日本の定年について解説!65歳までの継続雇用が義務化される時期とは?

WeXpats
2024/12/05

日本の多くの企業が「定年制度」を導入しています。定年とは、企業に雇用されている人がある年齢に達したことを退職の理由とする制度です。日本では、定年を迎える年齢が60歳以上と定められており、上限はありません。なお、2025年4月以降、希望者は原則65歳まで継続して働けるようになりました。

この記事では、日本の定年について解説。定年に関する動向や定年を迎えたあと働くための制度・方法、定年後働くメリット・デメリットについてもまとめています。今後のキャリアプランや働き方を考えている方はぜひ参考にしてください。

目次

  1. 定年とは
  2. 日本の定年の今後
  3. 日本の定年はなぜ延長されたのか
  4. 定年を迎えても働ける日本の制度や方法
  5. 日本で定年を迎えても働くメリット・デメリット
  6. 日本と外国における定年制の比較
  7. まとめ
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定年とは

定年とはの画像

企業に雇用されている人が一定の年齢に達したことを退職の理由とする制度のことを「定年」といいます。日本では多くの企業が定年制度を導入しており、何歳まで働けるかは企業によってさまざまです。ここでは、日本の定年の年齢・法律・企業の割合について解説します。

日本の定年の年齢

現在、日本の定年の年齢は60歳以上です。定年を導入するかや定年の年齢は企業が任意で決められますが、年齢については60歳を下回ることはできません。

社員が定年退職する場合の日にちは、企業によって異なります。退職する日の例は以下のとおりです。

  • 定年の年齢に達した日

  • 定年の年齢に達した月の給料の締め日

  • 定年の年齢に達した月の末日

  • 定年の年齢に達した年の年度末の日

定年の年齢や退職する日は、就業規則に記載するように法律で定められています。

日本の定年を決める法律

日本の定年を定めているのは「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)」という法律です。就労意欲のある高年齢者が活躍できる環境を整備し、雇用の安定化を図る目的で作られました。定年の年齢以外にも、定年した労働者の再雇用に関することなども規定している法律です。

高齢者雇用安定法では、定年の年齢を60歳未満にすることはできないと定めています。もし、60歳未満を定年年齢に設定している場合、定年制度を定めていないとみなされ、60歳になったことを理由に退職させることはできません。

日本の定年を導入している企業の割合

厚生労働省が発表した令和4年就労条件総合調査」の結果によると、2022年時点で定年制を導入している企業は94.4%でした。

定年制を導入している企業のうち、職種などに関わらず一律に定年制を定めている企業は96.9%で、定年の年齢を60歳としている企業は72.3%、65歳としている企業は21.1%となっています。

日本では60~65歳を定年の年齢に定めている企業が多いといえるでしょう。

参照元
厚生労働省「モデル就業規則」
厚生労働省「令和4年就労条件総合調査 結果の概況

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日本の定年の今後

日本の定年の今後の画像

日本では定年や再雇用に関する見直しが定期的に行われており、2025年4月以降は「65歳までの継続雇用制度の導入」や「65歳までの定年引き上げ」などが義務化される予定です。ここでは、2025年に施行される高年齢者雇用安定法の改正内容と日本の定年に関する今後の動向について解説します。

2025年4月以降65歳までの雇用継続が義務化

2012年に改正された高年齢者雇用安定法では、定年の年齢を60歳以上に設定しなければならないと義務化しました。また、定年の年齢を65歳未満に設定している企業は、以下の雇用確保措置のいずれかを2025年4月以降、必ず実施しなければならないとしています。

  • 65歳までの定年の年齢の引き上げ

  • 65歳までの継続雇用制度の導入

  • 定年制度の廃止

なお、対象は定年を迎えても働くことを希望している人だけです。この法改正により、企業は希望者全員を65歳まで雇うことが義務付けられました。

今後定年の年齢が引き上げられる可能性がある

2021年に施行された改正高年齢者雇用安定法では、以下のいずれかの雇用確保措置を講じるよう企業に対して努力義務が設けられています。

  • 70歳までの定年延長

  • 定年制の廃止

  • 70歳までの継続雇用制度の導入

  • 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入

  • 70歳まで事業主が実施・委託等をする社会貢献事業に継続的に従事できる制度の導入

上記の雇用確保措置の努力義務を負うのは、「定年の年齢を65歳以上70歳未満に定めている」もしくは「65歳までの継続雇用制度(70歳以上まで引き続き雇用する制度を除く)を導入している」企業です。

定年の引き上げや継続雇用制度は65歳までが対象でしたが、2021年の法改正では70歳までに引き上げられました。また、他社への再就職や創業を支援するといった選択肢も含まれているのが特徴です。

日本では少子高齢化が進み、労働人口が減少している傾向にあります。また、健康寿命が延びており、働く意欲や能力がある高齢者も少なくありません。定年後も働くことを希望する人にとって、多様な働き方の選択肢が増えているといえるでしょう。

日本は男女ともに平均寿命が80歳以上と長く、世界的に見ても長寿な国です。「日本の健康寿命は何歳?外国人向けにランキング形式で紹介!」では、健康寿命を延ばす方法や平均寿命との差もまとめています。

参照元
厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~

日本の定年はなぜ延長されたのか

日本の定年はなぜ延長されたのかの画像

少子高齢化の影響により、現役世代の労働力が確保しづらくなっています。現在働いている人に長く働き続けてもらう必要があるため、日本の定年は延長される傾向にあるのです。ここでは、日本の定年の年齢が延長された理由について解説します。

1.定年後も働きたい高齢者が増えたため

内閣府が発表した「令和6年版高齢社会白書」によると、2023年の労働力人口6925万人のうち65~69歳は394万人、70歳以上は537万人でした。労働力人口総数に占める65歳以上の割合は13.4%を占めており、今後も増加していくことは確実でしょう。

また、調査時点で収入のある仕事をしている60歳以上の人の約4割は「働けるうちはいつまでも働きたい」と回答しています。定年を迎えても働くことに意欲がある高齢者が多いといえるでしょう。

2.定年と年金支給開始までの空白をなくすため

定年が延長された理由として、年金の支給開始年齢までの空白期間を作らないようにすることが挙げられます。国民年金の受給開始年齢は65歳です。日本では2013年度から、企業に勤めている人が加入する厚生年金の支給開始年齢が段階的に引き上げられており、最終的に60歳から原則65歳に変更されました。そのため、定年が60歳のままでは退職後に年金をもらえない期間が発生します。

この空白期間をなくすために、男性の年金の支給開始を65歳にする2025年度までに、定年の年齢を引き上げる計画が作られたのです。なお、女性の年金の支給開始年齢が65歳になるのは、5年遅れの2030年度に予定されています。

3.少子高齢化による労働力不足のため

少子高齢化に伴う労働力不足を補うことも、日本の定年が延長された理由でしょう。日本では15歳〜64歳までの生産年齢人口の減少が起きており、今後も働き手となる世代が少なくなると考えられています。労働力が不足し続ければ、働いている人が負担する年金や税金の額が増加する一方です。企業にとっても労働力不足は深刻な問題で、人手が足りず経営規模の縮小を余儀なくされる恐れがあります。定年を引き上げて人手が確保できれば、働き手と企業の両方に利益があるといえるでしょう。

日本では少子高齢化が急速に進んでいます。少子高齢化とは、出生率の低下と平均寿命の増大が同時に起こっている状態のことです。「日本の人口について外国に詳しく解説!日本で暮らす外国人のデータも紹介」では政府発表のデータを元に、日本の総人口や人口データから見えてくる日本の課題について解説しています。

参照元
内閣府「令和6年版高齢社会白書(全体版)(PDF版)」
厚生労働省「50~60代の皆さん

定年を迎えても働ける日本の制度や方法

定年を迎えても働ける日本の制度や方法の画像

定年を迎えたあと働ける制度・方法としては、再雇用制度・勤務延長制度・再就職の3種類が挙げられます。厚生労働省が発表した「令和4年就労条件総合調査」によると、一律定年制度を定めている企業のうち、再雇用制度または勤務延長制度もしくは両方の制度がある企業は94.2%です。日本の企業の多くが定年後も働ける制度や方法を導入しているといえるでしょう。ここでは、再雇用制度・勤務延長制度・再就職について解説します。

再雇用制度

再雇用制度とは、退職後に改めて雇用契約を交わす制度です。再雇用制度では、定年を迎えたあとは一旦退職扱いとなります。

再雇用制度のメリットは、年齢に応じて無理のない働き方ができることです。一度退職するため、退職以前の役職は失われます。改めて、雇用契約を結ぶ際、企業によっては雇用形態や労働条件を相談しながら決められるため、自分の年齢や体力、状況に応じた働き方が選択可能です。また、一般的に再雇用制度では一度退職してから再雇用契約を結ぶため、定年を迎えた退職時に退職金が支払われます。

勤務延長制度

退職することなく、現在の役職や給与、仕事内容などを大きく変更せずに働き続けられる制度を勤務延長制度といいます。定年退職を予定している社員の後任が見つからなかったり、該当する社員の定年退職によって経営に支障が出たりするのを防ぐ目的で作られた制度です。

勤務延長制度のメリットとして、収入がこれまでと変わらずに働けることが挙げられます。勤務延長制度を利用した場合、定年前の労働条件で働けるのが一般的です。また、役職などもそのまま継続されるため、企業としても新たな人事選定を行う必要がありません。なお、退職金は勤務延長の終了時に支払われます。

再就職

再就職とは、自ら就職先を見つけることです。就職先を見つける手段としては、ハローワークや転職サイト、シルバー人材センターなどを利用する方法があります。

再就職を選ぶと、これまでとは違う職種や業界などにチャレンジすることが可能です。これからやりたいことがある人や新たな環境で仕事をしてみたい人は、再就職を選ぶと良いでしょう。

参照元
厚生労働省「令和4年就労条件総合調査 結果の概況

日本で定年を迎えても働くメリット・デメリット

日本で定年を迎えても働くメリット・デメリットの画像

ここでは、日本で定年を迎えても働くメリット・デメリットを紹介します。定年後、どのような働き方をするのが適切なのか考える際の参考にしてください。

メリット

定年を迎えても働くことで得られるメリットを4つ紹介します。

年金以外の収入がある

一般的に老後にもらえる年金は2種類です。公的年金である「国民年金」と、会社員・公務員が加入できる「厚生年金」があります。長年企業に勤めたり、自営業を行っていた人は厚生年金や国民年金が支給され、毎月まとまった金額が受け取れるでしょう。しかし、年金だけでは余裕がある生活が過ごせるとは限りません。夫婦2人で老後生活を送るうえで必要と考える最低日常生活費は、月額で平均23万円といわれています。

厚生労働省が発表した「令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概要」によると、一般的に65歳を迎えてもらえる年金の平均月額は厚生年金であれば基礎年金額を含んで14万3973円(民間企業の会社員である第1号被保険者の場合)、国民年金は約5万6316円(受給資格期間を原則として25年以上の者の場合)です。

定年を迎えても働くことで、年金以外の収入を得られるので、ゆとりのある生活を送れます。

社会保険に加入できる

定年を迎えても働き続ける場合、要件に満たしていれば、一部の社会保険に加入することが可能です。

定年前と比較して労働時間・日数が4分の3以上あるなどの加入条件を満たしている場合、引き続き勤務先の健康保険に75歳まで加入することができます。ただし、就業時間を減らした場合などは、健康保険の加入対象から外れることもあるので注意が必要です。なお、75歳以上になれば後期高齢医療制度に切り替わります。

厚生年金保険は、原則70歳の誕生日の前日まで加入が必要です。就業時間が減ったなどの理由で、健康保険の加入対象から外れた場合は厚生年金の対象からも外れます。

定年後、雇用形態がパートやアルバイトなどでも、条件を満たせば、健康保険や厚生年金に加入することが可能です。ただし、働き方によって適用される社会保険は異なるので注意しましょう。

健康の維持につながる

定年を迎えても働くことで健康の維持につながります。通勤や仕事をすると自然と身体を動かす機会が増えるからです。また、適度な運動は認知症の予防に効果があると証明されています。仕事を通じて、規則正しい生活や適度に身体を動かせることで、健康的な生活を送れるのも定年後に働くメリットといえるでしょう。

人や地域とのつながりを感じられる

社会とのつながりがなくなると、孤独や意欲の低下を感じやすくなるといわれています。退職すると、人や地域などとのつながりが薄くなってしまう人も少なくありません。働くことで社会とのつながりを感じられるので、心の健康増進にもつながるといえます。

デメリット

以下は定年を迎えて働くことで生じるデメリットです。

定年前と同じ条件で働くのは難しい

再雇用制度を利用して定年後も仕事を続けた場合、定年前と同じ条件で働くのは難しいとされています。たとえば、役職から外れたり定年前と比較して給与が下がったりする可能性もあるのです。また、雇用形態が正社員でなくなることもあり、これまで任されていた業務から外れてしまうこともあるでしょう。

慣れ親しんだ環境で仕事を続けられたり、自分の体力や生活スタイルに合わせた働き方ができたりするメリットがあります。しかしながら、定年前と変わらない条件や環境で働くことを希望する人には物足りなさやストレスを感じてしまう可能性があるでしょう。

年金受給額が下がる可能性がある

収入額が一定以上になると年金受給額が下がることに注意しなければなりません。2024年4月以降、働きながら年金を受け取る場合、毎月の年金と賃金の総額が毎月50万円を超えると、金額に応じて厚生年金が減らされることになりました。給与の金額に応じて、支給金額が減らされる可能性があるので注意が必要です。

ただし、厚生年金が減らされる対象は定年後も会社で働いていて厚生年金に加入している人です。自営業やフリーランスなどで働く場合、この制度が適用されません。働きたいけど年金を減らされたくない人は、定年後の働き方を考慮するのも方法の一つでしょう。

日本の社会保険制度については「社会保険の加入は外国人も対象!脱退一時金や社会保障協定の仕組みを解説」をご覧ください。

参照元
厚生労働省「令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概要」
公益財団法人 生命保険文化センター「老後の生活費はいくらくらい必要と考える?

日本と外国における定年制の比較

日本と外国における定年制の比較の画像

アメリカでは年齢を理由に差別することを禁止しています。警察官や消防士など一部の職業だけが定年制を容認されており、企業が年齢を理由に解雇することはできません。何歳で仕事を辞めるかは自分の意思で決められるのが一般的です。ほかにも、カナダやオーストラリア、イギリスなどでも定年制が禁じられています。

定年制がある国には、中国やドイツ、韓国などが挙げられます。中国では2024年9月に法定退職年齢の引き上げを決定しました。男性は現在の60歳から、2025年以降段階的に63歳に、同様に女性非管理職は50歳から55歳に、女性の幹部は55歳から58歳に引き上げる内容です。ほかにも、ドイツでは2029年までに67歳に引き上げる計画があります。また、韓国でも定年の年齢を段階的に引き上げる傾向にあるようです。日本以外の国でも定年の年齢延長の流れが加速しているといえるでしょう。

まとめ

日本の定年について解説!65歳までの継続雇用が義務化される時期とは?のまとめの画像

現在、日本の定年の年齢は60歳以上です。日本の企業の約90%以上が一定の年齢で退職となる「定年制度」を導入しています。定年を迎えるタイミングは、企業が任意で設定することができるため、定年の年齢になった日や月の末日、年度末などさまざまです。

日本の定年を定める「高年齢者雇用安定法」は改正が定期的に行われています。2025年4月以降は「65歳までの継続雇用制度の導入」や「65歳までの定年引き上げ」などが義務化され、「70歳までの就業機会の確保」が企業の努力義務となりました。

日本では少子高齢化の影響で、人手が足りない状況が続いています。そのため、人手確保のための定年の引き上げが行われているのです。今後は、定年の更なる引き上げや定年制度の廃止などが取り入れられる可能性もあるでしょう。

ライター

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