外国人を人材派遣で雇える?企業に向けてメリット・デメリットを解説

濵川恭一
濵川恭一
外国人を人材派遣で雇える?企業に向けてメリット・デメリットを解説

「外国人は人材派遣で雇えるの?」「直接雇用と派遣雇用どちらが良いのだろう…」と疑問に思う人もいるでしょう。外国人の有している在留資格でできる活動と派遣先元で行う業務が一致していれば、派遣での雇用も可能です。

このコラムでは、外国人を人材派遣で雇用するメリット・デメリットを紹介します。また、人材派遣会社の選び方も解説。外国人の受け入れを検討する企業は内容を参考にして、人材確保に役立てましょう。

目次

  1. 派遣形態で外国人を雇用できる?
  2. 派遣形態の種類
  3. 外国人を人材派遣で雇用するメリット
  4. 外国人を人材派遣で雇用するデメリット
  5. 外国人を人材派遣で雇用する際に気を付けること
  6. 外国人を雇用する際の人材派遣会社の選び方
  7. まとめ

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派遣形態で外国人を雇用できる?

原則、派遣形態で外国人を雇用することはできます。職種や外国人の有する在留資格によってはできない場合もありますが、基本的には派遣先で行う業務と外国人の在留資格が適合していれば、派遣形態での雇用でも問題ありません。

関連記事:「家族滞在ビザを持つ外国人は雇用しても良い?資格外活動許可についても解説

派遣形態の種類

人材派遣の形態は、「登録型派遣」「常用型派遣」「紹介予定派遣」の3種類です。なお、人材派遣と人材紹介は名称が似ており混同されがちですが、行われるサービスは異なります。

人材紹介会社が提供するサービスは採用活動を支援することで、雇用契約を締結するのは労働者と企業です。一方、人材派遣会社は派遣契約を結んだ企業に、雇用契約を締結した労働者を派遣します。人材派遣会社は業務を委託された企業に労働者を派遣し、労働者と人材派遣会社とが雇用契約を締結します。利用する際は間違えないよう注意しましょう。

ここでは、人材派遣の種類について解説します。

登録型派遣

登録型派遣では、労働者は人材派遣会社と雇用契約を結び、派遣期間満了まで派遣先企業で働きます。派遣期間の満了後、派遣先企業から更新の打診があれば継続して働くことが可能です。更新がされない場合は新たな就業先を探します。なお、人材派遣会社との雇用契約は就労している期間のみなので、求職中の給料は発生しません。派遣形態のなかで最も一般的なのがこの登録型派遣です。

常用型派遣

常用型派遣は登録型派遣とは異なり、期限を設けずに派遣先企業で就労します。無期雇用とも呼ばれる派遣形態です。なお、労働者と人材派遣会社は、就労期間終了から次の仕事に就くまでの仕事をしていない期間も雇用契約を結んでいます。そのため、求職中でも給料が発生するのが特徴です。

紹介予定派遣

紹介予定派遣とは、直接雇用への移行を前提とした派遣形態です。派遣先で最長6ヶ月間就業し、企業と労働者の双方が納得すれば直接雇用に切り替えられます。企業からすると、労働者の仕事ぶりを見てから直接雇用できるのがメリットです。

外国人を人材派遣で雇用するメリット

外国人を人材派遣で雇用すると、直接雇用と比較してリスクを軽減できます。また、企業によっては期限つきで労働者を雇用できるのもメリットといえるでしょう。

直接雇用と比べリスクを軽減できる

人材派遣での外国人雇用は、直接雇用と比べリスクを軽減できます。直接雇用の場合、短時間の面接や試験で労働者のスキルや人柄を判断しなければなりません。そのため、雇用後にミスマッチが起こるリスクがあります。特に外国人の場合、面接の受け答えは完璧でも仕事となるとスムーズにコミュニケーションができなくなることも多いようです。直接雇用の場合は、雇用後に労働者と自社に大きなミスマッチがあっても、解雇に値する理由がない限り雇用し続けなければなりません。人材派遣での雇用であれば、継続的に受け入れるかどうかを仕事ぶりを見て決められます。

期間を限定して雇用できる

企業にとって人材派遣での労働者の雇用は、人手が必要な期間に限定して労働者を受け入れられるメリットもあります。必要な時期に必要な人数を受け入れることで、余分な人件費を削減できるでしょう。なお、派遣契約中の安易な契約解除は、労働者の雇用の安定を守る観点から行うべきではありません。自社に必要な労働力を正しく見極め、一度労働者を受け入れたら契約満了まで業務を続けてもらうようにしましょう。

外国人を人材派遣で雇用するデメリット

外国人を人材派遣で雇用する際は、少なからずデメリットも存在します。デメリットを理解したうえで雇用するかを判断しましょう。

直接雇用と比べ早期退職に繋がりやすい

登録型派遣の形態を選ぶ労働者のなかには、長期的に同じ職場で就労するのを望まない人もいます。また、外国人の場合は近い将来帰国を予定しているため、派遣形態での働き方を選択している人もいるでしょう。自社で長く働いて欲しいと思う人材に出会っても、本人のモチベーションが低く契約更新に至らないこともあるようです。長期的に働いてもらえる労働者を派遣形態で探す場合は、直接雇用が前提の紹介型派遣や無期の派遣契約となる常用型派遣を選択するのがスムーズでしょう。

コストが掛かる

人材派遣での外国人雇用は、直接雇用にはない紹介料・手数料(マージン)が発生するデメリットがあります。企業は労働者に支払う賃金のほかに、人材派遣会社に紹介料や手数料を支払わなくてはなりません。ただし、派遣形態での雇用は労働者の保険に関する手続きを派遣会社が行うため、労務管理の手間は抑えられます。コストと手間の削減のどちらを優先させるのかは、企業によって判断が異なるでしょう。

外国人を人材派遣で雇用する際に気を付けること

外国人を人材派遣で雇用する際は、自社が人材派遣禁止の職種ではないか確認しましょう。なお、日本人ならば問題ない業種でも、外国人の持つ在留資格によっては派遣形態での受け入れができない場合もあります。

不法滞在や不法就労でないか確認する

外国人を派遣形態で雇用する際は、不法滞在や不法就労でないかをあらかじめチェックしておきましょう。不法滞在や不法就労に該当する外国人は、日本での就労が認められません。なお、派遣先企業が在留カードを事前に確認するのは個人情報保護の観点から禁止です。そのため、確認する際は利用する人材派遣会社に「在留カードのチェックは必ず行ってほしい」といった要望をだしましょう。人材派遣会社にチェック体制の強化を依頼することで、不法に在留している外国人を受け入れてしまうリスクを減らせます。

派遣会社が違法な行為をしていないか確認する

人材派遣会社を選ぶ際は、違法な行為をしていないかを事前に確認しておきましょう。法律を守っていない人材派遣会社を利用してしまうと、企業の信用に関わります。過去に、事業停止命令や改善命令を受けている会社は避けた方が無難です。また、人材派遣会社が外国人に対し人権侵害や人種差別にあたる対応をしていないかといった視点での確認も重要です。

人材派遣が禁止の職種でないか確認しておく

人材派遣で労働者を受け入れられない職種もあります。人材派遣会社とコンタクトを取る前に事前に確認しておきましょう。人材派遣が禁止されている職種は以下のとおりです。

  • 警備業
  • 建設業
  • 港湾運送業
  • 医療関連業務
  • 弁護士や行政書士などの士業

このほかに、外国人の持つ在留資格により派遣形態での受け入れが禁止されるケースもあります。「技能実習」の在留資格を持つ外国人(技能実習生)は直接雇用をしなくてはなりません。また、外国人が「特定技能」の在留資格を持つ場合、農業・漁業分野以外での派遣雇用は禁止されています。

外国人を雇用する際の人材派遣会社の選び方

外国人を派遣で雇用する際は、人材派遣会社の選び方が重要です。内定実績や登録者数をチェックしつつ、複数の人材派遣会社と比較して決めましょう。

外国人の日本語能力を明確にしている会社を選ぶ

外国人の日本語能力を明確にしている人材派遣会社を選ぶと、自社に相応しい人材とマッチングしやすくなるでしょう。具体的には、外国人の日本語能力試験(JLPT)のレベルが分かるとコミュニケーション能力の把握がスムーズです。JLPTのN1~N2レベルを持っている外国人は、通訳や日本語で打合せをすることも可能です。さほどコミュニケーションを必要としない職種は、N3レベル以上を有していれば問題ないでしょう。

外国人の登録者数が多い会社を選ぶ

外国人の登録者数が多い人材派遣会社を選ぶのもポイントです。登録している人数が多ければ、その分自社に合った人材を見つけやすくなるでしょう。また、国ごと国民性の特徴があるため、国籍が偏っているよりも、さまざまな国や地域の外国人が登録している人材派遣会社がおすすめです。

外国人の内定実績を確認する

過去の外国人の内定実績を確認するのも大切です。今まで外国人を派遣したことがない人材派遣会社は、在留資格や在留期限の確認などに不備がある可能性があります。ある程度過去の実績があれば、それだけサポート体制が整っていると判断できるでしょう。

複数の人材派遣会社と比較する

利用する人材派遣会社を決める際は、数社から見積もりを出してもらいましょう。人材派遣会社ごとに紹介料・手数料の金額やサポート体制が異なります。複数の候補を比較して選ぶことで、自社と合った人材派遣会社を見つけやすくなるでしょう。

関連記事:「外国人雇用状況届出を忘れずに!記入例や申請方法を解説【行政書士監修】

まとめ

外国人を人材派遣で雇用することは可能です。ただし、職種や外国人の持つ在留資格によっては直接雇用しか認められない場合もあります。

外国人派遣労働者をスムーズに受け入れるには、適切な人材派遣会社を探すことも大事です。ただし、派遣会社に丸投げするのではなく、自社でも外国人雇用に関する最低限の法律やルールを理解しておきましょう。

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濵川恭一

監修:濵川恭一

外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net