日本企業で働きたい外国人留学生のなかには、就職するために必要なことが何か分からない方もいるでしょう。日本で就職するためには、就活スケジュールや日本企業のマナーを把握する必要があります。このコラムでは、外国人留学生が日本で就職するために必要なことや、日本企業で働くメリットを解説。在留資格の変更についてもまとめているので、参考にして必要な手続きを行いましょう。
目次
外国人留学生が日本で就職するために必要なこと
日本で就職したい外国人留学生は、就活スケジュールや日本企業のマナーを知る必要があります。ここでは、外国人留学生が日本で就職するために必要なことを紹介するので参考にしてください。
日本の就活スケジュールを知る
日本の学生は全員が同じ時期に就職活動を行います。就職活動の準備段階として、大学3年生の6月頃から業界研究や自己分析を始めるのが一般的です。また、この時期にインターンシップを行う企業もあるので、積極的に参加すると良いでしょう。
大学3年生の3月からは企業エントリーが開始されます。企業エントリーでは、エントリーシートや履歴書の提出が必要です。就職活動が順調に進んだ学生は、企業エントリー後に筆記試験や面接を行い、合格した場合は9月中に内々定の通知が届きます。内々定の通知が届いたら、10月の内定式に参加して入社日まで待ちましょう。
日本企業のマナーを知る
外国人留学生は日本企業に就職する前に、言葉遣いや年功序列制度などを知っておく必要があります。日本企業で働くために必要なことは、以下のとおりです。
正しい敬語を使う
日本語には「尊敬語・謙譲語・丁寧語」があり、状況別に使い分けなくてはなりません。「尊敬語」は相手を敬うときに使う言葉で、「謙譲語」は自分を下げて相手を敬うときに使う言葉です。たとえば、「言う」を尊敬語にすると「おっしゃる」「言われる」になり、謙譲語にすると「申し上げる」「申す」になります。なお、「丁寧語」は日常的に使う「です」「ます」などの表現のことで、「言う」の丁寧語は「言います」です。「丁寧語」はビジネス以外の場面でも使うので、早めに身に付けておくと良いでしょう。
年功序列を理解する
外国人留学生は、日本企業特有の「年功序列」の考え方を理解しましょう。日本企業には、年齢や勤務年数の高い人が順番に昇給、昇進する「年功序列」の考えが根付いています。近年の日本では、年齢や勤務年数に関係なく能力やスキルにより昇給、昇進する「成果主義」を取り入れている企業も増えてきました。しかし、「年功序列制度」を重んじる企業が未だあるのも事実です。もし、「成果主義」を取り入れている企業へ就職したい場合は、事前に社員の年齢層や求める人材を調べて見極めましょう。
協調性を持って仕事に取り組む
日本で就職する外国人留学生は、協調性を持って仕事に取り組む意識を持つことが大切です。海外の企業では、各個人が能力を発揮して与えられた仕事をこなす「個人主義」の考え方があります。対して日本企業は協調性を重視するため、自己主張が強かったり自分の判断で仕事を進めたりする人を敬遠しがちです。海外と日本の仕事に対する考え方の違いを事前に理解しておきましょう。
日本の就活については「日本の就活の流れや必要な準備とは何か?外国人留学生に向けて解説」でもご紹介しています。合わせてご一読ください。
「留学」から就労可能な在留資格に変更する
外国人留学生が日本企業で働く場合は、「留学」から就労可能な在留資格へ切り替える必要があります。「留学」の在留資格は、外国人が日本の教育機関に通い勉強することが目的のため、就労は認められていません。そのため、日本企業で働く前に、出入国在留管理局で在留資格を変更します。なお、出入国在留管理局では外国人留学生が4月から入社できるように、卒業年の1月から変更申請が可能です。在留資格の変更には2週間から1ヶ月程度掛かるため、早めに申請を行いましょう。
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日本で就職する外国人留学生は在留資格の変更が必要
外国人留学生が日本で就職するには、就労可能な在留資格への変更が必要です。ここでは、就労可能な在留資格の種類や審査基準を紹介します。
就労可能な在留資格の種類
就労可能な在留資格の種類は、以下のとおりです。
・外交
日本国政府が受け入れる外国政府の外交使節団や領事機関の構成員、外交使節と同様の特権及び免除を受ける者とその家族の構成員としての活動(該当例:外国政府の大使、公使、総領事、代表団構成員等及びその家族)
・公用
日本国政府の承認した外国政府や国際機関の公務に従事する者とその家族の構成員としての活動(該当例:外国政府の大使館・領事館の職員、国際機関等から公の用務で派遣される者等及びその家族)
・教授
日本の教育機関において研究や研究の指導、教育を行う活動(該当例:大学教授等)
・芸術
収入を伴う音楽や美術、文学などの芸術上の活動(該当例:作曲家、画家、著述家等)
・宗教
外国の宗教団体により日本に派遣された宗教家の行う布教、そのほかの宗教上の活動(該当例:外国の宗教団体から派遣される宣教師等)
・報道
外国の報道機関との契約に基づいて行う取材やそのほかの報道上の活動(該当例:外国の報道機関の記者、カメラマン)
・高度専門職
高度の専門的な能力を有する人材として法務省令で定める基準に適合する者が行う活動(該当例:ポイント制による高度人材)
・経営、管理
貿易やそのほかの事業の経営を行い当該事業の管理に従事する活動(該当例:企業等の経営者・管理者)
・法律、会計業務
外国法事務弁護士や外国公認会計士などの法律上の資格を有する者が行うこととされている法律、または会計に係る業務に従事する活動(該当例:弁護士、公認会計士等)
・医療
医師や歯科医師などの法律上の資格を有する者が行うこととされている医療に係る業務に従事する活動(該当例:医師、歯科医師、看護師)
・研究
公私の機関との契約に基づいて研究を行う業務に従事する活動(該当例:政府関係機関や私企業等の研究者)
・教育
日本の教育機関において語学教育やそのほかの教育をする活動(該当例:中学校・高等学校等の語学教師等)
・技術、人文知識、国際業務
公私の機関との契約に基づいて行う理学や工学などの自然科学の分野、もしくは法律学、経済学、社会学の人文科学の分野に属する技術、または知識を要する業務や外国の文化に基盤を有する思考、感受性を必要とする業務に従事する活動(該当例:機械工学等の技術者、通訳、デザイナー、私企業の語学教師、マーケティング業務従事者等)
・企業内転勤
日本に本店や支店のある公私の機関の外国にある事業所の職員が日本にある事業所に期間を定めて転勤して当該事業所において行う技術、人文知識、国際業務の活動(該当例:外国の事業所からの転勤者)
・介護
公私の機関との契約に基づいて介護福祉士の資格を有する者が介護、または介護の指導を行う業務に従事する活動(該当例:介護福祉士)
・興行
演劇や演芸、演奏、スポーツなどの興行に係る活動またはそのほかの芸能活動(該当例:俳優、歌手、ダンサー、プロスポーツ選手等)
・技能
公私の機関との契約に基づいて行う産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する活動(外国料理の調理師、スポーツ指導者、航空機の操縦者、貴金属等の加工職人等)
・特定技能
法務大臣が指定する日本の公私の機関との雇用に関する契約に基づいて行う特定産業分野で、法務省令で定める相当程度の知識や経験、熟練した技能を要する業務に従事する活動(該当例:特定産業分野に属する相当程度の知識や熟練した技能を要する業務に従事する外国人)
・技能実習
技能実習法上の認定を受けた技能実習計画に基づいて技能などを要する業務に従事する活動(該当例:技能実習生)
外国人留学生の多くが取得する就労可能な在留資格は、「技術・人文知識・国際業務」です。教育機関で学んだ内容と関連性のある在留資格を理解して、変更申請を行いましょう。
出入国在留管理局の審査基準
外国人留学生が在留資格の変更をするには、住居地を管轄する地方出入国在留管理局で変更許可を受ける必要があります。地方出入国在留管理局の審査基準は、「大学や専門学校で学んだ内容と就職予定先の職種が関連しているか」「外国人留学生の素行に問題がないか」「就職予定先の企業に安定性や継続性があるか」「適切な給与が支払われるか」などです。外国人留学生自身のことはもちろん、就職予定先の企業の規模や労働条件も審査基準に該当します。
参照元 出入国在留管理庁「在留資格変更許可申請」 出入国在留管理庁「在留資格一覧表」
在留資格の変更に必要な書類や手続きに関しては「外国人留学生必見!在留資格の変更に必要な書類を解説」を参考にしてみてください。
外国人留学生の日本企業への就職状況を知ろう
出入国在留管理庁の「留学生の日本企業等への就職状況について」の資料によると、2019年に就職を目的に在留資格の変更申請をした外国人留学生は、38,711人でした。このうち、30,947人に変更許可が下りています。在留資格の変更許可が下りた人を国籍・地域別でみると、中国が全体の37.4%と最も多く、次いでベトナム、ネパール、韓国、台湾とアジア諸国が全体の95.3%を占めている状況です。
なお、2019年に在留資格を就職可能なものに変更した外国人留学生の就職先の業種は「非製造業」が85%、「製造業」が15%を占めています。「非製造業」では「卸売業・小売業」が14.6%、「職業紹介・労働者派遣業」が10.4%で、「製造業」では「食料品」が2.4%、「電気機械器具」が2%です。
職種の内訳は、在留資格を「留学」から就労可能な種類に変更した外国人留学生のうち、23.2%が「翻訳・通訳業務」に就いており、「海外取引業務」が11.4%、「法人営業」が10.8%、「情報処理・通信技術」が7%と続きます。この4つが、就職のために在留資格を変更した外国人留学生が従事する職種の52.4%を占めていました。
参照元 出入国在留管理庁「留学生の日本企業等への就職状況について」
外国人留学生が日本で就職するメリットとは?
日本で就職する外国人留学生のメリットは、母国よりも良い環境で働けたり語学力を活かした職種に就けたりする点です。また、母国に戻って就職する際のキャリアップにも繋がるでしょう。
母国より良い環境で働ける
外国人留学生は、日本で就職することで母国より良い環境で働ける可能性があります。なぜなら、日本は世界的に見ても治安が良く生活しやすい国とされているからです。日本に慣れていない外国人留学生は、外出先で事件に巻き込まれたり盗難の被害にあったりしないかなど、不安を抱えることもあるでしょう。しかし、日本は海外と比べて比較的安全な国といわれているので、安心して生活できます。
なお、給与面や待遇面の良さも日本で就職するメリットのひとつです。日本企業の給与は、ほかの国と比べて比較的高いといわれています。また、労働条件の見直しや待遇面を充実させている企業も多いため、自分にとって条件の良い企業を探しやすいでしょう。
語学力を活かした職種に就ける
日本で就職する外国人留学生は、母国語と日本語を話せるため「翻訳・通訳」やそのほかの語学力を活かした職種に就きやすいです。特に、海外企業と取引を行っている企業や海外進出を検討している企業は、語学力の高い人材を求めています。外国人留学生は自分の強みを生かした職種に就職するために、語学力をアピールすると良いでしょう。
母国で就職する際のキャリアアップに繋がる
外国人留学生にとって日本企業で働いた経験は、母国へ戻って就職する際の強みになります。なぜなら、日本企業が語学力の高い人材を求めているのと同様に、海外企業も日本人とやり取りができる日本語能力の高い人材を求めているからです。そのため、日本企業で就職した経験がある外国人留学生は母国で働く際も重宝され、自分自身のキャリアアップに繋がります。
まとめ
外国人留学生が日本での就職を成功させるためには、就活スケジュールや日本企業のマナーを理解することが大切です。なお、就職が決まった学生は「留学」の在留資格から就労可能な在留資格へ変更する必要があります。入社日までに必要な手続きを終えるようにしましょう。