日本企業に就職したい外国人留学生のなかには「日本の就活とは何か?」と疑問を持つ人もいるでしょう。就活とは、正社員として一般企業や行政機関に採用されるための求職活動です。ここでは、日本の就活スケジュールや外国人留学生の日本企業への就職状況を紹介します。就活に向けて外国人留学生が準備しておくこともまとめているので、参考にして希望する企業への就職を叶えましょう。
目次
- 日本の就活とは何か
- 外国人留学生の日本企業への就職状況
- 日本の就活スケジュール
- 就活に向けて外国人留学生が準備しておくことは何か
- 就活を終えた外国人留学生が行うこと
- 外国人留学生が日本企業に就職するメリット
- まとめ
日本の就活とは何か
日本の就活とは、正社員として一般企業や行政機関に採用されるための求職活動です。就活は就労していない人や非正規雇用の人、新卒の人が行います。日本人の多くが就活と聞いて一番に、新卒時の求職活動をイメージするでしょう。なぜなら、日本では新卒時の就活を「今後長く関わる企業を決める大切な活動」と考える傾向にあるからです。これは日本企業に「終身雇用制度」が根付いていることが関係しています。終身雇用制度とは、新卒後入社した企業で定年まで雇用される制度です。新卒の学生は入社後も長く働き続けることを想定して、慎重に就活を行います。
「知っている?外国人留学生が就職するために必要なこと」のコラムでも、日本の就活について解説しているので一読ください。
ピックアップ記事
外国人留学生の日本企業への就職状況
出入国在留管理庁が発表した「令和元年における留学生の日本企業等への就職状況について」の資料によると、2019年に日本で働くための在留資格変更申請の許可を得た外国人留学生は30,947人です。なかでも「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取得した人が多く、変更が許可された人全体の約92%を占めています。なお、外国人留学生の就職先の職務内容は「翻訳・通訳」が23.2%と多く、「海外取引業務」が11.4%、「法人営業」が10.8%、「情報処理・通信技術」が7.0%でした。
在留資格変更申請の許可を得た外国人留学生を国籍・地域別で見ると中国が37.4%で、その次に多いのがベトナムの22.7%、ネパールが11.6%、韓国が5.4%とアジア諸国が多いことが分かります。
参照元 出入国在留管理庁「留学生の日本企業等への就職状況について」
日本の就活スケジュール
日本の就活は学生全員が同じ時期に始めます。本格的に就活が始まる前に、自己分析や業界・企業研究などの準備を進めるのが大切です。ここでは、日本の就活スケジュールを紹介します。
就活が始まる前
就活が本格的に始まる前の大学3年生の6月から2月の間に、インターンシップや自己分析、業界・企業研究を行うのが一般的です。特に、インターシップは自分に向いている仕事を知れたり、社会人として働くことを具体的に想像できたりするチャンスといえます。また、インターシップへの参加は就活において立派な自己PRになるでしょう。なお、自己分析や業界・企業研究は、自分の性格や課題を把握したり興味のある業界・企業を探したりするために行います。就活が始まってからでは準備にかける十分な時間が確保できないでしょう。就活が始まる前に将来の明確なビジョンや応募する業界・企業を決めるのが大切です。
就活開始
日本の就活は大学4年生になる直前の3月から企業エントリーが開始されます。同じ時期に企業説明会も開催されるため、進んで参加しましょう。なお、企業エントリーを行う際はエントリーシートを提出する必要があります。エントリーシートとは応募書類の一つです。提出期限は企業によって異なるため、よく確認して期日内の提出を徹底しましょう。
試験、企業の選考
入社試験や企業の選考は、基本のスケジュール上では大学4年生の6月から9月の間で行われます。主な選考内容は履歴書とエントリーシート、筆記試験、面接です。就活が順調に進んだ学生は9月中には企業の選考が終わり、合格していれば内々定の通知が届きます。内々定が出た学生は、10月の内定式に参加して4月の入社式まで待ちましょう。
就活に向けて外国人留学生が準備しておくことは何か
外国人留学生は就活に向けて、自己分析や面接対策などの準備を整えるのが大切です。ここでは、外国人留学生が準備しておくと良いことを紹介します。
自己分析
就活を行ううえで自己分析は欠かせません。自己分析とは、自分の価値観や強みを深く知るための作業です。「どのような仕事をしたいのか」「応募企業を決めるうえで重視することは何か」を自分のなかで明確にしておくと、目指す方向が決まり就活を進めやすくなるでしょう。また、自己分析は履歴書や面接で自分をアピールする際にも役立ちます。初めて会う人に自分の良さや強みを伝えるには、自分自身が自分を一番知っていなくてはなりません。自己分析を通してこれまでの経験を振り返ったり、なりたい姿を具体的に想像したりしましょう。
日本にある業界や職種を把握する
外国人留学生は就活に向けて、日本にある業界や職種を知る必要があります。業界とは事業を産業ごとに分けたものです。「金融」「ソフトウェア・通信」などを指します。一方、職種は従事する仕事の分類です。「営業」「事務」「企画」などが該当します。就活生が応募する企業を決める際は「興味のある職種は何か」を考えてから、「その職種の募集がある業界はどこか」を探すのが良いでしょう。
面接のポイントを知る
就活を行う外国人留学生は、日本の面接のポイントは何かを把握しましょう。海外の面接では学歴や能力を重視されますが、日本の面接では加えて人柄や個性が重視されます。海外と日本では、面接時に見られるポイントに違いがあるのです。なお、面接ではコミュニケーション能力も求められます。面接におけるコミュニケーション能力とは、面接官の質問を理解して適切な回答をすることや明るい表情で相手の目を見て話すことです。
外国人留学生は以下のような質問をされることが多いので、事前に質問に対する回答を用意しておきましょう。
「なぜ日本に留学しようと思ったのですか?」
「日本の企業に就職したい理由は何ですか?」
「日本に対する印象を教えてください」
「日本に慣れるまでに苦戦したことはありますか?」
自己PRや志望動機のほかにも、上記のような外国人留学生ならではの質問をされることがあります。ぼんやりとした内容ではなく説得力のある回答を意識しましょう。「外国人が就活でよく聞かれる質問と回答例を紹介!面接時のマナーも解説!」や「外国人留学生が就活の面接で自己紹介を求められたら?例文とポイントを紹介」のコラムでも、面接のポイントを紹介しています。参考にしてください。
企業の特徴や求めている人材を理解する
就活を成功させるためには、企業の特徴や外国人留学生に求めているものは何かを理解するのも大切です。多くの企業は外国人留学生に、国際理解や外国人ならではの発想を求めています。外国人留学生は、企業が求めている能力を自分の強みとしてアピールすると良いでしょう。なお、応募先の企業ごとに理念や方針、業務内容は異なります。
外国人留学生は応募先の企業にしかない魅力を探して志望動機の参考にしたり、企業に対して自分を採用した場合のメリットを伝えるのがポイントです。
日本語能力を向上させる
日本企業は外国人留学生にある程度の日本語能力を求めています。企業によって求めている日本語能力のレベルは異なりますが、外国人留学生は基本的な会話や読み書きが問題なく行えるようにしておくと良いでしょう。さらに、日本語は「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」などといった敬語表現が複雑です。就活やビジネスの場では適切な敬語表現が求められます。外国人留学生は日頃から意識的に敬語を使ったり、ビジネス用語を学んだりしておくのが大切です。
上記のほか、「外国人留学生が知るべき就職活動の進め方!志望企業に採用されるには」のコラムでも就活前に準備しておきたいことをまとめているので、参考にしてください。
就活を終えた外国人留学生が行うこと
外国人留学生は就活を終えて内定先が決まった後に、在留資格の変更を行う必要があります。ここでは、在留資格の変更に必要な書類やそのほかに行うことを解説するので参考にしてください。
在留資格の変更
外国人留学生は就活を終えたら、入社日までに在留資格の変更手続きを済ませます。外国人留学生が持っている「留学」の在留資格では就労が認められていません。そのため、日本で就職する場合は就労可能な在留資格への変更が必要です。変更申請を行ってから許可されるまでには1~2ヶ月掛かるため、早めに地方出入国在留管理官署で手続きを行いましょう。在留資格変更手続きに関しては、「日本で就職する外国人留学生必見!在留資格の変更申請について解説」のコラムでも解説しています。なお、在留資格の変更に必要な書類は以下です。
・在留資格変更許可申請書
・在留カード
・写真(縦4cm×横3cm)
・旅券又は在留資格証明書(提示出来ない場合は、その理由を記載した理由書)
・日本での活動に応じた資料
日本での活動に応じた資料は在留資格によって異なります。取得を希望する在留資格への変更に必要な資料は何かを確認して準備しましょう。
参照元 出入国在留管理庁「在留資格変更許可申請」
労働条件の確認
労働条件の確認も入社前に必要な作業です。学生は労働契約期間や給与、始業・就業時間などを、企業から渡される労働条件通知書で確認しましょう。確認を怠ると入社してから「思っていた条件と違う…」「条件の良い企業に転職したい」と不満が出てくる可能性があります。なお、労働条件を確認をしたうえで不明点があれば、必ず就職先の企業に質問して解決しましょう。
日本企業のマナーや文化を理解する
外国人留学生は就活を終えてから入社するまでの間に、日本企業のマナーや文化を学びましょう。日本企業では目上の人に敬語を使ったり、何かを決めるときに上司に確認したりする習慣があります。なお、近年の日本では「結果主義」を取り入れる企業もありますが、「年功序列制度」が残っている企業も多いようです。「年功序列制度」は勤務年数が長い人順に出世していく制度のことをいいます。もし、就職先の企業が「年功序列制度」を取り入れている場合は、日本企業の文化を理解して受け入れましょう。
外国人留学生が日本企業に就職するメリット
外国人留学生が日本で就活をするメリットは、語学力を活かせる仕事に就けたり報酬や待遇面に期待できたりする点です。ここでは、日本企業に就職すると良い点を紹介します。
語学力を活かす仕事に就ける
外国人留学生が日本で就職する場合、母国語と留学で身に付けた日本語を活かす仕事に就ける可能性が高いといえます。なぜなら、海外進出を考える企業はグローバルな人材を求めているからです。なお、翻訳や通訳、海外取引業務などの職種も語学力が欠かせません。外国人留学生は就活を行う際に、国際的に活躍できることをアピールすると良いでしょう。
母国で働く際のキャリアアップに繋がる
日本企業に就職した経験があると、将来的に母国に帰って働くときのアピールポイントになります。日本企業で働いていた人材は、母国でも重宝される可能性が高いでしょう。なぜならば、世界各国に日本企業は進出しているため、対日本人との取引はどの国でも発生します。日本語でのコミュニケーションが円滑にでき、日本人の文化や慣習を理解している人材はビジネスを進めるうえで非常に貴重です。そのため、将来的には母国に帰ることを考えている外国人にとっても、日本企業への就職は、自身のキャリアアップに繋がるというメリットがあります。
まとめ
日本の就活とは、正社員として一般企業や行政機関に採用されるための求職活動です。海外と日本では就活の流れが異なるため、外国人留学生は日本の就活スケジュールを把握する必要があります。また、就活するにあたり面接対策をしたり、日本にある業界や職種を把握したりするのも大切です。