日本料理の名前や伝統的な日本食を知りたい外国人もいるでしょう。日本には「本膳料理」「精進料理」「懐石料理」「会席料理」という、4つの伝統的な日本料理があります。このコラムでは、日本料理の特徴や歴史を紹介。日本料理の献立の名前についても解説します。また、外国人にも人気のある日本食を5つまとめているので、参考にして日本の料理に関する知識を深めましょう。
目次
日本料理の名前4種類と特徴を紹介
日本料理の名前には、「本膳料理」「精進料理」「懐石料理」「会席料理」があります。室町時代に誕生した「本膳料理」が日本料理の始まりといわれているようです。ここでは、4種類の日本料理の特徴を解説します。
本膳料理
本膳料理とは、汁物を1つとなます、煮物、焼き物を膳に載せて提供する料理のことです。なます(酢の物)と煮物、焼き物のことを三菜と呼び、本膳料理の形式を「一汁三菜」と表します。汁物と三菜に加えてご飯と漬物もつけるのが通常です。ただし、ご飯と漬物は一汁三菜には含みません。
本膳料理で提供する料理は、一つひとつの膳ごとに置く位置が決まっています。また、最初に提供する膳と2番目に提供する膳に、一汁三菜を並べるのが一般的です。
現代では、本膳料理を見かける機会が少なくなっています。しかし、冠婚葬祭の席や格式の高い日本料理屋では、本膳料理を提供しているところもあるようです。
精進料理
精進料理は、一つの膳に一汁三菜を載せて提供する料理です。生き物を殺すことを禁ずる仏教の考えに基づいた料理であるため、肉や魚を使用してはいけません。肉や魚に含まれるタンパク質は、大豆を使用した料理で補っています。宗派によっては、肉や魚のほかにニンニクやニラなどの刺激の強い野菜の使用も禁止です。精進料理は出汁にも特徴があります。鰹節を使用できないため、しいたけや昆布などの植物性の材料を使って出汁を取るのです。精進料理で使用する出汁を「精進だし」といいます。
精進料理は、一部の日本料理屋や京都にある寺院などで食べることが可能です。もともとは修行僧が食べていた精進料理ですが、今では動物性食品を口にしない菜食主義の人にも人気があります。
懐石料理
懐石料理は、茶会の前の軽い食事として誕生した料理です。本膳料理と同様に一汁三菜を提供しますが、載せる膳に違いがあります。本膳料理で使用する膳は脚つきの安定したもので、懐石料理で用いる膳は脚のない折敷(おしき)というものです。
懐石料理には、「素材の味を活かす」「旬の食材を使用する」「心を込めておもてなしをする」という3つの原則があります。懐石料理は茶会の前に楽しむ食事のため、素材の味や香りを活かした料理でなくてはなりません。また、季節ごとに旬の食材のみを使用する決まりがあります。料理を楽しんでもらうために「温かい料理は温かいうちに」「冷たい料理は冷たいうちに」と、提供するタイミングを見極めることも大切です。
懐石料理は、安土桃山時代に千利休が茶道を発展させていくなかで誕生しました。そのため、懐石料理の3つの原則には千利休が広めたわびの精神が込められています。
会席料理
会席料理は、お酒の席で提供する豪華な宴会料理です。料理の形式は、お吸い物と刺身、焼き物、煮物の一汁三菜を基本としています。一汁三菜に加えて、お通しや揚げ物などがお酒の肴として提供され、食事の最後にはご飯とお味噌汁も振る舞われるでしょう。懐石料理と同様に、季節の旬な食材を使用します。
会席料理は、形式的な本膳料理を庶民も親しめるように簡略化した料理です。現在では、日本料理屋やホテルのレストランの多くが会席料理を提供しています。日本料理のなかで、最も親しまれている料理といえるでしょう。
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日本料理の献立の名前
ここでは、日本料理で一般的に使われる献立の名前を紹介します。なお、すべての日本料理で献立の名前が同じわけではありません。日本料理の種類によって、献立の名前や順序は異なります。
先付(さきづけ)
先付とは、お酒とともに提供される「酒の肴」のことです。お通しや箸割りと同じ意味を持ちます。先付が提供されるのは、会席料理のみです。本膳料理や懐石料理では提供しません。
先吸(さきすい)
先吸とは、前菜のあとや向付の前に出すお椀を使った料理のことで汁物や煮物が含まれます。先吸は、味の好みを把握して次の献立に繋げるための料理です。
向付(むこうづけ)
向付とは、なますや旬の魚を使用した刺身のことです。切り身がそのまま提供されるのではなく、隠し包丁を入れたり昆布で締めたりといった工夫がされます。
八寸(はっすん)
八寸とは、約24cm(8寸)の四角いふちのある盆に盛りつけた料理のことです。山の旬の食材や海の幸が数種類提供されます。
焼き物(やきもの)
焼き物とは魚や肉、野菜を焼いた料理のことです。懐石料理の一汁三菜に含まれます。献立のなかでも中心となる重要な料理です。
炊合(たきあわせ)
炊合とは、同じ器に2種類以上の煮物を盛りつけた料理のことです。「焚き合わせ」とも書きます。一つひとつの材料を別の鍋で煮るのが基本ですが、食材によっては同じ鍋で煮ることもあるようです。
御飯物(ごはんもの)
御飯物とは、献立の最後の方に提供される料理のことです。寿司や炊き込みご飯など、米を使用した料理を指します。
水物(みずもの)
水物とは、水分の多いデザートのことです。口の中をさっぱりさせるために、季節の果物やアイスクリームなどが出されます。
甘味(かんみ)
甘味とは、料理の最後に抹茶と一緒に出されるお菓子のことです。ようかんや水無月など、季節感のあるお菓子を提供されます。また、植物の形をした和菓子が出されることもあるようです。
代表的な日本の料理5選
ここでは、代表的な日本食を5つ紹介します。日本食とは、日本で食べられている食事の名称です。洋食や中華料理も含まれるため、日本の伝統的な料理である「日本料理」とは意味合いが異なります。
寿司
寿司は、酢飯の上に魚介類を乗せた料理です。日本の料理といえば、寿司をイメージする外国人も多いでしょう。寿司に使用される酢飯を「シャリ」、上に乗せる食材を「ネタ」といいます。ネタには多くの種類があり、魚介類のほかに卵や野菜を使用することも珍しくありません。
日本の寿司屋は、職人が握る寿司屋だけではありません。寿司をベルトコンベアに乗せて提供する回転寿司もあります。昔は少し敷居の高い食べ物でしたが、回転寿司ができてからは誰でも気軽に食べられるようになりました。
蕎麦
蕎麦とは、蕎麦粉を水でこねて細長く切った麺類のことです。もともとは中国から伝わった料理で、中華蕎麦と区別して日本蕎麦とも呼ばれています。ねぎやわさびなどの薬味を入れた蕎麦つゆにつけて食べるのが一般的です。
日本で蕎麦は縁起の良い料理とされており、大晦日に「年越しそば」を食べる習慣があります。蕎麦の形が細長いことから、寿命を延ばすという願いが込められているようです。
天ぷら
天ぷらは、魚介類や野菜などを小麦粉の衣で包んで揚げた料理です。寿司や蕎麦とともに、日本を代表する料理に含まれます。
天ぷらは室町時代に日本に伝わり、江戸時代に国民の間で広まったようです。当時は天ぷらの屋台が多くあり、串に天ぷらを刺して食べていたといわれています。また、天つゆにつけて食べるようになったのも江戸時代です。屋台のなかでも、寿司や蕎麦と並んで人気が高く「江戸の三味」と呼ばれていました。
味噌汁
味噌汁とは、味噌で調理した汁物のことです。昆布やかつお節などで出汁を取り、海藻や魚介類を加えます。日本の家庭で日常的に食べられている料理の一つです。本膳料理では基本的に、一汁三菜の汁を味噌汁としています。また、懐石料理でも味噌汁を提供するのが一般的です。
味噌汁の調理方法は、鎌倉時代に誕生しました。江戸時代に家庭の食卓に並ぶ料理として広まり、ご飯・漬物・味噌汁の組み合わせが一般的となったようです。
すき焼き
すき焼きは、肉や野菜を鍋で煮たり焼いたりする料理です。一般的に肉と豆腐、ねぎ、しいたけなどを入れて溶き卵をつけて食べます。寿司や天ぷらと同様、日本の代表的な料理として有名です。
江戸時代に農夫たちが農具の鋤(すき)を鉄板の代わりにして魚や豆腐を焼いて食べていたことから、すき焼きという名前がつけられました。
すき焼きは、関東と関西で味つけや具材が異なります。関東では醤油やみりん、酒、砂糖を組み合わせて作ったたれで、肉や野菜を煮るのが一般的です。対して関西では、肉を焼いてから醤油と砂糖を加えて野菜を入れます。煮詰まってから、酒や水を入れて味を調整するのです。
日本の代表的な食べ物については「日本の有名な食べ物を外国人の方に向けて解説!」や「日本の伝統料理について外国人向けに詳しく解説!美味しい食べ方も紹介」でも解説しています。まとめてチェックしてみてください。
まとめ
日本料理には「本膳料理」「精進料理」「懐石料理」「会席料理」という4種類の名前が存在します。それぞれの料理にどのような特徴や歴史があるのかを知っておきましょう。日本料理はお祝いごとやかしこまった場面で提供されます。機会があれば日本の伝統をぜひ味わってみてください。