プロジェクトを完了させるのに必要な人数とかかる期間(月)を計算式で表したものを「人月(にんげつ)」といいます。人月は、見積もりを作成したり工数管理を行ったりする際に役立つ便利な言葉です。工数の単位として「人日」や「人時」も人月と同様によく使われています。
ここでは、人月の意味や計算方法を解説。また、工数管理を行うメリットやポイントについても紹介するので、参考にしてください。
目次
人月の意味とは?
「人月(にんげつ)」とは工数を表す単位です。1人が1ヶ月間で完了できる作業量を「1」とした場合「1人月」と表します。工数とは作業が完了するまでに必要な人数と時間を表す指標のことです。人員や時間が多ければ多いほど「工数がかかる」と表現します。また、受発注金額を1人月あたりの価格で表したものを「人月単価(にんげつたんか)」というので、あわせて覚えておきましょう。
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人月の計算方法
人月の計算式は「人数×作業期間(月)=人月(工数)」です。10人で2ヶ月かかる場合は「10(人数)×2(作業期間・月)=20(人月)」と表せます。50人で半年(6ヶ月)かかる場合は「50×6=300」で「300人月」です。
また、工数(人月)が算出されている場合は、以下のように逆算して必要な人数や作業期間を計算することもできます。人数や作業期間、工数単価を表す計算式は以下の通りです。
- 人月÷作業期間=必要人数(プロジェクト完了までの必要な人員数)
- 人月÷人数=作業期間(プロジェクト完了までにかかる必要な作業期間)
- 人月×人月単価×作業期間=工数単価(プロジェクトにかかる費用)
企業などでは、主にExcelやプロジェクトの工数管理ツールを使用し必要な工数を算出しています。工数は、プロジェクトを計画したり進行したりするにあたって役立つ指標となるため、意味と用法を覚えておきましょう。
日本企業で必要とされるPC(パソコン)のスキルについて知りたい方は、「日本で働くために必要なパソコンスキルや資格とは?外国人に向けて解説」のコラムを参考にしてください。
人月に似た工数管理用語
人月のほかにも、計算式で表せる工数の単位があります。「人日」や「人時」は、工数管理を行う際に人月と同様によく使われる言葉です。ここでは、「人日」と「人時」の意味と計算方法について解説します。
人日
「人日(にんにち)」とは、1人が1日で完了できる作業量のことです。計算式で表す際は「人数×作業日数=人日」となります。10人で3日かかる場合は「10(人数)×3(作業日数)=30(人日)」で「30人日」です。計算式は人月と同じであるため、計算する際は月数と日数の違いに注意しましょう。
人時
「人時(にんじ)」とは、1人が1時間で完了できる作業量のことです。人時を計算式で表す際は「人数×作業時間=人時」となります。4人で5時間かかる場合は「4(人数)×5(作業時間)=20(人時)」です。また、人時は「マンアワー(man-hour)」と呼ばれることもあり、その際は「M/H」と表記します。
工数管理を行うメリット
工数管理を適正化することは、プロジェクトマネジメントの基本とされています。工数管理は、プロジェクトの進行や会社の利益に影響を及ぼす重要なものです。ここでは、工数管理を行うメリットについて解説します。メリットを理解し、工数管理を行う際の参考にしてください。
正確な見積もりが出しやすくなる
工数は、クライアントに予算や見積もりを提示する際の大切な根拠となります。工数の算出により見積もりを正確に提示できるため、費用や納期の交渉を行う際にも相手に分かりやすく伝えられるでしょう。適当な見積もりを提示し、プロジェクト開始後に何度も追加予算を請求すると信用を失う恐れがあります。そのため工数算出は、受発注時や交渉時に相手に正確な見積りを提示するための大切な手段といえるでしょう。
プロジェクトの納期や進捗を把握しやすくなる
工数管理を行うことは社内外において、プロジェクトのスケジュール管理がしやすくなるというメリットがあります。工数管理により、プロジェクトの納期や進捗状況、適切な仕事量を把握でき、現実的な見通しを立てることができるでしょう。
無駄なコストを削減しやすくなる
規模の大きいプロジェクトは、人員数や作業期間が増えるためコストが高くなります。また、同時に複数のプロジェクトが稼働する場合も、実態にあわせた正確なコストを把握するのは難しくなるでしょう。工数管理を行うことで必要な人員数を把握でき、無駄な人件費を削減したり人手が足りなくなったりする事態を防ぐことが可能です。また、無駄な費用を削減することにより、プロジェクトの利益を最大限に生み出せるでしょう。
工数管理を行うデメリット
人月での工数は一律に算出されるものの、実際の個人の作業スピードや能力はそれぞれ異なります。また、システム管理においては見積もり時に把握できなかった想定外の問題が出てくるケースも。工数は目安となる数値データである一方、柔軟な対応が難しいというデメリットがあります。そのため、発生した問題に対応している時間が工数の見積もりに含まれていなかった場合は、納期に間に合わなくなる可能性もあるでしょう。契約違反とならないようにするためにも、見積もりは相手任せにせずに、交渉時にしっかりと確認をしましょう。
工数管理を行う際のポイント
工数を元に見積もりや計画書を作成する際には、留意すべき点がいくつかあります。ここでは、工数管理を効果的に行うためのポイントを解説するので、参考にしてください。
能力やスキルを確認する
人員数は工数の計算式で算出できるものの、個人の能力やスキル、作業スピードには差があります。工数を割り当てる場合は、ただ人数を振り分けるだけでなく、誰がどの作業を行うのかを管理者が把握しておくことが大切です。能力に合った作業なのか、作業時間や作業量は適切かなど、個人の能力と工数を照らし合わせて確認しておくと良いでしょう。また、定期的に見直しを行うことで変化や問題にも対応しやすくなります。
過去の工数を見直し参考にする
工数管理を適正化するためには、過去のプロジェクトでかかった工数を見直すと良いでしょう。過去の類似したプロジェクトを参考にすることで実態を踏まえた工数が分かり、工数管理の精度を高められます。また、過去の工数を見直すことにより問題点を把握でき、工数管理の改善にも繋げられるでしょう。
工数管理のほかにも、日本での就職時に役立つパソコンスキルについて知りたい方は「パソコンスキルに関する資格を日本で働きたい外国人向けに解説」のコラムを参考にしてください。
まとめ
人月や人日を使って工数管理を行うことは、進捗状況やスケジュールを把握したり、見積もりを提示したりする際に役立ちます。また、工数は会社の利益に影響を及ぼす重要なものです。一方で、工数は全ての人が同じ時間で作業をこなすことを前提としているため、個人の能力差に応じて対応できていない場合も。見積もりで出した工数と実際にかかった工数の誤差が少なくなるよう、問題が発生した際の対応時間や個人の作業スピードも考慮して工数を管理できると良いでしょう。