日本の伝統色は季節・動植物にルーツがある!意味や歴史について

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2024/07/02

日本には「伝統色」と呼ばれる、古来から伝わる日本特有の色が数多く存在します。季節ごとに自然の変化が大きい日本では、季節や風景、動植物などを表すためそれぞれの色に名前をつけてきました。海外でも国特有の名称がついている色はありますが、日本は特に伝統色が多いとされています。

そこで、この記事では日本の伝統色の歴史や名称に込められた意味を解説。現代で伝統色を楽しむ方法も紹介しています。日本の伝統色への理解を深め、日々の生活に取り入れてみましょう。

目次

  1. 日本の伝統色について
  2. 抗菌・防虫効果が高い染料が用いられた日本の伝統色
  3. 日本の伝統色の名前と意味
  4. 日本の季節を感じられる伝統色
  5. 初めは4色のみだったとされる日本の伝統色
  6. 日本の伝統色に触れてみよう
  7. 日本の伝統色をおしゃれに取り入れるコツ
  8. まとめ

日本の伝統色について

日本の伝統色とは、古くから伝わる日本特有の色のことです。日本人は色彩を重んじる傾向にあり、色によって身分を表したり四季を楽しんだりしていました。たとえば、日本の伝統的な衣装である着物には伝統色がふんだんに使われています。日本の伝統色に対する知識が深まれば、よりいっそう日本文化を楽しめるでしょう。

季節の色を表現する襲色目(かさねいろめ)

日本独自の配色方法に、衣服の表地と裏地を重ねて季節の変化を色彩で表す「襲色目(かさねいろめ)」と呼ばれる取り合わせがあります。襲色目は、平安時代以降に高い身分を持つ人々の間で行われていました。男性の場合は直衣(のうし)や狩衣(かりぎぬ)、女性は袿(うちき)や唐衣(からぎぬ)の表地と裏地の色を使ったとされています。
なお、襲色目は「公家女房」と呼ばれる高い身分を持つ女性の正装である「十二単(じゅうにひとえ)」にも用いられていました。

襲色目に使用できる色は、年齢や季節によって決まっています。昔の人々にとっての襲色目は、現代におけるファッションコーディネートの一環だったといえるでしょう。

身分によっては着れない禁色と絶対禁色

日本の伝統色には、禁色(きんじき)と絶対禁色という身分が高くなければ着られない色があります。
禁色は、平安時代以降に天皇の許しを得なければ着用できないとされた色です。主に深紫(ふかむらさき)や深緋(ふかひ)、深蘇芳(ふかすおう)といった染料が大量に使われる濃い色が指定されています。

一方、絶対禁色は黄櫨染(こうろぜん)と黄丹(おうに)の2色です。現代にいたるまで、絶対禁色を身に着けられるのは天皇や皇太子に限られます。なお、禁色は現代では誰でも着られる色です。

禁色に対して、身分が低い者でも着用を認められるゆるし色もあります。ゆるし色は淡い紅色や紫色です。ほかにも、薄黒(うすぐろ)といった淡い色は身分が低い者でも着られる色でした。

季節ごとの日本の伝統色とは?襲の色目についても解説!」でも、季節ごとの日本の伝統色や襲の色目について紹介しています。興味がある方はぜひご覧ください。

抗菌・防虫効果が高い染料が用いられた日本の伝統色

日本の伝統色の多くは草木染めで生まれた色です。草木染めに使われる植物のなかには漢方薬の材料も多く、染料によってさまざまな薬効を発揮するとされています。実際に植物の染料は防虫効果や抗菌効果が高く、日本人の生活に身近に用いられてきました。

たとえば、「藍」は解毒薬や解熱剤など多くの効能を持つ薬草です。染料としては、防虫効果や防腐効果があります。また、「紅花(べにばな)」を乾燥させたものは、血行促進や婦人病改善に効果があるとされています。「鬱金(うこん)」には抗菌や防虫効果があり、衣類や風呂敷などに広く用いられました。

日本の伝統色の名前と意味

400色以上あるとされている日本の伝統色の名前は動物や植物、風景などが由来です。ここでは、一部の日本の伝統色の名前とその意味を紹介します。日本の伝統色について理解を深めたい方は、チェックしてみましょう。

相思鼠(そうしねず)

「相思鼠」は、相思鳥(そうしちょう)という背中が紫がかったねずみ色の美しい小鳥に由来する伝統色です。この小鳥は江戸時代に中国から伝わり、仲の良い姿から「相思鳥」と呼ばれていました。「相思鼠」の色名は、その相思鳥の身を寄せ合う様子から名づけられたといわれています。

小鹿色(こじかいろ)

「小鹿色」は淡い茶色の伝統色です。鹿は日本人にとって身近な動物であり、神の使いともいわれています。小鹿は大人の鹿に比べて体毛が淡く、優しい色合いをしているのが特徴です。そのため、淡い茶色を小鹿色といいます。

桔梗色(ききょういろ)

「桔梗色」は、青みを帯びた紫色の日本の伝統色です。夏から秋にかけて花を咲かせる桔梗という植物が、名前の由来になっています。平安時代には襲色目に使われた色で、江戸時代以降は着物や帯にも使われるようになりました。

群青色(ぐんじょういろ)

「群青色」は、紫がかった青色をしている日本の伝統色です。藍銅鉱(アズライト)という鉱石を使って染められています。群青色は日本画にも使われる色です。昔は藍銅鉱の入手が難しかったため、日本の権力者は群青色を用いることで財力を示したとされています。

朱色(しゅいろ)

「朱色」は、黄みがかった赤色の日本の伝統色です。水銀と硫黄という鉱物を加工した顔料を使った色で、魔よけの色として知られています。日本では火や太陽は神聖なものと考えられており、それらを連想させる朱色は神社の鳥居にも使われているので、来日した際はぜひチェックしてみましょう。

山吹色(やまぶきいろ)

「山吹色」は赤みがかった鮮やかな黄色です。日本の伝統色の一つで、春の終わりごろに咲く山吹の花が名前の由来とされています。山吹色は平安時代の襲色目にも使われていました。江戸時代まで使われていた日本の通貨である大判・小判を山吹色と表すこともあります。

茜色(あかねいろ)

「茜色」は、やや黄みがかった暗い赤色の日本の伝統色です。名前のとおりアカネという植物の根が染料に使われています。「茜」は『万葉集』で詠まれた一部の歌の枕詞(まくらことば)としても用いられました。枕詞とは、歌の調子を整え、趣深くする言葉です。万葉集は奈良時代に完成したとされる日本最古の歌集。「あかねさす」という言葉が登場し、日の光で赤く色づく様子を表しています。

日本の季節を感じられる伝統色

日本は四季がはっきりしており、それぞれの季節を代表するような伝統色が存在します。日本の伝統色は濃淡でも季節を表現しているため、違いを理解すればより四季を楽しめるようになるでしょう。ここでは、春夏秋冬に応じた日本の伝統色を紹介します。

春の日本の伝統色

春は暖かく、さまざまな草木が芽吹く季節です。春を代表する日本の伝統色の多くは、植物の名前が付けられています。たとえば、淡い紅色の「桜色」や鮮やかな黄色が特徴的な「菜の花色」、新緑をイメージさせるやわらかい黄緑の「若葉色」などです。春の空のような淡い青色の「空色」や優雅な印象を持つ紅がかった紫の「京紫」も、春を感じさせる日本の伝統色として親しまれています。

夏の日本の伝統色

日本の夏は湿度が高く、日差しが強いのが特徴です。夏を代表する日本の伝統色の多くは、海や山を連想させるような青や緑といった系統の色が多くなっています。たとえば、海から日が昇る様子を表すような「金碧珠」や鮮やかな緑がかった青の「活色」、松の葉を連想させる濃い青緑の「松葉色」などです。ほかにも、春から夏への移り変わりを感じさせるような淡く明るい黄色の「どんこう色」や「とうもろこし色」も、夏らしい日本の伝統色として知られています。

秋の日本の伝統色

秋は植物が色づき、さまざまな作物が収穫される実りの季節です。秋を代表する日本の伝統色は、ほかの季節に比べて深みのある濃い色が多くなっています。たとえば、濃い赤紫の「えび色」や稲穂のような華やかな黄色の「黄金色」、色あせて枯れゆく木の葉を連想させる「朽葉」などです。ほかにも、深いこげ茶の「どんぐり色」や食べごろを迎えた柿のように紅がかった「照柿色」も、秋の日本の伝統色として親しまれています。

冬の日本の伝統色

日本の冬は乾燥しており、地域によっては雪が積もるほど寒さが厳しいのが特徴です。冬を代表する日本の伝統色は、視覚的に寒さを感じさせる寒色が多くなっています。たとえば、淡く暗い色の「銀灰色」や墨より深い黒さを持つ「涅色」、夕暮れどきの雲のように紅を帯びた灰色の「紅碧」などです。ほかにも、淡い青色に白を混ぜたような「白群」や、日本の国鳥であるトキのような淡い紅色の「鴇色鼠」が冬の日本の伝統色として知られています。

日本の季節や気候を解説!行事や伝統色についても」では日本の四季について解説。「日本の四季の特徴や魅力を知ろう!海外との違いも解説」では海外との違いや、快適に過ごすために必要なことも紹介しています。日本を訪れる際は、ぜひチェックしてみると良いでしょう。

初めは4色のみだったとされる日本の伝統色

現代では400色以上あるといわれる日本の伝統色ですが、もともと日本語で表せるのは赤・青・黒・白の4色のみだったとされています。日本の伝統色のほとんどは、染色技術が発達したことで生まれました。ここでは、染色技術が発達する前の日本における色の種類が、赤・青・黒・白とされている理由を紹介します。

形容詞として使える色は赤・青・黒・白のみ

「色の名前+い」の形容詞として通じる日本語になるのは、赤・青・黒・白の4色のみです。それぞれ、「赤い」「青い」「黒い」「白い」というように自然な日本語になります。しかし、ほかの色の場合は「茶色い」「緑っぽい」など別の言葉を足さなければ不自然です。漢字一文字で表せる色も赤・青・黒・白の4色のみなので、これらは特別な色であり日本最古の伝統色なのではないかとされています。

赤・青・黒・白はそれぞれ対となる色

赤と青、黒と白は対になる日本語の表現を持つ色です。たとえば、物事をはっきりさせたいときに「白黒をつける」といいます。また、日本では赤と青は正反対のイメージを持つ色です。赤は情熱・怒り・ポジティブなどのイメージがある一方、青は冷静・悲しみ・ネガティブといった印象を与えます。

赤と白にも対となる表現があり、日本では2組に分かれて競技を行う際、「紅組(赤組)」と「白組」に分かれるのが一般的です。赤と白の組み合わせはお祝いごとにも使われる色で、紅白まんじゅうや紅白なますといった食べ物がふるまわれることも。対となる表現やイメージを持つのはこの4色のみなので、日本最古の伝統色は赤・青・黒・白ではないかとされています。

赤・青・黒・白に関する日本独特の表現

色を表す言葉が少なかったかつての日本では、赤・青・黒・白で明暗や濃淡も判別していたとされています。また、日本語に文字がなかった時代の日本では、「明るい→赤い」「暗い→黒い」というように表現していたと考えられています。また、昔は緑色のことを青と呼んでいました。現代でも高齢者を中心に、緑色を指して青と言ったり未成熟なりんごを青りんごと呼んだりします。

赤・青・黒・白に関する日本独特の表現はほかにもあり、たとえば、「腹黒い」は悪いことを企んでいる人や意地悪な人を表す言葉です。ほかにも、「白ける」「赤らむ」といった赤・青・黒・白を含んだ表現が、日本には数多く存在します。

日本の伝統色に触れてみよう

伝統色は、日用品やおしゃれなアイテム、有名なタワーなど、現在でもいたるところに使われています。ここでは、伝統色が用いられている物や服、建物を紹介。ぜひお気に入りの方法で親しんでみましょう。

伝統色が使われている物を探す

日本の伝統色は現在でも親しまれており、お弁当箱やお椀、バスタオル、マスク、扇子、ハンカチなどに用いられています。なかには、親しみやすいキャラクターが伝統色をモチーフにした色合いの着物を着ている置物も。このようなアイテムを探してみると、より日本の伝統色が身近に感じられるでしょう。

伝統色が使われている服を着る

伝統色は着物だけでなく、ワンピースやエプロンといった現代の衣服に使われることも。アクセサリーにも用いられ、一例はピアスやブローチなどです。和洋折衷のデザインもあるため、日常的に取り入れやすいでしょう。
また、色を重ねることで、スカーフやストールとして楽しめる透ける生地も販売されています。お気に入りの伝統色がある方は、身に着けるものを探してみると良いでしょう。

伝統色が使われている建物を観光する

「東京スカイツリー」には、スカイツリーホワイトというオリジナルカラーが使われています。藍白という伝統色をベースにしたものです。タワーの白さに青みが加えられています。
東京スカイツリーは高さ634mなので遠くからでも見ることは可能です。しかし、周辺には商業施設や水族館などもあるため、観光する際は足を運んでみると良いでしょう。

また、朱色は昔から神社仏閣に用いられることが多いため、神社に行く際は鳥居の色を確認してみましょう。「神社とお寺の違いは何?参拝方法も解説【外国人向け】」では、神社とお寺の違いや、それぞれの参拝方法について紹介しています。訪れる際は、参拝のマナーを知っておくと良いでしょう。
日本の歴史的建造物21選!人気のスポットを地域別に紹介」では、有名な歴史的建造物を紹介しているので、日本を観光する予定のある方はぜひご覧ください。

日本の伝統色をおしゃれに取り入れるコツ

日本の伝統色はバリエーション豊富なため、うまく取り入れればファッションやイラスト、デザインなどをおしゃれにできます。テーマの統一を意識して伝統色を使うと良いでしょう。たとえば、春をテーマに日本の伝統色を取り入れるなら、淡いカラーの桜色や薄緑、空色などの組み合わせがおすすめです。指し色として、鮮やかなたんぽぽ色や花萌葱を使うのも良いでしょう。

江戸時代をテーマに日本の伝統色を選ぶ際は、やや暗めで彩度が低い藍色や梅鼠、利休茶などがおすすめ。江戸時代の庶民は倹約が推奨されており、華やかな色合いの着物を身に着けてはいけない決まりがありました。そこで、当時の人々は豪華にならない範囲で「四十八茶百鼠」と呼ばれる灰色や茶色、藍色を基調とした色の種類を作り、おしゃれを楽しむようになったのです。江戸らしい色遣いを取り入れる際は、四十八茶百鼠を意識してみましょう。

まとめ

日本の伝統色は四季や動植物、風景を表す色として古くから日本人に親しまれてきました。日本語や染色技術の発達とともに日本の伝統色は数を増やしていき、現代では400色以上あるとされています。日本の伝統色の多くは日本の景色や動植物が由来のため、日本文化や日本人との結びつきが強いのです。日本に興味がある方は伝統色への理解も深めておくと、来日した際によりいっそう日本文化や四季を楽しめるでしょう。

ライター

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生活・仕事・留学に関するお役立ち情報から、日本のディープな魅力を紹介するコラムまで、バラエティ豊かな記事をお届けします。

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