日本で就職が決まった際に、「雇用契約書」や「労働条件通知書」を渡された経験がある方もいるでしょう。これらは、契約を交わした証明や労働条件を確認するための重要な書面です。このコラムでは、雇用契約書と労働条件通知書の違いや役割を紹介しています。ほかにも、労働条件通知書と実際の労働条件が異なった場合の対処法も解説しているので、ぜひお役立てください。
目次
雇用契約書と労働条件通知書の違いとは?
日本では、就職が決まったら雇用契約を結ぶと同時に「雇用契約書」と「労働条件通知書」を、企業側が作成します。2つの書面は労働契約をするうえでとても重要な書類です。ここでは、「雇用契約書」と「労働条件通知書」の違いと特徴について紹介します。
雇用契約書
雇用契約書とは、契約内容や労働条件を明らかにする書類です。一般的には、労働者と事業主がそれぞれ署名・押印した書類が2部作成され、それぞれ1部ずつ保管します。以前は、雇用契約書は書面での作成が義務付けられていました。しかし、2019年4月に法改正され雇用契約の電子化が可能になったため、企業によっては書面で発行されない場合があります。
労働条件通知書
労働条件通知書は、雇用契約を結ぶ際に事業主から渡される書面です。業務内容や勤務時間、給与など、労働条件が詳細に記載されています。労働条件通知書に明示する内容は決まっており、休日や解雇、退職についても書かれているため、求人情報や面接で聞いた内容と違いがないか照らし合わせましょう。
また、労働条件通知書は雇用契約書とは異なり、事業主から労働者に渡される書類1部のみが発行されます。労働者が署名・捺印する必要はありません。ほかにも、労働条件通知書と雇用契約書を1枚にまとめた「雇用契約書兼労働条件通知書」を発行する企業もあります。なお、日本の法律で雇用契約を結ぶ際には、労働条件通知書を発行しなければならないと定められているため、発行されない場合は事業主に確認しましょう。
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雇用契約書と労働条件通知書が必要な理由
雇用契約書と労働条件通知書は、雇用契約を結ぶうえで重要な書類です。契約の証明や労働条件の確認に必要で、雇用契約が成立した後のトラブル防止にもなります。しかし、外国人の方にとっては、在留資格を申請するためにも必要な重要書類です。ここでは、雇用契約書と労働条件通知書が必要な理由をチェックしましょう。
契約内容と労働条件を理解する
雇用契約書や労働条件通知書は、基本的に日本語で作成されます書面に書かれている内容が理解できないようであれば、母国語での作成を依頼してみてください。日本語と母国語で書かれた雇用契約書と労働条件通知書を、1枚ずつ受け取りましょう。受け取ったら、契約内容と労働条件をしっかり確認します。
就労ビザの申請時に提出する
外国人の方が日本で働くには就労ビザが必要です。雇用契約を結んだ時点でまだ在留資格を持っていない場合は、出入国在留管理庁に雇用契約書または労働条件通知書のコピーを提出して、在留資格を申請する必要があります。在留資格がない外国人労働者の場合は、雇用契約書に「停止条件付雇用契約」という項目が設けられるのが一般的です。「在留資格が取得できた場合のみ、雇用契約が有効になる」などと記載されています。
在留資格を取得していない外国人労働者にとって、雇用契約書や労働条件通知書は就労ビザ申請時に必要なので、必ず事業主に発行してもらいましょう。
書面に必ず明示されている項目の確認
労働条件通知書または雇用契約書兼労働条件通知書には、明示しなければいけない項目が決まっています。なお、書式は決まっていません。最近では、労働条件通知書を紙ではなく電子メールや電子化した形で発行する企業が増えてきましたが、労働者が希望すれば紙で書面を発行してくれます。紙と電子化された書面どちらでも、必ず明示されている項目は同じです。では、項目ごとに記載内容をチェックしましょう。
労働契約の期間
契約期間が決まっている場合は働き始める日付と契約終了日、契約期間が決まっていない場合は契約終了日の代わりに「期間の定めなし」と書かれています。
就業場所
会社名や会社の住所が書かれています。労働条件通知書や雇用契約書兼労働条件通知書には、書面の下部に会社と労働者の住所を記載することが一般的です。そのため、大規模な企業の場合は、支店名のみの記載になることもあるでしょう。
業務内容
業務内容の項目は、箇条書きで簡潔にまとめられている傾向があります。業務内容は、働くうえで必ず知っておくべき重要な内容です。分かりにくい日本語であった場合や詳細に知りたい際は、事業主に確認すると良いでしょう。
始業/終業時刻
始業から終業までの時刻は、自分の勤務時間が書かれています。会社が営業している時間ではありません。たとえば、週5日実働8時間勤務の場合は、休憩時間を含む9時間が記載されています。
休憩時間
休憩が始まる時間と終了する時間が書かれています。始業時間と終業時間の間に1時間程度の休憩があるのが一般的です。業務内容によっては、長めの休憩のほかに小休憩を設けている企業もあり、複数回ある場合も項目に記載されています。また、始業と終業、休憩をひとつの欄にまとめて書かれている場合もあるでしょう。
休日/休暇
休日・休暇は、毎週の休みが何曜日なのかが書かれています。シフト制の場合は、シフト表に定めた日という内容の記載があります。年末年始や夏季休暇がある場合も書かれているでしょう。
賃金の計算方法/締日支払日
計算方法や賃金締切日、支払日、時間外労働をした際の割増率が記載されている項目です。交通費が支給される場合は、交通費の上限額が書かれています。また、あまりにも賃金が低いと感じたら、1カ月の基本給が最低賃金を下回っていないか計算してみましょう。日本は都道府県によって最低賃金が変わるため、自分の働く地域の最低賃金と照らし合わせて確認します。最低賃金の算出方法は、「基本給÷(1カ月の出勤日数×1日の労働時間)」です。
解雇を含む退職に関する事項
解雇や退職に関する事項には、解雇の原因となる事柄や退職する際の注意事項が書かれています。ほとんどの企業は就業規則を設けているため、「就業規則を参照」と記載されていることもあるでしょう。主に、定年や自己都合で退職する際の決まりが書かれています。
「雇用契約書で何を確認すべき?確認項目を日本で転職したい外国人に解説」のコラムでも、雇用契約書で特に確認すべき項目をまとめています。雇用契約書は、企業と自分が合意したうえで労働契約を結ぶ、非常に重要な書類ですのでしっかりチェックしましょう。
参照元 e-gov「労働基準法施行規則 第五条」
明示された労働条件が事実と異なる場合
実際に業務を始めたら、書面で通知されていた労働条件とまったく異なるものだった場合、労働者は契約をすぐに解除する権利を行使できます。雇用契約が解除になると、契約後に取得した在留資格も無効となり、また仕事を探さなくてはなりません。ですが、契約を解除したタイミングで、母国に帰らざるを得ない状況になる外国人の方もいるでしょう。雇用契約を解除してから14日以内に帰国する場合は、雇用関係にあった会社が帰国するための費用を負担しなければならないと、日本の労働基準法で決まっています。このように、労働条件と事実が異なる状況を作らないためにも、雇用契約書や労働条件通知書の内容をしっかり確認して、分からない場合は理解ができるまで事業主に質問しましょう。
参照元 e-gov「労働基準法 第二章 第十五条」
まとめ
雇用契約書や労働条件通知書は、在留資格を取得したり労働条件を確認したりするための重要な書面です。日本語と母国語の両方で発行してもらい、大切に保管しておきましょう。
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