ひなまつりの起源は、厄除けの行事である「上巳の節句(じょうしのせっく)」だといわれています。厄を移すためにひな人形を飾り、縁起を担いだ行事食を食べるのが習わし。「幸せに育って欲しい」という女の子への願いが込められています。
このコラムでは、ひなまつりの歴史や由来、関連の深い食べ物や風習を紹介します。
目次
ひなまつりとは
ひなまつりとは毎年3日3日に行われる、女の子の成長を祝う日本の伝統行事です。雛人形を飾り、ひなあられやちらし寿司などの行事食を食べます。ひなまつりは「桃の節句」ともいい、男の子の成長を祝う5月5日の「端午の節句」と並んで、子どものいる家庭では古くから親しまれているイベントです。
ひなまつり以外の日本の年中行事は「日本の行事を一覧で紹介!季節ごとのイベントを楽しもう!」のコラムで詳しく紹介しています。ぜひご覧ください。
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ひなまつりの成り立ち
ひなまつりは、中国から伝わった厄除けの行事がもとだといわれています。
厄除けの行事が始まり
ひなまつりの由来は諸説ありますが、西暦300年ごろの中国で行われていた「上巳の節句(じょうしのせっく)」が元になったとする説が有力です。中国では季節の節目に邪気が付きやすいとされています。3日3日の「上巳の節句」には、川に入って体を清めたあと、宴をするのが習わしでした。
平安時代中期(9世紀~)に「上巳の節句」が日本に伝わると、紙や木の葉で作った人形に邪気を移して川や海に流す行事へと変化していきました。このころはまだ、女の子だけの行事ではなかったようです。
江戸時代に女の子の行事として定着した
ひなまつりが女の子のための行事として定着したのは、江戸時代のころです。江戸時代になると人形作りの技術が発達し、身代わりとする人形は「川に流す」から「家に綺麗に飾る」ものに変わっていきました。これにより、ひなまつりは人形遊びを好む女の子のいる家庭でのみ行われるようになったのです。
「ひなまつり」という名前は、人形が江戸時代に「ひいな」と呼ばれていたことから来ています。
ひなまつりには欠かせない!ひな人形について
ひなまつりでは、さまざまな役割を持った人形を飾るのが風習です。ここでは、ひな人形の種類や飾り方の決まりについて解説します。
ひな人形の種類
ひな人形は縁起が良いとされる奇数の段数で飾ります。7段や5段が主流でしたが、昨今は住宅事情の変化により、3段や1段だけのコンパクトなひな人形を飾る家も増えてきました。
7段飾りの場合のひな人形それぞれの役割は以下のとおりです。
- 男雛と女雛(1段目):天皇皇后両陛下を表している
- 三人官女(2段目):天皇皇后両陛下に仕える女官
- 五人囃子(3段目):能楽のための音楽を演奏する5人組の男性
- 随臣(4段目):警護の役割があり、右大臣・左大臣とも呼ばれる
- 仕丁(5段目):雑用をする3人組の男性
- 雛道具(6段目):箪笥や鏡台などの嫁入り道具
- 御輿入れ道具(7段目):御駕籠(おかご)や重箱、牛車(ぎっしゃ)
ひな人形は天皇皇后両陛下の結婚式の様子を表しています。日本人にとって天皇皇后両陛下は理想の夫婦です。ひな人形には、「お二人のような幸せな結婚ができますように」といった女の子に対する願いが込められています。
ひな人形の飾り方
ひなまつりのひな人形は、2月3日の節分の行事が終わってから飾るのが良いとされています。ひなまつりのグッズ販売やイベントが行われ始めるのも、2月3日以降になるでしょう。
日本には、「ひな人形を片付けるのが遅れると結婚できない」という言い伝えがあります。ただし、この言い伝えは「すぐに片付られないだらしない人は結婚できない」といった教訓の意味合いが強く、信憑性はありません。
ひなまつりにちなんだ食べ物
ここでは、ひなまつりにちなんだ食べ物を紹介します。昔からの風習で食べられていたのは、菱餅やひなあられなどです。このほかに、「見た目がひなまつりに相応しい」といった理由でいつしか定番になった食べ物もあります。
ちらし寿司
ひなまつりのメイン料理はちらし寿司です。ちらし寿司は、酢飯のうえに細かく切った色とりどりの食材を散りばめて作ります。寿司桶やちらし桶に盛り付けるほか、型抜きしてちらし寿司ケーキにする家庭もあるようです。
ちらし寿司の具材にはそれぞれ意味が込められています。たとえば、エビは「腰が曲がるまで長生きできるように」、豆は「まめに働きまめに暮らせるように」。見た目も華やかなので、お祝いの行事にはぴったりです。
手まり寿司
最近はちらし寿司の代わりに、手まり寿司を作ってお祝いする家庭もあります。手まり寿司とは、丸く形どった一口サイズの寿司のこと。見た目がコロンと可愛らしいうえ食べやすいサイズ感なので、子どもにも人気があります。具材に決まりはありませんが、見た目が鮮やかなサーモンやマグロ、エビなどが使われることが多いようです。
白酒・甘酒
ひなまつりには、白酒や甘酒が振る舞われます。もともと、3日3日の上巳の節句では邪気払いで桃の花を漬けた白酒が飲まれていました。江戸時代に入り女の子の行事として定着すると、お酒を飲めない子どものために、米麹で作ったノンアルコールの甘酒も用意されるようになったのです。
菱餅
菱餅(ひしもち)は、古くからひなまつりで食されている行事食で、ピンク・白・緑の3色の餅が菱形に形どられているのが特徴です。日本では、菱の実に子孫繫栄や魔除けの力があると考えられているため、菱型は縁起が良いとされてされてきました。
菱餅の色にはそれぞれ意味があります。ピンクは「魔除け」、白は「子孫繫栄」、緑は「健康長寿」です。
ひなあられ
ひなあられは、菱餅と同じピンク・白・緑で色付けされたお菓子です。黄色を加えて4色とし、「四季(1年)を通して幸せに暮らせますように」という意味を込める場合もあります。ひなあられの種類は地方によって違いがあり、関東地方では米菓子を砂糖でコーティングした甘いひなあられが定番です。関西では、醤油味や塩味の丸いおかきのひなあられが食べられます。
桜餅
桜餅とは、桜色に色付けしたあんこ入りの餅を、塩漬けした桜の葉で包んだ和菓子のことです。桜餅がひなまつりに食べられるようになった理由は定かではありません。一説では、ピンク色が可愛らしくひなまつりにぴったりなので食べられるようになったといわれています。また、男の子の成長を祝う「端午の節句」に柏餅を食べるのにちなんで、ひなまつりでは桜餅を食べるようになったとの説もあるようです。
はまぐりのお吸い物
ひなまつりでは、はまぐりを具材にしたお吸い物を食べます。はまぐりは対になった貝としかサイズが合いません。そのことから夫婦円満の象徴とされています。女の子に「幸せな結婚をして欲しい」という願いが込められた風習といえるでしょう。
ひなまつりケーキ
ひなまつりの時期になると、さまざまな洋菓子店で可愛らしいひなまつりケーキが発売されます。菱餅型になっていたりひな人形の飾りが乗っていたりと、バリエーションもさまざまです。また、最近はコンビニでもひなまつりにちなんだスイーツが購入できます。
行事色については「日本の年中行事や伝統行事を一覧で解説!特別な日の風習や行事食とは?」のコラムでもまとめています。
ひなまつりのイベント5選!
ひなまつりには、日本各地でイベントが行われます。(開催日時は変更になる可能性があるので、各イベントの公式Webサイトで最新状況を確認してください)
1.埼玉県「鴻巣びっくりひな祭り」
埼玉県鴻巣市で行われる「鴻巣びっくりひな祭り」の目玉は、「elumiこうのすショッピングモール」に展示される日本一高いピラミッドひな人形です。31段・高さ7mにものぼる雛段には、全国の家庭から提供されたひな人形が飾られます。鴻巣市は「関東三大雛市」の一つとして知られ、江戸時代から人形作りが盛んな都市です。
2.千葉県の「かつうらビッグひな祭り」
千葉県の勝浦市で行われる「かつうらビックひな祭り」では、街中のさまざまな場所に大きなひな人形が飾られます。特に有名なのは、遠見岬神社の石段に飾られる60段・約1800体のひな人形です。
「かつうらビックひな祭り」は、同じ名前の徳島県勝浦市で行われている「阿波勝浦ビックひな祭り」にならって始まりました。
3.愛知県の「陶のまち瀬戸のお雛めぐり」
愛知県瀬戸市は陶磁器で有名な町です。「陶のまち瀬戸のお雛めぐり」の期間には、観光施設「せと・まるっとミュージアム」にて瀬戸物やガラスで作られたひな人形が飾られます。ほかのひな祭りイベントとはまた違った、珍しいひな人形を鑑賞できるでしょう。
4.福岡県の「柳川雛祭り」
福岡県柳川市の「柳川雛祭り」では、通常のひな人形とともに古くから伝わる「さげもん」を鑑賞できます。さげもんとは、鶴や亀、えびなど縁起を担いだモチーフを天井から吊るした飾りです。市内のさまざまな場所にさげもんが飾られ、街を彩ります。
また、柳川雛祭りの最中に行われる「おひな様水上パレード」も観光客に非常に人気です。柳川市中心の水路を、「稚児衣装」という伝統的衣装を着た女の子が船に乗ってパレードします。
5.岩手県の「八日市つるし雛まつり」
岩手県花巻市で行われる「八日市つるし雛まつり」では、地元住民が手作りしたつるし雛を鑑賞できます。ほかにも、周囲の花巻温泉郷ではひな祭りにちなんださまざまなイベントが行われているので、温泉を楽しみながら観光するのも良いでしょう。
まとめ
日本のひな祭りは、女の子の成長を祝う行事として古くから人々の間で親しまれてきました。昨今では机や棚のうえに飾れるコンパクトなひな人形も売られており、気軽にひな祭りの雰囲気を味わえます。このコラムを参考にして、日本の伝統的な行事を体験してみてください。