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外国人社員と日本人社員の大きな労務上の違いとして、在留カードに関する手続きが挙げられます。外国人を雇用する場合、入社前に在留カードを確認することはもちろん、雇用期間中に有効期限が近づいた際は更新手続きを促さなければなりません。
多くの外国人の場合、在留カードの有効期限と在留資格が定める在留期間満了日は同一です。在留資格の更新を行うことで、有効期限が延長された新たな在留カードが交付されます。
この記事では、「在留期間更新許可申請」の流れやタイミング、在留カードに関わる注意点を紹介。外国人を雇用する企業は、在留カードと在留資格の更新について知っておき、法律違反を防ぎましょう。
目次
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在留カードは、3ヶ月以上日本に滞在する外国人に対し、出入国在留管理庁が交付する身分証明書です。滞在許可証としての役割も持っています。
在留カードには、外国人の氏名や生年月日、国籍、住所などの個人情報が記載されています。特に重要な記載項目が「在留資格」「就労制限の有無」「在留期間」「資格外活動許可の有無」です。
外国人は在留資格が認める在留期間中のみ日本に滞在し、許可された範囲内で活動することが許されています。また、留学生がアルバイトする場合など、在留資格外の活動を行う際には資格外活動許可が必要です。
日本に中長期滞在する外国人には在留カードを常に携帯することが義務付けられており、警察官に求められた場合は提示しなければなりません。在留カードを所持していない場合は、20万円以下の罰金が科されます。提示に応じなかった場合の罰則は、1年以下の懲役または20万円以下の罰金です。(※出入国在留管理庁「Answer(Q1~Q79)」Q34参照)
外国人が合法に滞在していることを示す在留カードは、企業が健全に外国人を雇用するうえで重要な役割を担います。なお、企業が外国人を雇用する際は、必ず在留カードの確認が必要です。
関連記事:「在留カードの確認は面接時に行える?偽造品の見分け方も解説【行政書士監修】」
参照元
出入国在留管理庁「在留カードとは?」
出入国在留管理庁「Answe(Q1~Q79)」
ほとんどの就労可能な在留資格には在留期間が設定されており、満了日以降も日本で働きたい場合は「在留期間更新許可申請」が必要です。在留資格を更新すると在留カードも新しくなるため、実質的に在留資格と在留カードの更新時期は同じと捉えられます。
一方で、「永住者」「高度専門職2号」のように在留期限が存在しない在留資格もあります。在留期限がない在留資格の場合でも、一定期間ごと(原則、交付日から7年ごと)に新しい在留カードに更新しなければなりません。
参照元
出入国在留管理庁「在留期間更新許可申請」
出入国在留管理庁「永住許可(入管法第22条)」
出入国在留管理庁「高度人材ポイント制とは?」
外国人を雇用する企業は適切な労務管理のため、社員の在留カード(在留資格)の更新時期を把握しておきましょう。なぜなら、在留期間満了日を過ぎた外国人は不法滞在とみなされ、就労はもちろん日本に滞在することができないからです。不法滞在が発覚すると、外国人は刑事処分と行政処分の対象となります(詳しい罰則はこちら)。
一方で、不法滞在している外国人を雇用している企業も不法就労助長罪に問われます。このような事態になれば、自社の信用に悪影響が及びかねません。今後、外国人を採用する際に、在留資格の申請が下りにくくなる事態も考えられます。
外国人を雇用する企業は、社員の在留期間を把握しておき、必要に応じて在留カード(在留資格)の更新を促しましょう。
それでは、実際に「在留期間更新許可申請」の手続きについて見ていきましょう。
「在留期間更新許可申請」は、外国人の居住地を管轄する地方出入国在留管理局で行います。在留期間の満了日の3ヶ月前から申請可能です。申請をするのは外国人本人ですが、企業もフォローできるように流れを押さえておきましょう。
以下は、地方出入国在留管理局の窓口で手続きする場合の流れです。
「在留期間更新許可申請」の審査期間は、一般的に1ヶ月程度です。ただし、2024年8月現在は申請を行う外国人の数が急増しており、審査完了まで数ヶ月かかる場合もあります。
なお、マイナンバーカードを所持している外国人であれば、365日24時間対応のオンライン申請が行えます。地方出入国在留管理局の窓口は平日しか開いておらず、土日祝日には申請を行えません。平日に休みを取りにくい場合はオンライン申請を活用しましょう。
「在留期間更新許可申請」の必要書類は在留資格によって異なるため、注意が必要です。以下では、日本で働く多くの外国人が持つ在留資格「技術・人文知識・国際業務」(通称「技人国」)の必要書類について解説します。
「技人国」が「在留期間更新許可申請」を行う際に必要な書類は、企業規模によって区分された「カテゴリー」によって異なります。各カテゴリーの大まかな概要は以下のとおりです。
カテゴリーは企業の安定性や信頼度の目安になる指標です。カテゴリー1に属する企業は外国人を適切に雇用できるとみなされ、ほかの区分に属する会社よりも提出書類が少なく設定されています。カテゴリーごとの提出書類は以下のとおりです。
【カテゴリー1】
以下のいずれか
【カテゴリー2】
【カテゴリー3、4に共通】
【カテゴリー4】
外国人が提出する書類も把握しておくと、質問を受けた際にスムーズに対応できます。
「在留期間更新許可申請」に掛かる手数料は4,000円で、受け取り時に収入印紙で支払います。郵便局や切手を販売しているコンビニで、あらかじめ収入印紙の購入が必要です。収入印紙を貼付する「手数料納付書」は、地方出入国在留管理局の窓口や出入国在留管理庁のWebサイトで入手できます。
前述したとおり、「永住者」「高度専門職2号」には在留期限がないため、「在留期間更新許可申請」を行う必要はありません。ただし、「永住者」「高度専門職2号」が持つ在留カード自体の有効期限は7年間とされています。そのため、在留カードの有効期間の満了日の2ヶ月前から有効期間満了日までに、「有効期間の更新申請」を行うことが必要です。更新申請を行わなかった場合、外国人は不法滞在とみなされます。申請は外国人本人が地方出入国在留管理局で行い、必要書類は以下のとおりです。
「永住者」「高度専門職2号」が在留カードの更新手続きをする場合の手数料は無料です。
参照元
出入国在留管理庁「在留申請のオンライン手続」
出入国在留管理庁「在留申請オンラインシステム」
出入国在留管理庁「在留資格「技術・人文知識・国際業務」」
国税庁「A2-7 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」
国税庁「C1-4 内国普通法人等の設立の届出」
出入国在留管理庁「提出写真の規格」
出入国在留管理庁「在留カードの有効期間の更新申請」
前述したとおり、「技人国」「特定技能」などの在留資格を持つ外国人が、在留資格の更新を行わず在留期限を過ぎた場合、不法滞在とみなされます。不法滞在者に科される罰則は、3年以下の懲役もしくは禁錮、または300万円以下の罰金です。さらに、出国命令や退去強制といった行政処分の対象となります。
また、「永住者」「高度専門職2号」を持つ外国人が在留カードの更新を怠った場合の罰則は、1年以下の懲役または20万円以下の罰金です。(出入国在留管理庁「Answer(Q1~Q79)」Q61参照)
なお、在留資格や在留カードの有効期限が過ぎた場合、罪に問われるのは外国人本人だけではありません。不法滞在とみなされる外国人を雇用した企業も、不法就労助長罪に問われます。不法就労助長罪に該当すると判断された場合の罰則は、3年以下の懲役、もしくは300万円以下の罰金、またはこれら両方です。
外国人を雇用する際はかならず在留資格や在留カードの有効期限を確認し、適切に更新するように促しましょう。
参照元
出入国在留管理庁「受入れ機関の方」
出入国在留管理庁「退去強制手続と出国命令制度」
出入国在留管理庁「Answer(Q1~Q79)」
警視庁「外国人の適正雇用について」
万が一、本人がうっかりして在留期限を過ぎてしまった場合、すぐに更新書類を揃えて、最寄りの出入国在留管理局に行きましょう。
前回の更新時から転職がなく、雇用が継続している場合で、在留期限から2カ月以内の場合は、一旦、短期滞在ビザなどに変更した上で日本に滞在できる場合があります。ただし、短期滞在ビザの間は、就労は不可となります。雇用している企業にとっても大きな損失となりますので、在留期限切れには十分に注意しましょう。
外国人が在留カードを紛失した場合、事由発生日から14日以内に地方出入国在留管理局で再交付申請を行う必要があります。盗難や滅失した場合も再交付申請をしなければなりません。従業員から在留カードの紛失について相談を受けた場合、速やかに再交付申請を行ってもらうために手続きの流れと必要書類を把握しておきましょう。
まず、紛失や盗難に気づいたら警察署に届け出て、「遺失届出証明書」もしくは「盗難届出証明書」を入手します。次に、以下の書類を持って地方出入国在留管理局に行き、再交付申請を行いましょう。
パスポートもしくは在留資格証明書の提示ができない場合や申請取次者が申請を行う場合、身分を証明する文書等の提示をする必要があります。新たな在留カードは、再交付申請を行った日に交付されるのが一般的です。
なお、在留カードが著しく毀損や汚損している場合も、再交付申請が必要です。期間は定められていませんが、在留カードの再交付申請命令を受けたときは、命令を受けた日から14日以内に手続きを行わなければなりません。必要書類は紛失による再交付申請とほぼ同じですが、遺失届出証明書や盗難届出証明書などの代わりに、現に有する在留カードの提示を求められます。
参照元
出入国在留管理庁「紛失等による在留カードの再交付申請」
出入国在留管理庁「汚損等による在留カードの再交付申請」
在留カードと在留資格に関して、更新以外にも注意すべき点があります。これらの注意点を押さえておかなければ、大きなトラブルに繋がったり無駄に心配する羽目になる可能性も。外国人に適切に自社で働き貢献してもらえるように、注意点を押さえておきましょう。
外国人従業員が在留資格や在留カードを更新したあとは、必ず提出してもらい、次の更新時期を確認しましょう。その際に、断りを入れてからコピーを取っておくと労務管理に便利です。
ただし、前述したとおり、外国人は在留カードを常時携帯するように義務付けられています。そのため、在留カード原本を預かるのはやめましょう。在留カードを確認しコピーを取ったあとは速やかに返却し、トラブルが起きないようにする必要があります。
留学生をアルバイトとして採用する企業は、在留資格を更新しても資格外活動許可が自動で更新されないことに留意しておきましょう。資格外活動許可の有効期限は在留資格と同様の日付に設定されています。したがって、「在留期間更新許可申請」を終えたあとに、再び資格外活動許可を得なければなりません。
外国人アルバイトが在留資格の更新を行った際はかならず在留カードを提出してもらい、裏面の「資格外活動許可欄」を確認しましょう。資格外活動許可欄に記載がない場合、許可を得ていないと考えられます。もし、資格外活動許可を得ずに働いた場合、外国人は不法就労に該当し、雇用主は不法就労助長罪に問われます。
「特定技能」や「特定活動(46号)」などは、指定された企業での就労を前提に付与される在留資格です。これらの在留資格の申請が下りると、勤務先名や本店所在地、許可された活動などが記載された「指定書」がパスポートに貼付されます。
以上の在留資格を持つ外国人は、同じ業務に就く場合でも転職する際は「在留資格変更許可申請」が必要です。そして、「在留資格変更許可申請」を行うと、新しい在留カードが交付されます。
「特定技能」や一部の「特定活動」を持つ外国人を新たに雇用する場合は、「在留資格変更許可申請」を行ってもらう必要があると念頭に置いておきましょう。雇用が決定したら必ず新しい在留カードとパスポートに貼付された指定書を見せてもらい、内容を確認する必要があります。
外国人のなかには在留カードが期限切れになりそうだと気づいて、慌てて「在留期間更新許可申請」を行う人も少なくありません。しかし、在留資格の更新にはおおよそ1ヶ月かかります。在留期間満了日が間近になってから「在留期間更新許可申請」を行った場合、期限が切れて不法滞在にならないか心配する人も多いでしょう。
結論として、在留期間中に更新申請を行えば、審査中に有効期限を過ぎても問題ありません。在留期間満了日までに「在留期間更新許可申請」を行った場合、在留期間満了日から2ヶ月経過する日か申請が下りる日までのどちらか早い日まで、引き続き従前の在留資格が有効です。
この期間を「特例期間」といい、該当する外国人の在留カードの裏面には「在留期間更新許可申請中」の文言が記載されます。
在留カードの更新は日本で行う必要があるため、長期の海外出張が多い社員の在留期間には注意が必要です。また、出国日数が過度に多く、ほとんど日本にいないような働き方をしている場合、在留カードを更新できなくなる可能性があります。
参照元
出入国在留管理庁「特例期間とは?」
日本で働く外国人にとって、在留資格は大切な身分証明書です。在留期間が過ぎた状態で働くと、不法就労となるので注意が必要です。
更新に必要な書類は、在留資格や企業の規模・種別によって異なります。自社で働く外国人が在留資格を更新する際の必要書類を把握しておき、スムーズにフォローできるようにしましょう。
監修:濵川恭一
外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net