特別永住者とはどのような外国人か企業向けに解説!雇用上の注意点も紹介

在留資格 2022.05.19
濵川恭一
濵川恭一
特別永住者とはどのような外国人か企業向けに解説!雇用上の注意点も紹介

「面接に来た外国人が特別永住者だったが、永住者との違いがあるのか分からない…」と悩む採用担当者もいるでしょう。特別永住者を雇用する企業は、その在留資格を付与された背景に対して配慮する必要があります。そこで、このコラムでは特別永住者とほかの在留資格の相違点を解説。企業が特別永住者を雇用する際に注意すべきポイントもまとめているので、正しい知識を身につけ適切な対応を取れるよう心掛けましょう。

目次

  1. 特別永住者とは
  2. 特別永住者・永住者・帰化の違い
  3. 特別永住者には特別永住者証明書が交付される
  4. 企業が特別永住者を雇用する際の注意点
  5. まとめ

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特別永住者とは

特別永住者とは、第二次世界大戦の際に日本の統治下で暮らし日本国籍を有していた外国人が国籍離脱者になったあとも日本で暮らせるよう、作られた在留資格です。また、この在留資格を持つ外国人も特別永住者と呼びます。

第二次世界大戦中、日本は台湾や韓国、満州(現在の中国の一部)などを統治下においており、なかには日本本土に移り住む人や仕事を求めて来る人もいました。その後、第二次世界大戦が終結し1951年にサンフランシスコ平和条約が締結されます。平和条約によって日本の統治下にあった国・地域は独立したりほかの国の領土となったりしたため、多くの人々が日本国籍を離脱しました。これらの人々を平和条約国籍離脱者と呼びます。日本本土で暮らしていた平和条約国籍離脱者の送還は難航し、韓国や中国、台湾国籍を持つ人々の一部は日本にそのまま在留することになったのです。

平和条約国籍離脱者およびその子孫には、今後も日本で暮らせるよう在留資格「特別永住者」が与えられており、2021年6月末時点でその総数は300,441人に上ります。

退去強制となる条件が緩和されている

特別永住者は本人や父母、祖父母などがかつて日本国籍保有者だったという背景を持つため、ほかの在留資格を持つ外国人に比べて退去強制となる条件が緩和されています。具体的には以下の条件に当てはまらない限り、退去強制にはなりません。
 

  • 内乱罪(付和随行を除く)、内乱予備罪、内乱陰謀罪、内乱等幇助罪、外患誘致罪、外患援助罪、それら未遂罪、予備罪、陰謀罪で禁錮刑以上に処される(執行猶予が付いた場合は除く)

  • 外国国章損壊罪、私戦予備罪、私戦陰謀罪、中立命令違反罪で禁錮刑以上に処される

  • 国の元首、外交使節又はその公館に対しての犯罪で禁錮刑以上が処せられ、かつ法務大臣に(外務大臣と協議の上)日本の外交上の重大な利益が損なわれたと認定される

  • 無期又は7年を超える懲役又は禁錮に処せられ、かつ法務大臣に日本の重大な利益が損ねられたと認定される
     

上記のように日本の治安や利益に関わるような重大な犯罪を起こさないかぎり、特別永住者が退去強制となることはないとされています。

ほかの在留資格より再入国許可の上限が長い

特別永住者の再入国許可の上限は6年です。ほかの在留資格の場合、再入国許可の有効期限は最長5年なので、特別永住者のほうが上限が長くなっています。また、みなし再入国許可は2年間有効で、ほかの外国人よりも1年長いのが特徴です。日本人と同じ条件で入国審査を受けられるため、たとえ外国人に対する上陸拒否事由に該当しても、有効なパスポートがあれば問題なく日本に入国できます。

関連記事:「在留資格29種類を一覧で紹介!就労の可否や「特定技能」についても

参照元
出入国在留管理庁「令和3年6月末現在における在留外国人数について」
e-Gov「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(平成三年法律第七十一号)

特別永住者・永住者・帰化の違い

「永住者」「帰化」は特別永住者と混同されやすいですが、実際は全く異なる意味を持つ言葉のため注意が必要です。外国人雇用を行う企業は、それぞれの意味をきちんと把握しておきましょう。

永住者との相違点

特別永住者と永住者の相違点は、在留資格に関する法律です。特別永住者には「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国に関する特例法」、永住者には「出入国管理及び難民認定法」が適用されます。また、在留資格を得るための要件も異なり、特別永住者は「平和条約国籍離脱者」もしくはその子孫に限られますが、永住者はその限りではありません。原則10年以上日本に居住しており素行不良がなく、経済状況が安定していることなどが在留資格「永住者」の要件です。

帰化との相違点

特別永住者と帰化の相違点は、日本国籍の有無です。特別永住者は日本での居住が認められていますが、国籍は韓国や中国、台湾などにあります。一方、帰化は「外国人が日本国籍を取得すること」を指すため、帰化許可申請を認められた外国人は日本国籍を有するのです。なお、特別永住者が帰化する場合はほかの外国人に比べて審査要件が緩和されているため、日本人との結婚や就職のために帰化許可申請を行う人もいます。

関連記事:「日本の永住者ビザの取得は難しい?申請方法や必要な条件を企業向けに解説

特別永住者には特別永住者証明書が交付される

特別永住者は在留カードを持たない代わりに、特別永住者証明書が交付されます。ここでは在留カードと特別永住者証明書の違いをまとめているので、雇用を検討している企業は確認しておきましょう。

記載項目

特別永住者証明書に記載されている項目は以下のとおりです。

  • 氏名

  • 生年月日

  • 国籍・地域

  • 住居地

  • 性別

  • 顔写真(16歳以上のみ)

  • 有効期限

  • 住居地記載欄

特別永住者証明書の記載項目は、おおむね在留カードと同じとです。本人確認書類としても利用できるので、必要に応じて確認しましょう。

有効期限

特別永住者証明書には有効期限があります。所有者が16歳未満の場合、16歳の誕生日が特別永住者証明書の有効期限です。16歳以上の場合は、各種申請・届出後7回目の誕生日までが有効期限となります。つまり、特別永住者証明書を更新する場合は、更新前に記載されていた有効期限満了日から数えて7回目の誕生日が有効期限です。

常時携行義務の有無

特別永住者証明書は在留カードと異なり、常時携行義務がありません。本来、日本で在留資格を得て、滞在する16歳以上の外国人は、パスポートの代わりに在留カードを常に持っていなければなりません。携行を怠ると法律で罰せられます。しかし、特別永住者に関しては、入管法等改正法の国会審議で「歴史的経緯に鑑み、特別の配慮が必要」とされたため、常時携行義務はありません。面接や雇用契約締結に際して特別永住者証明書が必要な場合、事前に連絡しておくのが親切です。

特別永住者証明書で確認できる内容の多くは住民票でも確認できます。企業として把握したい内容が住民票で事足りる場合、特別永住者に取得を依頼するのもいいでしょう。

関連記事:「定住者と永住者の在留カードの違いは?それぞれの相違点まとめ

参照元
出入国在留管理庁「特別永住者の制度が変わります!

企業が特別永住者を雇用する際の注意点

特別永住者は歴史的背景から日本での在留を認められている外国人のため、企業で雇用する場合さまざまな配慮が必要になります。外国人と信頼関係を築くためにも、適切な対応方法について把握しておくことが大切です。

外国人雇用状況届出の提出はしない

通常、外国人雇用を行う企業はハローワークに外国人雇用状況の届出を提出する必要があります。しかし、特別永住者の場合は届け出義務が発生しません。ほかの外国人と同じように手続きを行うと、時間や手間が無駄になるので注意しましょう。

特別永住者証明書の提示は必要最低限に止める

企業が外国人を雇用する際は在留カードを確認するよう義務づけられていますが、特別永住者が持つ特別永住者証明書はその限りではありません。先述したように特別永住者証明書は常時携行義務がないため、むやみに提示を求めるのは失礼になる可能性があります。特別永住者には歴史的背景があることを理解し、特別な理由がない限り特別永住者証明書の提示を求めないようにするのが賢明です。

通称名と本名の扱いに注意する

特別永住者には、本名のほかに通称名と呼ばれる日本で生活する際に使う名前があります。特別永住者が通称名を役所で登録している場合、特別永住者証明書には記載されませんが、法的効力があるため公的手続きへの利用が可能です。たとえば、就業規則で禁止していない場合、雇用保険や社会保険への加入手続きを通称名でしても問題ありません。特別永住者が通称名と本名のどちらで就労を希望するのか、雇用前に確認しておくと良いでしょう。また、就業規則で通称名の利用を禁止している場合は、事前に説明することをおすすめします。

保険や税金は日本人と同じように手続きを行う

特別永住者が加入する各種保険の手続きや税金の控除は、日本人と同じように行います。なお、特別永住者は就労制限がなく日本人のように働けるため、採用後に在留資格の変更に関する手続きを行う必要はありません。特別永住者の雇用で不明点がある場合は、行政書士に相談してみるのも一つの方法です。

まとめ

在留資格「特別永住者」に該当する外国人には、日本の歴史的背景が大きく関わっています。企業が特別永住者を雇用する際はルーツを正しく理解し、適切な配慮を行う必要があるでしょう。また、特別永住者はハローワークへの届出が必要なかったり特別永住者証明書の確認が必須ではなかったりと、通常の外国人雇用と異なるポイントが多々あります。特別永住者を雇用する際は、相手に失礼にならないよう事前に対応方法を把握しておきましょう。

濵川恭一

監修:濵川恭一

外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net