近年、「日本の秋は短くなった」といわれています。一年で最も過ごしやすい季節であり、旬の食べ物や色鮮やかな自然の美しさを楽しみにしている人も少なくありません。そんな秋が短く感じられるようになった理由の一つに、9月10月になっても暑い日が続くことが挙げられます。気温上昇は地球温暖化が原因とされており、今後四季が二季になると予測する専門家も現れました。
この記事では、秋を感じる期間が短くなった理由を解説。地球温暖化による影響や将来の予測、秋の過ごし方についてもまとめています。
目次
秋はいつから?短かくなっているって本当?
気象庁が定義している秋は9~11月までです。季節の区切りにはさまざまな考え方があり、季節の期間に絶対的な定義はありません。暦の上では立秋から立冬の前日まで、天文学的には秋分から冬至まで、旧暦では7月~9月を秋としています。一般的には気象庁の定義を用いることが多いため、9~11月を秋としているケースが多いでしょう。
近年、よくいわれるのが「秋が短い」という言葉です。TVやSNSでは、「秋がなくなった」 「日本の四季がなくなる日が来るのでは」といったコメントを見聞きします。このようにいわれる理由は、9月10月になっても気温が高い日が続いているためです。暑い日が続き、涼しくなるまでに時間がかかることから秋の期間が短く感じられるのでしょう。
実際に日本の秋の平均気温は変動を繰り返しながら、100年間で1.36℃上昇しています。また、平年(1991年~2020年)と直近2023年の9月10月の平均気温を比較しても、気温が上昇していることは明らかです。気象庁が発表した東京の月ごとの平均気温によると、平年は9月が23.3℃、10月が18.0℃でした。2024年の平均気温は26.6℃、10月は20.6℃です。9月10月になっても気温が高いことから、秋らしい気温の日が少なくなっていると分かります。
さらに、紅葉の始まりが遅くなっていることも秋が短く感じる要因の一つです。気象庁が発表した「気候変動監視レポート」によると、カエデの紅葉日は10年あたり3日ほど遅くなっています。紅葉を迎えてから本格的な冬と感じる年の瀬までの期間が縮まったことにより、秋らしさを感じる期間が短くなったといえるでしょう。
「日本の秋の魅力は?季節の花や行事などを紹介!」では秋の気候や注意点、食べ物、花などについて紹介しています。
参照元 気象庁「日本の季節平均気温」 気象庁「平年値(年・月ごとの値)」 気象庁「月ごとの値」 気象庁「気候変動監視レポート」
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秋が短いと感じる理由と将来の予想
日本は四季折々の自然を大切に暮らしてきました。しかし、近年では地球温暖化の影響により気温が上昇傾向となっており、このまま対策を行わなければ、今後日本の四季は夏と冬だけになると予測している専門家も少なくありません。ここでは秋が短いと感じる理由と将来の予想について解説します。
地球温暖化が原因
秋が短いと感じるほど気温が高い日が続く原因の一つは「地球温暖化」です。大気中に含まれる二酸化炭素やメタンといった温室効果ガスが増えすぎたことにより、地上の気温が上昇する現象を地球温暖化といいます。
温室効果ガスのなかでも、特に二酸化炭素の増加は深刻です。化石燃料の燃焼や森林の伐採など近年の産業活動が原因といわれており、二酸化炭素の濃度が高くなることで温室効果ガスの増加につながり、気温上昇に繋がってしまいます。
また、地球温暖化の影響は気温の上昇だけではありません。北極付近の氷が溶けることで海面が上昇したり、気圧の動きに変化をもたらします。その結果、台風や夕立、暴風雨などの異常気象が増えたり、生態系に変化を与えたりするなど地球温暖化によるリスクはさまざまです。
日本では温室効果ガスの排出量を減らすための取り組みを行っています。しかし、世界的に温室効果ガスの排出量は増えており、平均気温は多少の変動はありつつも上昇を続けているのが現状です。
今後は夏と冬の二季になる可能性も
秋だけでなく、春も短く感じる人が増えています。春が短いと感じるのは、暑さを感じる時期が早くなっているからです。
最高気温が25℃を超える日を「夏日」、30℃以上の日を「真夏日」といいます。近年、東京では3月に夏日となることも珍しくありません。さらに5月には真夏日になることもあります。また、真夏日の年間日数も全国的に年々増加傾向に。気温の高い日が多くなり、爽やかな時期が短くなっています。
今後、日本の四季は夏と冬の二季になると予測している専門家も現れました。過ごしやすい穏やかな季節はさらに短くなり、暑い時期と寒い時期に二極化する可能性が高いでしょう。
日本の夏の気温は、昔に比べてどんどん高くなっています。「日本の夏を楽しく過ごそう!気候・食べ物・観光地・行事を紹介」では、暑さを乗り切るための工夫や食べ物についてまとめています。
秋は短いけれどさまざまな楽しみがある
秋は野菜や果物など旬の食材が楽しめる季節です。また、食べ物だけでなく、読書や芸術など魅力に溢れています。そのため「紅葉の秋」や「スポーツの秋」など秋にちなんだ言葉が多くあるのが特徴です。ここでは秋の楽しみについて紹介します。
紅葉の秋
秋は紅葉の美しい季節です。場所によって異なりますが、9月~12月上旬にかけてイチョウやカエデの葉が赤や黄色に染まる見ごろの時期を迎えます。
日本では古くから楽しまれてきた「紅葉狩り」は、山などに出かけ、色づいた落葉樹の葉を観賞するレジャーです。山だけでなく公園や滝、神社仏閣など景色の良いスポットを見つけるのも楽しみ方の一つでしょう。場所によって色合いや美しさが異なります。
スポーツの秋
秋はスポーツに適した季節です。秋は気候が安定し過ごしやすい気温であることから、日本では運動に適していると考えられてきました。
スポーツの秋の由来は1964年に開催された東京オリンピックといわれています。過去の統計から東京が快晴になる確率が高い10月10日に開会式が行われたことを記念して「体育の日」として国民の祝日に制定されました。その後名称が変わり、現在は「スポーツの日」と呼ばれています。「スポーツに親しみ、健康な心身を培う」ことが目的です。日程も10月の第2月曜日に改められ、各地では運動会やスポーツに関するイベントが多く行われています。
読書の秋
読書の魅力は知識や情報を得るだけではありません。作者や物語の登場人物に感情移入したり、物語に夢中になったりして、自分の内面や表現力を磨くことができます。秋の夜は長く、読書をするのに適しているという考えにより「読書の秋」という言葉が生まれました。
毎年、文化の日を中心に10月27日~11月9日の2週間に行われる行事が「読書週間」です。読書を通じて、平和を築くことを目的として、戦後間もない1947年から始まりました。読書週間では図書館や本屋などで本に関するイベントや著名な作家の講演会が行われます。
食欲の秋
秋は美味しい食べ物が出回る季節です。お米や果物など多くの作物が実をつけたり、脂がのった秋刀魚が収穫できたりするため「実りの秋」とも呼ばれています。
「食欲の秋」という言葉は江戸時代から使われてきました。夏の暑さで食欲が落ちた人々が、涼しくなったことや稲刈りや収穫などで慌ただしくなったことにより、食べるようになったことから生まれた言葉です。
芸術の秋
「芸術の秋」の由来は文芸誌『新潮』とされています。1918年に発行された誌面の「美術の秋」という言葉から広まりました。絵画や彫刻、工芸などの美術展が多く開催されます。
また、色鮮やかな紅葉や空気の澄んだ青空など、秋は自然の美しさに溢れています。綺麗な景観を楽しめるため、美しい景色を絵や写真に残そうと芸術に触れる機会が多くなる季節といえるでしょう。
まとめ
近年、「秋が短い」 「穏やかな季節が短くなっている」と感じる人が増えています。地球温暖化の影響により、春・夏が早く始まり、冬の訪れが遅くなっているのが原因です。今後、日本は夏と冬だけの二季になると考える専門家も少なくありません。
四季がなくなると季節の移り変わりや自然の美しさを楽しむことは難しくなります。地球温暖化を抑制するためには温室効果ガスの排出量を減らすことが大切です。節電など身の回りのことから始めましょう。