慣用句を使うと、会話や文章の幅が広がります。言葉の意味も伝わりやすく、コミュニケーションをより円滑に取れるようになるでしょう。
このコラムでは、使用頻度の高い日本語の慣用句を一覧で紹介します。また、ことわざと慣用句がどう違うのかも紹介。日本語の慣用句と意味が同じ英語のイディオムもまとめているので、参考にしてください。
目次
日本語の「慣用句」とは?
日本語の「慣用句」とは、二つ以上の単語を組み合わせることにより、一つの物事を表現する定型的な言い回しのことです。慣用句の多くは「いたちごっこ=物事が前に進まないこと」「油を売る=寄り道をする」のように、何かにたとえて表現します。また、慣用句だけで単独で使用することは少なく、文章の一部に用いるのが一般的です。
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慣用句と「ことわざ」の違い
日本語の「ことわざ」には教訓や風刺が含まれていて、ストーリー性がある点が慣用句とは異なります。たとえば、「犬も歩けば棒に当たる=思いがけない災難にあう、幸せに巡り合う」「可愛い子には旅をさせよ=甘やかさずに苦労をさせたほうが良い」などが「ことわざ」です。
ただし、複数の単語の組み合わせで成り立っている点や、短い表現で物事を説明する点などは慣用句と共通しています。そのため、日本人は慣用句と「ことわざ」を明確に区別しないことも多くあるのです。
ことわざについて知りたい方には、「日本語のことわざはビジネスや日常生活に役立つ?外国人が学ぶメリットとは」や「日本の有名なことわざと意味を紹介!よく使うことわざ 一覧から英語のことわざまで」のコラムもおすすめです。
日本語でよく使う慣用句一覧
ここでは、日本語で日常的によく使う慣用句と、その意味を「あ行」から順に一覧で紹介します。見聞きしたことがある慣用句の意味を調べる際にご活用ください。
【あ行】
- 相槌を打つ(あいづちをうつ)=話を聞きながら、うなずいたり調子を合わせたりすること
- 揚げ足を取る(あげあしをとる)=言い間違いや言葉の一部だけを捉えて困らせること
- 顎を出す(あごをだす)=非常に疲れること、肉体的な疲労だけでなく精神的に困り果てた様子
- 足が出る(あしがでる)=用意していた金額よりも多く出費してしまうこと
- 足が棒になる(あしがぼうになる)=歩きすぎや立ちっぱなしで足が非常に疲れている様子
- 頭が上がらない(あたまがあがらない)=相手に借りや弱みを握られており対等に付き合えないこと
- 後の祭り(あとのまつり)=間に合わず手遅れになること
- 息を呑む(いきをのむ)=息が止まるほど驚くこと
- 馬が合う(うまがあう)=相性が良いこと
- 上の空(うわのそら)=ほかに気を取られて集中できないこと
【か行】
- 顔が広い(かおがひろい)=交友関係が広く知り合いが多いこと
- 固唾を呑む(かたずをのむ)=成り行きを心配しつつ見守ること
- 肩身が狭い(かたみがせまい)=恥ずかしい思いをして周囲に対し引け目を感じていること
- 兜を脱ぐ(かぶとをぬぐ)=相手に降参すること
- 気が気でない(きがきでない)=非常に心配で落ち着かない様子
- 肝を潰す(きもをつぶす)=非常に驚くこと
- 釘を刺す(くぎをさす)=間違えたり約束を破ったりしないよう前もって相手に注意しておくこと
- 口が軽い(くちがかるい)=秘密にすべきことを簡単に人に話してしまうこと
- 口が酸っぱくなる(くちがすっぱくなる)=同じことを何度も繰り返し言う様子
- 口車に乗る(くちぐるまにのる)=うまく言いくるめられ、だまされること
- 嘴を入れる(くちばしをいれる)、嘴を挟む(くちばしをはさむ)=他人の行動に口出しすること
- 口火を切る(くちびをきる)=先頭に立ち真っ先に始める、話し始めること
- 首を長くする(くびをながくする)=楽しみなことが早く実現しないかと待ち焦がれる様子
- 蜘蛛の子を散らす(くものこをちらす)=大勢の人が四方八方へ逃げる様子
- 心を砕く(こころをくだく)=気を配ったり心配したりすること
【さ行】
- 匙を投げる(さじをなげる)=物事が良くなる見込みがないと諦めてしまうこと
- 舌鼓を打つ(したつづみをうつ)=美味しそうに食べる様子
- 舌を巻く(したをまく)=言葉が出ないほど感心すること
- 鎬を削る(しのぎをけずる)=激しく争うこと
- 図に乗る(ずにのる)=調子に乗って付け上がること
【た行】
- 立て板に水(たていたにみず)=スムーズに話す様子
- 棚に上げる(たなにあげる)=自分に都合の悪いことは触れないこと
- 手塩に掛ける(てしおにかける)=自分の手で大切に世話をして育てること
- 手に余る(てにあまる)=自分の力ではどうにもならないこと
- 手を焼く(てをやく)=てこずる、もてあますこと
- 途方に暮れる(とほうにくれる)=困り果てる様子
【な行】
- 長い目で見る(ながいめでみる)=将来に期待して見守ること
- 涙を飲む(なみだをのむ)=悔しいことや辛いことを我慢する様子
- 二の句が継げない(にのくがつげない)=驚き呆れて次の言葉が出てこないこと
- 根も葉もない(ねもはもない)=何の根拠もないこと
- 喉から手が出る(のどからてがでる)=欲しくてたまらない様子
【は行】
- 歯が立たない(はがたたない)=相手が強くて敵わないこと
- 鼻が高い(はながたかい)=得意で誇らしげな様子
- 鼻に掛ける(はなにかける)=自慢すること
- 腹が黒い(はらがくろい)=心のなかで何かを企んでいる様子
- 骨が折れる(ほねがおれる)=非常に苦労すること
【ま行】
- 眉をひそめる(まゆをひそめる)=心配事や不愉快なことのせいで顔をしかめる様子
- 水に流す(みずにながす)=過去も揉め事をなかったことにすること
- 水の泡になる(みずのあわになる)=努力したことがすべて無駄になること
- 耳にたこができる(みみにたこができる)=何度も同じことを聞かされること
- 耳が痛い(みみがいたい)=失敗や欠点を指摘されて聞いているのが辛いこと
- 耳が早い(みみがはやい)=うわさや情報を素早く聞きつけること
- 虫がいい(むしがいい)=他人のことを考えず自分勝手な様子
- 目が肥える(めがこえる)=良い物を見慣れていて、良い物か否かの判断ができること
- 目に余る(めにあまる)=悪い行いを黙って見ていられないこと
- 目を三角にする(めをさんかくにする)=激しく怒る様子
【や行】
- 藪から棒(やぶからぼう)=唐突に何かをすること
- 山を掛ける(やまをかける)=憶測や直感で何かすること
- 指をくわえる(ゆびをくわえる)=どうにかしたいが手を出せずに近くで見ている、羨ましがる様子
【わ行】
- 藁にも縋る(わらにもすがる)=追い詰められたときに頼りにならない物を頼ること
- 輪を掛ける(わをかける)=物事の程度が大きくなること、実際よりも大げさに言うこと
このように、日本語の慣用句は物事や人物の様子を、体の部位を使ってたとえている表現が多くあります。
日本語の慣用句と英語のイディオムは同じ?
日本語の慣用句と英語のイディオムでは、同じ表現・同じ意味を持つものがあります。一方で、日本語の慣用句を英語に、あるいは英語のイディオムを日本語に直訳しても、意味が伝わらない慣用句もあるので注意が必要です。
日本語と英語で意味や表現が同じ慣用句の例
日本語と英語で意味や表現が同じ慣用句の例は以下のとおりです。
- 神のみぞ知る(かみのみぞしる)=God only knows
- 記録を破る(きろくをやぶる)=break the record
- 顔に書いてある(かおにかいてある)=be written on someone’s face
「神のみぞ知る=神だけが知っている」という意味なので、「誰も知らないこと」を表すときに使用します。
日本語と英語で表現が一部異なる慣用句の例
日本語と英語で表現が一部異なるものの、同じ意味を持つ慣用句の例は以下のとおりです。
- 犬猿の仲(けんえんのなか)=on cat-and-dog terms
- 将棋倒し(しょうぎだおし)=fall like dominoes
- 首を突っ込む(くびをつっこむ)=poke one’s nose into something
「仲が悪いこと」を表す慣用句は、日本語では犬と猿を用いて「犬猿の仲」としますが、英語のイディオムでは猫と犬を用います。「連鎖的に崩れること」を表す「将棋倒し」は、英語では「ドミノ」を使用していますが、日本語と意味は同じです。
まとめ
日本語の慣用句とは、二つ以上の単語を組み合わせて一つの物事を表現する定型句のことです。一般的には、文章の一部に用いるため慣用句を単独で使うことはありません。
日本語の慣用句は数千~数万程度あるといわれているため、すべての意味や使い方を覚えるのは、なかなか難しいでしょう。一覧で紹介したような、使用頻度の高い慣用句を覚えておくと、会話や文章を書く際に役立ちます。