1月から2月の旧正月の時期になると、日本にはアジア圏から多くの観光客が訪れます。日本ではあまりなじみがない旧正月ですが、中国や韓国などでは連休と決められており、盛大に祝うのが習わしです。
このコラムでは、日本で旧正月が祝われなくなった理由のほか、現代でも旧暦の1月1日に新年を祝う地域を紹介。また、モンゴルやベトナム、マレーシアなどの旧正月の習慣を解説します。
目次
旧正月とは何?
旧正月とは、月の動きを基にした旧暦のお正月のことです。日本では、1872年まで太陰暦が採用されていました。1873年になると、地球が太陽の周りを一周する期間を基にした新暦(太陽暦)が採用されます。太陰暦と太陽暦は日にちがずれており、お正月が一致していません。そのため、太陰暦と太陽暦のお正月を区別するため、旧暦の1月1日を旧正月と呼んでいます。
現代の日本のお正月について知りたい方には、「日本のお正月とは?玄関飾りや料理について解説!新年の過ごし方を知ろう」や「日本の伝統行事には何がある?年末年始の行事や通過儀礼についても紹介」のコラムがおすすめです。
ピックアップ記事
旧正月は現代の日本の暦だといつ?
旧正月は、太陽暦の1月22日〜2月19日のうちの1日が該当します。2023〜2035年までの旧正月の日付は以下のとおりです。
- 2023年…1月22日
- 2024年…2月10日
- 2025年…1月29日
- 2026年…2月17日
- 2027年…2月6日
- 2028年…1月26日
- 2029年…2月13日
- 2030年…2月3日
- 2031年…1月23日
- 2032年…2月11日
- 2033年…1月31日
- 2034年…2月19日
- 2035年…2月8日
旧暦は、太陽暦と1〜2ヶ月ほどの季節のずれがあります。
旧暦については「和風月名の一覧を外国人向けに紹介! 意味や由来と併せてチェック!」のコラムでも解説しています。
昔は日本でも旧正月が祝われていた
日本でも旧暦が採用されていたころは、旧正月の時期にお祝いをしていました。
お正月を祝う時期が変化したきっかけは、太陰暦から太陽暦に切り替わったことです。日本政府は1872年11月9日に太陰暦から太陽暦に切り替えると発表し、同年12月2日の翌日が1873年1月1日とされました。当時の日本は江戸時代が終わってまもない明治5年。鎖国を廃止し、西洋の文化を取り入れることで国力を強めようとしていた時期です。そのため欧米圏で採用されていた太陽暦が使われるようになり、次第に旧暦のお正月を祝う習慣は失われていったのです。
現代でも旧正月を祝う日本の地域
沖縄県では旧正月を「ソーグヮチ」と呼び、現代でも祝う習慣が残っています。お餅を重ねた「ウチャヌク」や旧暦1月1日の朝に汲んだ「若水」を神様にお供えするのが習慣です。また、「ラフテー」「ソーキ汁」「クーブイリチー」など、旧正月を祝う食べ物として豚肉を使った料理が作られます。
横浜市の中華街や神戸市の南京町、長崎県の新地中華街も、旧正月を祝う地域です。これらの中華街では、旧正月の時期になると獅子舞や爆竹が登場する盛大なイベントが開かれます。
中華街については、「横浜の魅力を外国人に向けて解説!港町としての歴史や観光地を紹介」や「神戸は魅力あふれる港町!人気の観光エリアやイベントを紹介」のコラムで紹介しています。
中国の旧正月である春節について
中国では旧正月のことを「春節」といい、新暦が採用された今日でも新年の始まりとして盛大にお祝いをします。春節の前日から7日間は国が定めた祝日です。多くの人が地元に帰り、家族や親戚で集まって春節を祝う料理を食べます。赤い提灯や灯篭に灯をともし、爆竹や花火を打ち上げるのが習わしです。
春節の飾り
中国では、春節が近づくと幸福と富のシンボルである赤を用いた飾りが街中に施されます。
個人の家でも、玄関や扉に「倒福(とうふく)」や「春聯(しゅんれん)」を飾るのが習わし。倒福は赤い紙に「福」の文字が書かれた飾りで、逆さまに貼るのがルールです。倒福の横には、願いごとを書いた中華短冊を貼ります。春聯は縁起の良い言葉が書かれている赤い紙の飾りです。街も家も鮮やかに彩られ、華やかになります。
春節でもお年玉を渡す
中国では、春節になると大人が子どもに「圧歳銭(ヤースイチエン)」というお年玉を渡します。「新年に大人が金銭をあげることで子どもが一年間無事に過ごせる」という言い伝えが由来です。一般的には、社会人になったら自分より若い人に圧歳銭を渡します。なお、親が帰省した成人の子どもに、渡すのもよくあるパターンです。
金額は縁起の良い偶数と決まっており、「紅包(アンパオ)」とよばれる赤い袋に包んで渡します。
春節に欠かせない食べ物
中国では、春節の前夜に食卓に並ぶ食べ物のことを「年夜飯(ニエンイエファン)」といいます。食べきれないほど多くの食べ物を用意して、家族揃って食卓を囲むのが春節の習わしです。春節の食べ物には、「新年が幸せになるように」との願いが込められています。春節に欠かせない食べ物は以下のとおりです。
- 年糕(ニェンガオ)…中国のお餅のことで、繁栄や出世の願いが込められている
- 春巻…一本丸ごと食べることから「態度や言動が始めから終わりまで変わらないこと」である「終始一貫」を表すとされる
- 餃子…中国の古い貨幣に似ている形から、富をもたらす縁起の良い食べ物とされている
- お頭付きの魚…「繁栄」を意味し「ゆとりがある生活が送れますように」という願いを込められている
作る料理は地域によって異なりますが、いずれも良い意味を持つ食べ物です。
中国以外に旧正月を祝う国々
中国以外のアジア圏の国でも旧正月を祝う習慣があります。以下で紹介するのは、韓国・モンゴル・ベトナム・マレーシアの旧正月の習慣です。
韓国
韓国では旧正月のことを「ソルラル」もしくは「クジョン」と呼び、新暦のお正月よりも盛大に祝うのが一般的です。日本のお正月や中国の春節と同じく家族や親戚が集まって、新年の始まりを祝います。
旧正月の朝は、お風呂に入り体をきれいにしてから新しい服や靴下である「ソルビム」に着替え、新年の挨拶を行います。挨拶のあとは、先祖や神様を祭る儀式である「茶礼(チャレ)」を行うのが習わしです。その後、お墓参りに行ったり「トックク」を食べたりします。トッククは細長いお餅と野菜を煮たスープで、長寿の願いが込められている食べ物です。
モンゴル
モンゴルでは、旧正月を「ツァガーンサル(白い月)」と呼びます。 家族や親戚が集まり、厳しい冬を乗り越えて春を迎える喜びを分かち合いながら、一年間の幸福を祈るのが習わしです。
モンゴルでも旧正月には豪華な食べ物が用意されます。小麦粉の皮で包んだ肉を蒸した「ボーズ」や羊の丸茹での「オーツ」は、モンゴルの旧正月に欠かせません。ほかにも、角砂糖や乳製品で飾った楕円形の揚げ菓子である「ヘヴィンボーブ」もよく作られる食べ物です。
ベトナム
ベトナムでは、旧正月を「テト」と呼びます。街中に赤や金色の装飾を施したり梅の花や桃を飾ったりして、新年を祝うのが一般的です。また、ベトナムの獅子舞である「ムアラン」が踊る行事が催されます。
ベトナムでも旧正月は家族と一緒に過ごすのが習わしです。旧正月の伝統的な食べ物としては、春巻やベトナム風のちまきである「バインチュン」などがあります。また、先祖へのお供え物として、5種類のフルーツを飾るのが特徴です。リンゴやバナナ、オレンジ、マンゴー、スイカなどのカラフルな果物をお供えして、新年の幸運と豊かさを願います。
マレーシア
マレーシアでは、旧正月を「春節」や「チャイニーズ・ニューイヤー」と呼びます。多くの中華系の人々が暮らしているマレーシアの旧正月は、中国の春節の影響を強く受けているのが特徴です。たとえば、赤い提灯を飾ったり獅子舞の踊る行事が催されたりします。紅包にお年玉を入れて渡すのも、中国の春節と同様です。
街中では新年を祝って赤い服を着る人が見られ、華やかなムードに包まれます。
まとめ
旧正月とは旧暦のお正月のことで、日本でも太陽暦が採用される前は祝う習慣がありました。現代でも、中国では旧正月である春節が盛大に祝われています。韓国やモンゴル、ベトナム、マレーシアなどでも、旧正月は新年を祝う大事な行事です。各国の旧正月の違いや共通点に注目すると、面白いでしょう。