世界平均の約1.4倍の年間降水量がある日本___。季節ごとに降水量の変動が激しいのも特徴で、特に夏と秋に多くの雨が降ります。
日本の雨の種類は、降り方やともに起きる気象現象によって分けられ、名前が付けられてきました。多くのかっこいい言葉や美しい表現を使った雨の名前があります。情緒豊かな雨の名前を学ぶことで、奥深い日本語の表現や自然を楽しむ感性に触れられるでしょう。
目次
日本には雨の種類ごとに違う名前がある
日本には、雨の強弱や伴って起きる気象現象、降る時間によって付けられた、多様な天候の名前があります。雨の語彙数が多いのは、日本人の生活や雨の多い風土が理由の一つでしょう。
雨の種類の名前が日本語に多い理由は?
言語は生活や文化に深く関わっています。同じ現象でも地域によって着目する箇所が異なるため、その文化にとって大切な言葉や使用頻度の高い言葉は語彙数が多くなるのです。古くから農耕生活を営んできた日本では、雨は重要な気象現象でした。そのため、雨の違いを敏感に感じ取り、さまざまな名前を付ける感性が生まれたのではないでしょうか。
雨の種類の数
雨の名前は、一説には400種類以上あるといわれています。雨の降る強さや時間の長さ、季節によって呼び方が異なるのです。雨を表す言葉だけでなく、雨が降る音や様子を表すオノマトペも豊富にあります。例えば以下のような言葉です。
- ざあざあ:雨が激しく降るとき
- ぽつぽつ:少しずつ雨が降り始めるとき
- しとしと:静かに雨が降るとき
- ぱらぱら:まばらに雨が降るとき
このようなオノマトペは「雨がざあざあ降る」のように使います。
日本語と英語の雨の表現
日本語の雨の種類が多いのは日本が降水量が多い地域だからだといえます。そのため、雨が少ない地域の言語では雨の種類の言葉はそこまで多くないでしょう。
英語の雨の言葉には、「rain、drizzle、shower、downpourl」などがあります。このような言葉にlight、heavyなどの形容詞をつけて雨の様子を表現する場合もあるようです。ほかにも「It’s bucketing down」「It’s raining cats and dogs」などの表現もあります。
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日常生活でよく聞く雨の種類
日常会話や天気予報でよく耳にする雨の種類の言葉にはどんなものがあるでしょうか?雨は強弱や気象現象、時間の長さなどによって種類が分けられています。
強弱による雨の種類の違い
降り方の強さによって分けられた雨の種類は、以下のとおりです。
- 霧雨(きりさめ):とても細かい雨のことで、気象庁の定義では雨粒の直径が0.5mm未満とされている
- 小雨(こさめ):数時間降っても雨量が1mmに満たない程度の小降りの雨
- 暴雨(ぼうう):激しい降り方の雨
- 大雨(おおあめ):災害発生の可能性がある大量に降る雨
- 集中豪雨(しゅうちゅうごうう):限られた地域に短時間で降る大雨
大雨により災害が予想される場合は、気象庁から警報や注意報が出されます。
気象現象による雨の種類の違い
気象現象による雨の種類の違いは、以下のとおりです。
- 雷雨(らいう):雷とともに降る雨
- 風雨(ふうう):風とともに降る雨で、雨風(あめかぜ)とほぼ同じ意味
- 暴風雨(ぼうふうう):激しい風を伴って降る雨
暴風雨は嵐(あらし)という呼び方もあります。
降る時間による雨の種類の違い
降る時間の長さによって分けられた雨の種類には、俄雨(にわかあめ)や通り雨(とおりあめ)があります。俄雨(にわかあめ)は急に降ってすぐに止む一時的な雨、通り雨(とおりあめ)は急に降っては止むというパターンを繰り返す雨のことです。
「美しい日本語を紹介!言葉の意味や使い方を覚えよう」の記事では、響きが美しい天気に関する言葉を紹介しています。また、日本の気候について知りたい方には、「日本の気候や天気の特徴とは?各季節の注意すべきポイントも解説」の記事もおすすめです。
雨の警報の種類
気象庁は防災のために、気象警報や注意報などを発表しています。以下の雨の警報は、上に記載があるものほど警戒レベルが高くなります。
- 大雨特別警報:災害が既に発生または切迫しているため、早急な安全確保の実施
- 大雨警報:避難の判断や避難準備の実施
- 大雨注意報:災害が想定される区域や避難経路の確認
- 早期注意情報(警報級の可能性):最新の防災気象情報に留意
「早期注意情報(警報級の可能性)」は激しい気象現象が予想される数日前から出され、その後の危険度に応じて警報や注意報が段階的に発表されます。
参照元 気象庁「気象警報・注意報の種類」 気象庁「気象警報・注意報」
天気に関することわざや面白い言葉
日本には、以下のような天気に関することわざや言葉があります。
- 狐の嫁入り(きつねのよめいり):晴れているのに雨が降ること
- 猫が顔を洗うと雨が降る:湿気の多さを感じ取った猫が、雨の前に顔を洗うといわれている言葉
- ツバメが高く飛ぶと晴れ、低く飛ぶと雨:雨の前兆である湿気の増加により虫が低く飛ぶため、餌にするツバメも低く飛ぶということわざ
狐の嫁入り(きつねのよめいり)は、天気雨(てんきあめ)とも呼ばれます。
参照元 秋田地方気象台「ことわざ・手作り気象測器のページ」
春夏秋冬の雨の種類
気象庁では春夏秋冬の季節の分け方を以下のように説明しています。
- 春:3月から5月まで
- 夏:6月から8月まで
- 秋:9月から11月まで
- 冬:12月から2月まで
日本では季節によって雨の種類に関する言葉は多様です。ここでは、春夏秋冬の雨の種類を紹介します。
春に降る雨の種類一覧
3月から5月に降る雨の種類を一覧にして紹介します。
春時雨(はるしぐれ)・花時雨(はなしぐれ)
春時雨は、2月4日から桜が咲く前まで降る通り雨のことです。急に降り出しすぐに止むというパターンを繰り返す雨を指します。
花時雨は桜雨(さくらあめ)ともいわれ、3月下旬から4月初旬の桜が咲く季節に降る通り雨のことです。桜の花に降りかかる雨粒を連想させる美しい表現といえるでしょう。
春時雨と花時雨はどちらも春に降る通り雨の名前です。降る時期が、桜の開花前か後かによって種類が分けられています。
小糠雨(こぬかあめ)
小糠雨は春の初めに降る細やかな雨のことで、粉糠雨(こぬかあめ)とも書きます。小さな雨粒を、玄米を精白した際に出る米糠にたとえた雨の名前です。
霧のような小糠雨に降られても、大粒の雨と違いすぐにずぶ濡れにはなりません。しかし、傘を差さずにいると、気付いたときにはひどく濡れている場合があります。
小糠雨は文学に使われる表現で、特に俳句に用いられます。
菜種梅雨(なたねつゆ)
菜種梅雨は、3月下旬から4月上旬にかけて降る雨のことです。菜の花が咲く季節に降る雨のため、菜種梅雨と名付けられました。この時期は、暖かい空気と冷たい空気が接している前線が日本列島の上に停滞し、雨や曇りの日が続きます。
3月下旬から4月上旬にかけて菜の花だけでなくさまざまな花が咲くため、菜種梅雨は、催花雨(さいかう)という呼び方もされます。
「日本の春の気候やおすすめの食べ物とは?桜の名所も紹介」の記事では、日本の春の気候を解説しているので、ぜひご覧ください。
夏に降る雨の種類一覧
6月から8月にかけての気象現象や雨の種類の名前は以下のとおりです。
梅雨(つゆ)
梅雨とは、6月中旬から7月上旬ごろの雨や曇りが続く期間のことです。日本語には、梅雨の季節に降る雨の種類や起こる現象を指すさまざまな言葉があります。
- 卯の花腐し(うのはなくたし):5月から6月上旬の梅雨入り前に一時的に降る長雨で、走り梅雨ともいう
- 入梅(にゅうばい):暦のうえで梅雨に入るとされている日
- 空梅雨(からつゆ):梅雨の季節なのに、雨があまり降らない現象
- 送り梅雨(おくりつゆ):梅雨の終わりごろに降る大雨
- 戻り梅雨(もどりつゆ):梅雨が終わり晴天が続いたあとに再び長雨が降る現象
梅雨は、五月雨(さみだれ)ともいいます。五月と付いているのは、日本で昔使われていた太陰暦で、梅雨の季節である6月を5月と数えていたためです。また、戻り梅雨(もどりつゆ)は返り梅雨ともいいます。
青葉雨(あおばあめ)
青葉雨とは、草木の青葉に降る雨の名前です。新芽の色が濃く変わり、青葉になる初夏に降る雨を指します。同じような意味がある雨の名前が、緑雨(りょくう)や翆雨(すいう)です。雨に濡れた瑞々しい葉が連想できる美しい雨の名前といえるでしょう。
日本には、作物を育てるという意味で付けられた瑞雨(ずいう)という雨の名前もあります。乾燥した大地を潤し草木を成長させる雨は恵みの雨ともいわれ、古くからありがたい現象とされてきました。
夕立(ゆうだち)
夕立は、夏の午後に激しく降る俄か雨を表す名前です。夏の強い日差しに暖められた空気が上昇し発生した積乱雲(せきらんうん)から降ります。入道雲(にゅうどうぐも)や雷雲(かみなりぐも・らいうん)という呼び方もある積乱雲は、1時間ほどで消える雲です。そのため、夕立も急に強く降り、短い時間で止みます。
夕立や青い空にもくもくと浮かぶ積乱雲は、夏の風物詩です。
日本の夏の気候について知りたい方は、「日本の夏を楽しもう!気候の特徴やおすすめの観光地を紹介」の記事も、ぜひご覧ください。
秋に降る雨の種類一覧
ここでは、9月から11月にかけて降る雨の種類を一覧にして紹介します。
秋雨(あきさめ)
秋雨は秋霖(しゅうりん)とも呼ばれ、8月下旬から10月に長い間降ります。夏に暑さをもたらした太平洋高気圧が南下し、大陸の冷たい高気圧が日本に張り出してくる時期です。性質の異なる2つの高気圧が接して秋雨前線が生まれ、長雨が降ります。
秋雨は、秋の風物詩である薄(すすき)が由来となった、薄梅雨(すすきつゆ)との呼び方もありますが、日常的にはあまり使われていません。
秋時雨(あきしぐれ)
秋時雨は、10月8日から11月7日ごろにかけて降る通り雨の名前です。急に降ったかと思ったらすぐに止むというパターンを繰り返します。
季節を感じさせる季語として俳句に用いられますが、話し言葉としてはあまり使われません。哀愁が漂う秋の終わりを感じさせる雨の名前です。
冷雨(れいう)
冷雨は、秋の終わりに降る冷たい雨のことです。日に日に寒くなり、季節が冬へと移り変わる時期に降る雨を指します。
主に、俳句の季語や手紙の書き出しに用いられる言葉です。「冷雨の候」は11月に出す手紙やはがきの冒頭に使われ、「冷たい雨が降る季節になりました」との意味があります。
日本の秋の気候について知りたい方は、「日本の秋の魅力は?季節の花や食べ物・秋祭り・行事・紅葉スポットを紹介!」の記事もおすすめです。
冬に降る雨の種類一覧
12月から2月にかけて降る雨の種類の一覧は、以下のとおりです。
時雨(しぐれ)
時雨は、秋の終盤から冬にかけて降ったり止んだりする雨の名前です。降水量は少なく短時間で止むとされています。雪が交じっている雨のことは雪時雨(ゆきしぐれ)と呼びます。
時雨の由来は、「過ぐる」です。もともと、日本海側から太平洋側へ雲が通過する(過ぐる)ときに、盆地に降る雨を指していました。主に、日本海側の山間部や京都府の盆地で見られる雨の種類を指す言葉です。
時雨には、秋の終盤から冬にかけて降る雨や前述した春時雨・花時雨・秋時雨のほかにも、降り方によって分けられた種類があります。横から雨が吹き付ける横時雨(よこしぐれ)やわずかな時間だけ強く降る村時雨(むらしぐれ)、ごく限られた範囲で降る片時雨(かたしぐれ)などです。
山茶花梅雨(さざんかつゆ)
山茶花梅雨は、11月下旬から12月上旬の山茶花が咲く季節に降る雨の名前です。11月下旬から12月上旬にかけて、移動性高気圧が北に偏り前線が本州の南の海上に留まり、梅雨のような長雨が降ります。山茶花梅雨はしとしとと小雨である場合が多く、期間も長くは続きません。
山茶花梅雨の季節を過ぎると、気温がより下がり本格的な冬に向かうとされています。
氷雨(ひさめ)・凍雨(とうう)
氷雨・凍雨は、冬に降る冷たい雨の名前です。
氷雨は、霰(あられ)や雹(ひょう)などの空から降る氷の粒を指す場合もあります。霰は直径2〜5mm、雹は直径が5mm以上の氷の粒です。凍雨は雨が凍ってできた直径5mm未満の氷の粒で、天気予報では雪に分類されます。
氷雨は空中で常に氷の状態なのに対し、凍雨は雨で凍ってできているのが違っている点です。
参照元 気象庁「はれるんライブラリー」 気象庁「時に関する用語」
珍しい雨の種類の言葉
日常生活ではあまり使わないものの、以下のような雨の名前もあります。
- 村雨(むらさめ):激しく降って急に止む雨
- 驟雨(しゅうう):急に降りだしてすぐに止む雨
- 長雨(ながあめ):数日間にわたり降る雨
- 地雨(じあめ):同じ強さで長い時間にわたり降る雨
驟雨は村雨はほぼ同じ意味の言葉で、主に文章に用いられます。
まとめ
日本では、雨を強弱や伴う気象現象、降る時間によってさまざまな種類に分けて、一つひとつに名前を付けてきました。四季折々に降る雨には、かっこいい名前や花が由来の美しい呼び方などがあるのも特徴です。
さまざまな雨の名前を知って、日本語の表現の幅を広げてみましょう。