「私(わたくし)」は性別や役職に関係なく使用できる言葉です。また、社内外を問わず使用することもできます。また、「私」は書き言葉だけでなく話し言葉でも使用可能です。堅苦しい印象も与えにくいので、言い換えに迷ったときは「私」を使うと良いでしょう。
【例文】
-
大変恐縮ですが、私なりの意見を申し上げます。
-
ご迷惑をおかけして申し訳ございません。今後は私が責任をもって対応いたします。
小生
「小生(しょうせい)」は、目下の人に対して自分をへりくだって表現する書き言葉です。目上の人に対して使用することはマナー違反となります。なお、小生は男性が使う言葉で、女性は使えません。
【例文】
-
小生の立場としてはお伝えしづらいのが正直な感想です。
-
今週一杯、小生は出張で不在にしております。
当職
「当職(とうしょく)」は、一般的に弁護士や税理士などの「士業」に就いている人が使用する一人称です。当職には、謙遜したりへりくだったりする意味はありません。そのため、ビジネスシーンにおいても、相手や場面に関係なく使える言葉です。
【例文】
-
ご不明な点がございましたら当職まで遠慮なくお申し付けください。
-
この件につきましては、当職が担当いたしますのでご安心ください。
当方
「当方(とうほう)」は、主に「私たち」という意味で使います。また、自分が所属する組織やグループ全体を表す際にも使用する言葉です。使い方によっては「企業全体」を意味することもあるため、使い方には注意が必要です。
【例文】
-
この度の出来事につきましては、すべて当方に原因があると自負しております。
-
当方の試算によると問題ないと思われます。
弊職
「弊職(へいしょく)」は、職場内において自分のことを謙遜して使われます。社内の人に対して使う一人称のため、社外の人に対して使うのは避けましょう。自分の会社を指す「弊社(へいしゃ)」と小職が合わさって造られた言葉という説もあります。
【例文】
-
レポートが出来上がり次第、弊職宛にお送りください。
-
明日の会議の進行は、弊職が担当いたします。
下名
「下名(かめい)」は自分をへりくだって表現する言葉です。役職や性別に関係なく使用可能な言葉です。また、下名には「以下に名前が書かれている人」という意味もあります。以下に記した人という意味で下名を使う場合は、下名の指す人が複数人であっても問題ありません。
【例文】
-
例の件につきましては、下名が担当することになりました。
-
下名の方々は明日の午前10時に会議室に集合でお願いします。
まとめ
小職は、一定の役職に就いている人が自分のことをへりくだって表す際に使う言葉です。性別に関係なく使えます。話し言葉では使用せず、メールや手紙などの書き言葉として使われる一人称です。
相手やシチュエーションによっては失礼な印象や堅苦しいイメージを与えてしまう可能性があります。そのため、ビジネスシーンにおいて小職を使うのに抵抗がある場合は、類義語に言い換えるなど、違う表現を使ってみてください。